Monologue in Spain 2001


第二部 アンダルシア

カディス


Playa, Cadiz

05/13

マルベージャの海は良かった。 アンダルシアをのんびり気ままに旅するというならやっぱり海沿いの街を歩くのが楽しい。 ジブラルタル海峡を挟んで東側を地中海のコスタ・デル・ソル(太陽の海岸)、西側を大西洋のコスタ・デ・ラ・ルス(光の海岸)と呼ばれていることは皆さんご承知の通り。 コスタ・デル・ソルのマルベージャで一日遊んだのだから、今度はコスタ・デ・ラ・ルスの方にも行ってみようと昨日こちらにやって来た。 大西洋にちょこんと突き出た半島の街、カディス。

昨日のうちに半島をぐるりと一周しているので、なんとなく全体の位置関係は把握できた。 この半島の中が旧市街で、半島よりも内側(大陸側)に新市街が築かれている。 旅行者は当然旧市街に集まり、とどまり、そして当然居住者もいるから他の観光都市と同様にシーズン中はごった返すことになるのだろう。 今はそれほどでもないのかもしれないけれど、やっぱり人が多いなぁと感じる。

今朝は釣り竿を持って海岸へ行った。 南側は岩礁地帯になっているから、その切れ目を狙ってルアーを投げたらすぐに当たりが来たがフックアップせず。 その数投後ガツンと大きな当りがあって、瞬間的に合せると強い引きが手元まで伝わってきた。 足元まで寄せて、ちらりと姿が見えたところでプツリと糸が切れた。 逃げられたことも残念だけれど、もっと悲しいのは切れた糸の先に結んであったルアーはお気に入りの“ラパラCD−9”だったことだ。 これで旅行カバンに忍ばせてきたルアーが底をついたことになる。 悔しいから、悔しさ紛れにこう報告しておこう。 “あの魚は僕の生涯で一番大きな魚だった!” 逃げた魚はいつもそういうものだ。

砂浜まで歩いて腰を下し、傍らに釣り竿を置いてぼんやりと海を見やった。 砂浜の先に、干潮のせいで潮溜まりになった岩礁帯があり、その先に青い大西洋がはるかかなたまで続いている。 頭の上の青空は、下のほうまで降りてくるうちに次第に白っぽくなりながら海にぶつかって、あいまいな水平線をどうやら表現している。 雲の流れに気がつくと、視線は少しづつ上向きになっていって何とはなしにごろりと砂の上に横になった。 Tシャツを脱いで頭の下に丸めて、右手で太陽をさえぎりながらペットボトルの水を少し口に含んだ。

大西洋に面した街、カディスに来ています。


Flores, Cadiz

05/14

ひょっとしたら、スペインに来てはじめてマクドナルドで食事した。 いままで歩きつかれて座りたいけれどカフェがいっぱいだったときに、マックでコーヒーを飲んだことはあったけれど、ハンバーガーは食べていなかったなぁ。

はじめて季節限定の“月見バーガー”を食べたときの興奮がよみがえった。 なんと“ガスパチョ”があるじゃない! アメリカ型自由資本主義社会の王道に乗って、大量生産大量消費を地で行くマクドナルドだけど、その侵略(!)した先の地域で固有の文化を受け入れながらさらに発展していく様はなかなか興味深い。 マックメニュー(スペイン版バリューセット)のセルド(豚肉。これもスペイン・オリジナル?)とコーラ、それにガスパチョを頼んだ。 マックメニューは645ペセタで、ガスパチョは200ペセタ。 ちなみにマックメニューには、あと55ペセタ上乗せするとパタタス・フリートス(フライド・ポテト)と飲み物の増量サービスがある。 ま、スーパーバリューセットってこと。

ガスパチョ。 あのトマトをすりつぶした食感もあるし、ニンニクも利いていてなかなかうまい。 ちょっと水っぽい気もするけれど、ファースト・フードの200ペセタを考慮すると満足の一品としておこう。

***

昨日よりもさらに波が強く、少し波頭も立っている。 魚釣りもする気にはならずただ浜辺へ出かけては、ずるずると砂の中のサンダルを引きずる。 もう随分と日が高くなったからかな、潮溜まりを覗いても生物の痕跡が見付からなかった。 遠くで小船にペンキを塗る老人が一人。


Anochecer, Cadiz

05/15

ここカディスでは本当に何も見なかったなぁ。 あれはルネッサンスのものだと思う。 街の中心になっている教会の前をいつも通って海に出ていたけれど、通り際に仰ぎ見る古典のボキャブラリーだけで満足して、もう中に入ろうとは思わなかった。 博物館も美術館もあるらしいことはツーリスト・インフォメーションの地図で判っていたけれど、なんとなくだらだらと海を見るだけで満足していたよ。

新市街の方の海を歩いてみた。 茫洋とした海に向かってアザラシの群れのような黒い点点の集団。 近づくとたまにやって来る大き目の波を待つサーファー達だと気付く。 海の中にぴょこんと浮かんで遠くを見つめている彼らの姿は傍目にはなんだか滑稽ではあるけれど、アフリカの方からやって来る波にフワリと乗って、ツツツゥーッと流れる様子は湘南辺りの彼らとは違って随分様になっていたなぁ。

今夜カディスを発つ。

人が密集していて通りには常にけたたましい交通音があったけれど、美しい海だった。


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Have a good activities and peace!