ケイヒン・キャブレターセッティング@


(文:永持 典孝)

今回はテキストオンリー。

 PWK35の搭載に成功した私のTS200ですが、セッティングを詰めなければ宝の持ち腐れです。

 私も現在、まだ作業中なので、具体的な数値ではなく、作業中に気がついた注意点を発表しておきましょう。実は私も、最初にポン付けした状態でスロージェットの調整だけしたらそれなりに調子良かったのでメインジェットなどの番数はWEBで検索して参考にしようと企んでいたのですが、そのあたりの反省から。

 まず、WEB上の情報はほぼ”役に立たない”と考えてください。つまり、私の情報も含めて・・・かも。

 ”つまりメインジェット(以下MJ)○○番、スロージェット(以下SJ)XX番、クリップ段数△△段でバッチリセッティングが出ました。”という記事を見て、あなたのキャブも同じジェットを組んだとしても調子よく走るとは限りません。

 ケイヒンのPWKとかPJ、おそらくFCRなども同じだと思いますが、これらアフターマーケット・パーツとして人気のあるキャブレターはキャブレターそのものの性能の高さも当然ながら、セッティングパーツの豊富さがもう一つの性能であると思います。エンジン特性などの違いに対して柔軟に対応できるだけのセッティングパーツを比較的容易にそろえることが出来ます。MJなんかはケイヒン用のアフターパーツ(アフターパーツのアフターパーツ??)まで発売されていて、用品店でセット購入できたりもします。

 PWKの場合、主なセッティングパーツはMJ、SJ、ジェットニードル(以下JN)の3つがあります。ちなみにSJはエアスクリュー(AS)と相殺できる範囲があります。

 セッティングと言うとすぐにMJをいじりたくなりますが、実際にキャブレターのスロットル開度で考えるとMJは開度7/8から全開に主に影響する部分なので、それ以外の部分に不調がある場合、MJをそれに合わせていくと必ず別の箇所に不調が発生します。また、オフロードバイクの場合、MJが少しくらいずれていても実際の走行で全開ホールドする事はまずありませんから、どうでも良いともいえます。・・・ホントはMJは全域にある程度影響するのでそうとも言い切れませんが・・・。

 スロットル開度全般に関して非常に広い範囲で・・具体的には全閉〜7/8まで影響するのはJNなのです。通常、クリップ段数である程度調整できますが、私のように他車種用を流用したりする場合はクリップの調整範囲を超えている場合もあります。JNのセッティングに触れていないPWKのセッティング記事はすべて”セッティングが出た”と思い込んでいるか、あるいは偶然良いセッティングに当たった、あるいは触れるのを忘れたと考えられます。

 ジェットニードルがかなり幅広く用意されているのがPWKの高性能さであって、これを合わせこまないとたとえセッティングが出たとしても、気温の変化、気圧の変化に非常にシビアなセッティングとなってしまいます。PWK、PJのユーザーでセッティングに悩んでいる人はこの辺に問題ありなんじゃないかなぁ。


 PWK、PJ形式のキャブレターは共通のJNを使用しており、我々が使うPWK35やPJ34、PJ38はいずれも全長R寸という規格のニードルを使用します。JNにはR1372JSとかサイズ表示の刻印が打たれています。この刻印がJNセッティングの手がかり。

 例えばR1372JSの場合記号の左から

 R:全長寸法なので、気にしなくて良いです。R寸しか使用できません。
 13:テーパー角度1.13度:スロットル開度1/2〜7/8に影響します。
 72:ストレート部直径2.72mm:スロットル開度全閉〜1/2あたりに影響します。
 J:テーパー開始位置。これはクリップ段数で相殺可能なのでとりあえず気にしなくて良いです。
 S:テーパー角処理。これもSで決まりなので気にしなくて良いです。

 つまり、数字4桁を使いこなすのがJNセッティングの決め手。


 以下、具体的な話と合わせて考えてみましょう。

 私のTSの場合、ノーマルチャンバー、ノーマルサイレンサー、ノーマルエアクリーナーに0.25オーバーサイズピストンのエンジン仕様。季節は8月。

 ポン付けした段階でのセッティングはSJ55番、AS1・1/2、MJ165番、JNR2072JSでクリップは暫定的に3段目。この状態で空けはじめが濃い感じだったのでASを3回転まで戻してみましたがそれでも濃く、SJを手持ちでさらに下のサイズだった40番に。ASは2・1/2でとりあえず開け始めは改善されたので実走行に移ります。

