カブでヨーロッパ一周編

 狭くて広い国 [リヒテンシュタイン・スイス] (2001/05/23-05/29)

・05/23 趣味の国へ
・05/24 田中家へご厄介
・05/25 チューリヒ一日観光
・05/26 おもてなし
・05/27 レマン湖一周

・05/28 キャンプ場にて
・05/29 レマン湖一周 Part2

通貨単位:CHF(スイスフラン)/1F=約 70円


05/23 晴れ/曇り 趣味の国へ Bendern/GASTHOF ZUM DEUTSCHEN RHEIN/201.3km

 スキーと連日の日光浴でめちゃくちゃ日焼けをしてしまい、顔の皮がめくれてきた。日焼け止めクリームを塗っとくべきだったと後悔してももう遅い。

 出発時カブに荷物を積んでいると、釣りをしているおじさんを見ていた時に少しの間一緒にいた少年(たぶんおじさんの孫だろう)とばったり遭遇(日記にはこの少年のことは書いてないけどね)。少年もオレのことを覚えてくれていたみたいでしばらく話をした。小学生くらいなのに、結構ちゃんとした英語を話すことろが憎いね(笑)

 少年に「Webサイトを作りながら旅をしてるんだよ」と言って名刺をあげると「Webサイトを持ってるの?すごいね!」なんて言葉が返ってきた。さすが今時の小学生だ。その時側にいたマロを経営している夫婦のかわいらしい女の子が恥ずかしそうに見ていたが名刺が欲しそうな様子だったので1枚あげたらすごく喜んでくれた。見たことも無いバイクに乗った妙な東洋人の事がとても気になってたんだろうなぁ。小さい頃は好奇心いっぱいで、その頃の変わった出来事は案外大きくなっても覚えているかもしれない。オレが再びこの街に来た時、また会えたらいいなぁと思うよ・・・

 そんなこんなで、やはり出発は昼。そもそも朝から出発できた事なんてほとんど無いからいいんだけどね(笑)

 スイスは狭いようで広い。地図上でそれ程の距離ではなくても走ると意外に時間がかかる。綺麗な景色の連続で度々休憩をするからでもあり、山がちな地形だからでもある。時間はかかるけど運転していて飽きないんだよなぁ。

 それでも夕方にはリヒテンシュタインへ到着。国境があまりにあっけなかったので笑ってしまった。スイスとの国境を何箇所か見たが、どこも旗が立っているだけ。気にせずに通り過ぎてしまっても不思議ではない。さらに通貨もスイスフランだし外交までスイスに任せているので、スイスだと言っても当たらずといえども遠からずだ。

 ちなみにこのリヒテンシュタインという小さな国が何故に存在しているのかということを調べてみたが、これまた笑えた。オーストリアの貴族だった「リヒテンシュタイン侯」の趣味で出来たような国なのだ。簡単に言うと、当時のステータスでもあった神聖ローマ帝国会議に出席したいが為に土地の買い増しを進め、国まで作ってしまったというわけ。

 また、リヒテンシュタインと言えば切手が有名なので、まず郵便局へ。どれも凝ったデザインでエンボス加工が施されているものまである。まさに趣味の世界だね。たぶんこの国の趣味が切手作りなんだと思うよ(笑)
 スイスに旅行する人はちょっと足を伸ばして、この国へ来ることを是非オススメしたいね。お土産に切手ってのも悪くないと思うよ。軽いし、安いし、綺麗だし。実物をみたら、切手が有名なのも納得できるぞ。

 他には、キオスクで侯爵家一族が写っている絵葉書を見た。でも、どこからどう見ても普通の家族写真にしか見えない。Gパンをはいてて、みんなえらくカジュアルな格好。多分彼らは、たまたま侯爵家に産まれたというだけなんだろう。セルフのガソリンスタンドで給油してても全く違和感がないぞ。さらに道路から彼らの居城も見たが、かなり小さなお城だ。ちょっとした金持ちなら十分建てられそうな感じ。

