Monologue in Spain 2001


第二部 アンダルシア

セビージャ編


Toro, Sevilla

04/28

いよいよセビージャにやってきた。 気温は25度を超えた。 

昨夜の遅い時間にバスに乗り込んで、約7時間の道程だったけれど、途中の夜明けはやっぱり美しかった。 濃い群青色の空の端が少しづつ薄く、白みを増してくるとやがて下のほうから橙色の光が立ち上がりはじめる。 もう少しすると群青はその濃さを失い、星星の輝きも次第に弱まり、代わってあの焼けるような南の地方の太陽が姿をあらわす。 澄んだ青空と強烈な太陽が姿を現しはじめたのだから、途中で通りすぎた街のいくつかはやはり白一色だった。

僕の目に最初に飛び込んだ、アンダルシアのコンポジション。

***

“死を扱う唯一の芸術”とヘミングウェイが虜になった闘牛を、今日はじめて観た。

予約していたオスタルに先ず向かい、荷物を預けてからツーリスト・インフォメーションを探す。 本場に来たのだから是非闘牛を観たくて、案内係に訊ねると今日の闘牛は大きくて重要だと教えてくれた。 もちろんその足で早速闘牛場へ行ってチケットを買った。

日が傾きはじめるのを待って、午後7時にその最初のセレモニーがはじまる。 マントを翻し、そのひらめきで先ずは観客を魅了し、次いで勢い飛び込んできた牛との戯れのような、それでいてどことなく神聖な趣のある儀式が繰り返される。

やがて。 

ばたりと、その牛が倒れた瞬間の歓声。 白いハンカチを振って最大の評価をそのマタドールに伝える。 最後、倒された牛は3頭の馬に引きずられて見えなくなるが、勇猛な牛に対する尊敬の念もまた拍手となる。


Rio Guadarquivir, Sevilla

04/29

この街の西を流れるグァダルキビル川のほとりがとても気持ちの良い散歩コースになっている。 水のある風景はやはり美しく、心癒されるからどこの国でもどこの街でも常に多くの人が集まる。

昨日のんびりと歩いているときに、カヌー、カヤックに興じる人に出会った。 カヌー(カヤック)ポロって知ってる? カヤックに乗って、バスケットすると思ってください。 そのカヌーポロをしている彼らをぼんやりと、ちょっとうらやましく眺めていたら、すぐ後ろにあった艇庫から一人のセニョールがやって来て彼らに何らかの指導をはじめた。 話しが途切れた所で声をかけると、艇庫の中へ案内してくれていろいろと話しが弾んだ。

“僕の弟は今、大学に通ってカヤックをしているんだ。2年前にスロバキアであったジュニアの世界選手権にも彼は参加してるんだよ。アジア大会ではカヤック・フォア(4人乗り)で銀メダルを獲ってる。僕もレーシングのコンペティションにでたこともあるし、カヤックには問題なく乗れるから、明日少しだけ漕がせてれないか?” 無理かなぁと思いながら聞いてみると、快くOKされた。 この個人の自立した精神はどうだろう! 僕がカヤックの技術を持っているというと、何の咎めもなく仲間として扱ってくれる。 怪我をしたときの責任問題を無意味に考慮して撥ね付けるのではく、個人対個人の信用で対応してくれる。 もちろん僕が“沈”(転覆)して死ぬようなことが起こっても彼らには何の責任もない。 彼らの自立した考え方が気持ち良い。

今朝の10時過ぎ、早速サンダル履きに海パン持参で行った。 ちなみに僕はどこへ旅行へ行くときも、水着と釣り道具は持ち歩いている。 必ずしも使うとは限らないけれど。

艇庫の中にはレーシング艇をはじめスラローム艇やポロ用のカヤック、ツーリング艇までオールラウンドにたくさんのカヌー・カヤックが揃っているから、このクラブを利用する人達の年齢層がとても広い。 学生からおじさんおばさんまで思い思いのスタイルで楽しんでいる。 他のスポーツでも一緒だけど、チャンピオン・スポーツだけを取り出して云云するのではなく、皆が楽しめるレジャー・スポーツの環境を作ることが本当に大切だと思う。 ここでは僕みたいに海外からの旅行者だって、好きだという理由だけで参加できるんだから。

