光を脅かす闇

明るい光を放つ闇とは違い、

黒き闇は誰に悟られることもなく忍び寄ることができる

だが、光が闇を照らすとき、

それは跡形もなく消え去ってしまう

後に残るのは、かがやく光







第3話 出立・







  暗闇の中、1人の老人が口を開く。

  「同志ウルよ、そちらの準備はどうだ?」


  その老人から見て右手に、いま1人の老人の姿が浮かび上がる。

  「議長、私の方は全てそろいました」


  議長と呼ばれた老人が再び口を開く。


  「これで皆準備が出来た。

   同志たちよ、約束の時は近い」


  すると、議長を中心とした円卓が闇に浮かび上がる。

  そこには新たに4人の老人が現れた。

  議長、ウルを含めると6人。


  議長「伝説の赤き力を用いて」

  老人A「この乱れた世界を」

  老人B「この望み無き世界を」

  老人C「この神に見捨てられた世界を」

  老人D「この破滅の世界を」

  ウル「この業苦にまみれた世界を」

  議長「始まりの姿へ」



  老人C「議長、宝玉の探索に関する報告が上がってきております」

  議長「申せ」

  C「まず、いままでの調査の結果、宝玉はそれを作り出したものの手によって
    いずこかに封印されていることが分かっておりました。

    そこで、先人たちの遺跡を探させ、そこを探索させましたところ、
    どうも彼らの遺跡には必ず1つは何らかの宝があるようです。

    現在分かっております彼らの遺跡の数は46、
    そのうち探索し終えた遺跡は24。

    この探索によって様々な宝を手に入れることができました。

    この宝は必ずや我らの目的を達成する助けとなることでしょう」


  議長「そのようなことはよい!

     宝玉は見つかったのか?」


  C「い、いえ、宝玉はまだ見つかっておりません。

    ですが、残る遺跡は22、見つかるのも時間のうちでございましょう」


  議長「できるだけ早く見つけるように。

     同志ウルよ、その宝とやらの分析と複製、頼んだぞ」


  ウル「はっ!できるだけ早く完了させましょう。

     して、全軍に行き渡らせるだけ複製すればよろしいでしょうか?」


  議長「そうだな・・・・

     いや、我ら直属の部隊の分だけでよい。

     下手に力を持たれると厄介なものもいるのでな」


  ウル「仰せのとおりに」


  議長「では、今回の討議を終えることとしよう。

     皆々、用意を怠らぬよう」


  議長以外「では」




  その言葉とともに、議長以外の5人の姿が闇に消える。


  1人残った議長は、数瞬ののちこう呟いた。


  「後少し、後少しだ......」



  そして、議長の姿も闇にとけていった。






  ミサトが加持と共に机を片付けていた時、居間兼台所ではレイが行動を起こしていた。


  「碇君・・・・」


  「なに、綾波さん?」


  「何で、碇君は私の旅に着いて来てくれるの?」


  「なんでって、それは・・・」


  綾波さんのあの顔のせいだよ、などと考えながらシンジが振り向くと、
  テーブルに座っていたはずのレイが、それこそ目の前にいた。


  シンジはかまどの火加減を見ていて、レイに背を向けていた。

  薪をつついて火をいいようにしようとしていたので、レイの声にも振り向かずに答えた。


  そのため、レイの接近に気付かなかったのだ。


  「私、碇君とは全然親しいわけではない。

   それに、セリダーはとても遠いところ。

   それなのに、碇君は私の護衛をしてくれる。

   どうして?」



  予想外の接近に固まっているシンジにかまわず、とつとつと自らの疑問を語るレイ。

  言い終えると、その紅の瞳でシンジの瞳を真剣に見つめた。



  「え、えっと、それは、だから....」


  綾波さんのあの顔を見て、断れなかったっていう答えは、やばいよね・・・・

  そんなことを思いながら適当な答えを探すシンジに、レイはもう1つの疑問を放った。



  「それに・・・碇君といると、とても懐かしい感じがする....

   初めて会った時からそう・・・・

   従兄妹だから、ではなくて、もっと深いところから感じる懐かしさがあるの」



  「あ、綾波さん、も?

