Diary

Ichiro Satoh

もともとは研究用ソフトウェアの開発履歴に関するページだったのですが、開発関連よりも雑談の方が多くなったので、2001年分から別のページを用意することにしました。リンクは勝手にしてください(でもリンクしたい人なんているのでしょうか)。

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2012年9月28日

大雨時に京急の脱線事故が起きましたが、メディアは相変わらず犯人捜しがお好きです。事故が起きたときは、事故の再発を防ぐことが一番重要なのであって、過度な犯人探しは、当事者の事故やその原因の隠蔽を助長して、再発の遠因になるのに。少なくても事故や問題に対して、責任所在や犯人を明らかにしたからといって、それで解決したことにはならないんですがね。

2012年9月27日

突然ですが、「エヴァンゲリオン」が理解できないんですよね。10年ぐらい前、テレビが話題になったときに、深夜の再放送を見てみたのですが、結局、何がいいのかがわからなかった。視聴者に解釈を任せるのはひとつの作品スタイルだと思うけど、だからといってその作品に思い入れができるとは限らないわけでして。いちおう、小説や映画は人がおもしろいというものは、食わず嫌いにならずに、読んだり、見てみるようにしていますが、何がおもしろいのかわからないこともありますね。まぁ、興味がないものは興味がないでいいのですが、問題なのは学生さんや若い技術者・研究者との話で、「エヴァンゲリオン」や「ジョジョ」を話題に持ち出されるのですが、ついていけない。こういうときは自分も年寄りだと感じるわけです。話題になったアニメでついていけたのは「攻殻機動隊」まで。というのはギブソンのSF小説「ニューロマンサー」が好きだったので、すんなり入れたのでした。そうそう理解できないといえば「ガンダム」は初代をリアルタイムで見ている世代なのですが、いちおう見てはいたものの、強い関心はなかった。だからキャラやモビルスーツの名前は忘却の彼方。IT業界の人はガンダム好きが多いから、話題についていけないことが多い。苦手といえば10代の頃から、少年ジャンプの格闘ものは苦手。だから「ドラゴンボール」も「ワンピース」は見ていて辛くなる。最近、話題の「ジョジョ」が関心がもてないのもこの理由。ナンセンス系が好きなんですね。それからテレビの話題はすべて苦手。というのはテレビを見ない人なんですね。一週間に0時間。でも毎日、新聞のテレビ欄を見てみる。でも見たい番組が見つからない。見るとしても日曜美術館などのアート系だけ。これでも昔はニュースぐらいは見ていたのですがね。

2012年9月26日

多様性の話の続きですが、大学でも小講座制で教授、准教授、助教が同一研究室出身者で固めているところは少なくない。研究分野によってはその方がいい場合もあるのかもしれませんが、研究に必要な知識には論文や書籍で学べることもあるけど、学べないこともある。

その一例は研究方法。どのようにして研究課題を見つけるのか、課題に対応するための研究の組み立て方、研究の遂行方法など。こうしたことは論文や書籍から学べない、別の研究者を間近で見て、それを盗むしかない。研究方法を改善して行くには、自分とは違う研究方法を知って、それを取り入れているしかない。しかし、同じ環境で育った人は同じ研究方法をとることが多いので、同じ環境の出身ばかりだと、他の研究方法を学ぶチャンスがない。

同じ環境の出身者で固めた研究室は、束ねる教授からしてみるとマネージメントは楽なんでしょうね。というのはメンバーが同じ研究方法しかとらないから、研究方法は揃うはず。不幸なのは准教授の以下の研究者で、まだまだいろいろな研究方法を学ばないといけないのに、そんな研究室にいる限りはそのチャンスはない。知り合いの研究者をみていても、それで伸びなくなてっている研究者は結構多いんですよね。人によるけど、研究者はある年齢をこえると良くも悪くも自分の研究スタイルが確立して、それ以外の研究方法やスタイルを取り入れられなくなる。逆に言うと若い時期に均質な環境しか経験できない研究者のほとんどは伸びないんですよね。もちろん例外もありますが、多くの場合はかわいそうなことになりますね。

2012年9月25日

さらに続き。国内企業がおかしくなったのはインターネットを通じたエントリーシートを使った新卒活動と無関係ではないと思っています。インターネットによるエントリーシート応募は就職活動は企業への応募数を増やしました。しかし、多すぎる志望者を選別するために、適性試験などをしてふるいを落とす。そうなると、ある程度、人材はある枠内に含まれる人材だけになる。さらに最近、企業も学生もコミュ力(コミュニケーション能力)を重視していますが、特定の分野に能力が高い人材はコミュニケーション能力があるとは限らないので、有能な人材を落としてしまっている可能性が高い。その意味では昔の就活にあった学校推薦がなくなったのはよくなかったと思います。学校が推薦する生徒を黙って採るのは、企業はカスを掴むリスクもあるけど、いまの面接では落ちるような変な人が組織に入り込む余地があり、結果として人材の多様性が維持できてたと思うのです。

逆に最悪の事例は某自動車メーカの人材選別。その企業の場合、社員を出身大学に派遣して、優秀な学生を勧誘させるところまでいいけど。応募した学生が人事部門の試験・面接で落ちると、その社員の人事評価が下がる。そうなると社員は人事部門が好む学生を勧誘してしまう。その結果、採用する人材は均質化していきます。それと親がその企業に勤める学生を採りたがる企業と、それを避ける企業があります。前者は類似した人材ばかりになりがちで、多様性がなくなります。そして大手企業でも競争力を維持している会社って、後者のことが多いんですよね。

2012年9月24日

昨日の続き。多様性が重要なのは学校も企業も同じだと思うんですよね。ここ10年間で、大手企業、特にメーカ系の人材は均質化してしまったと思います。さて当方が考える組織が均質化するロジックを説明しておきます。どんな組織も最初は多様性を求める人がいます。多様性に寛容な人は、その人の価値観から許せない人(多様性を好まない人も含む)でも採用するし、社内でも結果を残せばその人材を高く評価します。逆に多様性を許さない人は、その人の価値観の中にいる人しか採用しないし、社内でも評価しない。つまり自分と同様に多様性を求めない人を採用したり、人事では高く評価します。結果として、徐々に多様性を好む人は減っていき、逆に多様性を好まない人が増えていることになります。最終的には多様性を許さない人だらけになる。

