Diary

Ichiro Satoh

もともとは研究用ソフトウェアの開発履歴に関するページだったのですが、開発関連よりも雑談の方が多くなったので、2001年分から別のページを用意することにしました。リンクは勝手にしてください(でもリンクしたい人なんているのでしょうか)。

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2012年12月30日

休日出勤。今年を振り返ると、いろいろレストランにいかしてもらいました。ミシュラン三つ星が1回、ミシュラン二つ星が2回、ミシュラン一つ星が3回、星ナシに関しては6回以上でしょうか。各出張で可能な限り一回は行くようにしていているので、数が多いようにみえるかもしれませんが。用務時間外だし、当然自腹だからご容赦を。さてミシュラン星付きレストランはある種、独特のサービス。それに慣れるとそれが基準になるのでしょうね。当然ですが、美味しいし、特にミシュラン一つ星や二つ星のレストランはいろいろ工夫をしているので、それは素直に楽しい。ただ、誤解を恐れずにいうと、日本のコンビニ弁当は美味しい。あのC/P比は圧倒的。輸出産業になりますよね。それから海外でミシュランリストに載るレストランは日本の食材を使う店がすごく増えている。ミカンといえば通じるし、イタリアのジェラード屋でユズのアイスクリームが普通に売っている時代。それから日本の料理店も美味しい。安い店でもスタッフは職業意識が高い。これは世界に誇れる。もちろんミシュラン星付きレストランのスタッフもプロフェッショナルな仕事をするけど、それは自分の仕事中だけ、店全体を見渡してサービスを提供するスタッフは少ない。仮に3000円でフレンチを食べるならば、例えば日本のフレンチ店は倍以上、お買い得だと思います。

2012年12月29日

休日出勤。オフィスでお国の秘密のお仕事。兼業扱いになっているので、休日出勤扱いにならない。もっとも休日、オフィスで研究をしても休日出勤としてカウントされないし、外のイベントで仕事をしてもカウントされないわけなので、。個人的には裁量労働制だし、普段があまいからいっこうに構わないし、霞が関方面と比べると比べものにならないぐらい勤務時間は少ない。ただ、パーマネント採用の方ばかりでないんですよね。

2012年12月27日

年末進行でいろいろ残務処理。正月休みにコーディングに集中したいんですよね。

2012年12月26日

築地方面で忘年会。楽しい時間を過ごさせていただく。今年唯一の忘年会となりました。職場では忘年会はしないしね。

2012年12月25日

お仕事。海外が実質、休暇なのでメールも少ない。おかげで仕事が捗る。

2012年12月24日

休みます。実は論文執筆があったのですが、締め切りが延びてしまったことをいいことに、執筆も先に延ばすことに。

2012年12月23日

研究者の評価は、論文数から、参照数に移りつつありますが、米国はこうした数値的な評価が好きですよね。逆に欧州は数値評価をしたがらない。米国は民族的にも価値観も多様なので、一つの評価軸を作らないと作らないと比較ができないのでしょう。もうひとつ米国の特徴は相対評価が好きなこと。研究者Aと研究者Bがどちらが優れているかということを数値としてだしたがる。そもそも研究者の善し悪しは一つの評価軸で相対評価できることではなく、むしろ総合的に評価すべきことであるし、研究者Aと研究者Bがどちらが優れているかは簡単にいえることではない。逆に欧州は絶対評価をお好き。米国のこの傾向は、研究者だけでなく、大学でも同じで、米大の研究者と話していると、自分の大学は、○○分野で全米第何位という話がよくでてきます。

もちろん評価自体は重要なのですが、米国の場合、与えられた評価軸の善し悪しに関わらず、評価軸で如何に高いスコアをとるかというゲームになっていること。実際、研究者も、××というトップ論文誌やトップ国際会議に論文を通すということが目的になってしまい、それに最適化されてしまい、研究の善し悪しなどは二の次になる。もちろん、米国はそれでも優秀な研究者を集めており、ゲームだろうと何だろうと、これまではシステムとしては成功しているともいえます。ただ、研究者に求められているのはゲームに勝つことではなく、いい研究をすること、そして人類に貢献することのはず。そして、ゲームというのは概してゲームに熱中しているとまわりが見えなくなるんですよね。

2012年12月22日

STEREO誌の1月号を手に入れる。理由は付録のUSBヘッドホンアンプ狙い。同種のUSBアンプがついた雑誌やムックは他にもあったのですが、この付録の場合、OPアンプは取り外しできること。そうなると、いろいろ取っ替えてはOPアンプ遊びができることになります。2,3百円でいろいろ遊べるので安いもの。さて音質ですが、やや音が堅いのですが、PCのアナログヘッドホン出力と比べたら遙かに音質はいい。お勧めです。といっても発売後、2,3日で売り切れになったそうで、手遅れかもしれませんが。

2012年12月20日

日経コンピュータの12月20日号の記事「第3のメモリの衝撃 ストレージとDBが一変する」に三カ所ほど当方のインタビューを引用していただけましたが、当方が以外部分を含めて、今後のコンピュータを考える上では読んでおいた方がいい内容。データベースに限ればストレージがハードディスクからSSDに大きく変わっているし、主記憶自体が不揮発性メモリになればACID性質のDの実現は大幅に容易になる、そうなればACIについても簡単化できる余地が大きくなるはず。つまりDBMSの中身は一変。当然、主要製品も入れ替わることは予想すべきかと。それと記事中に書いてもらいましたが、主記憶が不揮発性になると、コンピュータは使うときだけ電源投入/稼働するノーマリーオフで運用できる。そうなればOSはもちろん、アプリケーションも変わってくる。

2012年12月19日

今日は三時間近くかけて、分散システム、それもフォールトトレンス性だけを講義。如何だったでしょうか。

2012年12月18日

オーディオのマニアの方から、デジタルオーディオで、PCのどのUSBポートにDACをつなぐかで音の違いを語られる。USBケーブルで音が変わることも半信半疑なのに、USBポートにDACをつなぐかで音の違いを語られる。USBケーブルで音が変わることも半信半疑なのに。確かにポートによって回路長が違うので回路内反射も違うし、回路構成によってはわずかだけど電力が違うわけですが、DACがそこまでシビアだとは思えなかったり。

2012年12月17日

国内IT業界の腕のいい開発者の不足は、国内IT業界が自ら招いたと思います。ただ、人材を育成する側となる大学も責任があるかもしれません。ここ15年ぐらいの流れは、情報工学科などの名称で、コンピュータサイエンスの専門教育を受けた人を養成してきたわけですが、それ自体は間違いではないのですが、問題はコンピュータサイエンスの専門教育を受けていない人の、コンピュータサイエンスの素養を向上することには熱心とはいえなかったこと。学部レベルでは難しいにしても、コンピュータサイエンスは学部よりも、修士課程に重点をおいて、非コンピュータサイエンスの学科出身者にコンピュータサイエンスを教える方がよかったかもしれません。つまり、コンピュータサイエンスはセカンドメジャー化を狙った方がよかったのではないでしょうか。もちろん、大学院で基礎教育するのは実際には難しいわけですがね。

2012年12月16日

選挙のたびに思うのですが、開票は即日ではなく、明日でもいいし、メディアも結果が出てからまとめて伝えてくれれば十分。開票を実況中継したところで結果が変わるわけでないし、そもそも変わったらたいへん。

2012年12月15日

国内IT業界では腕のいい開発者の確保は難しいとされます。なぜ難しかというと給与が低いから、なぜ給与が低いかというと人的リソースが余っているから。という一見矛盾した結論となります。

国内のIT業界、特にSI業界の場合、2000年前後にSEなどと称して、大量に人を雇った。それもコンピュータサイエンスの教育を請けていない、専門外の人をSEとして働いてもらった。もちろんSEとしての能力を開花させた人もおられる一方で、そうでない人も多い。ここまで話は導入。問題なのはその先。

リソースが余ればその確保にお金をかけない。リソースが人ならば給料をあげない。IT業界に限らず、組織というのは特定の人だけ給与をあげるのは難しい。これは日本の組織の横並び指向という問題ではなく、給与に差を付けると給与の低い人のモチベーションを下げることになり、全体として生産性があがるとは限らないから。つまり、多くの企業では腕のいい開発者は不足しているわけですが、腕のいい開発者だけ給与をあげるのは難しい。そして給与が低ければ開発者になりたがる人も減るので、ますます腕のいい開発者は不足するという悪循環に陥っているのが国内IT業界なのでしょう。

それとリソースが余ればその維持にもお金をかけない。リソースの質もあげない、つまり社員教育にお金をかけない。その結果として、手持ちのリソースの生産性はあがらないので、外から生産性が高いリソースを確保したい。つまり腕のいい開発者がますます欲しくなるという構図となります。先日書いた建設業界も同じ状況なのですが、IT業界の方が深刻化もしれません。

というわけで、この状況は国内IT業界が自ら招いたと思います。

2012年12月14日

まわりから怒られそうな発言ですが、コンピュータサイエンスの研究の基本原則は単純。足りないリソースや遅いリソースを有効活用するために、余っているリソースや速いリソースで補う。例えばOSの仮想記憶は、ハードディスクという有り余るリソースを使って、メモリという少ないリソースを多く見せかけていることになります。また、キャッシュは、遅い記憶装置による性能的なネックを減らすために、頻繁に使うデータだけを速い記憶装置に残しておく手法。ソフトウェア検証なども実行時の信頼性を確保するために、開発時に多くの時間と手間を厭わないという意味では同じこと。

ただ、これはコンピュータサイエンス以外でも同じはず。例えば1950年代や60年代は石油燃料は豊富に確保できたので、住居を含め、空間的なリソースを広げるために、ガソリンと自動車という余ったリソースをふんだんに使って解決してきたし、それが社会的に格好いいということになる。バブル経済でお金が余れば高いものを買うのは格好いいということになります。逆に石油燃料が足りなくなれば、燃費の悪い自動車は格好悪いことになるし、逆に燃費を向上させるためには高コストなハイブリッド車に人気が集まる。そしてシュールガスに期待が集まれば燃費よりも、燃料をふんだん使うことをいわなくなる。

結局、コンピュータサイエンスでもそれ以外でも研究すするときは、いま、またはこれから足りないリソースは何か、そして余っているリソースは何かを見定めること、そして枯渇したリソースを潤沢リソースな補う方法を見つければ研究になるということ。本当にそれだけなんですよね。

