Last of the Pieces: Might-be-Blu-e
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第二部「光…」・静劇「瞬きの中へ」
/第一幕「きよしこの夜」

第一幕「きよしこの夜」
第一場「そらに近い場所」

  W2H's Final Play
   Program No.1

 世紀末の魔術師の終焉!
 描かれて行く言葉の絵画!
 全ての時が終わろうとも、
 神秘の馬は走り終えない!
 さあ追え人よ、
 止まらない感動を、
 いつまでも一人一人の胸に…

 世紀の声優『絵馬』最後の公演は、
 LM10:00〜DM0:00
 (劇中一〇分小休止有り)です。
 時が闇へと変わるとき、
 あなたは真実を知る。

 Tht. WORlDWORD-HisToRiE

 彼女はいつもの場所、空が良く見渡せる劇場の屋上に寝そべりながら、残り少なくなったやはりいつものハムサンドをほおばっていた。空はゆったり、誰の事も考えずに気ままに流れる。彼女の方もぼうっとしながら、その仲間の動きを眺めている。
 何度繰り返したろうか、何かの反復作業の様に視線は空からもう片方の手−ソースやマスタードでべたべたで、まるで絵の具だらけの画家の手の様になっていない方の手−に握られた劇場チケットへと移る。いつまでたっても見飽きないと言う様にその紙切れに注がれている彼女の視線、特に笑みには食べ物とはまた別の幸せがくっ付いているように思える。むしゃむしゃむしゃ…はむはむ、ごり!?ああ、やってしまった様だ、ロボットの様に異常に規則正しく口を動かし続けて、とうとう食べ終わった事に気付かずに自分の手までいただいてしまったのだ。調味料がこびりついていたため手それ自体も美味しかったのだろう。
 しかし、
「まあ、キレイになったんだし、いいか」
 なんとも古風でおくゆかしい身だしなみだ。
 そして満面の笑みで口を拭いてまたも手を汚そうとしたところで止まって、少し考えてから舌で綺麗にして、その後寝そべってまた空を見上げた。ゆったりと流れる空。いいなぁ、と彼女は思う。いつでもゆったりしているはずの彼女がそんなことを考えるのも奇妙なのだが、でも、ここに来て、大好きなサンドイッチを食べ、こうして寝転がりながら見上げる空には、そんな気持ちを抱かせられてしまう。横顔を掠める風の音に包まれていくと、まぶたが重たい。暖かく懐かしい、絵本を読むときの様に素敵な感覚に満たされていくこの時間が、彼女の二番目の宝物だった。

第二部「光…」

第二場「くろい世界」

彼女は焦っていた。
闇に閉ざされていく世界の中で、
彼女は走っていた。
失うわけにはいかなかった。
それが彼女のこの世で最初の宝物だったから。

しかし、願いは、命の見えない軽さとともに、
嵐の中に流されていった…

 彼女もまた焦っていた。
 いつもの様に眠っていた後、体の一部、手が妙にすかすかするのを感じた。すかすかしない手など無いのだが、彼女の場合少々事情が異なった。
 素早く手の先の方を見る。とやはりだ。彼女の体と一心同体のあのチケットがどこかに消えうせているのだ。チケットと常にいっしょにいるため、つまりは逃がさないため手にぐるぐるに巻きつけたはずのセロハンテープがちぎれているのでそれと分かった。
「え、えまー、じぇんしーだ」
 意味は合っている。しかし使い方が異常におかしいのは、彼女の捜し求めているものと密接に関係している。そのチケットに刻まれた主役の名前は「絵馬」。彼女が至高の声優として崇めてやまない、要は彼女がファンをしているその人である。この生半可な異国語との関連性がお分かり頂けるだろう。
「えま〜、えま〜、えま〜、じぇんしぃ」
 あまり焦っていないようだ。
 いや表情動作は非常に焦っていたが、とにかくもなんとかそれを見つけることが出来た。しかし、それはそのチケットの姿は、彼女の顔に再び笑顔の花を咲かせることは出来なくなっていた。紙切れが、噛み切られていた。
 どうしてなのかと彼女は悔しさの中数秒思考して、理解した。思い出した。このセロハンも無残に噛み切られていた。また、うなされていたんだ。彼女は理解した。
 暗黒の夢。暗黒の空気、暗黒の空、暗黒の世界。そこで走っている自分の姿。もしかすればそれは自分ではないのかも知れず、夢の中で、偶然その人物と成り代わっているだけかもしれない。しかしそこで実体験する恐怖は純粋な物として彼女の心に到達するのだ。人物が誰であろうと、彼女には関係ない。そこまで思考するには彼女は弱く、さらには子供だった。
 現実にも、闇が支配し始めた空間で、彼女は悲しい悲痛な感情で顔をゆがませて屋上を駆け抜けた。いまや耳元を掠める風の音も、意地悪で無気味な悪魔のささやきでしかなくなっていた。