   僕も、なんだかそんな感じがしてたんだ...」


  「えっ....」


  レイは頬を染め、上目遣いにシンジを見る。


  「確かにさ、最初会った時は、その、すごくかわいいなって思ったんだ。

   でも、後で綾波さんのこと考えてたら、すっごく気になって・・・・

   今までこんなことなかったのに、って、そう思うのに、

   綾波さんのことが気になって・・・・・・・

   でも、綾波さんも、そう思ってたんだ.....」



  そんなレイに、シンジは微笑みつつゆっくり話しかける。


  レイは、その微笑みに既視感を感じた。


  そして、自分もまた微笑み返す。



  母さん?・・・・・

  シンジは、その微笑みに母親を見た気がした。



  2人は、静かにみつめあう。


  2人の間に流れる時は、ただ、穏やかにすぎゆくのみ。


  シンジとレイ、互いに相手に顔を寄せ、その瞳の中をのぞく。



  その顔が、触れ合うまでにあと少し........





  ドンドンドン!!



  ビクゥッ!

  突然の騒音に、我に返る双方、そして自分たちの状況に気付き、パッと離れる。



  「朝早くから申し訳ありません!

   城からの使いですが、宰相様がこちらにいらっしゃるとのことですが、
   お取次ぎ願えませんでしょうか?」



  「!ハイ、分かりました!」





  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


  1人の少年が、街を取り囲む壁の西に開いた門の側に立っている。

  「はぁぁ、少し早く来すぎたんかいな?」


  少年・鈴原トウジは、ミノフォルスの巫女、洞木ヒカリの護衛のため共にセリダーに赴くことになっていた。


  「おっ、やっと来よった。

   コダマさんも一緒やな」


  町の大通りの向こうに、幼なじみの少女の姿が見える。

  その姉で、同じく神殿の巫女をやっている女性の姿も。


  向こうは、待っているこちらの姿を見つけたらしく、小走りに向かってきていた。


  「はぁっ、はぁっ、おはよう、鈴原」

  「おう、おはようさん、ヒカリ」

  「おはよう、トウジ君。

   早いわねー、多分待ち合わせの時間までまだ10分近くはあるのに」


  「いやいや、女子(おなご)を待たせるのは最悪のことやから・・・」

  「(クスッ)ヒカリ、やっぱりトウジ君はいいわね。

   あなたがす」
  「お姉ちゃん!!」


  いとも簡単に自分の思いを口にしようとする姉を、自分が叫ぶことで押しとどめる。

  そして、隣に立つ少年が姉の言おうとしたことを理解したかどうか確かめる。


  「??どうしたんや、ヒカリ?

   いきなり叫びよって」


  全然、大丈夫なようである。

  それに安堵すると共に、彼の鈍さに少し苛立ちを感じる。


  (もうっ、少しは気付いてくれたっていいのに....)




  「それじゃヒカリ、気をつけてね」


  「うん、お姉ちゃんも大巫女様のお世話、がんばってね。

   あと、ノゾミや、お母さんたちにもよろしくね」


  「分かったわ。

   トウジ君も、道中気をつけてね。

   セリダーは遠いし、途中も安全とは言いきれないから」


  「分かってますがな。

   心配せんでも、ヒカリには傷1つ負わせませんけぇ」



  「フフッ、ヒカリのナイトは頼もしいわね」


  「(ボンッ)お、お姉ちゃん!」


  「冗談よ。

   それじゃ、本当にいってらっしゃい」


  「うん・・・・・行ってきます」



  そして、2人は旅立っていった....

  まず2人が目指すのは、ノストヘルム最南端の町・タラス。



  そこで出会う相手、そして運命を考えもせずに・・・・・





 次回予告


  ほのぼのとしていた碇家に急を告げる使者。

  彼がもたらす知らせとは?

  そして、シンジとレイの旅に与える影響は?






 <後書き>

  「旅」 第3話中編をお送りします。
  短いですね。
  その一言に尽きます。
  次回はもっとがんばるつもりなので、見捨てないで下さい。
  お願いします。

  それと、6月6日から修学旅行なので、
  メールなど、もし頂けても返信が出来ません。
  もしメールを出してくださる奇特な方がいらっしゃられたら、
  返信の方は12日以降までお待ち下さい。

  では、またお会いしましょう。




 <お詫び>

  え〜、これを書いているのは6月12日、月曜日です。
  上に書いてある通り、このSSは先週の日曜日には完成していたんですが、
  NACさんの所に送る時、添付するのを忘れてしまったんです。
  よって、今回のNACさんのHP更新にあわせて更新していただくこととなってしまいました。
  もし僕のつたないSSを読んで、少しでも楽しみに思っていただいている方がいらっしゃいましたら、
  心からお詫び申し上げたいと思います。

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NACのコメント:
本編第三話・中編(なのかな)です(^^)
また、わけのわからん人たちが出てきましたね。彼等は物語にどう絡むのか? どんどんストーリーが複雑になっていきますねぇ。
 ヒカリたちもようやく出発。さて、どうなりますことやら?
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