革命的発言!
バイク整備の基本は差込み角6.3sq!


 アマチュアの車輛整備の場合、ソケットレンチの利便性は非常に高いと思います。プロのメカニックはジョイント部のある工具をあまり好まない傾向にあるので、また違った意見となりますが、アマチュアの場合、工具を置く場所も限られているし、工具にかけるお金も限られていますから、分解できて、いろんな組み合わせができるソケットレンチ類はやっぱり便利です。


 で、そのソケットレンチには一般的に手に入るレベルで大きく分けて3種類の大きさがあります。知ってる人がほとんどでしょうが、ハンドル類とボルトに接触するソケット類とのはめ合いの部分の大きさが1/4inchi角のもの(差込み角1/4sqまたは6.3sqと表記されます。)、3/8inchi角のもの(差込み角3/8sqまたは9.5sq表記されます。)、1/2inchi角のもの(差込み角1/2sqまたは12.7sqと表記されます。)これらは国際基準らしく、ハンドルとソケットが違うメーカーでも一応同じ差込み角のものであれば組み立てる事ができます。(相性はあるけどね。)ちなみに本当は建設機械とか、発電所の施設なんかを組み立てるもっと大きな差込み角のソケットもあるけれど、ここでは全く関係ないので"なかった事"にします。


 よく、雑誌なんかに"バイクの整備に使うソケットレンチ類は9.5sqが基本"とか書いてあります・・・。これは誰にとっても常識で、私自身、工具箱の中のソケット類はほぼ全て9.5sqです。が、"車載工具"のところを読んで、この部分に疑問を抱いたあなたは私と同じ位"オタク"です。
 理由としては6.3sqは軽整備用なので、強度的に9.5sqが優れているとのことですが、実際問題として私は6.3sqを車載として使っていて全く問題を感じないし、これらの工具が壊れた事はありません。
 となってくると、6.3sqの強度について、裏を取ってみたくなるのが人情ですね。

 で、日本のトップ工具メーカーKTCさんに質問してみました。KTCの上位商品"ネプロス"についての質問です。1日も待つことなく、以下のような非常に丁寧なお答えをいただきました。・・・・・以下、KTCさんからの回答をそのまま転載します。
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永持 典孝 様

メールありがとうございます。

>  6.3SQのソケット本体や、ハンドル類はどのくらいのトルクで使用することを前提に
> 設計されているのですか?

ボルト・ナットには標準締付トルクが設定されており、基本的にはこ
の標準締付トルクで使用されることを前提としております。例えば、
6.3sq.ソケットのラインナップ中の最大サイズは14mmですが、二面幅
4mmのボルト(M10)の標準締付トルクは約25N・m(約 2.5kgf・m)です。

しかし、規定以上のトルクで締めつけられたボルト・ナットを締緩す
る場合もありますので、標準トルクより高いトルクにも耐えられるよ
うに設計されています。具体的な数値は社内規定により公表していま
せんが、標準締付けトルクの数割増しの力がかかっても耐えられるよ
うにマージンを設けて設計されています。

ただし、6.3sq.は9.5sq.や12.7sq.に比べてこのマージンが少ないた
め、高トルクを掛ける可能性がある場合は9.5sq.以上の駆動工具を使
用されることをお勧め致します。

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私が知る限り、バイクの14mm以下のボルトで特に高いトルクで締める指定があるものはありません。と言う事は特にさび付いていたり、締めすぎていたり、振動で勝手に締まりこみすぎていたりしない限り、14mmまでは6.3sqでカバーできるはず。
 で、例によってシュミレーションです。
 まず、プラス3番のドライバーでラジエターシュラウドとサイドカバーを外す。
 12mmのソケットでシートを外す。
 10mmのソケットでタンクを外す。
 車際工具のプラグレンチでプラグを外す。
 プラス2番のドライバーでキャブレターの取付けバンドを緩めてキャブレターを外す。
 10mmのソケットでラジエター液のドレンボルトを抜いてラジエター液を抜く。
 12mmのソケットでシリンダーヘッドのナットを外す。
 12mmのソケットでシリンダーのナットを外す。
・・・な・な・なんと。TS200Rの場合、6.3sqのソケットでエンジンのシリンダーまで分解可能です。
さらに進んでみましょう。