第三場「ひかりの廊下」

 光に満ちた空間。影一つ無いきらめきの中を彼女は先ほどの続きのように駆けて行く。その動機は恐怖ではなく、元気だ。子供たちの奏でる平和の和音が、壁に反響しこわばる時代の空気を優しくほぐして行く。
「えまー、じぇんしぃ!」
「それはあたしだよぅ!」
 追っている方が彼女のようだ。
 廊下で繰り広げられる過酷なレースは、止まる所を知らず辺り一帯に緊張が続く。…誰もそんなことを思ってはいないかも知れないが、彼女達はまさに緊張の最中に有った。そのため、彼らは目の前をふさぐ障害物に気が付くほどの精神的余裕を持っていない。
「!」
 体が覚えていると言うやつで、難関の直角カーブの所は難なくクリアーしたはいいのだがしかし、予想を遥かに超えた存在に対しては、体の記憶など何の効力も持っていない。人、それも厳しい事では定評のあるあの人にぶつかってしまった。その人物の顔を、ドミノの様に折り重なって倒れながら、同じ表情、同じ引きつり笑いで見上げている。もちろん二人とも首を振って、自分が始めた事ではないと伝えるのに懸命である。
 聖書の中の、神の前で許しを乞う悪党達といった風景の最中で、神の口が厳かに開く。
「…ごほん」
 二人は怯え切って声も出ない。
「ご本、読んで上げようか?」
「え…」
 二人が神の御言葉を理解するのに、そう時間はかからなかった。何故なら、それは人の言葉だったからだ。大人の、上から叱りつける威圧的な物ではなく、柔らかな許しの篭った同じ目線の言葉だったのだ。
「えまさんが、読んでくれるの?」
「ええ、そうよ。あなた達がそんな風にかけっこしてると、ほかの劇団員に迷惑だしね」
 たしかに厳しいのだが子供にだけは優しいという、彼女らにとって都合のいい事実を忘れていた。
「やったあ!」
「うわあ!」
 先程までの落ち込みは十秒も続かずに喜びの舞へと変わっていた。手に手を取り合って二人はご満悦だ。
「あれ?あのチケットはどうしたの、けーこ?」
 友人は彼女の手の異変に気づいたようだ。
「ん?」
「あれ、いつも持ってたでしょ、えまさんの」
 そう聞くなり、友人の頭を拳のぐうでぽかりとやる。友人は自分が教えてあげたのに何故?と言った不可解な悲しみに明け暮れ涙目になっている。
 そして彼女ははっとなって、会話の中心となっている人物のほうを見やる。よかった、肝心の部分、ファンであるという事については感付いていないようだ。
「あたしの名前は知ってくれてるみたいだけど。君、けーこちゃんだよね?」
「うん」
「そっちの子は?」
 加減を知らない力任せに、涙ぐんでちらと見上げている子の方を指す。
「これはまこ」
 もの呼ばわりされさらに顔色が悪くなった友人を指差す。
「まこちゃん」
 まこはしぶしぶこくりと頷く。
「けーこちゃんに、まこちゃんね。じゃあご本のお部屋に行きましょうか」
「はーい」
 声色にこそ違いが有ったが、二人のその賛成の響きはとても軽かった。表面上の不愉快を打ち消す程に、嬉しい事に出会える予感を共有していたせいだ。
「歩いてね」
「え?」
 今、駆け出しそうになったその寸前で呼び止められ、片足で浮き足立って中途半端に振り返ってごまかし笑いをしているおんなの子が彼女、蛍子である。