2012年12月13日

ところで研究に関してですが、個人的には性能狙いの研究はしないことにしている。逆にいうと、もっぱら機能拡張狙いばかり。というのはソフトウェアの研究で性能狙いになると、コーディング能力次第になり、一人で戦えるものではなく、最終的にはプロジェクトに腕のいいプログラマーに関わる人数勝負になってしまう。さらにソフトウェアというより、システムとしての絶対性能を競う状況になると、最新の高性能コンピュータを入手できる立場か、さらに予算的に高性能コンピュータを変えるのかになり、最終的に予算がある研究者だけが先端の研究することになり、それ以外の研究者に居場所がなくなります。それと性能狙いの研究で難しいのは、仮にある側面の性能を上げる手法を提案したとしても、その手法が他の側面の性能をあげる手法と共存できるとは限らないことです。コンピュータを含む計算システムがもつ、リソースは有限ですから、どれかにそのリソースを割り当てれば別では足りなくなります。例えばストレージからデータの読み出しが性能的にネックな場合、事前にメモリにデータを読み込んでおけば性能を上げられます。ただ、これにも限度があって、その事前読み出しのためにメモリを使えば他の処理が使えるメモリが少なくなり、性能が上がるとは限らない。もちろん、論文を書くためにはそれで十分なのですが、全体としては性能が上がるわけでない。また、コンピュータはある種の工業製品、いくら新しい手法で性能が上がっても、その手法の導入に手間がかかれば、例えば技巧的なプログラミングや、特殊なハードウェアが必要な場合は結局、普及しないし、運用が難しい手法がいずれ使われなくなります。

2012年12月12日

面白いレポートを教えてもらったのですが、建設業連合会による建設業ハンドブック。IT業界はゼネコン化されているといわれますが、その通りならば先をいく建設業界の状況を知っておくのは重要なはず。特に同ハンドブックの4章はみておいた方がいい。類似点がいっぱい。国内IT業界と同様に建設投資額は減ってきています。下請け比率も案件減少から大手の内製化が進んでおり、下請け率は減少傾向なのもIT業界と同じ。労働生産性が他の製造業と比べて上がらないのも同じ。逆に違いとして気になるのは大手建設事業者は研究開発比率が、海外と比べて高く、それが技術レベル向上の原動力になったのですが、国内SI業者は研究開発には熱心とはいえず、むしろ海外技術の導入がお好き。

2012年12月11日

六本木で講演。今回はITベンダーの方は皆無で、ユーザ企業側の方々ばかりで、こうした講演は助かります。ITベンダー方向けに話しても、むなしいとはいいませんが、少なくても当方の話を聞く時間があったら、研究開発なら、営業された方が1000倍ぐらい時間を有効に使えるはず。当方としても技術的にえることも多いのですよね。講演後に議論する機会をいただいたのですが、研究的にも長期的な研究として解決すべき課題が何かというヒントを頂けたのは幸いでした。

2012年12月10日

明日(11日)の講演資料を慌てて作る。仕事柄、講演は多いのですが、人前で話すのは好きではないんですよね。(ソフトウェアでなくてもいいですが)なんか作っているのが好きなだけで、人前に立つようなフロントの仕事は向いていない。もちろん人前で話すときは聴衆の方に参考になるように可能な限り工夫しますが、人前で話すのも、人前に立つのも苦手。なんというか恥ずかしがり屋というべきか。ただ、自分の思いとは逆にどんどん逆に進んでいるような気がしないでもないのですがね。

2012年12月9日

昨日で、年内の海外出張はすべて終了。来年は出張回数を減らしたい。疲れました。

2012年12月8日

帰国です。船でマカオに移動したのですが、その船が揺れる、揺れる。というわけで船酔いで吐く人が結構多かったです。個人的には乗り物酔いに強いので、スリリングで楽しかったわけですがね。国際会議の関係もあって、マカオ政府の方にもお会いしましたが、今年は日本人観光客が減っているとかで、どうすれば集客できるいかを質問されたのですが、短期的な集客よりも長期的な集客が考えるべきとしか、答えられませんでしたが。ただ、長期的な集客を実現するにはリピータ確保はもちろん、なんか文化的な発信がないと難しいんですよね。

2012年12月7日

国際会議の4日目。そして香港に移動。ところでマカオでは夜な夜なブランド品店を回ってみる。普段、ブランド品店は入ることもないのですが、ホテルからの徒歩圏ではカジノ以外はブランド品店ぐらいしかないのです。というわけで21時過ぎにブランド品店を見て回る。本当に見て回るだけなので、そもそも財布すら持っていない(最低ですね)。

マカオのブランド品で特徴的なのは、男性向け商品が多いことと、バッグに特化していること、高級時計ブランドが多いこと。男性向け商品が多いのは、カジノにやってくる客筋のほとんどは中国人男性だから、バッグが多いのは逆にいうと服が売れていないということ。これは服は客を選ぶ。特に高級ブランドはそれぞれターゲット顧客があり、それにあわせてデザインするのですが、それに合致していないのでしょう。一方、バッグは客を選ばない。高級時計店が多いのは中国における資産管理として高級時計店に需要があるということと関係がありそう。

ところで面白かったのは、泊まったホテルの下にあるルイ・ヴィトンの巨大店。ワンフロアーは昔のルイ・ヴィトン製品を並べているのですが、現行品と比べて明らかに質が高いんですよね。かつてブランド品って、上品なデザインと最上の素材、職人技が織りなす最高級品だったと思いますが、いまは工業品になっているのでしょう。また、ブランド品を表す言葉として、時代を超えた魅力というのがありますが、現行品はブランドの伝統を出しつつ、斬新さを組み合わせたデザイン。長く使ってもらうデザインよりも、毎年のように買わせるためのデザインという感じですね。また、高級品というのは、普及品ではないから高級品なのですから、広く売ることを狙った瞬間から高級品ではなくなるし、まして最高級品ではなくなるはず。その意味ではオートクチュールからプレタポルテに移行した段階で、ブランド品の意味は変質したのでしょうね。

欧米や日本はブランド品の売上は落ちているわけですが、それをマカオをはじめとするアジアで支えている状況。ちょうど7日の香港の英語新聞にプラダが、欧米は横ばいだけど、アジア地域が大幅増という記事と、バーバリが業績が伸びていないという記事があったのですが、アジア需要のある商品の有無は重要ですね(コートに需要がない地域では、ブランド品としての魅力に欠けますから)。

それからヴィトン、シャネル、プラダ、バーバリ等々は10軒以上見てまわったのですが、デジャヴ—感がありますね。数年前、男性アパレルではアメカジ風がファッションが流行ったことがあります。時代性はあるにしても、過去を模倣している限りは本質的な新しさは作れないし、いずれは飽きられてしまうはず。ここ20年間で本質的に新しいデザインってあったんですかね。もしそれがないとすると、デザイン的な斬新さが限界が来ているのかもしれませんね。もちろん、ファンション系はよくわからないのですがね。

2012年12月6日

国際会議の3日目。発表の中にデモンストレーションを入れたのですが、見事に失敗。Javaで書いてあるプログラムなのですが、なぜか解像度をプロジェクター用にあわせだけで、JVMごと異常終了する始末。というわけでデモンストレーション中にJVMが3回も落ちるという本来あり得ない事態。PCはMacOS X 10.7を載せたMacintoshだったのですが、OSの都合でJVMはJDK 7の実行環境。JDK7はローレベルアクセスすると結構落ちる。

2012年12月5日

国際会議の2日目、明日の発表でデモンストレーションをしようと、せっせと仕込み。ところでマカオはカジノがいっぱい。ギャンブルが主要産業。実際、ラスベガスを抜いて、世界一のギャンブルシティ。というわけで主要ホテルのほとんどはカジノが併設、それも巨大カジノが併設しているのですが、カジノがあると騒がしいし、ホテルは夜遅くまで人の出入りがあります。というわけでカジノのないホテルを選んだのですが、まともなホテルでカジノがないホテルというのは、マカオではほとんどないんですよね。なんとかカジノのないホテル(マンダリン)にしたのですが、これは正解でした。ところで国際会議の会場とホテルを直線で結ぶと二つの巨大カジノを横切ることもあり、ホテルと国際会議の移動ではカジノを通り抜けたのですが、客のほとんどは中国、それも中国本土の方のようです。中国本土の方でもギャンブル付きの方が来られているのでしょうが、真剣にギャンブルしていて、遊びという感じが全くないのがちょっと怖かったです。夜は明日の論文発表のためのデモンストレーションの仕込み。

2012年12月4日

九龍の港から高速船に乗って、マカオに移動。マカオは初めて。国際会議の会場は船付き場から近いのですが、ホテルに迎えを頼んでいたので、そのままホテル。それから20分ほど歩いて国際会議の会場に辿り着く。効率がいいのか悪いのか。

2012年12月3日

香港理工大学で講演。英語で150分講演は長かった。大学院生向きだったのですが、学科長まで参加しており、大がかりな講演会となる。

2012年12月2日

羽田からANA便で香港に移動。機体の関係でプレミアムエコノミー用席に座らせてもらう。席だけがプレミアムエコノミー用というだけで、シート電源などは使えない。今回は香港理工大学の方に向かいに来てもらって、そのままホテルに移動。

2012年11月28日

いまさらながらソフトバンク(SB)によるSprintの買収のこと。その買収と同時に行われたのが、SprintによるClearwireの50.8%株取得、つまり経営権の確保。ClearwireはWiMAX通信の大手。Sprint以外にも、Comcast、Time Warner、Google、Intelなど大手が株を持っていたのですが、これで名実ともにSprint傘下となります。世間でいわれているようにClearwireが今回の買収を理解する上では重要。

ClearwireはWiMAX通信のために2.5GHz帯で160MHzぐらいの幅の周波数をもっています。周波数帯によって違うのですが、他の大手事業者の3〜4倍の幅といってもいいでしょう。そのClearwireに割り当てられている周波数は2.5GHzですが、その帯域の電波は使い勝手が悪い。直進性が高いし、金属に吸収されやすいので、ビルの影などは圏外になるはず(周波数高い電波は水分に吸収されやすいので、雨に弱いはず)。だから基地局を数多く設置しないとカバーしきれない、逆に言えば基地局を大量に設置したり、700MHzなどの他の周波数と動的切替えをするならば価値が出てくる。というわけで仮にClearwireが売却しても10億ドルにもならないというご意見の方もおられるし、80-120億ドルというご意見の方もおられる。SBは後者にかけたとすると、1.57兆円の買収額でも、Clearwireの周波数の売却すれば取り返せると読んだはず。LTEの需要が高まれば周波数は足りなくなるはずで、その場合は使い勝手の2.5GHz帯にLTEを流すことも技術的には可能なはず。そうなると価値はあがり、今回の買収はむしろ儲けが出せるかもしれない。

それとSBによるSprintの買収は、結果としてWiMAXの終焉を意味するんですよね。理由はSprintはLTEを進めたいわけで、WiMAXに関心がない。WiMAXの有力業者の一つであるClearwireがSprintによって買収されたということはClearwireの事実上のWiMAX事業の縮小を意味し、米国WiMAX市場の縮小を決定づけるからです。

