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「エスタシス」 石丸元章
六本木でドラッグを売る主人公は不法就労の外国人。ビルの非常階段の鉄パイプの中にさまざまなドラッグを隠し、それを売ることで暮らしている。
作者は覚醒剤使用の罪で逮捕された経歴もあり、さすがにドラッグの売人に関する描写と情報はリアルに迫るものがある。とかくドラッグ系の小説というと、主人公がだいたいヤク中で、ラリったような観念描写がそのほとんどを占めるような退屈なものが多いのだが、これは違う。
主人公は慎重にドラッグを商売道具として扱い、自分はそれに必要以上溺れることはない。さまざまな人種と強さの人間が混在する六本木という世界で、自分が生き延びるためになすべきことを知っている極めてクールな主人公である。こうした冷静な人物が案内人の小説は、設定や語り口が過激であっても、楽についていけるものだ。
また主人公は外国人なので、この日本の六本木という場所を、単なるカネの稼ぎ場所と割り切って見つめている。日本人が主人公のはぐれデカややくざ小説などのように妙な感傷など持っていない。そのため、六本木という場が極めてクリアに見えてくるのだ。六本木でどういう奴がどういうことをしているのかストレートに伝わってくる。
主人公は時折、根城としているビルから双眼鏡で階下に広がる六本木の状況を眺める。そこに広がる現実は、六本木ヒルズやABCに向かう日本人には見えないものなのかもしれない。
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