韓国

 1945年、朝鮮半島は30年間の日本の植民地支配から解放されました。しかし、まもなく今度はアメリカとソビエト連邦(当時)という2つの超大国の力の及ぶところとなり、南北に分断されました。この時点から、米軍と韓国政府は「兵士の士気を高める」という名目で米軍兵士による韓国での買春を認めたのです。この「軍事化された買春」によって、多くの韓国人女性が米兵による凶悪な犯罪の犠牲者となっています。家父長制度が根強い韓国社会において、買春、とくに米兵による買春について、公に議論されることがないため、「基地村女性」は自分達の身におきた犯罪について声をあげることができないのです。  

米軍は、「軍事買春」と軍による性暴力を、「普通の」韓国人女性を米兵の強かんなどから守るため・米兵の性的欲求を満たすため・ホームシックを和らげるためなどの理由で正当化しています。50年以上もの間、米兵は「基地村女性」を性的サービスの商品とみなし、彼女たちの人権を無視してきたのです。

現在、「基地村」で性産業に従事している女性は、韓国人が1万人以上、外国からの移民が約2,000人とされています。保健所で週に一度の性病検査を受けるための登録をしているのは約1,300人です。女性達が働く状況は主に次のようなものです。

1. 韓国人男性が入れないクラブで働く。

2. 個別のポン引きを通じて客を取る。

3. 「同棲契約(Keyyak tonggeo)」と呼ばれる、米兵との契約(兵士の赴任期間などに応じて一緒に住む期間などを決めた契約を結ぶ)によって。

4. 年配の女性は街に立ち、米兵を誘う(女性は「ヒパリ(Hipari)」と呼ばれる)。

5. 客を求めてクラブを渡り歩く。

6. 約2千人のロシア人女性とフィリピン女性が、米軍、基地村の性産業仲介者やクラブのマネージャーによって搾取されている。

一般的に、韓国人は「基地村」買春を、「一般女性」を米兵の強かんや買春から守るための「必要悪」とみなしています。しかし、結局は、買春のポン引きやクラブ経営者よりも女性達に責任があると思っています。韓国人は女性達を「ヤンキー売春婦 (Yanggalbo)」、「ヤンキーお姫様(Yanggongju)」などという極めて侮蔑的な名称で呼んできました。米兵相手の性産業に従事する女性達は、韓国人の血を重んじる人々から無視されて来たのです。

基地村女性が働く状況は劣悪です。休日は月に1日で、もし余計に休めば罰金として1日分200ドルから300ドルを払わなければなりません。女性達の月収そのものが200ドルから300ドルなのにです。ですから、月に2日の追加休日を取ると、その月は収入がないばかりでなく、借金を抱えることになるのです。

また、収入には、地域・年齢・売春の方法によっても差別があります。平均的なクラブのバーテンダーは250ドルから400ドル、ダンサーは300ドルから400ドル、ウェイトレスは150ドルから300ドルを得ます。客が女性にドリンクを買った場合、女性は利益の30%から50%を得ることが出来ます。女性が一晩つきあった場合(ロング)は約200ドルで、1時間のショートの場合は80ドルです。

女性達の生活はポン引きに支配されています。「一人で外出もできない」など、奴隷の様です。収入は管理され、逃げ出すことはできません。「同棲契約」をしている女性は、「GI(米兵)妻」と呼ばれます。契約期間中は米兵がクラブに借金を返すなど、女性に経済的な援助をしますが、契約期間が終わると、女性はクラブに戻らなければなりません。 「ヒパリ」女性はクラブで働く女性の半分も収入がありません。

「ヒパリ」女性の中には、30年以上も基地村で売春婦として働いている人もいます。多くは50歳以上で、生活のためには基地村で働く以外、方法がないのです。基地村にいる年配の女性の中には、日本による植民地支配時代に日本軍の「従軍慰安婦」にされた人もいます。戦争が終わり、命からがら韓国に戻って来たのはいいけれど、故郷には戻れず基地村に来たのです。この様な女性達にとっては、「従軍慰安婦」の経験が、そのまま基地村での生活になっているのです。