もうひとつ、Clearwiseで気になるのは変調方式。LTEには周波数分割復信(FDD)と時分割復信(TDD)があります。TDDは複雑で使いこなせた通信サービスは少ないのですが(PHSなど)、周波数の有効利用という点ではFDDよりも優位。今後の周波数が逼迫すればTDDを移行するしかない。そしてiPhoneなどの有力端末がTDD対応になると、収容数が多いTDDはFDDを使う事業者(VerizonやAT&T)よりも優位に立てる。折しもSBはチャイナモバイルと組んでTDD方式LTEを進めており、米国と中国、日本でTDD方式を進められることになります。

今回の買収のニュースを聞いたときに最初に疑問は資金調達でした。国内メガバンクが融資することになりましたが、その背景には同時期に開催されたIMF総会で打ち出された金融緩和があります。単純に考えれば金融緩和になると、お金が余る、だから融資先として有望だった。実際、SBモバイルは過去の融資は順調に返済しており、銀行から見れば優等生。でもそれだけなのかということです。個人的に想像したのは日本の債務不履行(デフォルト)でした。どうなるかは別にして、大幅な円安になることだけは確か。そうなったときにSBも銀行も海外資産をもっておけばそのリスクを減らせるわけです。もちろん、そこまでSBや銀行が考えていたかは知りませんがね。

2012年11月27日

とある研究分野のチュートリアルに参加させていただいたのですが、その研究分野の定義につかわれていたリアルタイム(Real Time)の意味を思わず聞いてしまったのですが、世の中ではリアルタイムという言葉をルーズに使うことが多いですよね。

リアルタイムという言葉には「コンピュータの実時間処理(時間制限付き処理)」と「同時性」という二つの意味で使われます。なので「リアルタイムにデータ処理する」といわれると、実時間処理(時間制約付き処理)なのか、「同時性」なのかと聞きたくなりますよね。ちなみに上述の御回答はリアルタイムとは単に速ければいいということでしたが。

どんな研究分野にもいえますが、その分野の定義を曖昧にしている分野というのは伸びないんですよね。大げさではなく絶対に伸びない。理由はすごく簡単。研究分野の定義が曖昧だから、そのときそのときで都合よく分野の定義や位置づけを変えてしまいがち。柔軟にみえるかもしれませんが、研究というのは当初の課題設定からずれていってしまうと、何をやっているのかがわからなくなります。そして分野の定義そのものが曖昧だと、その分野の各研究者の研究方向性も揃わないから、大きくは発展しない。逆に伸びる研究分野というのは、最初にその研究分野の定義を愚直なまでに散々議論しているから、分野の定義のコンセンサスができていますし、その定義にあわせて研究方向性が揃うことになりますし、仮に研究内容が当初の定義からずれてくれば、別の研究分野として再スタートを切る潮時もわかります。

気をつけた方がいいのは、研究分野が確立してから新規参入した場合なんですよね。その分野定義の議論を知らないので、本人はその分野の研究者のつもりでも、研究やその論文が微妙にずれてしまいがちで、当該分野の研究者として永遠に認めてもらえない。一番怖いのはその分野から撤退するタイミングがわからないこと。その分野の定義が曖昧に定義していると、都合よく分野の定義を変えてしまうので、仮にその分野が行き詰まっていることに気づけない。結果的にそんな分野の残ってしまって、研究者キャリアを潰す。なお、今回のチュートリアルに参加して一番よかったのは、その分野のそのあたりの状況がわかったことでしょうか。

さて話をリアルタイムに戻しましょう。例えば「Real Time Queries」という表現の場合、Queriesは「問い合わせ」という処理であり、時間制限付きの処理と解釈されやすい。仮に同時性の意味だったとしては、問い合わせの結果である回答ならば、何らかの事象とそれに対する問い合わせの回答が同時に表れるという意味になりますが、事象と問い合わせが同時というのは意味がない。

むず柏野は例えば「Real Time Analysis」(例として作っただけで、この表現する方がいるかは知りません)という表現。前者のコンテキストであれば何らかの時間制約を満足する分析の意味となりますが、後者のコンテキストであれば、事象の進行と同時に分析ができるという意味であれば、あながち間違った表現ではないと思われます。

いずれにしても安易に「Real Time」という表現を使ってほしくないですが、ちなみにリアルタイムシステムの3主要国際会議の一つのプログラム委員長をさせていただくなど、リアルタイムというの言葉に関しては一家言はあったり。でもReal Timeの定義で議論しているほど暇なわけではありません。

2012年11月26日

朝から某委員会。SI事業者のR&Dが弱いことが議論になったのですが、同じIT系でもメーカ系と比べると、SI事業者で研究開発部門をもっているところは少ないし、当該部門をもっていても小規模。個々の企業としての事情もあるのでしょうが、SIビジネスは仕様に対して見積を作って、そして契約してシステム開発をします。一方で新しい技術は見積が難しいから、見積が正確に作れないわけで、見積が作れない案件は避けることになる。また新しい技術は試作してそれを製品レベルにあげることになりますが、SIビジネスでは案件がなければ開発しないので、自ら新しい技術にトライするとは限らない。

2012年11月25日

成田に到着。

2012年11月24日

午前中はオルセー美術館、ランチのあと国立現代美術館。それからパリCDG空港に移動。

2012年11月23日

国際会議の4日目。夜はパリに移動

2012年11月22日

国際会議の3日目。講演と座長。お仕事、お仕事。

2012年11月21日

国際会議の2日目。

2012年11月20日

国際会議の1日目。ブザンソンの街は工事ばかり。トラムを走らせるようですが、そのため主要道路は工事となり、街の中の移動ですら、工事現場ですり抜けながらホテルと会場を移動。

2012年11月19日

ANAで成田からパリCDG空港。それからTGVでブザソンに移動。ホテルに着いたのは23時過ぎ。長い旅。

2012年11月18日

休日出勤。さて昨日の続きですが、プロの研究者も厳しい時代。Twitterなどを眺めていると、プロの研究者ではない方々、例えば開発者や技術者という肩書きをもつ方々が、プロの研究者よりも詳しかったりする。また、コンピュータサイエンス特有なのかもしれませんが、コンピュータを趣味としているノンプロの方々もたくさんおられて、研究者よりも詳しかったりする。たぶんその状況は昔も今も変わっていないのだと思う。Twitterを含むソーシャルネットワークで、研究者以外の方の知識を表に出てくるようになっただけなのだと思う。いずれのプロの研究者の価値は下がるし、プロの研究者は需要は減る。当方を含めてプロの研究者にとっては辛い時代になるでしょう。ただし、それは時代の流れなのでしょう。

当たり前ですが、プロの研究者に求められるのは、プロの研究者でないと研究できないことを研究すること。これに尽きる。逆にプロの研究者でない方々の方がはるかに詳しい分野は結構ある。例えば特定のプログラミング言語に精通するとか、実際、趣味的に研究されている方々の方が詳しい分野は結構多いわけで、そうした分野ではプロの研究者への需要は減るはず。また、プロの研究者に求められるのは、きちんと知識を体系しているかでしょうね。逆に言うと関連技術の中で、当該技術の位置づけや関わりを把握していることは必須なはず。

2012年11月17日

先日、書店で知り合いで音楽関係の雑誌社の方とばったりあって、しばし雑談していたのですが、オーディオ雑誌の編集をされており、そのときにネット発信が容易になって、オーディオ雑誌の位置づけを模索しているという話を伺っていたのが思い出されます。オーディオ雑誌は、主にオーディオの評論を職業としている人たち、通称、オーディオ評論家という人たちに、商品レビューを書いてもらって、それを雑誌にしていました。しかし、いまはネットで実際に商品を買った人たちの商品レビューがネットに溢れており、オーディオ評論家のウンチクよりも、商品を使っている人のレビューが見られるし、自分で商品を買って使っている人のレビューの方が、評論家のウンチクよりも役に立つ。また、消費者はオーディオ雑誌の記事や広告よりも、そのレビューを参考にするようになり、広告が集まらない。さらにオーディオという趣味自体がニッチになり、新製品が減っており、記事として書くことが減ったし、広告も減った。結果として評論家投票による優秀オーディオ商品選びの記事ばかりで、読者に飽きられるという悪循環だそうです。他の買い物指南雑誌。例えば家電批評や暮らしの手帖も同じ状況なのでしょうね(暮らしの手帖は広告をとらないので、ちょっと違うけど)。でもこの状況はプロの研究者も近いかもね。

2012年11月16日

電子情報通信学会の研究会で基調講演。

2012年11月15日

なんどか書いたことがあるのですが、国内SIビジネスの先行きが不安視されていますが、個人的にはSI屋さんに身を置いたことがないので、とやかくいう立場ではないのですが、人月計算をしている限りは、生産性を上げれば上げるほど売り上げが下がるというビジネス。どんな業種でもいえると思いますが、生産性をあげれば収益が増えるのが経済原則であり、その原則に反する業種は生き残れるのはなかなか難しいかと。それからどの国でもいえると思いますが、経済成長するには生産性の低い産業から、生産性の高いの産業に移すことが重要。その意味でSI業界に多くの人材が行く状況はいいのか悪いのか。次は個人的な持論ですが、国でも人でも富というのは生産性の高さに比例すると思うのです。もちろん例外もあって、生産性が低くても過去の資産でいきていける国や人もいますし、他の国や人の生産性の高さに助けられている国や人もあります。ただ、長期的には富と生産性は比例すると思うんですよね。

2012年11月14日

個人的にはアジャイルソフトウェア開発がいいとも思えないのですが、ひとついえるのはソフトウェアの設計に対する考え方は変わってきているように思います。これまでのソフトウェア開発、特に業務系では可用性が重視去られるために、様々な状況においてソフトウェアが機能を果たすことが重視されてきたし、それは今後も変わらないと思う。だから、これまで有能な設計者とは、様々な状況に関する知識をもつ設計者であり、いい設計とは様々な状況に対応できる設計であった。実際、そんな状況はありえるんだろうかという状況を想定した例外処理が塊となっている。

ただ、いま問題のは状況の変化が大きくかつ予測できなくなっているということ。そうなると様々な状況に関する知識よりも、不足な状況に応じて設計を変更していく方がいいことになる。つまり、運用を通じて設計を変えていくことが求められる。

ソフトウェア開発の主体がSI業者からユーザ企業に移るというトレンドも、状況変化が大きくかつ予測できなくなっていることと関係があると思っています。というのは刻一刻と変化する状況を理解できるのはユーザ。だから設計もユーザが中心になるしかないのでしょう。ただ、現状では、どの範囲の状況までは事前に対応するのか、またSI業者とユーザ企業の役割分担です。ひとつの解は基本システムはSI業者に任せて、状況変化に伴う、設計変更はユーザ企業なのですが、技術も方法論も追いついていないんですよね。