第四場「しあわせの部屋」

 楽しい時間が流れ去ってゆく。絵馬がさすがの声優技で、本の内容をえぐり出すように深みの有る描写をしてくれるのは二人に時間を忘れさせた。そして、早い閉館の時間が訪れた。
「ちぇ。もう時間か」
「文句を言わない、明日も来れるわ」
「文句をいうな」
 この、とこぶしを振り上げても、まこの奴はすっかり絵馬に取り入ってしまったので、手の出しようがない。面白くない、と思いながら彼女は絵本をかたす。弱虫まこ、あとで見てらっしゃいっ。
 いろいろな夢を見れるから絵本が好きだ。彼女は心の中で本におわかれを言いながら、そう思った。そう思ってから彼女は妙に寂しくなった。今日も、あの夢を見るのかな。
 何かを催促するような目で絵馬のほうを見ると、何故か彼女も蛍子の方をじっと見ていた。
「…今日、いっしょに寝る?」
「え?」
 心を見透かされたのではないか、そんなはずは無かったがそう思って蛍子は動揺した。先ほどまでは興奮していたりイラついたりするのに忙しくて気付かなかったが、何か、彼女の目の中には蛍子の持つものと同じふんいきが有った。寂しい、のかな。そんな事を言い出せるわけも無かったが、ほのかな藍色のつややかな瞳の中には、まさにそれと見て取れる暗さが有った。
「いつも、劇長の部屋で寝てたわよね。もしよかったら許可を取ってくるけど、どうする?」
 蛍子は孤児だ。一ヶ月ほど前、蛍子はここへ来た。親子連れであったように見えたが、気づいた時には親と思われた男がいなくなってしまっていた。蛍子をここに捨てていったのだ。そのこと自体はよくあるケースで、親は生活の窮状のため、または、親を無くした子を仮の親となって育てていた親族の人がよく子を置き去りにする。W2H座では、とにかく初めてのケースだった。最後に、その男は蛍子に飛び切りおいしいハムサンドをくれたのだそうだ。
 孤児院に入れてあげるにも、そういったどの施設ももうぱんぱんで、どこも受け付けてくれようとはしない。他にどうしようもないので、劇長は最高責任者という肩書きを押し付けられて世話をしているのだ。だからかなり嫌々である。蛍子は、降って来たアメ玉に迷わず飛びついた。
「えまさんと寝る!」
 まこに飛び上がるような元気でそう言われるより前に、こっちから言ってさっきの仕返しをしてやった。そして今までで一番の笑み。本当は心の底からの願いが、思考よりも先にその言葉を飛び出させたという事に、彼女は気付かなかった。

