キャブセッティングの手順 vol.1
 キャブセッティングに関するページをアップして以来、何人かの方からメールでご質問をいただいたりしたのですが、実は私のように普通のショップで働いていた人間にとってはセッティングを変更するという作業は仕事としてはやらなかった部分。ノーマル車両を相手にする仕事では、キャブのセッティングを変更しなければならないというのはどこかに問題があるケースなので、そちらの修理をするのが手順なのです。

 つまり、キャブセッティングについては私も皆さんと同じレベル。雑誌などに紹介されている方法をいろいろ試して模索してみたわけです。雑誌記事の受け売り程度ではここに書いてもしょうがない。だから”労働集約型セッティング”でお茶を濁しておいたのですが、皆さんから質問を受けているうちに更にいろいろ実践してみるに及んで、ある程度の正しい手順が見えてきたようなので、やはりここで紹介してみましょう。

 私自身も雑誌やWEBで調べながら悩んだ結果からみつけた自分なりの方法なので、雑誌記事等と食い違う部分も出てきます。逆に雑誌記事やWEBで調べてもうまく行かない人には役に立つかも知れません。


【準備】

 いきなりキャブを弄ってもダメです。キャブの周辺が正常かどうかを必ず確認。確認事項は以下のようなものです。

  • スロットルケーブルの遊び調整
  • エアクリーナーの清掃
  • プラグ交換
  • キャブレターの油面確認及びオーバーホールは完璧かの確認

 スロットルケーブルは私の場合、キャブレターのアイドリング調整スクリューを一杯緩めてから、ハンドルを右に一杯切ってこの状態で遊びがゼロになるようにしています。

 キャブレターの構造を考えていただければわかると思うのですが、PWKキャブレターはアイドリング調整スクリューでスロットルバルブの高さを変えているので、アイドリングを上げれば遊びが増えます。

 ハンドルを右に切るのはTSの場合右に切った状態で遊びが減少する傾向があるからです。これはケーブルの取り回しに左右される部分なので車両によって違ってきます。


【作業1】

 すみません。ちょっと写真が暗くなりました。

 キャブレターの動きは基本的にスロットルの開度によって混合気の量や混合比を調整しています。そのため、スロットルの動き(本当はスロットルバルブの位置)を把握する必要があります。スロットル開度の目印をつけましょう。

 私はスロットルホルダーとスロットル・グリップに直接ペイントマーカーで書き込んでいます。

 ハイスロットル装着車両の場合は、キャブレターを外して、エアクリーナー側からスロットルバルブの位置を確認しながら目印をつけるのが良いでしょう。

 TSの場合、特にハイスロではないので全閉、全開をマークしたら、その中央に1/2、更に1/2の半分1/4,更に半分の1/8をマークします。私は1/16は無視しています。

 

余談ですが、この状態で走行してみると特に町乗りでは1/2以下がいかに重要かが良くわかります。実走行では殆どの場合スロットル開度1/2以下でマシンをコントロールしているものです。

 

【作業2】

 いよいよ実際のセッティングに入ります。最初に触るのはスロー系。スロージェット及びエアスクリューによって調整される混合気の混合比です。

 この作業に入る前に必ずしっかり暖気を行ってください。できれば10分ほど走行してみるのが良いかもしれません。

 4ST車両の場合、パイロットスクリューが装備されていて混合比だけでなく混合気量も規制する場合が多いのですが、エンジン負圧の少ない2ST車両はエアスクリューとスロージェットで混合比を規制しているだけです。

 1/16をニードルのストレート径であわせるとか、アイドリングを少し上げてエアスクリューを振ってみるとかいろいろな方法論を目にしましたが、実践してみて一番良いと思う方法は・・・。

 アイドリングそのままで、エアスクリューを振ってみる方法です。

 町乗りしているバイクであれば、アイドリングはパンパンパンパンくらいで回っているでしょ?レース用車両はポン・ポン・ポン・ポン・ポン・プスッという感じでもっとアイドリングを落としています。パンパンパンパンは充分アイドリングを”少し上げた状態”なのです。

 この状態でエアスクリューを1/4づつ振ってみましょう。どちらかに振ってみて回転がパパパパパパとなるようならその状態でパンパンパンまでアイドリングを落としてもう一度振ってみます。これを繰り返して一番回転が高いところを探します。

 エアスクリューで調整し切れなかったらスロージェット交換です。

 エアスクリューを締めこむと調子が良くなる⇒スロージェットを大きく
 エアスクリューをあけると調子が良くなる⇒スロージェットを小さく

 上記を繰り返しているうちに必ず良いところが見つかります。

 調子の良い所を発見できたら、一度、スロットルを1/8ホールドにしてみます。うまく決まっていれば1/8ホールドでパパパパパパパパときれいにエンジンが回って、しかも回転が上下したりせずにホールドできるようになっているはずです。

 

 エアスクリューをあわせ込んでいくにしたがってスロットル開度1/4〜1/2に今までになかった不調箇所が現れる場合があります。これは普段乗りながらセッティングを詰めようとしている人にとって非常に不快なもので、迷いの原因になります。エアスクリューはとにかくスロットル低開度にあわせるものと割り切って、1/4あたりで発生する不調は次のニードルのストレート径であわせると信じて作業を進めるのがコツ。

 キャブレターの各部の役割はオーバーラップしている部分があるため、スロージェット系だけをあわせていくとそのオーバーラップ部分であるストレート径に影響して、ストレート径で調整すべき箇所が濃くなりすぎたり、薄くなりすぎたりするわけなのです。

 

【作業3】

 前にあげた不調を消す作業です。

 ここで必要となるのはストレート径違いのジェットニードル。PWKの場合、R2072NSが標準でついている事が多いようですが、この後ろの72の数字がストレート径をあらわしています。72をベースに作業するのであればR**71とR**73を用意するわけですが、セッティングを決めるためにニードルを大量に用意できないのであれば、他の車両から考えてR1370,R1371,R1373,R1374を用意するのが良いかと思います。

 クリップ段数はまだ触らないのでとりあえず真ん中に入れておきましょう。

 まず、前までの作業で1/4〜1/2開度での不調がないかどうか確認します。スロットルをゆっくり1/4〜1/2動かしてみて、特に引っかかるような回り方をするところがなければ大丈夫。そのまま走れます。

 不調がある場合はたいてい1/8を少しすぎたあたりで出現しますね。その不調となるスロットル開度を大体見つけたら、ストレート径を振ってみて不調が解消する方向へ振るわけです。

 空ぶかしでは振っても違いが判らない場合があります。その場合はR2072⇒R1374⇒R1370と極端に振ってみるのも手です。どちらがフィーリングが良いかを探って、R1370の方がよければR1370とR1371を両方試してみます。R1370の方がよければR1369を更に試すという形で探り続けます。R1369で不調となったらR1370が正解。

 ちょっと根気が要ります。

 

  さて、ここまで満足な結果が得られたら走ってみましょう。実は町乗りであればここまでセッティングが決まればもう何の不満もなく走れちゃいます。というわけで今回はここまで。

 次回はクリップ段数、テーパー、メインジェットについて触れます。


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