 これで思いのほか調子よく走ります。スロットル開度1/2までは、スロットル開度1/4あたりで若干不正爆発するものの、ノーマルのTMXよりトルク感もあり、よい感触です。ところがスロットル開度1/2以上はカブってしまって回転が上昇しません。

 この状態でMJを絞っていくと、症状は改善されますが、やり方は間違いです。

 スロットル開度1/2以上、7/8以下で濃い症状が出る場合は、JNのテーパー角度が過大である症状であって、この状態でメインジェットを絞ると勿論全体のガス供給量が減りますから症状は改善されますが、全開時にガス供給不足になって焼きつく原因となります。

 ココで手持ちの中古パーツの中からよりテーパー角の少ないR1370NSにスイッチ。切りあがり寸法が地がいますが、とりあえずテーパー角変更の方向性を探るだけなのでスロットル開度1/2以下を無視して走行してみるとこちらは1/2から上がきれいに回ります。ただ、全開にすると回転が下がるので、MJを順次絞っていきます。MJは暫定的に155番まで絞って一応全開でも回転は落ちなくなりました。

 これでだいたいの方向性は決まってきました。スロットル1/2以下ではR2072JSが良く、スロットル1/2以上ではR1370NSが良い。つまり、R1372JSあたりがこの双方の特徴を兼ね備えている可能性が高いわけです。


 これを元に私が注文したのはR1371JS, R1372JS, R1471JS, R1472JSの4本。14シリーズを追加したのはもしかすると13シリーズとの比較をしてみたかったから。71を追加したのはR2072使用時に1/4スロットルで発生する不正爆発を消す際の方向性を探る材料としてのものです。

 今度はMJ、SJをいじらずにこれらの4本のJNを順に試していきます。

 ココまで読んできたらわかりますね。まず、R1371JSとR1372JSでどちらの方がスロットル開度1/2以下でフィーリングが良いかをチェック。結果R1372JSを選択。

 次にR1472JSとR1372JSを交換してスロットル開度1/2以上のフィーリングをチェック。結果R1472JSを選択。

 問題の1/4スロットルでの不正爆発はR1471でもR1472でも消えません。ココはSJも影響する範囲なので、SJを35番、AS1・1/2回転まで落としてみますが消えません。SJそのものはASを3/4まで締め込んでも少し薄い感じ。

 R1372JSのクリップ段数を3段目から上下に振ってみます。結果、4段目の方が改善されることがわかりましたが、それでも不正爆発を追放するところまでは行きません。

 これはストレート径を73、74と比較する必要が発生したと予測されます。

 現在の作業はココまで。JNを注文するのが面倒になったので当分このままかなぁ。


 記事の最初の方に書いたように、具体的な数字はあまり当てにしないでください。セッティングパーツの記号をいかにセッティングに反映させていくかをわかりやすく書くために使ったものです。

 ※本当に数字は当てにしないでください。実は私の車両も現在これとはかなりかけ離れたジェッティングになっています。(2004年2月28日追記)

 キャブレターのセッティングは、スロットル開度を基準に考えますが、どこかをいじると他の箇所にも影響してきます。これが迷いの元凶になることが多いのですが、的外れなところをいじると微妙にしか改善されず、的確なところをいじると大幅に改善される物なので、わからなかったら関係ありそうなところを全部順番にいじってみればよいです。

 例えば、私の場合、スロットル1/4で不調なわけですから、AS、JNストレート径、SJが改善候補。SJはASと相殺可能なので、とりえずパーツ注文の不要なASで薄くすると改善されるか、濃くすると改善されるかの方向性を探ります。ASをあける方向(つまり薄くする方向)で改善されても、その改善され方が微々たる物であれば、JNストレート径を薄くする方向(つまり太くする方向)で変更していく手法をとればよいわけです。

 チャレンジ中の人は根気強くやってみてください。


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