ラジオ体操学講座1 総説

1、はじめに
 小学生低学年の時分、われわれは夏休みの朝という目を覚ましていることが罪とさえいえる時間に毎日近所の公園に集合させられ、町内こども会のおっちゃんの指導のもと「腕を前から振ってえ手足の運動〜」とラジオ体操に従事させられていた。そして出席の証拠にカードにハンコをもらって帰り、最終日にはそのシートと引き換えで恩賞のお菓子をいただき、健康の証としてむさぼり食ったものである。
 ああうつくしき思い出かな、と片付けてしまうのは簡単である。しかし研究者たるもの、それではいかぬ。そこを踏みとどまってこれを論考して見なければ、科学の発展ひいては人類の発展に寄与することもままならぬであろう。そう愚考した小生は、先達の手によるラジオ体操に関する諸研究の成果をまとめ、ここに総説として発表することにした。学生諸君には入門書として広く活用するとともに、本書を機会としていまだ未詳の点が多いラジオ体操について少しでも探求の目を向けるようになっていただければ幸いである。

 

2、ラジオ体操の意義
 「ラジオ体操」と一口に言っても、それが果たして何を意味するものなのかは解明を見ていない。「ラジオで流される音楽にしたがって健康増進のための運動をする」という「ラジオ体操」説が一般的であるが、他にも異説が存在する。以下に近年有力となっている学説を紹介する。

@ラジオ/体操説
 ラジオ体操でいう「ラジオ」とはラジオから流れる音楽ではなくラジオ及びラジカセの本体そのものであるとし、ラジオ・ラジカセを利用して行うあらゆる運動を指すと説く説。この説に従えば、「生のラジオ放送ではなく、録音したテープを使ったラジオ体操はラジオ体操といえるのか」という解釈上の懸念がうまく解消されるが、例えばおっちゃんが駅のホームでラジオのゴルフ教室を聞きながら傘でゴルフスイングをした場合、それすらもラジオ体操に含まれることになり、ラジオ体操の適用範囲が広まって濫用されるおそれもある。

Aラジオ体/操説
 人体細胞中に存在する「ラジオ体」とよばれる物質がラジオ体操の音楽から出る音波に反応し、人体をラジオ体操へとかきたてる作用を指すとする説。以前から存在した「音楽なしのラジオ体操はなんかノリがわるい」という疑問がこの説で説明される。しかしラジオ体の存在については否定的な意見が強く、実証性に乏しい。

 

3、ラジオ体操の起源
 ラジオ体操がいつ、どのような形で制定されたかには諸説があり、現在も論争が続いている。以下に特に有力な学説を挙げる。

@逓信省制定説
 大正期に逓信省がアメリカで行われていたラジオ体操を参考に、国民の健康増進を目的として制定した全11種からなる体操に起源を発するとする説。現在通説となっているが、若手の学者を中心として「逓信省って、なんかダサい」という反論もなされており、決定的ではない。

A電波発信説
 ラジオ体操のラジオは本来「電波」一般を指していたものと考え、「昔どこからか怪電波がとどいて、いっちゃった奴が踊り狂ったのがはじまりなのではないか」とする説。やばい学者に支持が厚いが、裏付ける史料は皆無である。

B鳥獣戯画説
 鳥獣戯画中の兎や蛙の動体描写を、「これはある意味ラジオ体操だ」と解釈し、これこそラジオ体操の起源であるとする説。史家の支持も厚く、有力説となっているが、作者とされる東京大学助教授の鳥羽僧正(824歳)はこれを否定している。

  なお判例は通説の立場をとりつつも「当時の逓信省が電波を受けたり、鳥獣戯画に影響を受けたりした可能性を否定するものではない」とし、他の説にも理解を示している(最高判昭54.2.15)

以上 総説
次回講座は各論「ラジオ体操第2の2 手と足腰の運動(通称ゴリラ)をめぐる学会の動向について」

参考文献

 http://www.kampo.mpt.go.jp/event/radio/index.html

 

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