●校外授業(6月22日〜23日)

 

 

●高等部1年
6月22日から2泊3日の旅程で、高等部1年生の校外授業が実施された。行き先はアイルランドの南西部に位置するキラーニーである。  1日目の朝、小雨の中9:00に学校を出発してバスで揺られること1時間半、最初の目的地であるロック・オブ・キャッシェルに到着した。12世紀に建てられたこの教会は、イングランドの度重なる侵攻を受け今や廃墟となっているが、中に入るとその厳粛な雰囲気に皆圧倒されていたようだ。 

再びバスに乗り2時間ほど、いよいよキラーニーに到着、町の中心にあるインターナショナル・ホテルに到着した。早速動き易い服装に着替え、山歩きに備えた。幸いに、キラーニー地方の天気は曇り。ガイドはジョニーさんである。始めは急な山道で、その後になだらかな道が続く。6.5マイル(約10キロメートル)という長い道のりのため、生徒は皆疲れた表情だ。その中でただ一人元気に周囲を引っ張っていたのは南澤君でああった。無事2時間半の山歩きを終え、皆心地よい疲労を感じていたようだ。  この日の夜は、マナー・バンケットでアイリッシュダンスのショーを見ながの夕食である。その迫力と華麗さに皆圧倒されていたようだ。会場はアメリカ人など各国の観光客で満席。自分の席からダンスが見にくかったのか、思わず立ち上がってしまったのは吉田君だった。アイリッシュダンス部員の海野さん、権さんも、その眼差しは真剣そのものだった。サーモンや羊料理の夕食も美味だった。  

2日目は朝から雨だった。午前中は互いにつながった4つの湖をモーターボートで渡り、そのあとにハイキングをした。湖のうちのひとつが水深100メートルと聞いたときには皆がざわめいた。何しろ、手を伸ばせば水に触れるほど小さいボートだからだ。無事に湖を渡りきった所にある小さなコテージ調の飲食店で昼食をとった。雨が降っていて寒かったこともあり、ここで飲んだスープとても温かく、味もまた格別だったようだ。  食事の後は、ハイキング。雨は小雨になった。最初平坦だった道は、やがて起伏が出て、かなりの運動量になった。周囲の景観はすばらしく、あいにくの天気ではあったが、結構楽しめた。16:30頃ホテルに戻り、その後夕食までは自由時間となった。町で買い物をした生徒もいたようだ。この日の夕食はホテルでとった。  

3日目は、マクロスハウスの見学である。ここは19世紀に建てられた貴族の屋敷で、ヴィクトリア女王のアイルランド行幸の際宿舎となった場所でもある。アイリッシュのガイドさんが説明をしてくれるのだが、皆その英語を聞こうと一所懸命耳を傾けていた。見学後、昼食をパブでとりキラーニーの地をあとにした。  この3日間、アイルランドの自然と歴史に直に触れることができたと思う。この旅行を通じて、生徒達はアイルランドの魅力を再発見できたことだろう。
 
 
●高等部2年
高等部2年生14名はゴールウェイ・アラン島方面を訪ねた。  初日の行程は、アイルランドを代表する陶磁器メーカー、アイリッシュ・ドレスデンの工房見学と、モハーの断崖である。途中、道路工事の為に回り道をしなければならず、約1時間遅れて工房に到着した。4時間近くバスに揺られてぐったりしていた生徒たちだったが、木綿レースを使った特殊な製法や、細かい手作業によって美しいレースドールが出来上がっていく様子を興味深く見学していた。  

リムリックに移動し、代表的なアイルランド料理のひとつ、ベーコン・アンド・キャベッジの昼食をすませ、午後は、大西洋岸に向かってバスを走らせた。丘や木が徐々に少なくなり、緑の牧草地の向こうに海が見えてくると、満腹でぐっすり眠っていた生徒たちも次々に目を覚まして海を眺め始めた。  モハーの崖は、アイルランドに散在する断崖絶壁の中でも最も有名なもので、高さ200メートルのまさに目もくらむばかりの崖である。この日、風は強かったが天気は良く、アラン島も眺望することができた。生徒たちは写真を撮ったり、塔に登ったりと、おいしい空気と素晴らしい眺めを満喫していた。  初日の見学を終え、ゴールウェイ郊外のホテルに到着し、この日はホテルで雰囲気の良いディナーを楽しんだ。さすがアイルランド生活2年目とあって、テーブルマナーも良く、ホテルのスタッフに誉められるという場面もあった。  