電機系をはじめとしてメーカ系企業が競争力が失ったのも多様性を失ったことが大きいと思います(というか最大の原因では)。実際、昔の電機メーカを思い出してみると、変な人が含まれていたと思うのです。でも最近は電機メーカの方と会っても変な人に会わないし、似たタイプの人が増えました。言葉が悪いのですが、企業も変な人を飼っておく余裕がなくなったということでしょうが、人材が均質化した組織は環境が変化したときの適応性が低いんですよね。

2012年9月23日

一部で大学入試におけるペーパーテスト批判が話題になっているそうですが、学力評価をしつつ、人材の多様性をえるには合理的な方法のような気がします。というのは例えば面接だけで入試をすると、面接するウケする人材が受かりやすく、人材が均質化しやすいので。

驚かれるかも知れませんが、組織に必要な人材の多様性だと信じているんですよね。多様性の話しに戻すと、予め定められた目的に向かう組織や予め定められた課題を解決するための組織ならば、その目的や課題解決に最適化した人材で構成されればいいと思いますが、世の中は変化しているわけで、そうなると人材に多様性があれば、新しい目標や課題に向かえる人材が含まれているはずですから。

ちなみに当方自身が普通の公立の小・中学校、そして(それがたいして頭よくない)公立高校ときて、自宅から一番近い大学(ここではじめて私立)に進学したという経緯があるのですが、大学に入って一番驚いたのは、付属高校からの進学組の均質性だったのです。もちろん他の私立大よりはいいそうですが、親の年収が高い時点で、価値観は影響を受けますから。

2012年9月22日

日本の研究がイグノーベル賞を受賞したことが話題になっていますが、単純に受賞を褒めるのはよくないかもね。少なくても(何らかの公的資金の支援を受けている研究者)イグノーベル賞を目指すとか、といってしまうと品格を疑われるかも。アカデミアの研究者は、国研や国立大はもちろん、私立大でも何らかの公的助成支援をうけているし、それは学生さんも同じ。ですからウケ狙いの研究とか、無意味な研究をすべるべきではないはず。少なくても世間が「イグノーベル賞の受賞おめでとう」といってもらえるのは余裕というか、国民の皆さんの懐の深さがあるわけで、まずはそれに感謝すべき。「無駄な研究はやめろ」といわれる前に、研究者として何を為すべきかを考えた方がいいと思うんですよね。

2012年9月21日

iOSのバージョンアップはまだしておりませんが、地図アプリが評判悪いようですね。おそらくAppleもそれをわかっていて、リリースしたのでしょうね。改悪になっても自社で作りたいと思うほど地図アプリは重要ということなのでしょう。

今回の騒動が、オンライン地図の発展につながってくれるといいのですが。iOSの地図に限りませんが、せっかくのオンラインなのですが、オンライン地図にはリアルタイムな情報更新をしてほしいですね。例えば地方自治体は建造物申請で建屋情報をもっているわけで、それを活かせるだけでもだいぶ違うはず。地方自治体は独自作成しているところは財政問題から更新できなくなってきているし、ゼンリンなどから買っているところは購入費が負担になっているわけですから。行政機関が買っている各種情報の費用ってバカにならないし、少なくても地図にしていうと、その行政はそれを補完する情報をもっていたりするわけで、情報のギブアンドテークができれば双方が得すると思います。

また、そもそも複数の事業者が地図を作る必要があるのでしょうか。いまあ国土地理院、ゼンリンなどの民間事業者でそれぞれ地図を作成しているし、民間事業者はそれがビジネスとはいえ、現実世界の実体は一つであし、現実世界の状況を正確に表すことを求められる地図は、見た目は違うにしても、情報そのものに違いはないはず。

なんとか共有できないのですかね。

2012年9月20日

先月、楽天の電子書籍の品質問題が話題になっていましたが、今度はISBNをでたらめにつけていたそうです。ISBNには決まりがあり、勝手につけられないし、でたらめの番号をISBNと呼ぶのは迷惑ですし、それを許してしまうのはIT企業としてはやはり問題です。拙著「IDの秘密」を宣伝するわけではないですが、ISBNやバーコードのチェックディジットについても書いておりますので、楽天の皆様は是非読んでいただきたいです。ID付番はITの基礎のはずですから。

2012年9月19日

早朝から来客、打ち合わせ、博士中間発表、講演と目が回るような忙しい一日。

2012年9月18日

セコムが500億円で東電のデータセンター事業買収する話しがリークされました。実は当方も、今年に入ってから、複数のセコム関係者に、豊洲にある東電のデータセンターを買ったらと話していたのでした。ただ、当方が勧めたときは買収してもデータセンターを維持・運用する技術力がないので、買収は無理という回答をいただいておりました。ただ、東電の豊洲データセンターは企業はもちろん、政府系のサーバやデータを管理しており、国内企業の買収が望まれていたのです。その意味ではよかったですし、関係当局にしてみれば、懸案の一つが片付いたことになりますね。

2012年9月17日

ご存知のようにソフトウェアの研究を生業としています。ソフトウェアは、世の中のイノベーションの大きな力になると信じたいのですが、逆の力になることもあるんですよね。例えば地球シミュレータというスパコンがありましたが(4年間の開発に600億円を投じ、2002年に運用を開始)、当時、ベクトル型スパコンを開発しているのは実質、日本ぐらいで、海外はスカラ型、正しくは汎用プロセッサを利用したスパコンに移行している時期で、それ以前にベクトル型とスカラ型の趨勢の議論は終わっていたし、1998年から開発時期では世界的にスカラ型に向かうことはわかっていたはず。もちろん地球シミュレータはその後、何年かはトップに立ったわけですが、同時に、地球シミュレータがベクトル型温存したために、国内の科学技術計算はベクトル型スパコンから、汎用プロセッサ型スパコンの移行を遅らせることになります(もちろん、演算によってはベクトル型が向いている科学計算処理はありますが)。歴史にもしも禁句ですが、地球シミュレータを作らずに、早々に汎用プロセッサ利用のスパコンに移行していれば、科学技術計算アプリケーション分野では世界のトップに立てていたかもしれません。

何をいいたいのかというと、短期的に優位な技術と長期的に優位な技術がある場合は、短期的には不利益があっても長期的に優位な技術に投資した方がいい。なぜかというと技術は簡単にキャッチアップできるわけではないので、一時的にしても短期的に優位な技術に向かってしまうと、その後、長期的に優位な技術が普及したときには、世界の技術水準には簡単に追いつけなくなるからです。