2012年11月13日

学生さんの研究指導は仕事のひとつなのですが、言葉が難しいんですよね。例えば予定していたことができなかった学生さんに「どうしてできなかったの?」といっても、うつむくだけなので、「何を解決すれば、できるようになりますか?」のようにきく。いっこうに論文サーベイや実装がはじめない学生さんに「どうしてやらないの?」ときいても、確実にうつむきます。だから「何からだったら始められると思いますか?」ときく。また進捗状況がよくない学生さんに「なんでさっさとやらないの?」といっても、やっぱりうつむくだけなので、「どこで手間取っているのですか?」のようにきく。どうみてもやる気がない学生さんに「君、やる気ないんじゃないの?」といったら、うつむいて二度と顔をあげなくなるので、「着手するうえで、何が問題になっているの?」ときく。論文不採録など結果がでていまったときが一番難しいのですが「何を解決すれば採録されると思いますか」のようなことをきく。結果はかわらないので、ここでは問題点を改善することが重要。まずは御本人に何が問題だったのかを考えてもらうのが第一歩。あとは自分で解決してもらうなり、解決策を相談する方がいい。

2012年11月12日

マイクロソフトで分散システムのチュートリアルを受けてみる。こちらは専門だから、既知な話しばかりでしたが、マイクロソフトというか、講師をされた方の関心がわかったことは有用でした。でも(米国のトップ大学を含めて)大学院の分散システムの授業でも、6,7回分を90分で話したわけですが、参加された方の何パーセントがわかったのかは気になるところ。

それは分散システムの難しさは通信遅延。よく障害発見の難しさがあげられるけど、それは間違い。誤解というか、分散システムを理解できてないということ。もう少し詳しく書くと、通信遅延があるので、他のコンピュータの(正常状態を含めて)現在状況がわからない。つまり障害発見の難しさは通信遅延の結果であって、難しさの本質的な原因ではない。仮に障害発見が起きないと仮定しても、他のコンピュータの現在の状態がわからないだけでも十分難しい。

それと分散システムの研究では技巧的な最適化をうけるけど(論文が採録される)、実際の分散システムは単純かつ素朴な手法がいい。それととことん追い込んだ最適化は実システムは動かないことが多い。今回の講演でいえば、データ複製もPrimary-backupで十分。Replicated State Machine(Active Replication)はすごそうだけど、実際に効果があるとは限らない。Quorumは話しとしてはおもしろいけど運用するのは難しい。逆に分散アルゴリズムで難しいことも、TCPなどのストリーム系通信を使うと簡単に実現できることもある(厳密ではなく、実際に十分という点では)。分散システムの最新技術は論文を読んで学ぶしかないけど、論文だけ読んでいても本質的なところはわからないのも事実。その辺の勘所が、分散システムでは肝になるのだけど、こればかりは経験と知識がないとわからない。逆にいうと当方が分散システムの研究で生きていけるのも、その経験と知識がすべて。

2012年11月11日

日本って、異文化・異民族の食べ物と宗教には慣用ですが、民族そのものには抵抗が多いですよね。その抵抗を減らせるか否かが将来、重要になる気がしますね。仕事柄、外国に行くことも多いし、外人の相手をすることも多い。どうすれば外国の方と距離感を狭めるのかは重要なはず。彼等と話をしていると、中国や韓国以上に日本はカオスと考えているんですよね。まずインフラが整っていること、そして新旧が混ざっていること、異文化を勝手に消化しているとよくいわれる。楽観するほど先は明るくないけど、悲観する暗くもない。実際、交通・物流機関は信頼性が高いし、通信も高速かつ安定しているわけで、その中で何をすべきなのかですよね。

2012年11月10日

国内の大手家電メーカの凋落が話題になっています。その背景はいろいろだと思いますが、大手家電メーカは人材の均質化してしまったように思います。仕事柄、家電メーカの方は会う機会が多いのですが、以前は変な人が少なからずおられましたが、ここ数年で変な人を見かけなくなりました。組織だけでなく、生物でもいえますが、多様性が失われると変化に弱くなる。逆に言えば多様性があれば環境変化がおきても、新しい環境に適応できる個体がいるわけですが、均質化していると特定の環境が続くのならばいいですが、全体で変化に対応できなくなる。

ここまで均質化したのは日本人の国民性によるかもしれませんね。相手は自分のことをわかってくれていることを前提に話す傾向があるといわれます。これは多様性がないからできることですが、そのきっちり話さなくてもわかってくれる人を集めるとますます多様性が失われていきます。企業は新卒社員にコミュニケーション能力を求めますが、それは社員一人一人が、自分の考えを相手に説明する能力なのか、説明していなくても考えを共有できる能力なのか。前者ならばいいですが、後者はコミュニケーション能力といいながら、単に同じ考え、同じタイプの人材を求めている、つまり均質性を求めているのと同じ。

2012年11月9日

帰国。やれやれという感じですが、また来週、海外出張なんですよね。

2012年11月8日

帰国の途。今回の出張は乗り継ぎが悪く、往復ともにフランクフルト空港で4時間ほど乗り継ぎ待ち。ところで成田行きのフライトでは、往路のトラブルは伝わっていたようなのですが、相当症状が重いと思われたのか、車椅子まで用意されており、さすがに丁重にお断り。

2012年11月7日

午前中はUniversita' di Modena e Reggio EmiliaのEmiliaのキャンパスで、先方の博士課程学生の研究へのコメント。午後はParmaに行ってみる。

2012年11月6日

午前中はUniversita' di Modena e Reggio Emiliaで90分の講演。午後は昨日の研究評価の仕事。ところでモデナがあるレッジョ・エミリア地域はイタリアでも食材が美味しい地域。安レストランのパスタでも美味しい。当然、乾燥パスタではなく、生マスタだし、モッツァレラチーズも新鮮。そしてパルメザンチーズのパルマもすぐ近くだけあって、パスタにかける粉パルメザンチーズも美味しい。

2012年11月5日

モデナに移動して、Universita' di Modena e Reggio Emiliaで、先方の研究の評価。研究の方向性や進捗にコメントしないといけないので、結構たいへん。終わったのは夕方。モデナの近くにフェラーリの本社や工場があることもあって、大学にはエンツォ・フェラーリで寄付で作られた研究施設があったり、学内にF1エンジンに展示してあったり。スポーツカーやF1好きの方にはたまらない場所なのだと思いますが、当方だと豚に真珠状態。

2012年11月4日

羽田発フランクフルト行きを降りるときに、首にトランクを落とされる。落としそうな雰囲気だったので、身構えていたこともあり、直撃はさけられたけど。ただし、ANAが救急隊を手配してくれて、救急隊のお世話になりました。いろいろ起きます。一の矢は受けてしまっても、二の矢は受けない主義なので、怒らず、平静につとめる。怒って解決する場合は怒るけど、怒っても解決しないならば怒らない方が得だから。

ボローニャ空港に飛んで、モデナまでバス移動。当初はボローニャ中央駅にバスで移動して、列車移動を考えていたので、ちょっとだけ楽ちん。モデナ行きのバスの停留所とホテルが近かったしね。

2012年11月3日

オフィスで徹夜残業、いったんもどって昼過ぎにまたオフィスにいって休日出勤。そして、4日未明のフランクフルト便に乗るために、夜は羽田空港に移動。海外出張をしていると、忙しそうといわれますが、実際には日本にいる方が忙しい。

2012年11月2日

夜は霞が関方面で講演。そのまま徹夜仕事。講演のお題はなぜかスマートメータ。個人的には興味の対象ではなくなっているわけですが。従来メータもスマートメータも契約単位で電力使用量を計測するデバイス。でも本当に知りたいのは利用単位の消費電力のはず。つまり測れることと知りたいことの粒度が合致していない。だったら測る粒度を変えればいいだけのこと。契約単位の消費電力から、利用単位を推定する技術に関する研究が流行っていますが、そもそも計測単位を変えればいいだけのこと。もちろん計量法の縛りから、メータの設置者は誰かという、様々な大人事情がある世界。そうした推定技術は必要なのでしょうし、他の方がその技術を研究することは否定しません。ただ、自分で研究するかというと絶対にしない。というのは測る粒度を変えるだけで解決できる課題だから。少なくても大人の事情を回避するために特殊な測定や、高度なデータ解析などを駆使するということに意味を見いだせないから。どうせ解くならば本質的な課題を解きたいですから。

2012年11月1日

小田原方面で講演。研究畑とはいえ、分野が違う方々なので、講演内容は気を遣ったのですが、講演はいかかでしたしょうか。なお、いろいろ気を遣っていただき恐縮な一日でした。講演後、オフィスに戻って、お仕事、お仕事。小田原には贅沢にも行き帰りともに新幹線にさせていただいたのですが、結構、混んでいてびっくりでした。

2012年10月31日

正式になんと呼ぶのかはいまひとつよくわかりませんが、Ruby on RailsなどのなどのWeb Application Framework (WAF)が人気を集めていますが、個人的にはまったく興味がない。Webアプリケーションの開発が難しいのはWeb特有の制限があるから。もう少し具体的にいうとWeb以外だったら簡単に実装できるアプリケーションも、Web上で実現しようとするから難しくなっているにすぎない。だったら、素直にWeb以外で実装すればいいだけのこと。もちろん、現実はWebを使うことが求められることもあり、簡単ではないわけですがね。Webアプリケーションに限らず、技術的な制約でうまれた問題は、その制約の中で問題の解決に奮闘するよりも、その制約そのものを取り除く方が本質的な解決です。本質的ではない技術は、時代の徒花というか、長く続きする技術にはならない。

確かにRuby on RailsなどのWeb Application Frameworkを使えば簡単にWebアプリケーションが書けるかもしれません。ただ、簡単に開発できるという技術は、技術者のキャリアからみると諸刃の剣。どんな問題でも、難しい解き方よりも、簡単に解ける方がいい。ただ、問題を簡単に解けるようにする技術というのは、その技術を習得する技術者の数も多くなりやすい。その問題を解くことへの需要があったとしても、供給が多ければ当該技術者の給料は上がらない。

そしてソフトウェア開発技術はどんどん進歩しています。すぐにもっと生産性の高い、新しいWebアプリケーション開発技術が登場するでしょう。どんな世界でも、生産性が低い技術は、生産性が高い技術に取って代わられる運命であり、古い技術を扱う技術者に居場所はない。もちろん、新しい技術を取得すればいいだけのことですが、残念ながら新しい技術に追随できる技術者は多くない。だから、新しい技術を扱う若い世代に取って代わられることになり、働く場所がなくなっていきます。