“どれにする?これが最新のコンペティション用だ。アマリージョ(黄色)でかっこいいだろ。見ろ、BMWが作ってる。” ちょっとおかしいけど、本当にコーミング(コクピット)の後ろにBMWのマークがついていた。 “相当早いんだろうね、ところでフェラーリのモデルはどこ?(笑)”

ブルーのちょっと古いレーシング艇を借りた。 レーシングに乗るのは高校生の時以来だからはじめはちょっとぐらぐらしたけれど、5分もすれば感が戻ってくる。 ワイルドウォーター用のカヤックに乗ったエヴァという女性と並んで漕いだ。 彼女は普段ここでは漕がないのだけれど、今日はたまたまらしい。 マウンテンバイクに乗って艇庫まで駆けつけていた。 カヤックに乗りながら彼女が所々で街のガイドをしてくれる。

“あの橋は、カラトラヴァ(建築家)がデザインしたのよ。 彼のことは知ってるでしょ。 それからこの一帯がセビージャ万博のエリア。 あ、喉乾いたかしら、お水飲む?”と、プラスチックのボトルを手渡された。 この川は美しいと思う。 藻類や有機物が多いからかな、緑色の水で透明感はないけれど、川面にゴミも浮かんでなければもちろん異臭もしない。 川の両側で釣りを楽しむ人も多い。 きれいだなぁ。

のんびりと2時間近く漕いでから艇庫に戻り、また彼らとチャルランド(おしゃべり)。 お互いの連絡先を交換した。 ありがとうと握手をしてわかれる。 日本から遠く離れたスペインで、同じ趣味の友達ができたことが嬉しい。 楽しい。 

***

夜9時。 せっかくセビージャまで来たのだからと、フラメンコを観に行った。 宿泊しているオスタルから徒歩で5分ほどの、細い路地に面した建物のパティオを利用してそのフラメンコは行われた。

歌とギターと舞踏の興奮。 時折見せる、踊りながらの悲しげな彼女の表情と、息継ぎのない彼の搾り出すような声が、ギターとともにその15m四方程度だろうか、小さなパティオに広がって少し悲しみに似た興奮が一帯を包み込む。


Fiera de abrir, Sevilla

04/30

昨夜からついにフィエラ(春祭り)がはじまった。 グァダルキビル川を渡って10分も歩けば、すぐそのエリアにたどり着く。 実際は迷って随分と遠回りをしたけれど。。 

そこでは、仮説のテントが沢山並んで、それぞれ大ボリュームの音楽をならし、老いも若きも男も女も正装もジーパンも、みぃぃんなみぃぃぃんな夜通しひたすら踊り続ける。 当然、いくら大量のテントが建ったとしても、参加する人数がテントには入りきれないから、そのエリアのそこかしこ、流れてくる音楽に合わせて場所を選ばずにフラメンコ大会のはじまりになる。 笑っちゃうけど、慣用句じゃなくて本当に“夜通し”なんだよ!

隣にちょっとした遊園地が併設されていて、アトラクションも供えているからこちらも大賑わい。 ここで流れている音楽のヴォリュームがまたすごい。 こんな所で働いていたら難聴になっちゃうんじゃない、と心配になるほど。 

これが、まるまる1週間続くのだから、いやはやスペインだねぇ。。


Catedoral, Sevilla

05/01

カテドラルの前でSさんに会った。 東京の設計事務所を主宰する建築家で、かつての僕の上司(社長)であり唯一の師。 4月の後半から10日強の日程で、同じく建築家仲間と共にぐるりとイベリア半島を回る旅をしているというメールをもらっていたから、時間を決めて待合わせをした。 

その待合わせの場所に僕が30分遅れで着くと、Sさんは1時間遅れで来たから、よかったよかったと再会を喜んだ。

彼らの旅はポルトガルの現代建築家アルヴァロ・シーザの建築作品を巡ることが最大の目的だというけれど、随分興奮した様子でカテドラルの写真を撮りまくりながら“やっぱり感動するね”だって。 

ヒラルダの塔から街を見下ろす。 闘牛場があって、川がうねって、向こうにアラミージョ橋が見える。 誰かがヒラルダの塔の壁の厚みを計っていた。 塔の上部と下部とで壁厚が異なる。 間違えないで下さい、下のほうが薄くなっています。 外形は一緒だから、上に行くほど内部空間を圧迫することになります。 言い方を換えると、四方の壁が必然的に内転びするようにして倒壊を防いでいることです。 脱帽!


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Have a good activities and peace!