例えば企業ではプライベートクラウドに投資するところがありますが、長期的にはパブリッククラウドに向かうはず。もちろん、プライベートクラウドからパブリッククラウドへの段階的なパスはあるにしても、自前でサーバを維持するのと、他者に任せるのでは違うし、プライベートクラウド向けの技術や知見はパブリッククラウドに役立つとは限らないし、むしろ最初からパブリッククラウドを前提にしていれば、短期的には手間もかかりますが、長期的には先頭を維持できるはず。どうせ研究開発も設備投資も、長期的に伸びる技術に投資すべきで、短期的な技術に対する研究開発も設備投資は、しばしば長期的に伸びる技術への移行を阻害することになります。

2012年9月16日

ANA便で帰国です。新造機なのでエコノミー席は新しいタイプなのですが、仕事もあって寝ずにおわる。さすがにぐったり。

2012年9月15日

パリは今週末は歴史的建物に入れる2日間。というわけで普段にいけないところということで、最初はエリゼー宮を考えたのですが混むらしいので、パリの市庁舎に変更。中は本当に綺麗ですし、議会や市長室も入れました。でも一番印象に残ったのは、清掃部門や修繕部門が、文化祭のように普段使っている掃除機や修理道具を展示していることでした。皆さん、仕事に誇りをもっているんですね。夕方はパリCDG空港に移動。ところでパリは物乞いをする人が増えていますね。フランスは失業率は大きく上がっていないはずですが、統計ではあらわれないところでは失業が広がっている感じ。

2012年9月14日

用務先のリヨンですが、近郊の街、グルノーブル在住中は頻繁に訪れていたこともあり、当方にとっては馴染みの街。気がついてみると、リヨンの街を一枚も写真を撮らずに帰ってきたのでした。ところでリヨンは金融と染織物の街なのですが、後者は海外製品に追いやられ、前者も昨今の金融危機でよくない状態。荒れている感じはないですが、昔ほどの華やいだ感じはないですね。

今回の用務先は、映画を発明したリュミエール兄弟の工場の近く。用務先に面している通りの前もリュミエール通り。富士フイルムが映画の撮影用と上映用フィルムの生産及び販売の終了するそうです。映画フィルムの最大手のコダックは倒産処理中。

ここ数年で、映画館の廃館が増えそうですね。フィルムによる映画供給が減っても、デジタル化すればいいと短絡的に考える人もおりそうですが、零細映画館はデジタル上映機材を買う余力があるとは限らない。むしろそんな余力は無いところの方が多いでしょう。そこに上映コンテンツのフィルム供給がなくなれば、廃業するしかないのです。また、映写機などのフィルム映画の周辺産業も危機でしょうね。需要が減れば事業が成り立たないのはもちろんですし、不要になった業務用機器は中古市場に放出されるので、ますます新品の映写機は売れなくなります。

2012年9月13日

国際会議の4日目。会議後にリヨン郊外にあるPaul Bocuseのレストラン。リヨンというか、世界を代表するシェフのレストランだけあって美味しかったですし、サービスもすばらしい。さすがはミシュラン三つ星を何十年もキープしているだけはあります。記念にPaul Bocuse氏とツーショット写真。御年85歳だそうですが、まだまだ達者で続けてほしいですね。

2012年9月12日

国際会議の3日目。だんだん疲れてきたこともあり、眠気に襲われるのですが、国際会議で眠気を抑えるのに一番いいのは、質問をすること。というわけで一部のセッションでは前発表に質問したのですが、眠気を抑えるためだったとは発表者にはいえませんね。もちろん、質問はきちんとしましたが。夜はバンケットだったのですが、会場を出たのは夜の1時過ぎ。会場のレストランの方はトラムが走っているといいましたが、12時には終電。仕方なく、4,5キロの夜のリヨンを散歩することに。

2012年9月11日

国際会議に参加しつつ、EUプロジェクトからのインタビュー。研究に関してなのですが、カメラの前で英語で受け答えするのは緊張します。夜にパーティがあったのですが、なんとHotel de Ville。普段は入れない場所なので、いい機会。内装は荘厳さをもっていて、よかったです。

2012年9月10日

国際会議の併設ワークショップで基調講演、PhDフォーラムのメンター、パネリスト。基調講演は好評だったようで、複数箇所から講演を頼まれる。

2012年9月9日

海外出張。今回はひさしぶりに明るい時間の出発。まずはANAのパリ便でパリに移動。それからTGVでリヨンに移動。飛行機は取れなかったのですが、結果的にはTGVは20時にリヨンがついたので、飛行機よりもTGVの方が早かったです。

2012年9月8日

自宅で仕事。でもかなりぐったり。

2012年9月7日

出張中の残務処理と、明後日から出張への準備。帰国が一日遅れたのは大きかった。

2012年9月6日

成田到着の10時15分着の予定なのに、着陸が10時15分過ぎ、ゲートに付いたのは30分。CAさんに事情を話してあったので、事前にビジネス席で待機、ドアが開く同時に外に出させていただく。といっても、成田エクスプレスは10時45分発に乗らないと間に合わない状況。ゲートから走って、入国審査、税関を通り抜けて、ギリギリ辿り着いて、無事、成田エクスプレスに乗車。そして東工大で講演、それから内幸町で講演。こちらもたいへんでしたが、両イベントの事務局はハラハラだったはず。それにしても成田空港から直行で、ダブルステージ。用務が終わったのは夜の10時過ぎ。ハードな一日、というか一昨日から続いているような状態。だいたいルフトハンザのエコノミー席って寝られないんですよね。

2012年9月5日

ルフトハンザはミュンヘン経由で成田行きの飛行機を用意してくれたのですが、問題は6日の昼過ぎに信号処理系の国内学会の全国大会の基調講演と、夕方に某省絡みの会合で講演があること。後者はいいとしても、前者はギリギリ。先方に連絡したりで、大会会場(東工大)までの行程や時刻表の確認作業。上京しては成田エクスプレスで品川までいって、タクシー利用が一番早いのですが、成田エクスプレスを一本乗り損ねたらアウトの状況。過去にも飛行機の遅延やダブルブッキングなどいろいろありましたが、今回は切り抜けられるでしょうかね。