第五場「うみ」

「まあ、ろくな所じゃないんだけどね」
 劇長は既にかなり手を焼いていたらしく、絵馬の申し出を聞いたときはむしろ嬉しそうであった。劇員の一人とすれ違った時、何処からか噂を聞いたのか子育ての練習かとはやし立てられた。
 蛍子が招き入れられたのは、劇場の団員専用に設けられた女性用の寮、その最上階に有る絵馬その人の住居だ。ろくでも無いだなんて思えない。壁に貼られた星くずで出来た魚のタペストリーに、窓際に置かれた渦まきのピンクのガラス細工に、部屋全体に『うみ』の色で統一された装飾は、優美でロマンティックだった。
「うわあ…」
 呆気に取られる二人を見て、その理由を聞きたいと思ったが止めた。恐らく二人はこの状態ではまともな返答を持たないだろう。それに、瞳の実際に輝いているかの様な有り様から察するに、その返答は聞くまでも無く絵馬の中に有った。
「ふたりとも適当にくつろいでね」
「はーい」
 先程部屋の装飾に見惚れていた乙女心は、二人がうすいエメラルド色のサンゴを模したソファに飛び込んだ時の音で崩れ去った。そして先ほどまでのボーイフレンドの奪い合いのようなつばぜり合いはどこへやら、猫のように転げまわってはしゃいでいる。
 氷の入った冷たいオレンジジュースを頬に当てられて二人で一緒に短い歓声の様な悲鳴を上げるまで、ふたりはそうして過ごしていた。

第六場「つきの窓と布団」

 要は寝に来たのであって、子供が遊びまわるほどの時間的余裕は、今日という日はもう持っていなかった。ジュースに睡眠薬でも入っていたか絵馬の魔法にでもかかったかのように、まぶたがとろんと重たい。そこが我が家であるかのように何も聞かずに、けーこまこが2セットは眠れそうな広いベッドの上に寝転がった。まこは、それきり動かなくなった。
 蛍子は、細目で無理をしながら絵馬のほうを見つめている。よく見ると、美しい首筋に茶色いものが見える。チョコレートでも張りつけているのだろうか、と思った。
 視線に気が付いたらしく、絵馬がこちらへゆっくりと振り返る。ぼんやりとした視界の中では表情がよく分からない。
「あ、バレちゃった?…これはね。昔、子供のころ住んでた町が火事になっちゃって、そのときに少しね、出来ちゃったんだ」
 絵馬は、首のチョコレートの事を話しているらしい。
「でもたいした事は無いのよ。ほんとにちょっとした『やけど』だからね…」
「や、やけど…」
 その響きは、蛍子の黒く暗い部分の記憶にナイフの様に突き刺さる。先程の甘い菓子への連想が一種の逃避の本能だった事を彼女は無意識の内に知る。
 火。暗闇も怖いが、何故だかこの火という悪魔が蛍子にはさらに怖い。手近な布団にしがみついて、彼女はぶるぶる震えた。
「ねえ、けーこちゃん」
「え?」
「お月さま、今日もきれいね」
 神秘的な、月の夜空がきれいなパープル・ブルーのカーテンに彩られたガラス窓から見える。幾つもの、光る粉雪のような小さな小さな月達が、静かに眠るいい夜。何か願い事をしておきたくなる風景だ。
 絵馬が目を閉じて、静かな祈りを捧げている。彼女も、気を紛らすため見様見まねで何かを祈ろうとする。ええと、…まこを、真琴をずっと大好きでいられますように。
 目を開けたときは、絵馬は若い溌剌とした笑顔で蛍子に微笑みかけていた。
「じゃ、ねよっか」