過去に大規模な「チームスピリット演習」が行われたときには、ポン引きは演習地域に女性を連れて行きました。そこにバラックを建て、布で仕切りをしたスペースに女性たちを配置し、1日に女性一人当たり20人から30人の兵士の相手をさせました。これは日本軍が作った「慰安所」となんら変わりません。最近のチームスピリット演習は釜山などの地域に分散されて行われていますが、今でも大規模な演習が行われるときは、韓国中の基地村女性が演習地域へ行き、兵士の買春の相手をするのです。

基地村には多くの外国人女性もいます。フィリピンやロシアからの女性がほとんどです。約2千人と言われています。国内外の様々な人身売買組織によって、これらの女性は韓国に連れてこられます。広告を見て集まった女性に韓国からの仲介者が1年間のエンターテイナー・ビザを取得させて、韓国に送りこみます。多くの女性はビザが切れてからも滞在するので不法滞在になってしまうのですが、そこにつけこみ、また人権侵害が起こります。フィリピン人女性の多くはクラブで300ドルぐらいの収入を得ますが、不定期な収入しかないフィリピン人女性、ロシア人女性もいます。

マスコミでは、性産業の仲介者、経営者による外国人女性の搾取が取り上げられています。外国人女性たちは監禁され、暴力の被害に遭っているのです。最近のテレビドキュメンタリーでは、稼いだお金をすべて仲介者に取り上げられているロシア人女性、また、売春するのもドリンクを売るのもいやなのだけれど、子供のためにお金を貯めるまではフィリピンに帰れない、というフィリピン人女性の話が報道されました。

女性達は何千ドル、何万ウォンもの借金を抱え、ポン引きに縛りつけられます。収入は不安定だし、支出の計画もきちんと立てられない、そして何よりも、ポン引きがあらゆる手段で借金の額を増やしていくので、借金を返すことが出来る女性はいないといってもよいでしょう。米兵と結婚してアメリカに渡った女性も同じような構造に苦しみます。ポン引きに借金を返してくれた夫が、今度は女性に頼ることになるのです。しかし、この様な形で始まった結婚は離婚に至ることが多く、職業的な技術もなく言葉にも不自由な女性達は、アメリカでも売春をして生活を支えることになります。また、「国際結婚」の形を取った人身売買の例もあります。韓国に駐留する前に女性を売買する組織と契約をした米兵が、女性と結婚しアメリカに連れてきた後、国際的な人身売買組織に女性を売るのです。

多くの基地村女性が買春によって性病を患います。早急で適切な処置を受けるのは不可能なため、女性の中には性病にかかったことに気づかず、急死にいたる人もあります。アルコール中毒やドラッグ中毒になった女性の生活も悲惨です。米兵がクラブで女性に買うドリンクだけでなく、女性達は「恥」の気持ちを抑えるためにアルコールやドラッグに手を出すのです。度重なる中絶も女性達の健康を害します。

不公平な米韓関係から問題になるのは、米兵の犯罪に対する処遇です。詐欺・暴行・人身売買・強制わいせつ・殺人などが頻繁に起こります。最近国会で取り上げられた統計によると、1993年1月から1996年6月までの間に起こった米兵による犯罪は2,293件で、これは1日あたり2件の発生になります。しかし司法によって裁かれたのは107件にすぎません。

韓国の社会運動家達や「従軍慰安婦」問題に取り組んできた人々さえ、基地村女性の売春は「自らの選択だから」という理由で、基地村女性の問題を見過ごしてきました。

1992年10月28日に起こったユン・クムイーさん殺人事件は、米兵による犯罪に対する大きな議論を韓国社会に巻き起こしました。ユンさんの遺体は、子宮にコーラ瓶、肛門に傘の柄が刺さったままの状態で発見されたのです。多数の社会運動家や学生が「ヤンキー ゴー ホーム!」と反米スローガンを叫び、デモ行進をしました。ユンさんは「米兵に踏みにじられた純粋な同胞姉妹」、「汚いヤンキーに殺された韓国の娘」であり、「従軍慰安婦」と同じだったのです(ユンさんは、生前も「純粋な韓国の娘」であったはずなのに、彼女の両親も含め、だれもそのことに触れないのはおかしなことなのですが)。焦点は、「基地村の女性が殺された」ことではなく、「韓国人の女性がアメリカ人に殺された」ことだったのです。