2012年9月4日

午前中はワークショップに出て、午後は空港移動までタリン旧市街。ここまでよかったのですが、ルフトハンザのストライキのため、定刻になってもフランクフルト行きの飛行機がタリン空港にやってきていない(まだフランクフルト空港を飛び立っていない)。一方、タリンからフランクフルトの所要時間は2時間ちょっと、フランクフルト空港での成田行きの乗り換え時間は1時間ちょっと、というわけで帰れないことが確定。ルフトハンザ側とすったんもんだのあげく、空港近くのホテルのバウチャーをもらって、タリンでもう一泊。ちなみにこちらの写真はルフトハンザのストの新聞記事の写真。ストは結構荒れた模様。同日のフランク発成田行き及びミュンヘン行き成田行きも結構だったとか。

2012年9月3日

ワークショップのSteering Committeeとして開会挨拶と講演。夜はWelcome PartyのあとSteering Committee Memberと夕飯。

2012年9月2日

今日はオフ、ということでタリン市内を観光させていただく。タリン旧市街は中世の趣。欧州では小さな町や村では中世の佇まいを残すところはありますが、首都で中世の佇まいをのこすところは珍しい。それとレストランのお味の水準がすごく高いのに、お安い。コストパフォーマンスが高い。というわけでタリンの写真です。それにしても天気が移ろいやすいところですね。朝は雨がふっていたと思ったら、1時間もしたら快晴、また曇り、また雨、そして快晴、大雨。

2012年9月1日

フランクフルト空港で乗り換えですが、次の登場時間まで7時間。さすがに長いのでフランクフルト市内の現代美術館をみてくる。それからタリンに移動。

2012年8月31日

勤務先の大学院入試と判定会議。一瞬、家に戻って羽田空港に移動。明日未明のフライトでフランクフルトに移動。これから実質、24時間の長旅。当たり前ですが、エコノミー席です。

2012年8月30日

午後は入試。さて昨日の続きを少々。ソフトウェア屋からみると、システムLSIをざっくり分類すると、特定のユーザ企業の、特定製品に最適化したカスタムLSIと、周辺回路をいろいろいれて多機能LSIと分けられます。ルネサスはどちらかというと後者狙い。もちろん車載パソコンが主力だけど、特定の自動車メーカや、特定の車種向けの車載パソコンではなく、多くの自動車メーカが使えるようなマイコンばかり。売り上げを増やす=顧客数を増やすということになるから、営業などの間接部門が肥大化しやすい。だから組込系の見本市に行くと、ルネサスの方々は見本市で一生懸命営業。逆に特定顧客だけを狙うLSIメーカは見本市に出展しないか、仮に出展していても見本市で営業する気はないんですよね。

2012年8月29日

ルネサスに米国ファンドがルネサスに1000億円出資するという記事がありました。倒産前に買った方が得か、倒産後に買った方が得かですね。人材流出は抑えることで、高く売り抜けしたいならば前者、安く買っておいて、利ざやを稼ぐならば後者。ただ、半導体の場合は設備の陳腐化が早いから、買うならば早いほうがいいという理由もありそう。立場上、いろいろ噂は耳に入る立場だけど、ルネサスは構造的な赤字だから、1000億円出資してもすぐに消えてしまうと思われ、この米国ファンドさんはその覚悟があるのか否か。ルネサスは従業員数多いから、下手にリストラ費用をかけるよりは、優秀な人材だけで一本釣りしておいて、ルネサス自体は倒産させて整理解雇する方が安くつくかもね。みもふたもない言い方ですが。

2012年8月28日

数日前にAppleのTime Capsuleがお亡くなりになる。熱をもつデバイスだったので、残暑で力尽きたのかなぁ。というわけで分解して、ハードディスクだけでも取り出して、データを回収をこころみるものの、裏面のラバーがうまく外れずに断念。むかしからAppleは分解しにくく、作る傾向がありますが、ユーザのデータをなんだと思っているのやら。今回は実害はないけど。

2012年8月27日

23日の続きです。昔、フランスの哲学者Jean Baudrillard の著書「消費社会の神話と構造」という本がありました。読んだのは大学1,2年の頃だったと思います。アマゾンにあった同書の書籍案内を引用させていただくと「現代思想を代表するボードリヤールの代表作で、現代消費社会を鋭く分析した本として高い評価のある本である。家庭電化製品や衣料、車といった各種の商品は、その使用価値だけで用いられるのではなく、社会的権威や幸福感といった他人との差異を示す「記号」として現われる。ここに消費社会の秘密を解く鍵があるという。さらにこうしたモノ=記号を生産されたモノに限定することなく、社会の森羅万象—ファッションから広告、教養や健康への強迫観念、暴力まで—にあてはめて考察することで、現代社会の様々な神話と構造をえぐり出すことに成功している。」という内容。

当方が学生の頃はバブル崩壊する直前でしたし、消費は美徳、高級品を買う人がいっぱいおり、この本やソシュールの記号論を読みながら、当時の世の中の人の行動をみておりました。実際、当時もいまも都心に住む20代の人にとって、自動車がないと生活できないということはないし、給与2年分よりも高い車を買う人は多かった。つまり自動車は移動手段ではなく、シンボルであり、そのシンボルをもつことで、自らのアイデンティティを形成していた時代といえます。

さて22日の話の続きになりますが、当時、ファッションは服という機能以外に、社会的地位、経済力、所属する組織を表すシンボルでした。そして今は、モノはシンボルとしての意味を失っているのかもしれません。そうなると人はモノに対して外見よりも機能を重視しますし、モノも不必要にもつことはなくなるでしょう。一方で人はアイデンティティが必要です。そのアイデンティティを形成しているのがSNSやブログなのかもしれません。そうなるとSNSやブログというのはコミュニケーションや情報発信ではなく、ユーザのアイデンティティそのものとしてみていいのかもしれません。

2012年8月26日

昨日の続きですが、もうひとつの見方はアップルはサムソンをOEM工場にしたいのかも。つまりサムソンが他のスマートフォンを作ることを徹底的に邪魔して、実質的にアップル専用OEM工場化する。アップルにしてみれば、あの販売数を作れる生産設備をもつメーカは少ないので、安定確保しておきたいというのは本音でしょうから。

2012年8月25日

アップルとサムスンの裁判が終わったようですね(どうせ上告するでしょうが)。サムスンにしてみれば払えない金額ではないでしょうが、基本的な操作で特許侵害を認められたので、今後の開発に一定の縛りをうけるのも事実。ただ、この裁判は実質は対Android、いいかえるとGoogleとの裁判でしたからね。ただ、仮にAndroid端末全体が販売差し止めになると、アップルは自分が独禁法で縛られるので、一番有力メーカのサムスンをスケープゴートにしたのでしょうね。サムスンは払えない損害賠償額ではないと思いますが、むしろ同社の株価が下がる方が怖いでしょうね。株価が下がると、フラッシュメモリを含む、同社の他の事業部の設備投資に影響がでてきますから。