 そんなこんなのリヒテンシュタイン。スイスから入国し最初の看板にオーストリアの地名が出ている位狭い国だが、なかなか楽しい国だ。

05/24 曇り 田中家へご厄介 Zurich/田中邸に居候/140.2km

 朝10時過ぎに宿を発つ。目的地はチューリヒだが、距離も近いのでリヒテンシュタインの観光しオーストリア領へちょっとだけ行ってみた。

 なんと今日は「キリスト昇天祭」ということで祝日・・・店は軒並み休みで、活気は無い。ただでさえ小さなこの国の休日はひっそりしすぎている。カブでちょっと移動したら国境の町へ着くといった感じなので、オーストリアとの国境を渡ることにした。

 国境ではもちろん止められた。不機嫌そうな警官が「パスポート」と一言。渡すと無言で持っていき、スタンプを押されて返ってきた。しかし、スイスにしてもオーストリアにしてもテキトーなページを選んでスタンプを押す。最初のページがいっぱいになったから次のページに押すというものではないらしい。またこの警官はすこぶる機嫌が悪かったみたいで、観光バスに「おい!さっきからエンジンを止めろって言ってるだろ!早く止めろ!」と怒鳴り散らしていた・・・

 オーストリアへ入るものの通貨を持っていないから、国境近くの町をちょっと走っただけでリヒテンシュタインへ戻ってきた。もちろんパスポートチェックもあった。ここの警官は感じのいい人で、いろいろと雑談した。スタンプも押されたが、ご丁寧にもオーストリア入国のすぐ下に押してくれた。警官次第で国境は変わるものだなぁ。

 しかし、スイスにしてもリヒテンシュタインにしてもライダーが多い。といっても1人で走っているのはオレか地元のスクーターやモペットくらいで、ほとんどは数人から大人数でツーリングをしているデカいバイクだ。すれ違う時に合図をしたり、休憩時に話をしたりと結構楽しい。

 峠道中心の道を走り、無事チューリヒへ到着。田中さんから事前にもらっていたメールのおかげで迷わず田中家までたどり着いた。そのメールにはトラム(路面電車)とトロリーバス(パンダグラフのついたバス)の路線番号と駅名が中心に書いてあったので、初めは不安だったが、実際来て見たらその番号のトラムやバスが頻繁に走っているので後ろからついていくだけ。さすが、スイス在住の方のアドバイスは的を射ている。

 オレが予定より早く着いたにも関わらず、彼らは親切に迎えてくれ、カブを地下の駐車場へ入れさせてもらえることになった。また、今日は暑くて汗だくになったのでシャワーを借りる。おまけに洗濯までしてくれた。そういえば、スイスの集合住宅では各家庭に洗濯機は無いそうで共同で使うらしい。他には核シェルターになっている地下室も見学させてくれた。観光ガイドには載っていない文化に触れられる機会なんてなかなか無いので、いい経験になったよ。

 夕食はチューリヒ大学で日本語学を学んでいるというAngelaさん(京都大学に1年間留学経験もあり、日本語はかなり上手)も招待し、ドクター田中氏の中華料理。鶏肉や野菜、カシューナッツなどをあんかけで絡めたものと肉まん風のシャオピンという料理。「手術と料理は似ているところがある」と言っていたが、これだけおいしい料理を作るんだから、手術の腕も相当なものに違いない。それくらいおいしかったよ。他には味噌汁や白飯、緑茶などの久しぶりの日本文化を味わった。

 田中氏はドクターだけに博識で、話を聞いているだけでオレまで偉くなった気がする(笑) スイスの事や日本の事、それ以外にも色々話をしたけど得るものが多かった。また奥さんは美人で親切な方で、子供の世話で忙しいというのに申し訳ないほどに世話をやいてくれる。本当にいい一家に出会えてよかったな。

 その後Angelaさんを駅まで車で送っていくのについていき、ちょっとだけ観光。チューリヒはスイスで一番大きい街だけに色々楽しそうなところも多い。明日行ってみることにしよう。

 帰宅後、電話回線を借りメールチェック。まさに至れり尽せりだ。

05/25 曇り チューリヒ一日観光 Zurich/田中邸に居候/0km

 田中家で近々引越しする友達の子供を預かるということで、その子を迎えに行く時に便乗させてもらい中心街へ。途中日本屋(なんと言えばいいのか分からないが、日本の田舎にある商店みたいな店で品揃えも田舎の商店並)へ寄り、カレーのルーと乾麺を購入。これらの物資はこれからのテント生活に重宝しそうだ。