1999年1月30日には、シン・チャクムさんという基地村女性が、東豆川市という、基地村のなかでも最も悪名高い市で殺されました。発見されたとき彼女は全裸で、部屋の壁には口紅で「Whore(売女)」という言葉が書かれていたことから、犯人は米兵かと思われました。そのため韓国運動家の注目が集まったのですが、米軍、韓国警察、地元の役所、クラブ経営者達は、ユンさん事件の時のような反対運動を防ぐために、「犯人は韓国人」という噂を流しました。反米運動が主体であった運動家達はそれ以上の反対運動をせず、事件は忘れ去られました。私達は、韓国人自身が要求をし、運動をしていかなければ解決はないと思っています。

女性達を脅したり、殴ったり、職場を破壊したりして報復をする米兵もいます。ポン引きたちは、そんな米兵を恐れて、女性達に黙っている様に圧力をかけたり脅したりします。韓国の警察は基地村女性たちの言うことをまともには取り上げないので、捜査するとしても、米兵の側に立ちます。民間の団体に訴えることもありますが、事件が公になったり他の問題と結びつけられて大きな運動になったりすることによって、自分の身元が明かされることを恐れ、女性達はあきらめてしまうことが多いのです。ですから、殺人事件や失踪事件にならないと、公の関心が集まりません。しかし、そのような困難な状況でも、女性達は犯罪を解決しようと努力しています。

社会運動家や女性運動家、また「米軍犯罪撲滅運動本部」などの努力で、韓国全体における米兵の犯罪は減少してきています。しかし、基地村女性に対する米兵の犯罪は減ってはいません。

これまで数多くの女性が米兵に殺されました。これらの殺人を考えるときに、「韓国人女性がアメリカ軍兵士に殺された」という構造だけではなく、「女性」が「男性」に殺されたのだ、ということを忘れてはいけないと思います。アメリカによる韓国の新たな植民地支配・軍事支配によって、女性が犠牲になっているのです。韓国の根深い家父長制度によって、女性は処女であるか、売春婦であるかによって価値が変わるのです。そして、資本主義による性の商品化が基地村女性の死を増やしていくのです。

不公平な米韓地位協定があるために、韓国警察は米兵の犯罪を調査することも出来ず、逮捕した後も拘留することが出来ません。米兵による凶悪な犯罪が繰り返し起こるのは、きちんとした捜査もなければ、処罰もないからです。その結果、基地村女性は米兵の暴力、犯罪の犠牲となりつづけるのです。

米兵による基地村女性に対する犯罪を解決するために、新しい方法を見つけなければなりません。まず、これらの犯罪を産み出す構造が、軍事主義・アメリカ軍が支配する買春の制度・不公正な米韓関係であること、また、女性達は家父長制度の犠牲になっていることを認めなければならないでしょう。そして被害者を保護し、政府、民間団体がともに被害者のために責任を負うべきです。また、犯罪の解決の過程では、被害者に対して長期のカウンセリングも行うべきでしょう。

近年の韓国のナショナリズム運動は、軍隊の買春の問題・基地村女性に対する暴力・基地村女性の死についての自分達の責任を認めず、アメリカの責任だけを追及してきました。米兵に殺害された女性は「国家の純粋で気高い娘」と描かれてきました。しかし、彼女達の苦しみと抑圧された生涯を無視してはなりません。生前、彼女達は「アメリカお姫様」などという蔑称でさげすまれてきたのです。暴力の犠牲者にならなければ「国の娘」とはならないのでしょうか。基地村女性の生涯を韓国ナショナリズムの道具にしてはなりません。私達は、男性中心の韓国ナショナリズム運動に反対します。また、韓国ナショナリズムが、基地村女性の生涯にわたる苦しみを、反米感情を扇動するために利用することに反対します。彼女達の苦しみを矮小化してはならないのです。ナショナリストの議論は基地村女性と彼女達の人権を忘れてはならないのです。50年以上もの間、基地村女性は苦しみの中を生き、しかし社会ではその存在を認められなかったのです。基地村女性の苦しみは米兵によってもたらされただけでなく、韓国社会における差別によっても、もたらされたのです。それは私たち全ての責任なのです。

アメリカ政府・韓国政府に対する要求

-基地村女性殺害の犯人を直ちに韓国政府に引渡し、最重刑を科すこと

-基地村女性の人権を確立する法を作ること。基地村女性に対する暴力犯罪を防止すること

-基地村女性に職業訓練・カウンセリングプログラムを提供し、市民として社会復帰する援助をすること

-米兵による犯罪をなくすために、地位協定を見直すこと