2012年8月24日

Windows 8 RTを体験。WindowsをARMプロセッサ版ということになりますが、いいとか悪いとかという段階ではなく、ともかく動作が遅い。元のWindowsもお世辞でも軽快とはいえませんから、非力なARMプロセッサに乗せれば当然の帰結といえますがね。ただ、普段、ユーザイクスペリエンスを重視する企業ならば、動作が遅いシステムがどんなユーザイクスペリエンスを持つかはわかると思うのですが。

Windows RTの使い勝手は評論好きの方々に任せるとして、ライバルであるiPadはMacintosh用OSではなく、非力なiPhone用OSを搭載しており、動作は重くない。やはり現状ではPC用とタブレット用は別のOSにするのがいいのかもしれません。もっともWindows XPとかであれば、それなりに動くような気もしますがね。プロセッサインストラクションの相違はコンパイルしなせばいいのですが、OSの相違を超えてソフトウェアを作るのは困難で、その意味ではWindowsに拘るのはわかるのですが。

2012年8月23日

昨日の続きです。今年は本を書かせてもらったのですが、その表紙はデザイナーさんに頼んだものの、大枠の構成は当方が考えましたし、本の販促用の帯は当方デザイン。そのデザインでは書店で並んだときに目立つことだけを狙いました。というのは20年以上前に装丁デザインの仕事を少したことがあります。その当時、よくいわれていたのは、書店では手に取ってもらわないと売れないし、手に取ってもらうには本の表紙が目立つものでないといけない。だから出版社の方から注文は、人がギョッとするぐらい目立つデザインでした。

でもよくよく考えてみると、いまはあてはまらないかもしれません。書店で本を買われる方でも、アマゾンなどのユーザレビューを見てから、書店で買うという方も増えています。そうなると本にとって装丁は重要ではない時代といえますし、さらにユーザレビューなどを通じて、買う前に内容を知っている時代かもしれません。例えばレストランを選ぶときも、Webのレストランガイドのユーザレビューを参考にします。つまり、いったことのないレストランでも、すでに味やサービスを知っていることになります。そうなると極端なことをいうと、レストランに行く目的は「料理を楽しむ」ではなく、「自分が読んだユーザレビューが正しいかを確かめる」ということになってしまいます。

もちろん、本にしてもレストランにしても、お金と時間という貴重なリソースを使います。だったら外れは避けたいというのは人情だと思いますが、でも他人レビューがないと本が買えない、レストランを選べないというのでは、誰もを踏み入れていない新しい世界には踏み入れなくなります。これがいま流行のソーシャルというのかもしれません。ペンギンは最初に海に飛び込むのを嫌がり、岸壁に群がるそうですが、その姿を想像してしまうのですよね。個人的には最初に海に飛び込むペンギンでいたいですね。ユーザレビューのないレストランや本を買っても、待ち構えるシャチに食べらてしまうわけではないですから。

2012年8月22日

しばらく技術ネタが続いたので、今日はそれ以外の話題。最近、街を歩いていて思うのですが、クールビズが浸透したのか、この時期、ネクタイ姿の人はほとんど見かけません。それは夏場だからというのはあると思うのですが、全般に服装がカジュアルになっているような気がします。「昔は」というほど昔ではないのですが、以前は服装を含む、人の外見はその方の人となりを示すといわれていたし、特に第一印象では服装による影響は大きいとされてきました。実際、スーツを着ていればビジネスマンに見えるし、定職に就いているイメージが与えれますし、そのスーツが高級生地で、体にあっていれば高級スーツ店オーダーメードの服が作れるほどの金持ちということがわかりました。

でもは今は初対面の人でも、その方のブログを読んだり、TwitterなどのSNSをみれば、その方の人となり、例えば職歴、活動、交友関係、趣味が想像がつきますし、それは服装からくる印象よりも精度が高い想像だったりします。つまり、初対面の人であっても、服装を含めて、外見は重要ではなくなっているのかもしれません。それにあわせてドレスコードも変化してきていますね。故スティーブ・ジョブズ氏は重要な発表会でもジーンズに無地のカットソーでしたし、マーク・ザッカーバーグはグレーのパーカー。国内企業のお偉い方でもカジュアルな服装で会合に現れたりします。昔「人は見た目が9割」という書籍が売れましたが、いまは「人はブログやSNSが9割」という時代かも。

2012年8月21日

IT業界の方は調査会社の市場推定データ(あくまでも推定)や市場予想を引用するのが大好きなのですが、その中でも人気が高いのがGartnerのハイプ・サイクル。だから発表されるといろいろ話題になります。問題なのはGartnerなどの調査会社の市場予測が信用できないというより、IT業界の方は自分たちに都合のいいときだけ、引用するし、都合のいい解釈するし。そのなかでもハイプ・サイクルは解釈はいくらでもこじつけられますからたちが悪い。なのでIT系プレゼンを拝聴していて、Gartnerのハイプサイクルを引用された時点で、そのプレゼンは聞き流すことにしています。そのフラグとしては便利な情報ですね。実は800人以上の方に聞いていただいた、某見本市の基調講演中に「Gartnerの予測データに頼るプレゼンは信用できない」と叫んだら、次に演壇にたった某大手IT会社役員様が冒頭からハイプサイクルを引用してしまい、あのときはさすがに気まずかった。

2012年8月20日

なんでハードウェア進化をウォッチし続けているかというと、ソフトウェアはハードウェアの進化に縛られるから。ソフトウェアはハードウェアで実行されます。だから、ハードウェアの進化に強く依存します。実際、ソフトウェアによる効率化手法は、ハードウェアの進化、例えばプロセッサにインストラクションがひとつ拡張されただけでも無用になることもあるし、新しいハードウェアが新しいソフトウェア的な課題を作ることがある。ただ、半導体微細化が止まると、プロセッサ性能だけでなく、メモリ容量にも限界がでてくる。もちろん、これまでも微細化限界説はくつがえされてきたけど、半導体微細化が止まったときに、どうすればいいのか、を考えておくことは重要。半導体の微細化が進まなくなると、ソフトウェア屋(当方を含めて)は、重いソフトウェアを開発しておいて、ハードウェアがいずれは高性能化するので大丈夫という、これまでエクスキューズは通用しなくなる。