2日目。アラン島へ出かける日だ。多くの生徒がこの日を今回の旅のハイライトと考えていたようだ。ホテルから約1時間バスに乗り、ロッサヴィル港に到着、ここから45分程船に乗り、アラン諸島最大のイニシュモア島に到着した。  この島一番の見どころは、ダン・エンガスと呼ばれる高さ100メートルの断崖である。モハーの崖の半分の高さなのだが、荒々しさの点ではこちらの方が勝っている。海面と崖の角度はまさに90度、本当の絶壁だ。引率教員の心配をよそに、生徒たちは腹ばいになって崖の下を覗き込もうとする。日頃から、アイルランドの自然豊かな環境で暮らしている生徒たちだが、この荒々しい大自然の創り出した景観にはさすがに驚いたようである。時間ぎりぎりまで、なかなか崖を立ち去らない生徒が多かった。  この日は晴天で、海も美しかった。砂浜の海岸でバスを止めてもらうと、皆まっしぐらに浜辺に駆け出していった。女子が靴を脱いで「わあー」と大声をあげて海に向かって走り出した。それに負けじと男子も続き、童心にかえって(?)はしゃぐ場面もあった。  昼食は鱈料理だった。レストランのスタッフ同士は、ゲール語で会話している人もいた。アラン島では地元の人同士の会話はゲール語を使っているようだ。ミニバスの運転手もしかりである。このアラン諸島の人々がゲーリーック・スピーキングである事を肌で知るという、貴重な体験であった(もっとも、国策でゲール語を保存しているが故ということだが)。  帰りのフェリーでは大変なことが起こった。天気が良いので多くの生徒が甲板に出ていたところ、突然、大波に襲われ、頭から水をかぶり、全身びしょぬれになってしまった。制服からしずくを垂らしながら船室に戻ると、船内にいた観光客から拍手喝采を受けた。ちょっと恥ずかしかったが、これも旅の良い思いでである。  

この日の夕食は、ゴールウェイ市内で自由に取るということだったが、結局、生徒14名と教員2名、全員が同じレストランでテーブルを囲んだ。盛り付けも味も凝っていて、とてもおいしかった。 最終日の午前中は、アイルランドを代表する詩人W.B.イエーツが暮らした、バリリー塔を訪れた。13世紀に建造されたこの塔と作家イエーツについてのスライドを鑑賞し、塔の頂上に登った。この日も晴天で、眺めは素晴らしく、アイルランド西部の起伏に富んだ牧歌的な景色が今も目に焼き付いている。ここでは、日本に住んでいたというアメリカ人の老夫婦に出会い、会話が弾んだ。  その後、ラスバン・ファームという農場を見学した。羊の毛狩りの実演を見せてもらい、子羊に哺乳瓶でミルクをあげた。動物好きな生徒たちは大喜びであったが、この子羊たちも、近い将来ラムとなって食卓に並ぶそうである。  

農場で軽い昼食をすませ、約2時間のバス移動の後、いよいよ最後の見学地、クロンマックノイスに到着した。「学者と聖人の島」と呼ばれ、黄金時代を迎えていた中世アイルランドの修道院遺跡である。今回唯一の史跡見学だった為か、生徒たちは説明を良く聞いていた。特に、1000年以上も前に造られた石造のハイクロスの彫刻は、長年の風雨にさらされたとはいえ、今なお素晴らしいものであった。  帰りのバスの中では皆、ぐっすり眠っていた。楽しい2泊3日が終わりに近づくのを残念がる声も聞かれたが、学校が近づいてくるとやはりほっとしたようである。  3日間、大変良い天候に恵まれた。日頃の学校での表情とはまた違った、活き活きとした生徒たちの顔が、アイルランド西部の風景とともに大変印象的であった。