ライディングフォーム


1994年のオーストラリアンサファリに初めてメカニックとして同行した時に、ある日、日本人ライダーとオーストラリア人ライダーのライディングフォームの違いが話題になったことがありました。曰く、日本人ライダーはストレートを全開で走行するときに常に背中を丸めてニーグリップで加速Gに対抗しながら空気抵抗を嫌うようなポジションをとるけれど、オーストラリア人ライダーは背筋を伸ばして骨格全体で加速Gに対抗するようなポジションで走るという話。日本人ライダーの方が傍から見てるとスピード感を感じる し、アグレッシブに見える、かっこいいライディングフォームになるんです。

当時、やはり"猫背”なフォームで走っていた私は、この話にちょっと興味を引かれて、その後、海外のライダーと走るたびに観察していたんですが、彼らの"姿勢のよい”フォームは不思議でなりませんでした。背筋を伸ばして走ってると、高速でギャップに突入したときに、"猫背”で走るとうまく丸まった背中でいなすことができるようなギャップでも、シートから背骨を伝って衝撃が直接頭に伝わってしまう。もちろん、風圧も格段に増したような気がするし・・・・。

でも、カナダのデイブも、オーストラリアのビンスも、果てはステファン・ペテランセルも、みんな背筋を伸ばして走ってる。自分よりぜんぜん上手い人たちがみんなそういうフォームで走ってる限り、やはり真似してみなくてはなりません。 特にペテランセルとか、デイブは私とちょうど同じような体格なので、気になって仕方がないではありませんか。

今、いすに座ったままでも良いので、一度自分でも実験してみてください。猫背で座るのと、背筋を伸ばして座るので、ずいぶん自分の視線の高さが変わりますよね。私は定規で測ってみたことがあるのですが、だいたい5cm位目の高さが変わります。今まで猫背ライディングに慣れてきた人間にとって、この5cmの目の高さの違いはかなりの恐怖です。背中を丸めてニーグリップでタンクにしがみついていれば人車一体感があったのに、まるで、シートの上に立って 乗ってるみたいなマシンと分離した感覚です。

一方で、視線が高い分、確実に前方の障害物の発見が早くなります。それから、ニーグリップ&猫背で走行しているとき、常に腹筋と背筋で加速Gに耐えていなければならなかったのが、僅かに体を前方に倒したりすることで骨格だけで加速Gに対抗できる。筋力を要求しないので楽なんですね。走る距離が長くなればなるほど。極端な話、ニーグリップするのを忘れていてもバイクはそれなりに走っていくし、スロットルの開閉に体が遅れることもなくなります。

おそらく、彼らはこの文の最初のほうで触れた”ギャップ通過”の際は、"早期発見”して、減速して通過するなり、その部分だけスタンディングして通過するなり、あるいはそのときだけ背中を丸めるなりして通過してるから、デメリットの部分は感じないんでしょう。そのあたりに気がついてから、私も意識してそういうフォームで走るようになりました。でも、長い間身についた習慣はなかなか抜けないもので、無意識にそういうフォームで走れるようにはなかなかなりませんけどね。

こんな、ある意味地味な事にこだわってものを考えてみるのもいいもので、ココからいろんなことがわかってくるんですよね。

まず、たまーにバイク雑誌に載ってる世界選手権エンデューロのマシン、みーんな異常なほどハンドルを上げてませんか?セクションの難易度の高さから、トライアル車的なポジションを要求するのはわかりますが、"モトクロステスト”もあるわけで、そんなところでどんな乗り方してるのか不思議に思っていたんですが、おそらく、上体を立てて乗るから、あのくらい高いハンドルでもコーナーで充分おさえが利くということかなとか、逆に自分のバイクのハンドルの高さやレバーの位置をもう一度見直してみたりとか、そうなってくるとシートの形態がどうしても気に入らなくなってきたりとか。

まあ、考えたり、解ったりしたからといってできるわけではないけれど、マフラー替えたり、ポン付けのパーツをやたら交換するよりも、こういう地味なことをいろいろ考えてみるのもバイクの楽しみのうちなんじゃないかな。


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