ソフトウェアって、物理的な実体がないから、劣化しない。機能や性能をあがらなければ、いつまでも古いソフトウェアが延命し、結果として、新規ソフトウェア開発の需要は減ってしまいます。逆にいうとソフトウェア業界は発展し続けないと存在できないんですよね。

それから自分が次世代コンピュータを予測できるという気は毛頭ないけど、5年先、10年先のコンピュータのハードウェアどうなっているかを予測できなければ、ソフトウェア研究でも、適切な課題設定はできないのも事実。学生さんは自分の指導教員に次世代コンピュータの予測をきいた方がいいと思う。指導教員が予測できる人でないと、学生さんは無意味な研究をさせられる羽目になるから。かわいそうだけど、博士の学生さんなら、課題設定に間違えると、博士をとれないか、とれてもその後のポジションがなくて、終わってしまうこともありますからね。

2012年8月19日

もともとの話はDRAMメモリの微細化が進まなくなる可能性から始まったので、それに戻って、一連の話を終わりたいです。結局、DRAMメモリの微細化が進まなくなりますと、各コンピュータのメモリ容量が伸びなくなります。この場合、メモリ容量以上の処理をしようしても、何らかの仮想記憶を使って擬似的にメモリ容量を多く見せかける方法が必要になります。これはコンピュータの歴史からいうと先祖返り。1980年代まではメモリは最も高価な部品であり、そのメモリを有効に利用するために各種技術が提案・利用されたが、それらのうちいくつかが復活する可能性はあるでしょう。

また、DRAMだけでなく、プロセッサについても半導体微細化の行き詰まりがいわれています。微細化が進まないとプロセッサ性能も上がりません。当たり前。

このためプロセッサとメモリも数で性能や容量をカバーするしかない。その方法の一つは、スタッキング基盤やMulti Chip Moduleなどの技術により、プロセッサとメモリからなるモジュールを多数ならべて、メモリ容量とプロセッサ性能を大きく見せかける方法(並列コンピュータ、またはクラウドコンピューティングのサーバ群の小型版またはオンボード版ともいえる)。

データのある場所にプログラムコードを実行すべきであり、実行中のプログラムまたはそのプログラムコードを計算対象のデータを保持するコンピュータに動的に配置しながら処理を進める技術が重要になるかもしれませんね。全体を統括するOS(またはリソースマネジャー)の機能は大きく変わるとともに、プログラムの配置・移動機能が求められるかもしれませんね。

2012年8月18日

もうすこしSSDのこと。ソフトウェア屋なので、ハードウェア技術動向によるソフトウェアの影響が気になるわけですが、SSDに関しては、HDDの置き換えである以上はソフトウェアへの影響は少ないはず。OSはストレージ効率化手法はHDDを前提にしているものも多く、それはSSD向きに換えることで、アクセス性能だけでなく、書き込み回数制限を実質的に伸ばす効果も期待できますね。

既存のSSDコントローラは、フラッシュメモリ書き込み回数制限を実質的に減らすことに注力していますが、動画像データや音声データの場合、僅かなデータの欠損は実質的な支障がない場合もあります。書き込み回数管理を簡単化して、書き込み性能を重視したSSDコントローラが登場する可能性はあるかもしれません。実際にはファイルシステムとして実装することから、ファイルのメタ情報は信頼性のあるストレージにいれて、実際のデータを格納するデータブロックは信頼性のないSSDストレージにいれる方法になります。結局、OSベンダーのがんばり次第かも。

2012年8月17日

昨日の続き。SSDをHDDのキャッシュとしての使い方は、HDDに対して数GBから数十GB程度のSSDを用意して、頻繁にアクセスされるファイルをSSD上にキャッシュして、一度キャッシュされればその後のアクセスにおける性能向上させるというもの。SSDのランダムアクセス性能とHDDのシーケンシャル性能を活かせることから、広く使われるのではないでしょうか。もちろん、ファイルやデータだけでなく、アプリケーションにも有用であり、OSそのものをSSDキャッシュにいれた場合はブート時間は格段に短くなります。SSDというと書き込み回数制限が心配ですが、書き込み回数を超えてSSDブロックが壊れたとしても、キャッシュの場合、対象のファイルをHDDにアクセスすればいいだけなので、SSDの信頼問題を回避しやすい。 データ量が多いが、アクセス性能は重視されるサーバでは需要があるでしょう。実装方法はHDD側にキャッシュ用SSDを搭載する方法が想定されますが(東芝などHDDとSSDの両方を手がける事業者は有利なはず)、OS側でRAMキャッシュをサポートするのであればマザーボードにキャッシュ用SSDを直接搭載する可能性もあるかもしれません。

SSDをHDDの置き換え、またはキャッシュとして使う場合でも、近い将来、接続に使うインタフェースのSATAが性能的ボトルネックになりそう。NANDフラッシュの微細化は進まなくなってきているといっても、まだ微細化の余地はあるわけですし、さらにSSDコントローラの性能は上がっており、当面はSSD性能は伸びるはず。しかし、インターフェースの性能はSATA2.0で3Gbps、SATA 3.0で6Gbpsまで。安直に考えればPCI Expressなどの利用でしょうが、PCI Expressの性能がそれなりなので、一時的な解決策かもね。

2012年8月16日

同じ話題が続いていますが、内容的に重要なので許してくださいね。というのはいまメモリ階層に大きな変化が起きようとしてるから。いまのコンピュータに搭載されるメモリは容量、値段、速度、(ダイサイズ)によって階層化されてきました。例えば高価なSRAMはプロセッサのL1及びL2キャッシュに使われ、その次に速いDRAMがメインメモリに使われ、長期保存及び大量データはHDDに格納される。この階層化そのものは変わらなくても、各階層で使われるメモリ・ストレージ技術は変わる可能性があります。個人的には二つの変化を予想しています。一つは不揮発性メモリの利用、もう一つはHDDからSSDの流れです。不揮発性メモリの話は書いたので、SSDまわりのことを書いていきます。

