救急車


(文:永持 典孝)


チョッとタイミングを外した話題。そしてチョッと堅い話。

皆さんもニュースで”救命救急士の気管内挿管を許可するか否か”の問題を見たことがあるのではないでしょうか。この話は我々ライダーにとっては切実な問題でもあるのでチョッと触れてみます。

過去、MCFAJのファーストエイド講座に出席した事のある一部メンバーはご存知だと思います。ドリンカー博士の”生存曲線”という法則があります。心肺機能停止に陥った場合の完全生存率、つまり、その後回復し、かつ、後遺障害等を残さない生存率は心肺停止後2分以内に心肺蘇生を開始して、かつ、その後適切な処置が施された場合は90%以上。ちょっと難しい言葉になってしまいましたが、身近な話で言うと、例えばツーリングに行って大転倒、頭部を強打して意識不明、心臓が止まって仮死状態になったとき、回りの仲間が2分以内にCPRを始めてくれて、適切な処置が施された場合、しばらく後には再びバイクに乗れる体になると言うことです。

一般的に、4分以内のBLS(Basic Life Support), 8分以内のALS(Advanced Life Support)が後遺症を残さない退院につながると言われています。

そして、我々の住む日本は・・・完全社会復帰率が非常に低いレベルにあるということに注目せざるを得ません。これは完全社会復帰率ではなく救命率ですが、全国平均4.6%、救命救急士の気管内挿管を法律に背いて強行していた秋田県で11.4%。

さいわいなことに、救命救急士の気管内挿管はどうやら”医師の指導の下”という条件付ながら認められる方向にあります。かなり当たり前のことなのに何で今頃って感じもしますが、まあいいでしょう。それから、これは行政の判断ではなく、”違法”であることを知りながらも自分たちが処分されることを覚悟の上で現場気管内挿管を行った勇敢な救命救急士の方たちの存在によってもたらされた結果だということを心に刻んでおきましょう。彼らの違法行為がなければ、上記、秋田県11.4%という説得力のある数字すら出てこなかったので、話し合いの場に上ることすらなかったことでしょう。

それでは再度シュミレーションしてみましょう。

ツーリング中、仲間が転倒、激しくガードレールに叩きつけられて近寄ってみると呼吸をしていない。

早速携帯電話で救急車を呼びます。・・・が渋滞の中を進んでくる救急車が4分以内に到着することはありえないのは皆さんお分かりですよね。良い仲間とツーリングに行ったのか、そうでないのかはここで完全に命の分かれ目になるわけですよ。By StanderによるBLSとか呼ぶようですが、現場に現在存在する人が(CPR)心肺蘇生を開始すれば、たいていの場合4分以内に開始できるでしょう?これができればドリンカー博士の生存曲線の第1段階クリアです。

この後、病院にて処置を受ける(Advanced Life Support)わけですが、BLSとALSの間、ドリンカー博士の生存曲線に従うと4分の余裕しかないわけです。事故後4分で病院に到着しているケースと言うのはまずありえませんね。だからBLSとALSを繋ぐ役割として、ALSの一部である気管内挿管を現場で行うことが重要になってくるわけです。

逆に我々現場に救急車より早く到着するツーリングの仲間としては、いかに速やかにBLSを開始するかが非常に重要になってきます。コレが今回の本題。やっぱり一緒にツーリングする仲間として、しばらく後には再び一緒にツーリングできるようになってほしいじゃないですか。だから、もし、あなたの住んでいる地域でCPRの講習会とかがあったら、積極的に参加してみてほしいんです。

私が同行するツーリングは大丈夫。私は病院関係者からも太鼓判押されるくらいうまいですよ。何回も講習に参加してますから。でも、自分で自分のCPRはできないので、私のためにみんなも受けといてください・・・・・ということかな。

私もツーリングクラブのメンバーにできれば機会を設けていきたいとおもいますので、そのときはふるってご参加ください。

と、ココまでが本題。後は余談ですが・・・・。

救命救急士に気管内挿管は認められました。でも、薬剤投与は結局認められそうにありません。

つまり、ツーリング中、骨折して、救急車を呼んでも、救急車が病院に到着して医師の診断を受けるまでは”痛み止め”ももらえないんですよ。だから、みんな、やっぱり痛み止めは持って走ったほうがいいです。救命救急士が痛み止めを与えたら違法ですけど、ツーリング仲間が与えても致死量を与えたりしなければ違法じゃないみたいなので、この辺の制度の欠点は我々で埋めましょう。


▲トップページへ戻る▲