 17mm・・・ダメですね。TSの場合、ドレンボルトを外すのに17mmが必要です。でも、他の車種なら12mmや14mmが多いと思うので、とりあえず、先に進んでみます。
 クラッチカバーは8mm。楽勝ですね。
 クラッチプレート、フリクションプレートは10mmのボルト4本止めです。
・・・・クラッチ交換もできてしまう。
でも、ここで終わり。ウオーターポンプのナットやバランサーナットなどは守備範囲外です。

 では、ケース左側
 ジェネレーターカバーは8mm。楽勝。でも、ジェネレーターのナットは19mmで、ここまで。
 チェンジペダルは10mm。でも、ソケットはスペース的に入りません。
 ドライブスプロケットは10mm。これもいけます。

 さらに、足周り。
 まずは前輪から
 6mmのヘックスレンチでフロントアクスルの周り止めを外す。
 14mmのソケットでブレーキ・キャリパーを外す。
 17mmの・・・・・ココでアウト。フロントアクスルシャフトは外せません。でも、ココはとりあえず車載工具のアクスル回しで外しておいて。
 14mmのソケットでアッパーブラケットとロワーブラケットのボルトを緩めてフロントフォークを引き抜く。
12mmのソケットでハンドルのクランプを外してハンドルを外す。
 30mmのソケットで・・・ココもダメちなみにココは12.7sqの守備範囲。場所はステアリングステムのナットでした。
 次に後輪
22mmの・・・ダメですね。リヤ・アクスルナットは9.5sqの守備範囲。で、ココもとりあえず車載工具で外しておいて。
17mmと19mmの・・・ダメです。リヤサスペンションリンクは外せません。

 てな感じですか。

 と言う事は・・・・・・。
 基本的にリヤサスのリンクまで分解する気がなければ、ソケット類は6.3sqを基準に購入したほうが車載工具と共用できるのでよろしいのではないでしょうか。足周りまで分解する時はもっと安価なめがねレンチやコンビネーションレンチを使うとか、17mmと19mmのソケットと、9.5sqのスピンナハンドル、トルクレンチの4点を購入してリヤサスリンク専用にするとか・・・・。要するに8mm〜14mmの9.5sqは極論すれば必要ないわけです。

 さて、ここま6.3sqの良い点を書き連ねてみました。
 が、欠点もあります。
 一番の欠点はあまり一般的な工具ではないのでハンドル類のバリエーションが比較的少ないことではないでしょうか。ラチェットハンドルを多用するのであればあまり問題ありませんが私の大好きなTハンドルは6.3sqのものを見た事がありません。また、"エンジン腰上まで分解できる"とは書きましたが、"組み立てられる"とは書いていないところもミソ。6.3sqのトルクレンチではシリンダーヘッドのナットの締め付けトルクはもしかするとカバー範囲外のような気がします。(6.3sqのトルクレンチは持ってないので知らない。)
 
 でも、バイクいじりを趣味とする為に工具を揃えるのではなく、"バイクに乗る"ために整備するのであれば6.3sqのソケット類は非常に実戦的な工具だと思います。何といっても軽量なので車載工具としても使え、それなりの実用強度もある(らしい)。例えば8mm、10mm、12mm、14mmのソケットを6.3sqの車載用と、9.5sqの日常整備用の両方揃えるお金があったら、日常整備用に6.3sqのラチェットハンドルのちょいと高級な奴を家に置いておいたほうが実戦的だと思いませんか?

 ちなみに私の場合、バイクいじりも趣味だし、工具も趣味なので、それでもやっぱり9.5sqのソケットで普段は整備しています。

>>2004年1月24日追記
 6.3sqのTハンドルについて
、”べすやん”さんから情報をいただきました。コーセイというメーカーから6.3sqのTハンドルが発売されている事が判明。

>>2004年5月17日追記
 
6.35sq TハンドルはKO-KENから出ていました。品番は2715です。(情報提供:マックSWEETさん)


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