SSDについてはHDDの置き換え方向性と、HDDのキャッシュとして利用する二つの方向があると予想しています。SSDはHDDの置き換えは、一般的には性能的にSSDの方が有利であり、 PCでもSSDを体験するとHDDには戻れないません(はい、当方)。このため、今後ともにHDDからSSDへの置き換えが進むと予測されますし、その流れが加速するクリティカルマスがあるかもしれません。なお、現状ではSSDの方が高価だが、その差は縮まってきた。価格的に追い抜くのはまだ先でしょうが、容量の小さい場合はSSDの方が割安、または小容量HDDが生産されていない状況が起きつつあります。また、体積辺りの容量はSSDの方が多い製品も登場していますし、消費電力的にもSSDが有利。データセンターなど設置スペースや消費電力にシビア場合はSSDの採用が増えるでしょう。

2012年8月15日

今日も不揮発性メモリの話。今日はハードウェア的な影響。不揮発性メモリがコンピュータに導入されるとした場合、次の3つのストーリーが想定されます。

一つ目は現在のプロセッサ向け2次キャッシュはSRAMが主流。これを仮にMRAMに換えた場合、ダイサイズは1/4程度とされる。電力的にも有利とされます。不揮発性メモリは複数あるが、2次キャッシュとして利用する場合、書き込み回数制限を考えるとMRAMが有力かもしれません。ただし、ReRAMなどの他の不揮発性メモリも書き込み回数が向上する可能性は考慮しておくべきでしょう。

二つ目は不揮発性メモリをストレージのキャッシュとして利用する方法です。DRAMのキャッシュと比べて電力オフしても、キャッシュが消えないことは有用。なお、キャッシュ対象のストレージはHDDだけでなく、SSDも考えられます。というのはSSDは書き込みが遅いことから、それを補完するために不揮発性メモリによるキャッシュが使われる可能性は高い。

三つ目はDRAMの置き換え。半導体の微細化限界説は繰り返し現れるが、半導体業界は乗り越えてきた。ただ、今回も半導体業界は限界を超えるという期待をしつつも、 微細化が止まったときの状況は想定しておいた方がいいはず。

DRAMの微細化が進まない場合、正しくはメモリセル中の電子数が少なくなり、安定しなくなる場合、DRAMそのものを、微細化の余地がまだある不揮発性メモリに置き換えるケースも想定すべきでしょう。DRAMを不揮発性メモリに置き換えた場合、消費電力低減につながる。一般にDRAMはデータ保持の電力供給が必要であり、特に微細化が進むと、情報変更に関わる駆動電力は減るが、メモリ情報を保持するための電荷数が減るために電力供給間隔(リテンション時間)が短くなりますし、リーク電流も増えるという問題があります。不揮発性メモリはリテンション向け電力が不要。このため、 不揮発性メモリそのもの消費電力は実現技術(MRAM、STT-RAM、ReRAM、PCRAMなど)に依存するとはいえ、 不揮発性メモリの消費電力はDRAMよりも低くなるはず。また、セル中に電子数に依存しない、不揮発性メモリは微細化の余地が出てきます。

2012年8月14日

今日もDRAMの代わりに不揮発性メモリを使う場合のソフトウェア的な影響。

不揮発性メモリはOSを大きく変える可能性があります。メモリが電源オフで消えなくなると、ストレージとの機能的な差異はなくなります。メモリとストレージを統一的な管理をするOSが登場するかもしれません(メインフレーム系で使われるシングルレベルストレージに近い?)。

ところで、既存のOSはプログラムコードをストレージからメモリ(DRAM)にロードして、実行します。電源オフになればメモリ上にロードされたプログラムも消えます。このメモリが不揮発性メモリにならば、予めメモリにロードしておけば実行できますし、実行中に電源オフになってもメモリ上に残っており、再びONになったときはそのまま処理を再開できます。これはOSにもいえて、OS稼働状態で出荷され、再起動は修理扱いになるかもしれない。

従って、工場出荷時に何らかの方法で、ロードされたプログラムコードを不揮発性メモリに格納しておくことができれば、ロードしない分だけ、プログラムの起動は早くなります。これが重要なのはOSからプログラムコードをメモリにロードする機能そのものをなくしてもいいということ。この結果、OSが簡素化されるだけでなく、セキュリティ的にも大きなメリットがあります。具体的にはプログラムコードをメモリにロードする機能がなければ、OS稼働後、コンピュータウィルスに感染する可能性を排除できます。当たり前ですが、コンピュータのセキュリティを大きく向上できます。

不揮発性メモリをコンピュータ主記憶とした場合、ソフトウェア言語・実行環境も変わるかもしれません(これは願望)。例えばオブジェクト指向でいうと、プログラムコードに相当するクラスをなくして、メモリ上にロードされた状態であるオブジェクトだけでプログラムを構成してもいい。

2012年8月13日

続いていますが、DRAMの代わりに不揮発性メモリを使う場合のソフトウェア的な影響。

不揮発性メモリの影響を最も受けるソフトウェアのひとつはデータベース(DBMS)。DBMSはデータ操作をメモリ上で行っても、メモリ上のデータは電源オフ時に消えてしまうので、データの永続化、つまりメモリ上のデータ更新もストレージに書き込んでいます。いわゆるACIDプロパティのDね。ただし、ストレージの書き出しは遅いためにストレージへの書き込みタイミングを遅らしたり、ひとまず更新ログだけをストレージに書き込んでいます。これにより故障時にデータ普及ができるようにしつつ、ストレージへの書き込みの遅さをカバーしています。実際、既存DBMSは、こうしたストレージのアクセスの遅さをカバーするために様々技巧的手法を駆使しており、非常に複雑になっているのが現実。おそらく大手DBMSベンダーでも自社のDBMSが複雑すぎて、新規書き直しになっているのではないでしょうか。

これが不揮発性メモリになると、データは電源オフになっても消えない。つまり、メモリ上における更新操作=永続化になります。これは単純にストレージの書き込みコストがなくせるだけでなく、DBMSを複雑にしている技巧的な手法の多くは不要にしてしまいます(具体的にどの手法が不要になるかは別の機会に)。そうなればそんな技巧手段の塊であるDBMSの内部は一変する。もしかすると不揮発性メモリを前提にすれば、ナイーブな実装のDBMSでも、性能的に既存の商用DBMSを凌駕する可能性があります。このためDBMSベンダーの入れ替わりかもしれません。逆にいえば、こうした環境変化でもなければ、技術者が慣れているからという理由で特定DBMSが売れる状況は変わらないでしょう。