人それぞれなのですが、端から見るとWeb Application Frameworkをメインに使われる技術者の方々の長期的なキャリアが見えないんですよね。Webアプリケーションの次に何をなさるんでしょうかね。むしろ、トランザクションなど、本質的に難しい技術を身につけた方がいいと思う。難しい技術は難易度も高いし、技術を取得するのに時間がかかります。でも取得できる人は少ないので、競争は少ない。良くも悪くも、将来、簡単化する技術は登場する可能性は低いので、食いっぱぐれるリスクは少ないんですよね。繰り返しになりますが、問題を解くときは難しい解き方と簡単に解き方があるならば、絶対に後者で解くべきです。ただ、簡単に解けるような問題というのはキャリアになるとは限らないということ。

2012年10月30日

午前中は横浜方面、午後はオフィス、夕方から品川方面でそれぞれ打ち合わせ、それからまたオフィス。というわけで移動が多く、乗り換えを含めて、14回電車に乗ることに。

ところで、先日の量販店の役員から、Windows 8搭載PCの販売状況を教えていただく。その量販店では全店でWindows 8搭載PCの販売数は、Windows 7の発売時のWindows 7搭載PCの販売数と比べると台数ベースで半分以下だったそうです。理由としてはWindows 7発売時は、Windows Vistaが不人気で、Windows 7をほしがる人が多かったこと、MSの方針でWindows 8は発売直前まで情報統制をしたために、何が新しくなったのかを知っている客がほとんどいないこと。ちなみにその役員さんいわく、明らかにMSのマーケティングのミスと言い切っておられました。また、Windows 8搭載PCの値段が比較的高く、安価なWindows 7に食われているそうです。いずれにしても(日本における)スタートアップは大失態という状況であり、MS本社やMS日本支社では役員さんの首が飛ぶでしょうね。ご愁傷様です。

2012年10月29日

世の中には不思議に思うぐらい、技術トレンドを外し続ける方々がおられます。なんというか、その方が興味をもたれる技術や、さらにその興味の対象に関する講演などをされるわけですが、必ずといっていいぐらい流行らないし、そもそも技術的な筋もよくない。なお、誤解してほしくないのですが、当方はそうした方々は嫌いではない(逆に当方は嫌われていますが)。そうした方々の講演会などがあれば行きたいと思っています。というのはそこで話される対象は捨てていいと判断できるから。実は今日もそうした方のお一人の講演会があったのですが、残念だがらいけませんでした。

この内容は前にも書いたのですが、あえて書いたのは技術トレンドを外す人に共通項をいくつか見いだしたから。一つ目の共通項は、実装経験がない方々ということ。システム的な話しは技術的には興味深くても、実装が難しかったり、使いこなすのが難しい方法は立ち消えになる。それと実装経験がないと本質的に何が課題なのかが見えないことも多く、解決すべき課題とそれ以外の区別がつかない。そのため解決しなくてもいい課題でも、その解決方法がおもしろいと、技術トレンドを読み違える。

二つ目の共通項は、本当に新しいことと、自分が知らなかっただけだったことの区別がつかないということ。だから、技術トレンドを外す方々と話していると、「○○は新しい」や「××を発見した」という台詞を乱発されます。ただ、○○や××も新しくないし、そもそもいまさら発見とか失笑ものだったりします。さらに本で読んて知った知識であっても「××を発見した」と言い出す。そもそも本に書いている時点で既知なのですが、その区別がつかない。まぁ、そこまでいかなくても、本で読んで知ったことをまわりに紹介したがる傾向がある。だから、きちんと勉強している人はそうした方々を無視するし、相手にしない。でも世の中には、きちんと勉強しているとはいえない人たちもおられまして、その人たちは、技術トレンドを外す方々が話す「○○は新しい」や「××を発見した」という台詞を真に受けてしまう。そして「△△先生はすごい」ということになります。意外にトレンドを外す方々は世間的な評価は高かったりします。

三つ目の共通項は、その方々は、きちんと勉強している人を避ける傾向があるということ。研究者にも該当する方々はおられて、「サーベイをしすぎると、アイデアが生まれなくなる」とか堂々とおっしゃる。結局、自分の周囲が、きちんと勉強するのを嫌うし、少なくてもきちんと勉強する人を周囲から(無意識に)排除する。だから、「○○は新しい」や「××を発見した」という発言に異論を唱える人はまわりからいなくなり、ますます自分の勘違いに気がつかなくなる。でも本人は幸せだと思いますね、日々発見に満ちた人生なんですから。ある意味でうらやましいです。

四つ目の共通項は、煽てに乗りやすいということ。これも二つ目と関係するのですが、「△△先生はすごい」というのを真に受ける。ますます当人には自分が興味を持つことは新しいことだと思い込んでいるし、単に自分が知らなかっただけなのに、世紀の大発見だと心から信じている。はだからタイプとしては、お山の大将タイプというか、小さいコミュニティや所属組織の中で、ポジションをあげることにご関心があるようです。端で見ている限りは、言動がわかりやすくて、かわいいのですが、一緒に仕事はしたくないですね。

まぁ、いろいろ書きましたが、当方が知っている該当している方は上記の四点が見事に合致するんですよね。でも、もしかすると当方が気づいていなかっただけで、当たり前のことだったり。

2012年10月28日

休日出勤。平日だけでは仕事が終わらない。

2012年10月27日

立場上、研究テーマの相談を受けるのですが、個人的には研究テーマはあっちに行ったり、こいっちに行ったりなので、サジェスチョンする立場でもない。ただ、一ついえるのはその時点で世界で頭がいい連中が集まっている分野が好きなんですね。これは研究者の戦略としてはよくない。というのは頭がいい連中が多い分野はトップに立つのが難しいし、立てないことも多いから。ただ、頭のいい連中が多い分野は画期的なアイデアや新しいシステムも出てくるから、それを見ているだけでもおもしろい。ちなみに頭のいい連中が多い分野をどうみつけるかですが、一度、その分野を研究すると、頭のいい連中の知り合いが増えるし、彼等との議論等から、彼等が何に興味を持っているかは自ずとわかる。おもしろいことに頭のいい連中はだいたい同じことを考える。ただ、頭がいい人材にも二種類いて、新しい分野を開拓するタイプと、既存分野を発展させるタイプがいて、当方は前者の連中しか興味ないし、まわりそんな連中ばかり。

逆に言うと、研究者は学生時代の研究テーマがその後のキャリアを左右しますよね。たまたま優秀な連中が多い分野を研究テーマにしていれば、その後もその連中に刺激されて、研究も進むし、そして研究もテーマも変わっていく。逆にそうではないと一緒に潰れて行ってしまう。特に、学生時代の研究テーマをやっている他の研究者が新しい分野に移る気がない方が多いと、本人も固定化されてしまう。その場合、まわりの研究者も同じテーマを続けているから、本人もまわりも自分たちが取り残されていることに気がつかないんですよね。

クラウドコンピューティングに興味をもった同じ理由。当方が博士課程学生をしていたときに、国際会議で同じセッションで発表した研究者がGoogleのデータセンター部門のディレクターになっているのですが、2004,5年だったと思いますが、その彼から他の研究者もGoogleに移っていることを聞いたのが最初。そのGoogleに移った研究者が、昨日、すこし書いた新しい分野を開拓するタイプの研究者が多かったのです。それで慌ててGoogle関連の論文を読み始めたという状況。まぁ、クラウドコンピューティングという言葉ありませんでしたがね。ただ、いまはその連中はGoogleからあまり流出していない。まぁお互い年を取ったから、冒険できないし、冒頭に書いた彼のようにポジションが高い人も多いから、動かないのはあると思いますがね。

2012年10月26日

某社で講演。それも分散システムのデータ複製だけ。内容が簡単すぎたみたい。米国のトップ大学大学院の分散システムの授業と同等か、ややレベルが高いところに設定したし、日本の大学ではこのレベルで話す大学はないはず。逆にいうとアカデミアよりも、企業の方が進んでいるのかもね。そのあとは一部関係者の会合。話しが興味深すぎて、おもしろいという段階を超えて、怖い状態。

2012年10月25日

Amazonがいよいよ電子書籍Kindleを発売。米国発売は2007年、つまり5年間遅れなわけですが、逆に言えば、国内の出版社や書店などは5年間という猶予期間が与えられていたのと同じ。これだけ時間があれば万全の準備はできるはず。いまさら突然大きな変化がきたとか、準備が足りないとか、はいってほしくないですね。価格的には無料3G通信付きの端末としては安いのでは。

ただ、個人的には電子書籍は端末価格よりも、コンテンツの安定供給の方が重要だと思っています。一度買った書籍を取っておくのは10年後、20年後も読みたいからだし、電子書籍は物理的スペースを取らないからこそ、蔵書としての価値がある。だから、長期間にコンテンツが供給できる業者からコンテンツを買いたいわけで、端末の値段とか、端末の出来不出来よりも優先されると思う。というわけで端末だけ話題になっている状況は、当方から見ると異様だし、得に端末の出来不出来しか気にしない人というのは一過性のコンテンツを読む道具として、電子書籍を考えているのでしょうね。また、夏に某社の電子書籍端末の不出来が話題になりましたが、個人的にはそれ以前に過去にコンテンツ販売をした事業者で、その事業者の都合で、コンテンツ提供サービスを打ち切った事業者はその時点で再参入しても支持されないと思うんです。だから、端末以前の問題だったのでは。

2012年10月24日

噂通りiPad miniが発表。実際は翌日のニュースで知ったわけですが。予定調和的な製品ですが、その予定調和的な製品すら出せないベンダーが多い中では評価すべきなのでしょうね。小型タブレットとしてはどうかと思いますが、大型スマートフォンと思えばおもしろいのでは。できるかわかりませんが、字が大きくできるのであれば、年齢の高い方や老眼の方はスマートフォンとして使うのには便利では。

そろそろ時効だと思うので書きますが、Steve JobsのiPhone発表プレゼンが話題になっていた当時、某国内有力キャリアの役員様に「御社も社長自らデモストレーション付きプレゼンすべきでは」と話したことがありまして、その方曰く「ウチの役員、老眼だからスマートフォンのデモは無理」という返事。

2012年10月23日

続き。実は一番に気になるのはAndroidの今後です。GoogleはAndroidライセンスを多数のメーカに提供しましたが、その中には弱小Android端末メーカ(国内大手メーカすべてを含む)も含まれます。弱小メーカはプロセッサが入手できない、または入手できても性能的に劣るものとなり、最新プロセッサを搭載する大手Android端末メーカに勝てないことになります。

ただ、これはGoogleにしてみると悩ましい状況です。そもそも吹けば飛ぶような弱小メーカのサポートはしたくないし、弱小メーカのサポートがAndroidビジネスの収益性を悪化させているといわれている。かといって一部の大手メーカがますます強くなって、発言力を持つ事態は避けたいはず。そこで考えられるのは、二つの方向性。