第七場「えままの隣り」

 かつてこんないい思いをしたことがあったろうか。大好きな大好きな絵馬と、ふたりで寝ることが出来る日が来るなんて、夢にも思った事はなかった。
「えまさん」
「ん、なに?」
「あの、本当のお名前は、なんて言うんですか?」
 絵馬は少し唇を動かし次に喋る言葉を練習しているかのような仕草をし、軽く眉間に皺を寄せ、自分を落ちつかせながら時間を取って言った。
「名前は、加奈よ。白野加奈。エマってゆうのは、ある歌手の曲からとったの」
「きれいな名前ですね」
 それは両の名を誉めての言葉だった。
「ありがと。でも、それもね、本当の名前じゃないんだ。本当の名前は…覚えてないの」
「へ?」
 突拍子も無い答えが返ってきて、彼女は思わず声が上擦ってしまった。名前を…忘れた?どうゆう経緯でそうなったのか、想像もつかない。
「ど、どうし…て?」
「あはは、驚くのも無理ないわよね。あたし自身、ずうっと不思議なの。なんで、いつ、どこでそんな大事なものを忘れてしまったのか。思い出そうとしても、手がかりと呼べそうなものなんてひとつも思い当たらないし…」
「…そ、そうなんですか」
「そうなの…」
 二人の間の沈黙。まこの愛らしいいびきが場の空気を取り持っている。
「ねえ、けーこちゃんは、“永遠病”って言う病気を知っている?」
「い、いいえ。どんなご病気なんですか?」
「…うん。これは恐ろしい病気でね、まさに人間だからこそ、患ってしまう病気なの」
 蛍子は、ちょっと分らないぞと言う様に首を寝ながら傾げた。実際には表情にしか彼女の動きに変化は生まれなかった。
「あ、ええとね、あたし達人だけの特別の病気」
 それは当たり前の事だったが、当たり前の事の強調とは説得力を持つ。そしてその口調は、その当たり前の事を当たり前と思えなくさせる様な、奇妙な不安定感も孕んでいた。絵馬は続ける。
「それで、今までにわかってきているのは、心の中で『この世界から抜け出して、永遠に変わらないすばらしい世界に生きたい』と願った人達がこの病気になるという事。それには月が影響しているらしいという事。月の爆発も、これに関係しているらしいわ。そして病状はね、感情を徐々に蝕まれていくというものなの」
「感情を、虫歯られる…」
 彼女は自分の知る内で最も恐ろしい事を口にし、鳥肌が立った。
「…ま、そう。その病気に、あたしもかつて罹っていたんだ」
「え!」
 当然蛍子は話の内容の半分も理解していなかったが、『絵馬が何か深刻な病気であった』という部分は、聞き捨てならなかった。
「あたし、好きな男の子がいてね。今では声も格好も、顔ですらも思い出せないんだけど、あたし元から病弱でずっと家にばかりこもっていたから、『いつかこの子と外を走り回りたいな。ずっと走り回っていたいな』って、願っていたの」
「それで…?」
「そう。そのせいで、あたしはだんだん自分の声や手足が自由にならなくなってきたの。でもね、ああ、これは『この現実をしっかり生きなさい』ってゆう神様のお告げなんだな、って思って、それからは今をしっかり見つめて、がんばって生きていこうって気になれたの」
「えらいですね…」
 蛍子は感心して腕組みまでしてしきりに頷いている。またも寝ながらである。加奈はその様に少し笑みを漏らしながら、
「今この病気のせいで世界中の人が秩序を無くして路頭にさ迷っているの。でもあたしは、人の心の持ち様一つで、この混乱は克服できるものだと思うの。人々が、現実を見据え前を見つめて、希望を見失わずにいれば、きっと平和は戻ってくるはず」
「うん。うん」
「だから、あたしはそのためのひとつの助けになりたくて、この演劇の道を選んだわ。夢を分けて上げられる手段として、とても大きなものだと思うもの」
 そして、隣で興奮して瞳を輝かせている小さな女の子の方を穏やかに向く。
「君みたいに、未来を担っていく小さな小さな大人たちのためにも、ね」
 気が付くと蛍子は、滑らかでやさしい手のひらに頬を包まれていた。こんな風に大人の愛を受け取ったのは、本当に何年ぶりの事なのだろう。いつかそんな大人が傍らにいたという事実すらも、もう、どこかに忘れてきてしまっているのに。おもわず、蛍子は涙をこぼした。いやな事のためにしか、今まで流すことのなかった、悲しくて冷たい液体。蛍子は、近くに彼女の親友のぬくもりを探った。友の布製の肌が触れる。憧れの人と、大好きなぬいぐるみの親友と、二つのぬくもりに包まれて、彼女は満たされていく。
「ねえ、えまさん」
「ん?」
「…“えまま”、って、呼んでもいい?」
「え?…うん、いいよ」
 今日は、いい夢を見れますように。かれらの間で月の名の星は光り、その時蛍子は今日二回目のお願いをした。

−白い心で−

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