Monologue in Spain 2001


第一部 カスティージャ・イ・レオン

スペイン・セマナサンタ編


Semana Santa, Salamanca

04/08

イースター・ホリデーという、キリストの復活を祝うお祭りがある。 去年、ニューヨークに行っていた時はあいにくの雨空の下、着飾った子供達が五番街ではしゃいでいた。

ここスペインでは、セマナ・サンタ(聖週間)と呼ばれその名の通り、丸々1週間イヴェントが続く。 日曜日の今日がその始まりとなるが、ツーリスト・インフォメーションでもらった予定表を見て、早速人ごみにまぎれた。

ルア・マジョール通りをカテドラルまでゆっくりゆっくりと、途中何度もとまりながら歩を進める。 白装束の2列の女の子達。 その後ろに日本の祭りの山車に似たキリストのやぐら。 そのやぐらは下に垂れ幕が下りていて、地面から10cmほどの隙間にいくつもの人の足が見えるから、日本のように綱を引いて動かすのではなく、人が直接中に入って押しているのだと思う。 ひょっとしたら持ち上げているのかもしれないし、それなら途中で何度も列が止まるのは物理的な条件ということになる。 疲れるからね。

揃いの白装束を纏った少女達は、なぜか竹箒のようなものを持っている。 何か意味があるのだろう。 しかし写真の通り、頭にも頬被りのようにして布を垂らしている姿は、どちらかというとキリスト教の修道女と言うよりは中東辺りのイスラム系の女性のように、僕には見える。 これもスペインならではの混在か。

列の後ろで楽隊の管楽器が周囲の石の壁に反射する。 興奮した子供が列の中に飛び込む。 レコンキスタ(Reconquista.キリスト教徒による国土再征服)の国のお祭りが始まった。

***

南の外れ、トルメス川に面してかつての城壁の一部が残っているが、そこにあたかもへばりつくようにして、モニュメンタルなアール・ヌーヴォーのガラス・ファサードが、市外の風景を見下ろしている。 カサ・リス(リス邸)と呼ばれているその建物はもともと個人の邸宅であったと言うが、修復と共に市が所有権を買い取り、重要な近代建築の遺産として、現在はアール・ヌーヴォーとアール・デコの美術館となり開放されている。 その、ゴシックとは異なる近代の装飾の館に入ってみた。

入口は裏側(市内側)。 近代建築とは言え、裏から見れば他の建物と変わらない石造りの建物だから、ここですでに内部が気になる。 200ペセタを払って中に入ると、あのファサードと同じアール・ヌーボー様式の吹抜けのホールが出迎える。 この様式が採用されていたのは1800年代末から1900年代初頭だから、恐らくこの建物も同時期に建てられたもので、鉄の柱や装飾は“鋳鉄(アイアン)”を用いているのだろう。 なぜなら現在主流の鉄骨材“鋼鉄(スチール)”を精錬する技術がまだ生まれていないはずだから。 もっともスチールだったら堅すぎてあんな装飾の細工はできないか。

とてもユニークだ。 前述した通り全体は石の建物だから、アール・ヌーヴォーの部分は、ファサードと吹抜けホールの部分に見られるだけで、あとはそのホールのまわりに普通の展示室があるだけ。 つまりこれは建築の構成で言うなら、取って付けた部分と言うことになる。 石造りの建物をまず造って、ファサードに鉄とガラスの装飾壁を貼り付け、インテリアにやはりその鉄とガラスを設えた、と。 もちろんホールの天井も同じ様式のトップライトになっているけれど。

つまり主体構造体(major structure)としての石と、補助構造体(minor structure)としての鉄、といった明確な構造体の分節。 この時期にこういった方法論が生まれた。 例えばスコットランドで、スコティッシュ・バロニアルと呼ばれる近代建築運動の代表的な建築家がチャールズ・レニー・マッキントッシュ。 彼は同じようにグラスゴーの図書館で、レンガ構造の建物に木造の内部構成を設えた。 もっとも彼の場合、デザインのヴォキャブラリーはアール・デコだ。 と、思いに耽っていたらミュージアム・ショップのコーナーで彼のデザインを見付けた。 やっぱりね。

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目黒の庭園美術館を思い出す。 旧浅香宮邸。 アール・デコの建物と芝生の気持ち良い庭。 アンリ・ラパンの装飾と外で飲んだコーヒー。 通りの桜はもう散ったかな?