一つ目はみんなで仲良くといいつつ、大手メーカの発言力をさげる戦略。この場合、現状の問題は、各メーカのスマートフォン向け高性能プロセッサの調達ですから、GoogleがARMコアを使ったスマートフォン向けのSoCを設計して、どこかのファウンドリに大量製造させて、それを各Androidメーカに分売する。そしてAndroidの開発ではGoogle設計SoCの機能に依存させる。こうなると大手AndroidメーカもそのSoCプロセッサを使うしかなくなり(使う方が開発が容易になる)、Googleはそのプロセッサの分売を通じて、大手Androidメーカも牽制できるようになります。ただ、この戦略には二つ問題があって、仮にまだGoogleがプロセッサの設計に着手しておらず、いまからはじめると出荷は4年程度先になることと、弱小メーカがぶら下がるうえに、プロセッサ設計コストをすることになるので、Googleのモバイル事業の収益性がますます悪くなるということ。もちろん弱小メーカは切ればいいだけだけど。

二つ目は大手Androidメーカを抱かえ込む一方で、弱小メーカを切り捨てるという戦略。一番の理想形はAndroid端末メーカの中で、総合力が一番あるSamsungをGoogle御謹製スマートフォンの工場にしてしまうこと。これでAppleを上まわる垂直統合ビジネスモデルが作れます。ただ、そこまでいかなくても、お金にものをいわせて、Samsungなどと提携して、Googleの主導権を高める戦略もあります。実はこれはキャリア対策でも重要。10月15日も書きましたが、Google及びAndroidは携帯電話キャリアに影響力が持てていない。Appleは人気端末iPhoneの供給で、キャリアから有利な条件を引き出せますが、Androidはメーカも多いので、キャリアへの影響力を行使できず、事実上はキャリアのいいなり状態。これもAndroidの収益悪化の理由ですから、これは打開したいはず。

なお、どちらにしても、国内大手Android端末メーカを含めて、弱小メーカに先はないです。前者の戦略でも製品差別化が難しくなり、価格競争になるのは必至。そうなれば収益性の低いメーカ、つまり国内メーカから脱落します。後者の戦略ではGoogleは販売量が少ないメーカは相手にしないので、国内メーカは撤退宣告と同じ。それからAppleがTSMCに製造を委託するのではという噂は、仮に事実ならばSamsungのラインが空くことになり、どちらの戦略でも重要なのです。

2012年10月22日

続き。スマートフォンメーカのひとつAppleがとった戦略は、(1)AppleはARM系プロセッサを自社設計にして、外部に頼らずに周辺回路を詰め込んだSoCを設計できるようにした。PCビジネスをみればわかるように、コアプロセッサを他社に頼る限りは、他のメーカとの製品差別化が難しいのです。また、新製品情報が外部に漏れないというメリットもあります。いずれにしてもiPhone発売直後に自社設計に動いていたというのは、すごい予見能力です。もう一つは(2)Appleは販売量にものをいわせて、外部に製造ラインを確保した。iPhoneだけでも数が出るのに、iPadやiPodなどにもチップを流用することで、一個あたり設計コストを下げるだけでなく、数で製造ライン確保。これは他社では真似ができない。そして長年、Apple向け半導体の製造を請け負ってきたのが、Appleにとって盟友ともいえるSamsung。ただ、現状ではSamsungからTSMCへの乗り換えをすすめているという噂。ただ、Samsungに依託しない理由として、特許裁判などの知財問題をあげる人が多いですが、個人的にはそれは理由の一つに過ぎないと思います。むしろ、Samsungのシステムプロセッサの製造ラインの微細化、例えば20nm台プロセスへの移行が遅れると予測したのではないかと邪推しています(Samsungのロードマップでは次期は28nm)。現状はSamsungが出遅れで、32nmだけでなく、45nmで製造したチップも混じっている事態のはず。

今後のAppleですが、半導体の契約をTSMCなり、Samsungとするにしても、5年以上の長期契約を結ぶはずで、製造に関しては安定が維持できることになるでしょう。また、20nm台で製造するのは4コア程度でしょうし(20nm台のどの当たりかによるけど)、プロセッサ性能的にはiPhoneやiPadはもちろん、MacBookなどのノートPCも可能なはずで、軽量ノートPCを狙うMacBook AirはARM系プロセッサの搭載は考えられると思っています。

2012年10月21日

Appleが自社製ARM系プロセッサの製造先をSamsungからTSMCに変えるという噂は何度も出ていますが、今回はTSMCから対応したと思われるリリースが出ているので、今回は本当のようですね。

スマートフォンのプロセッサ事情を少し解説しておきます。いまスマートフォン向けのプロセッサはARMが主体。ただ、スマートフォンは機能が多い。このため周辺回路がたくさん必要ですが、筐体を小型化するためにはARMプロセッサコアに周辺回路を詰め込んだSoCを作る必要があります。ここで二つの制約が重要です。

一つ目はプロセッサの設計・開発のコストの増加です。ARMコアそのものはARM社の設計を使うにしても、周辺回路が多いので人手もかかるし、時間もかかります。いまどきのスマートフォン向けSoCだと、新規開発の場合、1000人程度の開発者と4年程度の時間がかかるはず。つまりプロセッサを作る側も100億円単位の投資が必要なので、数が売れないと採算がとれない。いくら既存回路を流用して設計するにしても、2年程度の時間はかかります。また、SoCといっても、スマートフォンメーカがカスタマイズを望んでも、1000万個程度以上の調達を確約してくれないと採算がとれない。スマートフォン向けプロセッサで100万個で受けてくれるSoC会社は少ないはず。

二つ目の制約は微細プロセスの製造ラインの確保です。現時点でスマートフォン向けプロセッサは高性能な製品でも32nmから45nmあたりで製造されます。でも来年には20nm台に小さくなるはず。ご存知のように半導体はプロセスが微細になるほど、動作電圧も下がるので低消費電力になるし、スイッチングが早くなるので、性能もよくなります。ですから来年以降で32nmや45nmプロセスで製造されたプロセッサを使っていると電池持ちでも、性能でも商品価値が下がるのです。ただ、20nm台の半導体工場は5000千億円かかります。TSMCなどに代表されるファウンドリ事業者にいたくするにしても、そのファウンドリ事業者にとっても20nm台プロセス対応工場は莫大な投資で、月産100万枚近い製造でないと採算がとれないはずで、数が出ないものは請け負わない。おそらく100万枚でも断れて、1000万枚程度の契約が必要でしょう。

まとめるとスマートフォンは、販売数が多いメーカでないと、プロセッサが確保ができない。逆に言うとこのままだと中堅以下のスマートフォンメーカは脱落するということです。もう少し正しくいうと、端末販売数の少ない弱小メーカは最新の高性能プロセッサは入手できないので、最新プロセッサを搭載する大手メーカの製品との商品競争力がありません。このため、性能よりも低価格路線にいくしかなくなります。明日はその対策を書きます。

2012年10月20日

楽天の研究所公開を見に行く。個々に頑張っているのはわかるけど、一方でなんというか、英語ということもありますが、研究員さんが質疑慣れしていない感じがするんですよね。対外的なプレゼンの機会があまりないのかもしれませんね。ただ、これは研究員ではなく、研究所マネージメントの問題でしょうね。一番不思議だったのは、研究所も設立後、何年も経つと、論文を含めて研究実績を列挙すると思うのですが、それがまったくなく、設立直後のような研究所紹介。また、研究ビジョンも深みがないし。研究所の公開だと学会発表論文のコピーとか、そのリストを配布することは多いのですが、リストどころか、講演でも論文発表には言及しない。論文がすべてではないけど、無視する必要もない。また講演後の質疑ですが、質問のレベルがひどすぎ。脈絡もなく、プライバシー問題を質問する人とかいて、講演者だけでなく、他の聴衆にも迷惑。せめて講演内容とか、講演の意図を汲んだ質問をしてあげましょう。

2012年10月19日

世の中ではSoftware Defined Network (SDN)、そのなかでもOpenFlowが話題になっています。SDNの前身技術のひとつである、アクティブネットワークはいろいろ研究していたこともあり(いまもSDN絡みの学会研究会の委員だったり)、多少の知見がある立場から見ると、いまの盛り上がり状況は不思議。なお、以下はSDNやネットワーク仮想化全体ではなく、OpenFlowに対しての雑感です。

そもそもOpenFlowはものすごくニッチな技術はず。OpenFlowを必要とする人は少ないし、そもそも運用できる人材も限られるはず。数多くの人が関心をもつこと自体はいいとしても、実務的にOpenFlowに関わる人が多いかとは別の問題のはず。ユーザ企業でOpenFlowを必要とする人は多くないと思うし、何か問題を抱えているにしても、別の技術でも解決できるような気がします。

OpenFlowはプログラマブルという点でネットワークに柔軟性、正しくはネットワーク動作の変更を容易にする技術です。しかし、OpenFlowは基本的に集中管理指向。例えばGoogleがOpenFlowの導入に踏み切ったのも、Googleのデータセンターには数多くのネットワーク機器があり、既存技術では個別に設定・管理する必要があり、非常に手間がかかっていた。そこでOpenFlowを導入することで、集中的に設定・管理することが目的です。またNiciraをはじめとするOpenFlow関連ベンダーがクラウドコンピューティングを念頭においてビジネスしているのも、仮想マシンを前提としたネットワーク管理をネットワーク機器毎に行うのはたいへんで、OpenFlowによるネットワークの集中制御で設定変更をすることに需要があるから。

また、OpenFlowにまつわる、もうひとつ心配は、通信システムの設計で重要なのは要件なのに、OpenFlowの要件が明確になっていないこと。説明していても、結局、プログラマブルだから何でもできるという曖昧な話だけ。実際、要件が不明確なまま開発して失敗した事例はたくさんあり、例えばMulti-Protocol Label Switching(MPLS)の轍は踏んでほしくないですね。

新しい通信技術を作る前に、既存の通信システムで何が問題で、そのうちのどの問題を解決するかを決めた上で、どんなシステムが必要なのかを考えるべき。OpenFlowの説明はいきなりアーキテクチャ図から説明が始まったりしますが、通信システムのアーキテクチャはその要件を実現するための手段に過ぎません。

プログラマブルによる柔軟性そのものはいいのですが、一方で通信システムというのは通信相手やまわりのシステムとの整合性が必要で、ノード単位で勝手に機能変更はできません。しかし、既存のOpenFlowは個々のシステムの設定を変更を、通信相手を含む関連システムに対して、適切に反映させるかはベンダー任せ。何らかの集中管理で解決するにしても、個々のノードとって有利な通信設定が、他のノードにとっては不利になることもあり、全体として最適化される設定は非常に難しい。

ソフトウェアの研究者としては自己否定に聞こえそうですが、汎用性は諸刃の剣似なる場合もあります。プログラマブルな技術というのは汎用性が高く、プログラム次第でいろいろなことができてしまいます。ただ、その技術でいろいろなことができるということと、その技術を使うかは別の話。機能要件を明確化して、その要件を満足する技術が、OpenFlowを複数あるときはそれぞれの技術を評価すべき。OpenFlow以外の技術では解決しない、またはOpenFlowがコスト的に有利ならばOpenFlowを使うべきです。

