はじめに

『信長公記』とは

 その名の通り、一代の天才児・織田信長の出生からその劇的な最期に至るまでの事跡を克明に記した伝記です。筆者は太田牛一といい、天文23(1554)年以前から織田家に奉公し、弓の名手として名声を得ながら同時に信長側近としてその行いを間近で見続けてきた人物です。本能寺の変の前には近江国鯰江の代官の地位にあり、変後は秀吉側室の老職を勤めながら過去に記した覚書類をもとに信長の伝記を執筆しました。伝記が完成したのは慶長10年頃とされ、その後多くの写本が出回り、小瀬甫庵の『信長記』などと区別して『信長公記(しんちょうこうき)』と呼びならわされ、現在に伝わっています。内容は信長上洛以後の行動を年次ごとに記した本記15巻に、上洛以前の事跡をまとめた首巻を加えた全16巻からなり、側近の目を通した信長像ということでダイナミックさには乏しいものの、信長が行った政策・戦争・行事・その他善悪こもごものエピソードが忠実かつ客観的に描かれており、信長研究の一級史料として高く評価されています。

 

私訳にあたって

 「HPにはなにか頻繁に更新できるものを置きたいなあ、お客もたくさん来てほしいしなあ、そうなると、やっぱりわし歴史好きだから日本史関係の文章載せようかなあ。日本史でみんな知っててわしも好きで人気が高いジャンルとなると・・・信長かなあ」という崇高な思考過程を経て、信長公記の「私訳」を思い立ちました。しかしながら、困ったことに私古文書の読解などこれまでにしたことがありません。さらにはその教育も受けておりません(大学は法学部)。したがって誤訳や拡大解釈もあるかもしれませんが、御注意いただければすぐに適切な表現に変更いたしますので、どうか温かい目で見守ってやってください。

一、原文は角川書店刊『信長公記』(近衛家陽明文庫写本版)によりました。原文も併記したほうが良いのでしょうが、法律上の問題が生じるおそれがありますので避けました。興味のある方には御購入をお勧めします、と宣伝。

二、私訳ではありますが、なるべく原文の内容を忠実に現代語訳するよう努めました。但しそのままでは現代文にしにくい文章や全体の格調を損なう訳になりそうな文章、及び「ここは盛り上げたい」という箇所は私が適度に練り直しました。まあ、「私訳」ですから。

三、原文に登場する人名・地名はほとんど私訳にも反映させましたが、首巻部分については本筋に関連の薄い人名・地名を一部省略してあります。

四、人名については、初出は原文に従い、以後は一般的な名称を用いることとしました。初出の際にも、著名人物の場合は通称・官称の後ろに実名を付随させています。また信長の呼び方については、原文では「上総介」「信長」「信長公」など場合によってばらばらですが、私訳では筆者の太田牛一の立場と心情を慮って「信長公」で統一しました。

五、訳中の地名は基本的に原文からそのまま転記していますが、一般的な呼び方でないものや現代の地名で記したほうが適当なものについては呼び変えて表記しています。

六、各段の題は私が勝手に付けたものです。御容赦下さい。

 

参考文献

『フロイス日本史』織田信長篇1〜3 ルイス・フロイス著 松田毅一・川崎桃太訳 中央公論新社 

『武功夜話』信長編 前野家文書 加来耕三訳 新人物往来社

『織田政権の基礎構造』 織豊政権の分析1 脇田修著 東京大学出版会

『織田信長総合事典』 岡田正人編著 雄山閣

『織田信長事典』 岡本良一・奥野高広・松田毅一・小和田哲男編 新人物往来社

『戦国人名事典』 阿部猛編 新人物往来社

『守護・戦国大名事典』 西ヶ谷恭弘編 東京堂出版

『日本戦陣作法事典』 笹間良彦著 柏書房

『織田信長』 歴史群像シリーズ1 学習研究社

『激闘 織田軍団』 歴史群像シリーズ20 学習研究社

『風雲 信長記』 歴史群像シリーズ27 学習研究社

『元亀信長戦記』 歴史群像シリーズ54 学習研究社

『信長の親衛隊』 谷口克広著 中央公論社

『織田信長合戦全録』 谷口克広著 中央公論社

『信長の戦争』 藤本正行著 講談社

 

戻る