 特に目的も無くぶらぶら。とにかく笑うちょっと変わったノルウェー人旅行者としばらく話をした後、見晴らしのいい公園を見つけたのでそこで執筆活動。部屋にこもって書くよりいい仕事ができるぞ。

 特に何をすることも無くのんびり過ごしたが、なかなかいい一日。夕方には田中家へ戻り夕食をご馳走になった。暑い季節だというのにスイスの名物のチーズフォンデュを作ってくれた。チーズ好きのオレには最高のご馳走だった。

 ちなみに田中家にあと2泊させてもらう予定。明日は何をしようかな・・・

05/26 おもてなし Zurich/田中邸に居候/0km

 朝起きると、なんと田中夫人は「今日の観光コース」として4つも用意してくれていた。オレはその中の「リギ山」を選ばせてもらい、家族4人とオレをあわせて5人でドクターの愛車チェロキーでお出かけ。チューリヒから約1時間のこの場所は素晴らしい景色が広がっている。ふもとから126年の歴史をもつ登山鉄道で山頂(約1,800m)まで登れる。その途中の風景もスイスらしく感動もの。チューリヒへ来たらここへ来ることをオススメするね。

 さらに今日は日本でスーパーカブMLの春ツーリングをやっているということなので、幹事の方とスイスから国際電話をすると打ち合わせていたのだが、相変らずのマヌケぶりで電話番号を書いた手帳を田中邸に忘れてくる始末・・・結局電話できなかった。本当にごめんなさい。

 楽しいひと時を過ごし、夕方帰宅。ドクターが今日が最後の夕飯ということで「豚肉の生姜焼き」を作ってくれた。これも感動モノで日本を思い出した。彼は本当に料理がうまい。料理だけでなく、医者としての腕も、様々なことに関する知識も、物事を考える力も・・・心底尊敬できる人に出会えた。オレも彼を目指して立派な人間になろうと思ったよ。

 田中邸では色々とスイスについて教えてもらった。どうしてスイスが美しく、車の運転マナーがいいのかということも理解できた。美しいのはそれだけ努力しているから。道路のゴミを徹底的に掃除しているからキレイな道路があるのだ。また、決まりをみんなで守るということも各人が尊重している。近所迷惑になるから夜10時以降はシャワーを浴びないということまで、みんながしっかりと守っている。運転マナーがいいのは、この国は警察権力が非常に強く、至る所に信号無視までキャッチする自動取り締まり機が設置されているから。だから彼らは黄色で確実に止まり、市街地では速度を厳守する。スイスは水面下の観光客には決してわからない部分に本質があるようだ。

 結局ドクターとは深夜に及ぶまで色々と話をした。オレがそう思っているだけかもしれないが、話をしていて結構気が合う気がするんだよ(笑) でもオレは彼のように明確な将来のビジョンを持っていない、着の身着のまま流浪するただの旅人。まだまだ半人前だよなぁ・・・

05/27 レマン湖一周 Rolle/Camping Aux Vernes/363.9km

 別れを惜しみつつ、お世話になった田中邸を昼頃出発。夫人はお弁当として「おにぎり」を作ってくれたが、これがまた涙が出る程おいしかった。

 道中、マダガスカルへ行っている間パリでカブを預かってくれるEmmanuelさんに電話。パリへ来たばかりの時は英語で電話をするのに緊張しまくっていたが、今ではそんなアレルギーもすっかり無くなってしまった(笑) メールで6/2から6/4まで家族で旅行へ出かけるということを聞いていたが、なんとその間も家に泊まっていてもいいよと言ってくれた。彼と彼の両親に感謝感謝。

 目的地レマン湖畔のローザンヌには、ベルンを経由し午後6時頃に到着。この近くで宿探しをする予定だったのだが、アルプスと湖の風景を見ているうちに無性に走りたくなってしまった。結局その衝動を押さえられず、かなりデカい湖にも関わらずレマン湖を一周してしまった。本当は明日一周しようと思ってたんだけどね。スイス領からフランス領に入り、ミネラルウォーターで有名なエビアン(一大観光地のようで人がいっぱいいた)を通り、再びスイス領へ。ちなみにスイスとフランスの国境ではどこもパスポートチェックは無かった。ジュネーブも通過し、ローザンヌの少し手前にある「Rolle」という町に入ったところで暗くなってきたので、ちょうど見つけたキャンプ場にチェックイン。そうそう、フランス領からスイス領に入る時、念願のカルネ(関税を免除してもらう書類)にスタンプをもらうことに成功した。スペイン国境であれほど苦労したのにもらえなかったのがウソのようだ。国境管理官もカルネが珍しいらしく、オレにどうすればいいのかと聞いてきた。聞かれてもわからないが「ここにスタンプ押して、この紙をあんたが持ってたらいい」とテキトー言ったらその通りにしていた(笑) まぁ、スタンプさえあれば問題はないだろう。これで肩の荷がひとつおりたよ。