それから通信に限らず、カスタマイズ可能なシステムで一番難しいのはカスタマイズ範囲を限定すること。もちろんカスタマイズは自由度が高い方がいいわけですが、自由度の高さは任意性が高くなり、間違いの原因にもなるし、どんな設定は許されて、どんな設定が許されないかをきめるべき。これまでにも動的カスタマイズ可能なOSや、動的カスタマイズ可能なプログラム(を書くためのプログラミング言語)などが数多くて提案されてきましたが、その多くは普及していない。OpenFlowを使ってプログラムとしてネットワークをカスタマイズという前に、ネットワーク以外を含めてカスタマイズ可能技術の多くが普及しなかった理由を考えるべきですよね。それからアクティブネットワークに関わった立場でいうと、特許はよく見た方がいいと思うんですよね。詳しくは話せませんがね。

また、OpenFlowはもともとStanford大、Washington大、MIT、Princeton、UCBなどの大学間で構築した、実験用大規模ネットワーク。プログラマブルなテストベッドが目的として始まりました。その意味からいうと、OpenFlowの運用は、極めて高い専門性のある人が、試行錯誤的に設定・運用することが前提になっているといえます。仮にOpenFlowを導入するにしても、本番系各種設定の効果などを評価する別の試験用のOpenFlowで試すことが求められるはず。しかし、ベンダーによるOpenFlowの講演をきいていると、どうやって全体最適な設定を決めるのかの話はないんですよね。

なお、個人的には研究対象としてはOpenFlowにピンと来ないのも、集中制御指向であることが理由です。誤解のないように書いておきますが、集中制御の方がいい場合もあり、集中管理がよくないという意味ではなく、個人的な研究対象が分散指向なのです。

2012年10月18日

今日も講演。昨日の講演は講演内容がビジネスに直接関わる方々が対象でしたし、真剣に聞いてくださいましたが、今日はカルチャースクール状態というと語弊がありますが、教養で知りたいだけならば、当方を呼ばないでほしい。こちらも話せるギリギリの線で、リアルな話題を話しているのですから。こうしたことは書きたくないし、普段は書かないのですが、今日はさすがに話す側にとって、がっかり感がだけが残る講演となりました。

ところで講演で苦手なのは名刺交換。わざわざ名刺交換の時間まで用意されてしまうことまであります。名刺交換して頂くのはありがたいのですが、その一方で、いまはネットで相手の人となりはわかるわけで、名刺をもらう意味は薄れたと思うし、当方の名刺をもらっても何もいいことないです。どちらかいうと人見知りする方なので、初対面の人の話すのは苦手。知っている人の紹介だったら大丈夫なのですがね。講演で名刺交換の場合、基本的に初対面の方なので、苦手なんですよね。

2012年10月17日

仙台で講演。やや早めに到着してしまったので、大急ぎで宮城県美術館で東山魁夷展をみにいく。東山魁夷展はこれまでもみているのですが、みてしまうんですよね。グラデーションの美しさ、静的な世界観なので、見ていると落ち着く絵なんですよね。

さて話は変わって、MicrosoftがSurfaceの概要を発表しました。特に価格は注目の的だったのですが、499ドル。お世辞でもお安い価格とはいえず、どうして高い値付けをしたのかが疑問。

ある開発用に国内に持ち込まれたARM搭載WindowsRTマシンを少しだけ触らしてもらったことがありますが(性能はSurfaceと同じらしいのですが)、第一印象はアプリケーションの起動方法がわからないとかいう以前に「遅い」でした。また、以前Metroと呼ばれていたUIを駆使したトップ画面はよくできていますが、それ以外の部分は完成度が高いとはいえず、iPad+Bluetoothキーボードの値段の半額でも買いたいかといわれると悩ましい状況。本製品ではある程度改良されるのでしょうが、その遅さがx86用とARM用を共通化した結果であれば大きく改良される可能性は低いでしょう。

さて今回の価格設定にはマーケティングを含めて、いろいろ理由はあるのでしょう。パッと考えつく根拠としては、(1)原価またはそのプラスαの価格付け。簡易キーボードもついているので、タブレットよりは高くなるのはわかります(キー自体は圧力センサですが、マグネットの接続と通信部分にコストかかるかも)。(2)Windows/Windows RT搭載タブレットまたはノートマシンPCメーカに気を遣って、高めの値段に設定した。(3)新型iPadの予想価格と同じにした。

さて(1)に関しては本気でWindows RTを伸ばすならば原価を考えずに、戦略的な価格設定をすべきで、例えば299ドルとかだったら、ノートPCやタブレットPC市場は大きく変わったかもしれないし、販売的にもiPadなどの他のタブレットに迫れたのに。(2)これは一番ありえるように思いますが、これまで重要な切るものはパートナーでも、切るときは切らないとみんなで沈んでしまいます。(3)この場合、MSとしてはキーボードがついており、iPadより商品価値が高く、同じ価格設定ならば競争力があると判断したことになります。ただ、前述のように体感性能的にはiPadの方がうえのようなきがします。

次のSurfaceでは大幅に戦略を見直しがされることを期待しましょう。個人的にはiPadなどの既存タブレットに、何かを足す(今回はキーボード)のではなく、引いてほしいんです。

2012年10月16日

AmazonがTIのARMプロセッサ部門を買収するそうです。TIのOMAPとうARMプロセッサ+DSP構成のプロセッサを長年作っており、一時はOMAPを採用する携帯電話は非常に多かった。でもQualcommなどの携帯電話向けARMプロセッサに押されて、TIはARM事業から撤退寸前だったんですよね。メディアではAmazonのプロセッサメーカ化とか、SoCビジネス参入とか、と書いた記事が賑わすのでしょうね。もちろん長期的にはいろいろ展開があると思いますが、今回は短期的な理由が強いように思います。

その短期的な問題とは、高性能ARMの入手難。実は今日もたまたま打ち合わせでその話題がでたばかりでした。現状は高性能ARMは100万個単位の注文で受けてくれるARMライセンス先メーカは少ない。新規の場合、1000万個が最小ロットといわれる状況。Amazonとしては端末KindleにOMAPを乗せていることもあり、安定確保のためにARMビジネスが必要だったのでしょう。

もちろんARMライセンスを受けているメーカは、この機会に拡販すればいいのですが、そこにはスマートフォン特有の問題があります。スマートフォン用のプロセッサは機能天こ盛りというぐらい、超多機能。開発費だけでも百億円単位でかかりますし、1年間程度の短期間で開発できるわけではないのです(実際には500人で3から4年間程度でしょうか)。また、スマートフォンは少品種大量。いま供給不足だからといってビジネスを拡充しても、モデルチェンジ後に採用されるとは限らない。その意味ではAppleは自社ARMプロセッサを開発しており、先見の明がありました。また、スマートフォンには限りませんが、半導体業界ではTSMCなどのファブに生産に委託するところがほとんどで、いくらビジネスを広げたくてもファブのライン確保が難しいという事情もあります。32nmプロセス以下の半導体工場は作るだけで何千億円とかかりますから、月産数十万枚以上の生産が前提になるわけで、欲しいときに欲しいだけ作れるわけではありません。

TIのARM事業は撤退が噂されており、高性能スマートフォン向けのプロセッサの開発が止まっている可能性が高いし、その場合、Amazonがテコ入れしたところで、スマートフォン向けのプロセッサの開発には2年以上はかかる。当面はKindleなどの単機能端末向けが主体になるのではないでしょうか。サーバ向けARMも長期的にはありえますが、その場合、TIのARM事業は買収先として最適とはいえない(サーバ向けARMを手がける別企業を買収して、TIのARM事業とマージする方が合理的なはず)。

長期的にはAmazonが本格的にハードウェアビジネスに乗り出すかは興味があるところですが、現状では情報が少なすぎて、予測は不可能だし、Amazonも短期的理由を優先したとしたら、長期的な方向はまだ決めかねているかもしれません。

いずれにしても、Amazonというネット通販およびクラウドサービス事業者が、プロセッサ事業に触手を伸ばすのは、いまのIT業界の現状を表しますね。

2012年10月15日

ソフトバンクは200億ドル(1.6兆円)でスプリントの買収するそうです。メディアでは携帯キャリアの売上高や加入者数ランキングが話題になるでしょうね。今回の買収はキャリア間競争もありますが、次の二つの理由も考慮しておくべきでしょう。

昨今、キャリアの加入者数は人気端末の有無に依存します。米国ではVerizonが加入者数で一位で他社に差を付けていたのに、iPhone提供が2位にAT&Tに先を越されると、iPhone人気によりAT&Tに加入者数で肉薄される事態になりました。国内でもiPhoneという人気端末がないドコモは加入者の流出が続いています。そしてソフトバンクは販売を通じて加入者数は人気端末がある否かだということを一番よく知っているキャリアのはず。ただし、人気端末の場合、キャリアに供給するか否かは端末メーカしだいだし、iPhoneを供給してもらうためにはAppleの要求をのまないといけいない。

これを避ける対策は二つ。(1)加入者数を増やして、強力な端末メーカでも一目をおかれる立場になること。(2)もうひとつは各種アプリケーションやサービスをHTML 5などのOSを含む端末に依存しないようにして、どの端末でも同じように使えるようにする。ただ、この方法はHTML 5の実装上及び性能上な問題が残されている。また、どのキャリアでも使えるサービスになるので囲い込みが難しい。というわけで現状は(1) を取ることになります。実際、今回のソフトバンクのスプリントの買収も加入者数を増やして、端末メーカへの影響力確保も大きな目的だったはず。

二つ目の理由はSkypeやLINEなどのOver the Top(OTT)サービスの台頭。ソフトバンクに限らず携帯キャリアにとってOTTは頭が痛い存在。パケット通信を使って、音声通信などのキャリアにとっては収益源を横取りするけど、人気のあるOTTがなければ加入者が逃げます。ある程度、加入者数が多いキャリアはOTTと敵対路線ができるかもしれませんが、ドコモやauのように(世界的にみて)弱小キャリアはOTTと協調路線をとって、人気OTTを集めるしかない。ただし、OTTとの協調路線は自らの土管化を進めることになります。弱小キャリアは選択肢はないですが、大手キャリアはOTTと戦うのか、共存を選ぶのかの決断に迫られるでしょう。

さてキャリア側の勢力図が変わって、端末メーカがどう動くか。まずiPhoneですが、当たり前ですがApple一社独占。だから、iPhone供給にあたってはキャリアに強い影響力をもっていますし、その力を使って収益を高く設定できます。実際、iPhoneの利益はMicrosoftの利益を抜いたとか。

