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デヴィッド・トーマス・ロバーツの初のオリジナル作品集。
といっても、実は私はこのレコードを持っていません(よってジャケット写真は無し)。彼のことを最初に私に教えてくれたクラシック・ギタリストの新間英雄さんが、カセットにダビングしてくれたのでした。いくら探してもお店に頼んでも、ついに自分では入手できなかったのです。
デヴィッド・トーマス・ロバーツの大ファンを自認する私ですらこんな状況ですから、おそらく日本全体でも、このアルバムをちゃんとLPで持っている人は数えるほどではないでしょうか。
Euphonic Sounds は、Paul Affeldt という人のマイナーレーベルだったらしく、装丁がまるで海賊版のような感じのレコードです(私はここから出た別のLPを持っています)。しかし、このアルバムの内容はそんなことをみじんも感じさせず、今までと違う新しいラグタイム時代の幕開けを告げているかのようです。
不慮の事故で亡くなった大リーガーに捧げられたB面1曲目は、ラグタイム史上の傑作として、現在でも多くの人に取り上げられている名曲です。また、タイトル曲もフォーク・ラグの特色を生かしながら実に独創的な作品で、もちろん彼の代表作の一つです。
この時点で、すでに彼の音楽性は完璧なレベルに達しています。モートンの影響があるとはいえ、彼が生涯追求しているロマン派音楽的な色彩もすでに強く感じられ、以降のオリジナル作品と比べても全く遜色のない、素晴らしい作品集です。実は最新作『Discovery』(2005)でも、A面5曲目を再録音したりしています。
ただ強いて言えば、レコード時代のオリジナル曲は、クラシック・ラグの形式を遵守していることが多く、その意味では簡潔な様式美を感じます。
Euphonic Sounds の権利は現在 Delmark レコードが買い取っていて、少しずつCDでのリイシューが進んでいます(http://delmark.com/delmark.euphonic.htm)。ぜひこのアルバムもそれに加えていただきたいものです。
なお、後のCDで多くが再録音されていますが、A面2と3、B面4はCD未収録作品です。
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