Semana Santa, Salamanca

04/09

21時過ぎ、今日もプロセシオンと呼ばれる儀式がはじまった。

昨日見た昼間の印象とは全く異なり、グロテスクな恐れさえ感じる。

列の後方から響く楽隊の演奏は、あくまでも強く深く沈む。

こちらで知合ったサラマンカ大学のアナが、まだセマナ・サンタははじまったばかりだからプロセシオンも小さいけれど、木曜日の朝5時に3000人が参加する大規模な列があると教えてくれた。

小さいと言われたこのプロセシオンも、僕の前を完全に通りすぎるまでに小一時間はかかっていたと思うけど。。

フィエスタとは言うものの、セマナ・サンタは今なお宗教的アイデンティティを保つセレモニーだと体感する。


04/10

おとといイギリスからやってきたケイトが、まだプロセシオンを見ていないというので早速今夜一緒に見に行くことになった。 Aさんがお勧めの中華料理屋を紹介してくれるはずだから、そこで夕食を済ませてから行こう。

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マジョール広場からルア・マジョール通りを南に進み、カサ・デル・コンチャ(貝の家)の前の人だかりにまぎれると、間もなく向かいの教会からプロセシオンが現れた。 キリストの像が出てきたところで拍手が起こる。 なんとなく僕らもつられて手を叩いた。 群集心理。

プロセシオンは僕らとは反対のほうに進んでいったから、僕らは別の場所に向かい、列がやって来るのを待つ。 

カテドラルの前、広場の端に位置した。 “ケイト、ここなら写真を撮るときにカテドラルが入ってきれいにだろ”。

今日は赤組の列だった。 マスクまで真っ黒の黒尽くめもいたけれど、写真に撮ったらやっぱりよく見えなかったから、ここには載せていない。 彼らは一人一人、丸太でできた十字架を担いで行進していた。 列が詰まった所で、その丸太の一方が後ろの人にぶつかりそうになって、ちょっとおかしかった。 気味悪い衣装だけど、驚いて丸太をよける様はユーモラス。 笑っちゃいけないのかな。。

日替わりで列の衣装が異なる。 色の違いはこのプロセシオンに参加しているグループによっていると、アキコが教えてくれた。 そのグループによってキリスト像や、列の大小、楽隊の規模なども異なっている。

なんだか、日ごとにおどろおどろしくなっていくような気がするけれど。。。


04/11

今夜はフィエスタ。

もちろんセマナ・サンタ真只中だから毎日がフィエスタなのだけれど、今日は2、3週間に1度の学校主催のフィエスタなのです。 まぁフィエスタとはいっても、いつものバル“Niebra”で簡単なおつまみと、サングリアだけだからたいしたこと無いのだけれど。。

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今月に入ってピソ(マンション)暮らしをはじめたから、夕食は友達とバル(Bar)巡りをすることが多くなった。 はじめはどこのバルも一緒に見えていたのだけれど、だんだん美味しいお店がわかってきた。 飲み物はさておき、ピンチョ(小皿料理)はお店によってアタリハズレが多く、またそのお店ごとの得手不得手もあるらしい。

僕のピソの周りにはありがたいことに美味しいピンチョのバルが多くて、その日の気分でお店を選ぶことができるから楽しい。 バン・ディック通りの2つのお店のどちらかはいつもはずせない。 両方とも“ロモ(ヒレ肉)”のピンチョが美味しいのだけれど、それぞれタレが違うからどちらのお店に入ろうか、いつも迷う。 ちょっと奥に入った所にある別のバルは串焼きのピンチョが良い。 ここのロモはちょっとタレがしょっぱいと聞いたから、いつも串焼きでカーニャ(生ビール)。 そうそう、3つのお店ともカーニャとピンチョ一皿でなんと200ペセタ! 基本的に僕は普段お酒を飲まないから、大体1つのお店で1杯飲んで、2軒廻るといい気分。 そのまますぐに眠れるね。 つまりこれなら一晩400ペセタ!

それから、変り種はマリスコス(海産物)のバル。 まぁ、日本風に言えば海鮮居酒屋となるのだけれど、寿司屋みたいにカウンターのケースにイワシやらイカやらがのっていて、注文するとそれをその場で鉄板焼きしてくれる。 一押しは“ナバッハス”。 これはおそらくマテ貝の仲間だと思うのだけど、それはそれは美味しいです。 全体はとろりと甘くて、ワタの部分がほどよい苦味で、アツアツを楊枝で刺して噛み締めたらもうサイコー。 基本的には1皿12枚で600ペセタなのだけれど、ハーフサイズでも頼めるから、いつもこちら。 値段もハーフだからといって割高になることが無いから嬉しい。 こないだ頼んで大当たりだったのはイワシね。 これもハーフで6尾なんだけど、鉄板焼きのアツアツをビールの間にもうサイコー。 

まぁ、せっかくスペインまで来ているのに、バルに行くとどうも“ビノ(ワイン)”っていう雰囲気では無くなっちゃうんだよね。 それが残念と言えば残念だけど。 事実、一月以上スペインにいるのにまだワイン飲んでないし。。。 一度くらい飲んでおかないと“坂戸屋(溝の口駅前の老舗酒屋さん。皆さん御贔屓に!)”のムカちゃんに怒られちゃうかなぁ。 

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突然ですが、明日14:05発のフライトでドイツへ飛びます。 シュツットガルト。 妻が出張で滞在中のため、ドイツでイースターの連休を一緒に過ごせることになりました。 16日にサラマンカに戻りますが、そんなわけで明日から番外編として“ゲルマン魂よ永遠に!”もしくは“ゲルマンの憂鬱”がはじまります(多分)。

Hasta Luego!(またあとで)


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Have a good activities and peace!