この文章は某会社のDVDの宣伝用にかかれたものです。 |
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「初恋のきた道」とは少し恥ずかしくなるような題名である。大の大人が手にするにはちょっと躊躇してしまう。原題を見ると中国語では「我的父親母親」英語では「The
Road Home」。うーん、では他にどんな題ならいいのだろう。 邦題を無理矢理に漢字二文字(「哀愁」「追憶」「別離」「追想」「郷愁」などなど)にしたように「家路」「父母」。これでは面白くないし「ワンス・アポン・タイム・イン・アメリカ」のように「ザ・ロード・ホーム」などとしたら最悪だ。 と考えると「初恋のきた道」は名訳かもしれない。ただ、「初恋」かどうかは映画の中からでは正確には分からない。極めて慎ましやかで純情な恋ではあるけれど。 さて、肝心の映画。冒頭の車中からのシーンで、もう引きずり込まれた。こんなに静かでこんなに魅力的でこんなに感動した導入部は久し振りだ。ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン天使の詩」でブルーノ・ガンツが「子供が子供だった頃…」と語るシーン以来かもしれない。特に何の変哲もないシーンなのだが、この部分だけで今後の映画の面白さが十分に予測できる。 映画の構成は極めてオーソドックスだ。奇をてらった部分はほとんどない。敢えて言うなら、現在のシーンが白黒であるのに対し、過去を語るシーンが鮮やかなカラーであることだ。思い付きそうで思い付かない発想の逆転である。 恋物語自体も定石どおりだ。帰り道での待ち伏せ。遠回りしての水汲み。一杯のご飯、髪飾り、茶碗と言った恋を取り巻くちょっとした小道具。また、結末がはっきりしているので安心感を持って見ることが出来る。必要以上にはらはらさせないところが良いところだ。 「文化大革命」の取扱が現在の中国ではどの程度許されているのか定かではないが、この物語においては十分とも言えるし物足りないとも言える。個人的にはこの物語においては十分だと思う。(「文化大革命」をゲッと言うほど味わいたい方には謝晋監督の「芙蓉鎮」がお勧めです) 彼女を取り巻く人々の人情物語としてみても面白い。娘の気持ちを察知する盲目の母親。働き者だったこの夫婦に対する人々の恩返し。これから恋をする人ももう忘れてしまった人にもお勧めできる映画です。 |
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8/10 株式会社ソニー・ピクチャーエンタテインメントよりDVD
ビデオ リリース 2001.5.16 Hiroyasu Yoshida |
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