05/28 晴れ キャンプ場にて Rolle/Camping Aux Vernes/2.6km

 天気もいいのでここで連泊。何をすることもなく、アルプスを眺めながら木陰で昼寝に興じた。スイスとはいえこのあたりは標高400m前後なのでかなり暑い。半そでと短パンでも全然大丈夫だ。でも乾燥してるから木陰に入ると涼し過ぎるんだよ・・・

 実は昨夜、公衆電話からのカプラー通信でページをアップロードした。キャンプ場には必ず公衆電話があるし場内だけに治安も悪くないので、これからは積極的に利用しよう。カプラーはかさばるけどそれ以上に役に立つ。

 ヨーロッパのキャンプ場は日本と違い売店や喫茶店、シャワーまである。キャンピングカーで乗りつける人も多く、さらに据付のキャンピングカーまで多く準備されている。手ぶらで来てリゾート気分を味わっている人も多い。キャンピングカーにはキッチンやテレビまであり、日本でいう「キャンプ」とはちょっと意味が違うようだ。朝早く起きて飯を作っている奴なんて誰一人いないぞ。

 夕食はこくまろカレー。近くのスーパーでじゃがいもと玉ねぎ、羊肉、巨大マッシュルーム(こぶしの半分位の大きさ)、パンを調達。チューリヒで購入したルーを半分使い、超具だくさんで5皿分作ったがさすがに腹一杯になった。

 明日はここを発つ予定だが目的地は未定。まだスイスにいようか、それともフランスへ渡ろうか・・・6月1日の夕方にパリへ着けばいいから、ちょっとだけ余裕がある。フランスの道路は距離が稼げるからね。

05/29 晴れ レマン湖一周 Part2 Sonceboz/三角お屋根のB&B/308.2km

 タイトルからもわかるように、またまたレマン湖を一周してしまった(^_^;;
 スイス側からの景色は湖の向こうにアルプスが連なる素晴らしいものだから、ついつい走りたくなってしまうんだよ。

 レマン湖を一周している間はジュネーブからパリへ向かうルートをとろうと思っていたのだが、ジュネーブ到着後に突然気が変わりスイス、フランス、ドイツの3国の国境にあたるバーゼルへ向かうことにした。

 快晴で非常に暑く、街角温度計は30度。防寒インナーを外しているとはいえ、この気温では走っていないと汗だくになってしまう。おまけに黒という色が熱を吸収するので暑さは倍増・・・

 結局バーゼルの少し手前にある「Sonceboz」という山に囲まれた小さな町で三角お屋根のB&Bにチェックイン。まだ日も暮れてなかったからバーゼルにまで行けたと思うが、こういう所で一泊するのもなかなかよい。そういえばこのB&Bのおばさんは珍しく英語が通じなかった。ドイツ語とフランス語だけなのかなぁ。
  知らない人の為に解説しておくと、B&Bとは家族経営の宿泊施設で住んでいる家の空いている部屋を貸してくれる貸間みたいなもの。普通は朝食つきでちょっとしたホームステイ気分が味わえ値段も安い。

 スイス人のほとんどは語学が堪能だ。田中一家が前に住んでいたところの管理人はなんと9ヶ国語を自在に操る人だったそうだ。キオスクのおばちゃんでも英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語の4ヶ国語はほぼ確実に通じるのは驚きだ。スイスでは語学ができるからといって、いい職業につけるわけではないらしい。彼らに言わせれば「語学ができるのは当たり前」なんだって。日本では英語を話せるだけでも引く手数多なのにね。色々な国があるものだ。

 明日はいよいよフランスへ。バーゼルからドイツを経由しフランス入りする予定。しかしスイスは狭い国なのに広い国だ。長い間滞在したけどもっと居たいなぁ・・・


戻る 続く