林道怪現象2


さて、中津川林道の怪現象で皆さん少しは涼しくなってくれましたか?これで1人で林道に行けなくなったでしょ?特に夜はムリムリ。やっぱり私の復帰を待たねばなりませんね。何といっても私は天台宗総本山、比叡山に所属する学校を優秀なる成績(これホント)で卒業しておりますので同行者として安心なのであります。

それでもまだ1人で林道に行こうとする方、及びもう少し涼しくなりたい方にもう1話。

ただ、中津川林道の話でもわかるとおり、背筋がぞ〜〜っとするような体験ではありません。後で考えたら不思議だなぁというレベルの話。背筋がぞ〜〜っが好きな人は他のサイトへジャンプするか、クラブメンバーであるK林さんの体験談を直接聞いてください。

さて、前置きが長くなりましたが、なぜか人並み以上に長かった大学生の頃の話。まあ、皆さんのご想像通り、アルバイトばっかりして、その資金で海外をウロウロしていた私ですが、日本国内では林道野宿ライダーでもありました。その辺のウンチクばかりの野宿ライダーではなく、実は体育会山岳部にも一時所属していて、しかも山奥の育ちの私の単独キャンプ歴は小学校4年生からという本格派ですね。

話が逸れました。毎年11月、学園祭で大学が休みになる1週間を利用して、紀州方面の林道を野宿しながら走るのが私にとって毎年の恒例行事でした。学園祭というと、他の学校から尋ねてくる女子大生と有意義な交流を持ったりするチャンスなのですが、どうもそっちの方は不器用な私だったのですね。

大学3年生の11月。いつものように荷物を積み込んで出発。ただ、この年は出発直前に近所の親しいおばちゃんが訪ねてきてしばらく話し込み、出発が午後になってしまいました。

予定よりも距離が稼げなかった私は奈良県の下市市で日が暮れ始め、ビバーク地を探す事にしました。

野宿ツーリングにはコツがあります。宿泊場所は、平野部であれば大河川を地図で探します。山間部の場合はできればピストン林道の転回用地などを選ぶのですが、そうでないときは舗装路でもできるだけマイナーな道を探し、その枝道になっているダートを少し入ってビバークするのが私のスタイルでした。

このときも地図でまずマイナーそうな道をチェック。予定のルートを少し外れて山間部のワインディングをどんどん進みます。しばらく走ると見通しのよい右コーナーの先に理想的な枝道を発見。その先にはフェンスに囲まれた貯水施設らしきものがあって、そこが小さな広場になっています。私は迷わずそこを本日のビバーク地と決めて、何とか明るいうちにテントの設営と食事を終えました。

11月の山岳地帯。夜間はかなり冷え込みます。たいした寝袋を持ってきていなかった私はこの年の予想外の寒さの中、特にやるべき事もなく早々にシュラフに入って寝てしまったのです。

ふと目が覚めると、すでにテントの周りは明るくなっています。よほど疲れていたのでしょうか。そしてテントの外から、2スト小排気量のエンジン音が・・・アレは間違いなく”草刈り機”の音です。テントの入り口を開けて、外を覗くと昨日自分が走ってきた枝道の草を地元のおじさんが草刈り機で刈っています。

これはマズイ。人に迷惑にならないように、人の目につかないようにいつも選んでいるはずのビバーク地がどうやら今回は邪魔になりそうです。慌てて身支度をする私ですが、草刈りのおじさんもどんどん近づいてきて、結局、私のテントの周囲の草を刈り始めたのです。

"すみません、邪魔ですね。すぐにのけます。少しだけ待っててくださいね。”

慌てる私に、草刈りの手を休めたおじさんは、

”大丈夫大丈夫。慌てなくていいよ。旅してんのかぁ。夕べは寒かっただろ。よかったらウチに上がって暖かいものでも食べてって。”

”エッ?ウチって?”と不思議がる私におじさんは無言でテントの向こうを指差します。

そこにはフェンスに囲まれた貯水施設があったはず。ところが今、そこには茅葺き屋根の古い家が建っているのです。

”どうぞ、どうぞ”とおじさん。

私は何が起こっているのかわからないまま、断るのも悪い気がしてでその古い家に向かいます。入り口を入ってみると、土間の左に板の間があって、そこには囲炉裏。鉄鍋の中でトン汁のようなものがグツグツ音を立てています。

家の奥からお椀を手にした老夫婦が現われてトン汁をよそってくれます。どうやら私は何か勘違いをして、このふるい家の庭でビバークしてしまったようです。

せっかくなのでトン汁をいただきます。おわんを手渡してもらって・・・

そのとき、老人が私に

"遠いところをよく来てくださったなぁ。わざわざアキコに会いに来てくださったんだろうがぁ”と不可解な事をいうのです。(アキコという名前だったかどうか。かなり詳細に覚えているのに、なぜかこの名前だけ覚えていないのです。)

これは何か誤解されていると感じた私はそのアキコという人に対する非常な好奇心に駆られながらも、やはり誰かと誤解されたまま歓迎されるのはマズイとかんじて、説明する事にしました。

”いや、私はただ旅をしているだけで”と言った瞬間。私は元通り、夜の真っ暗なテントの中、寝袋の中で目を覚ましたのでした。

そうです。全て夢だったのですね。よかったね、怖い話じゃなくて。

このとき私は思いました。昔、バイクや車が無かった時代に人は徒歩で、野宿を繰り返しながら旅をしていたのです。彼らもこんな不思議な夢を見たりしたんじゃないかなぁと。そして、こういう不思議な体験を”狐につままれた”とか"狸に化かされた”と表現したんじゃないかなぁと。

それにしても、この夢は、名前以外いまだに妙に鮮明に覚えているのです。入り口の土間、囲炉裏のある板の間、全てが鮮明な映像として頭に残っているのです。それが奇怪といえば奇怪ですね。


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