気になるのはGoogleの動き。GoogleはAndroidという強力OSを抱えていますが、Androidライセンス先のメーカが多数のために、キャリアに影響力を行使できていないし、弱小メーカは採用してくれるならばどのキャリアに有利な条件でも売ってしまう状況、むしろキャリアに足下を見られまくっているという状況。Googleにしてみたら、Android端末をすべてGoogle直販にして、Appleのようにキャリアをコントロールしたいはず。そうしないと収益性でAppleには追いつけない。今回のスプリント買収を受けて、GoogleがAndroidライセンス先をメーカを絞り込みに動く可能性は高まったように思います。ただその場合、国内端末メーカはAndroidライセンス先に入れらないかもしれませんね。この場合、国内端末メーカは壊滅状態というか、なんというかという状況になりますね。

それからMicrosoft。何年経ってもMicrosoftはスマートフォン用のOSでは存在感が薄いですが、手中に収めたSkypeというOTTで存在感が出せるかもしれません。仮に通信がOTTが主役になると、キャリアはもちろん、端末もOSもどうでもいいという時代もありえるでしょう。ただ、Windowsというブランドを捨てられる勇気があればですが。

まとめると携帯キャリア各社は、キャリア同士で骨肉の争いに興じていたら、気づいたら端末メーカや、SkypeなどのOTT事業者という新しい敵が取り囲まれていたという状況なのでしょう。そしてソフトバンクは規模拡大で対向しようとしたということ。

2012年10月14日

先日、どのプログラミング言語がいいかというコメントを求められたのですが、個人的には見解はシンプル。前にも書いたことなのですが、プログラミング言語は所詮は開発者が使う道具。だから、稼げるプログラミング言語がいいプログラミング言語。どんなに技術的にダメな言語でも、その言語で開発者が稼げるならばいい言語。逆に技術的によくても、稼げない言語はダメな言語。それ以上でもそれ以下でもない。

2012年10月13日

来年度の概算要求絡みで某省から待機養成。ただ、待っているのもつまらないので、勤務先から歩いて5分ほどの場所でHBase本の著者によるセミナーがあるから、フラフラといってみる。質疑では質問がでる雰囲気がないので、WAL改良のトレードオフ問題に関する質問してみる。トレードオフ問題は設計思想があらわれるから、質問としてはおもしろいんですよね。ただ、回答でGoogleの運用設定まで言及したのは意外でしたが、HBaseの設計思想を知る上では役に立つ質問だったのではないでしょうか。ところでHBaseといえば有力コミッターがC社に移籍されたことが昨日発表になりましたが、逆の見方をするとHBaseの有力ユーザ(例えばFacebook)は彼等を雇うこと、つまりFacebookの拡張にに関心がなくなっているということであり、HBaseの将来にはやや黄色信号でしょうか。そのあたりはC社の方々もわかっていると思いますが、今回のセミナーでもその移籍を堂々と紹介しているのが意外でした。

2012年10月12日

コード至上主義というか、コード原理主義は苦手なんですよね。オープンソースなどの共同開発手法においてはソースコードは重要なのはわかりますが、ソースコードはソフトウェアの実現方法に過ぎないわけで、むしろ重要なのは、ソースコードの背後の考え方、例えばアーキテクチャやアルゴリズムの方。そしてソースコードはそれらをプログラミン言語処理系が実行または機械語に変換するための媒体にすぎないはず。Hadoopを例にとると、複雑な分散システムを作って、そのソースコードが公開されていることには高い経緯を払いますが、それ以上にHadoopが真似た対象、GoogleのGoogle File System (GFS)や、やはりGoogleのMapReduceにもっと高い経緯を払いたいんですよね。

2012年10月11日

渋谷のヒカリエで経済産業省主催のビッグデータ関連イベント「IT融合シンポジウム」でパネラーのお仕事。今回は実施事務局の計らいで、講師やパネラーの所属機関は案内をおいていいという話があり、勤務先の事務方から所長まで巻き込んで、配布用資料を用意・送付してもらう。パネラーはシンポジウム最後で3時過ぎだったのですが、資料を並べるためにシンポジウム前に会場入りして、準備作業。事務局の方には勤務先の関係者とは思われたものの、パネラー本人とは思われず、「パネラーの佐藤様は何時に来られますか」と聞かれたので、首をかしげながら「2時過ぎぐらいだと思います」と答えておく。

さてパネラーはビッグデータ絡みだったのですが、パネルはいかがだったでしょうか。盛り上がったのではないでしょうか。ちなみに他のパネラーと比べると、当方はただの実装屋なので浮いていましたがね。なお、今回のシンポジウムでうれしかったのは、これまで行く機会がなかったヒカリエに行けたこと、講師控え室が楽屋で、役者さん気分になれたこと。あとはヒカリエで気になっていたスイーツを買えたことでしょうか。ところでGoogleの法務担当役員のセッションはあれは何だったんですかね。インタビュー形式だったのですが、雑談ばかりで、情報ゼロ。インタビュー役が下手なのか、逆に当たり障りのないことしか聞けず、精一杯のインタビューだったのか。いずれにしても結果としてはGoogleは本質的な説明からは逃げるという印象を作っただけで、非常にネガティブがセッションになっていました。

2012年10月10日

夜は高円寺で環境系の講演。

ところで午前中の打合せがなくなったことをいいことに、ITpro Expoにいってみる。基調講演以外での来場はじめかも。いつものように「素人なのですが」といいつつ、出展者に質問しようとしたら、某社関係者に阻止される。それも某F社だけでなく、某H社でも。確かに素人いいながら、いつのまにか込み入った質問するのは酷いですね。なお、ITPro Expoに関しては、数年前にクラウドコンピューティングの基調講演をした後、各社のブースで「クラウドってよくわからないのですが、・・」と前置きをいいながら質問してたら「あなた、講演してた人ですよね」と怒られたこともあります。自分でも酷いと思っています。

どうして「素人なのですが」と前置きしながら質問するとかというと、業界関係者だと思われると警戒されて、答えてくれないから。また、質問の仕方もいろいろ気を遣うんですよね。全体にしてはいけないのはピンポイントな質問。絶対に警戒されます。そこでピンポイントに質問せずに、複数の質問に分けます。例えば今回のKVS系の展示は結構ありましたが「どんなハッシュ関数でデータ配置するんですか?」などと聞くと絶対に警戒されます。そこれで「データ配置・複製はシステムが自動的に決めてくれるんですか」と「サーバの増減時はシステムを止める必要があるか、データ管理情報再構築が必要なんですか」を聞けば、当初の質問の代わりになります。もう一度書きますが、自分でも酷いと思っています。

それから当方は見本市に行くときは開場の少し前に着くようにしてます。インターネットでいくらでも情報が集められる時代に、わざわざ見本市にいくメリットは、参加されている方々がどれに興味を持っていることがわかること。どうするかというと開場したときに、最初にどの会社のどのブースに人が集まるかを観察します。今回は初日に行きましたが、二日目以降の開場時の人の流れを観察するのが一番有用なんですよね。それだけわかったら、もう帰ってよろしい。というか時間の無駄なので帰りましょう。

2012年10月9日

SI事業の先行きが心配されていますね。SI業界に関しては不安要因はあげればきりがないのでしょうが、ひとつ上げるとしたら次の一点。それはSI業界はイノベーションに背を向ける構造になっているということ。イノベーションの目的の一つは生産性の向上のはず。しかし、SI事業者は人月換算、つまり開発に必要な要員数×時間で価格を決める慣習を続けるところが多い。その結果、イノベーションにより生産性が向上する、つまり要員の一人あたり開発量が増えると、SI業者は売り上げが下がります。イノベーションを通じて生産性が上がることで、事業規模が小さくなるというのは産業としておかしい。どんな産業でもイノベーションに背を向けている限りは衰退していきます。

2012年10月8日

ちょっと前の話ですが、ビッグデータを使った生産管理について相談していただいたのですが、いろいろ伺うと生産した製品の返品率(=廃棄率)が結構高い。いくら生産管理をがんばって、生産自体を低コスト化しても、不良在庫が多ければ意味がない。メーカの方は生産コストを気にするけど、それは製品が全部売れる場合であって、売れ残りを減らした方がいいと思うのですがね。

2012年10月7日

先週、JavaOneがあったそうですね。まったく話題になっていないところが、時代の流れを感じるものです。もちろんJavaが利用者が激減したというわけでもないので、そもそも目立った話題もないのか、Javaの利用者は新技術に関心がないのか。実際、JDK8のリリースが2013年になったこともあり、JDKそのものに関して新しい話題はなかったようですし、そもそも大多数のJava利用者はバージョン1.4や5を使っていると思われ(よくてバージョン6では)、二世代か三世代前のバージョンを使っている方々に次期バージョンの話には関心がないでしょう。今年のJavaOneで一番重要なニュースはMark Reinhold氏がまだOracleをやめてなかったということがわかったことでは。

2012年10月4日

用務先のCNRの情報通信研究所。イタリアは携帯電話に乗り遅れて、メーカも機器メーカもない。ノキアを抱えるフィンランドやエリクソンを抱えるスエーデンのようになろうと、イタリア政府が作ったのがこの研究所。でも皮肉なことに野望はうまくいっていないし、目標だったノキアもエリクソンも落ち目。

さて、こちらの記事によると、そのノキアは本社の売却を考えているようです。思ったより追い込まれているのかも。ノキアはスマートフォンに乗り遅れが不振の原因とされますが、それ以前に同社の特殊なストックオプション制度があったために、株価があがった時期に、古参の連中が一斉に抜けてしまったことが大きい。いわば組織ピラミッドの上の方がなくなった状態。北米や、他の欧州諸国から人を雇って、幹部にしたけどけど、穴が埋められるわけでもなく、戦略は迷走。それがスマフォの波に乗り遅れという形で現れます。

もうひとつの不振原因をあげるとしたら、Symbianの迷走でしょうか。SymbianをOSなのか、GUIにしてしまうのかが不明確でした。それと多くの携帯端末メーカがSymbianを採用する理由は、Symbianには定番アプリケーションがサンプルソフトウェアとして付属していたので、Symbianを採用する端末メーカはソフトウェア開発費が抑えられたのです。そこに穴をあけたのはiPhoneのアプリ戦略。いくらサンプルソフトウェアがあっても、多くの人が作るiPhoneアプリには勝てませんでした。

それにしてもノキアは一時はフィンランドの輸出額の25%を占めていた企業というよりも、巨大産業。そして事実上の国策会社でした。そのノキアが不振というのはフィンランドにとっては非常に厳しいんですよね。

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Ichiro Satoh

Ph.D, Professor
National Institute of Informatics

2-1-2 Hitotsubashi, Chiyoda-ku, Tokyo 101-8430 Japan
Tel: +81-3-4212-2546
Fax: +81-3-3556-1916