2012年8月12日

不揮発性メモリの話の続き。DRAMの代わりに不揮発性メモリを使う場合、ハードウェアだけでなく、ソフトウェア的にも大きな影響がでてくる。

その一つはコンピュータは運用方法が変わること。いわゆるノーマリーオフ・コンピューティングの実現です。通常時はオフで、必要なときだけオンとして運用。このとき不揮発性メモリを使えば、電源オフ前のデータが消えないので、再び電源オンにしたときに処理再開は格段に早くなるはず。この場合、入出力デバイスもそれに対応したものが必要となるかもしれません。イメージ的にはいえば。電子ペーパーのように通常時は電力供給が不要な静的な入出力デバイス。

さて、ソフトウェア的影響ですが、従来の通常時オンを想定したアプリケーションではなく、ノーマリーオフ・コンピューティングを想定したアプリケーションが登場するはず。OSは既存のノートPCやタブレットのような運用ではOSそのものの変更は少ないでしょうが、短時間に頻繁な電源オンオフを繰り返すような、従来なかったような使い方もでてくるでしょう。その場合、オンオフ間隔が、OSのスケジューラーのタスク切り替え間隔に近づくと、スケジューラ機構の変更が迫られるかもしれません。OS研究のイシューとしては結構おもしろいと思うのですがね。

2012年8月11日

続き。半導体の微細化の限界が語られているのはDRAMも同じ。もちろんDRAMも何度か微細化限界説が流れましたが、メモリベンダーはそれを乗り越えてきました。今回も半導体業界は限界を超えるという期待をしつつも、 微細化が止まったときの状況は想定しておいた方がいい。実際、今回はDRAMベンダー自身がDRAM以外のメモリ技術、例えば不揮発性メモリの開発に力を入れており、DRAMベンダーも微細化が止まる可能性はゼロではないとみており、そのときの保険が必要と考えているわけですから。

さてDRAMの微細化が止まると何が起きるかというと、メモリ容量が伸びなくなるし、メモリの低価格も遅くなる。もちろん、DRAM回路の3次元化で容量が伸びる余地があるでしょう。それ以外にMulti Chip Module(MCM)方式、つまり複数ダイをひとつのパッケージに入れて、容量を増やす方法もあるはずです。ただ、どちらの方法もメモリ間の回路が複雑になるので、読み書き速度で積み重ねられる数も、載せられる数も限界がでてくる。他にもメモリチップを大量に並べることになるが、筐体サイズ上の制約もあるし、メモリバスのメモリ数の電気的な限界から、搭載可能なチップ数には限界がある。

コンピュータの主記憶の容量が伸びなくなる。これは処理可能なデータ量に限界が生じ、アプリケーション機能も増えなくなってくることになります。

2012年8月10日

これまでも半導体の微細化は限界が来るといいつ、半導体ベンダーはそれを乗り越えてきたきました。というわけで半導体の微細化限界説はオオカミ少年化していますが、それでもさすがに22nm以下は厳しい。それは技術的な問題に加えて、経済的な問題がありますから。インテルはいまは22nmプロセスのチップの生産に入っていますが、次の14nmはいけても、その先の10nm以下は難しいのではないでしょうか。というのは22nmプロセスの製造工場への投資は安くみても3〜5千億円。いくらインテルでも簡単に投資できる金額ではないし、14nm以下は最低でも5〜8千億は必要なはずで、いくらインテルでも簡単に投資できる金額ではないはず。仮に設備投資したとしても月産数十万枚以上の売れるプロセッサでないと採算に合わないはず。オオカミ少年とはいわれようと、10nm以下は厳しいと予測した方がいいかもしれません。

2012年8月9日

なんと。大日本印刷(DNP)が日本ユニシスの筆頭株主になったそうですね(記事)。日本ユニシスの筆頭株主だった三井物産は売却先を探しているという話はきいていましたが、DNPとはおどろきました。商社としてはモノ、つまりハードウェアが売れないと儲からないわけですが、どうなんでしょうね。まえからユニシスは凸版さんよりもDNPさんに近かったようですが。

2012年8月8日

声を出して読みたい規則:労働安全衛生法 事務所衛生基準規則 第五条3「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。」ということでよろしくお願いします。

2012年8月7日

まぁ、当方もソフトウェア開発の方々は、それ以外の方々のソフトウェア開発への無理解を避難するのが好きですね。非難される誤解としては「既存ソフトウェアを流用すれば速く開発できる」、「ハードウェアと違い、ソフトウェアは出荷後も改良が容易」、「ソフトウェアのクオリティは開発者によらない」、「開発者の数が多ければ数多くの機能が短時間に開発できる」などがあるそうですが、確かに実際のソフトウェア開発では成立しないものばかり。ただ、ソフトウェア開発者にとっても、こうした誤解を、非開発者の無知や無理解とみるか、ソフトウェア開発者は非開発者に説得すべき事項、ソフトウェア開発の本質的な問題とみるか、で道が分かれますね。一番目は非開発者を馬鹿にしておわってしまう。二番目は一つの解だと思いますが、結局、現状の問題を肯定しているだけ。三番目は問題解決に向かいます。実際、いまあげた誤解例は、ソフトウェア開発では成立しないかも知れませんが、他の開発では間違っているとはいえない。ならばソフトウェア開発が未熟だと思うべきで、その誤解を解消する、つまりソフトウェア開発の未熟な部分を改善する方法を考えた方が建設的だと思うのですよね。

実は博士課程の面接などでは、わざと既存の技術のダメなところを志望者に話してみて、反応をみる。だいたい人分されて、ダメぶりをいっしょに避難するだけの人、ダメな理由を分析したり、さらにその改良方法を提案する人がいます。残念だけど前者は研究者には向かないんですよね。

2012年8月6日

NASAの火星探査機Curiosityが火星に到着したそうですね。本来ならば宇宙のロマンに関心がいくべきなのでしょうが、職業柄、最初に気になったのは搭載プロセッサとOS。まずOSはリアルタイムOSのVxWorksのようです。プロセッサはRAD750(PowerPC-7xxシリーズがベース)ですが、動作温度は-55〜125度だそうです。こんなに動作温度が高ければ、データセンターに作ったら、自然換気だけでもすみそう。逆にデータセンターを衛星にして宇宙に打ち上げて、稼働させれば太陽電池でも電力供給できそうだし、物理的な侵入リスクは少ないから、その意味では安く付くかも。

2012年8月5日

ビッグデータを散々持ち上げてきた大手メディアも、ネガキャンが増えてきました。例えばこれとか、これ。お盆明けにはネガキャンでしょうね。メディアが持ち上げて落とすのはいつものパターン。でもビッグデータに関しては落とす時期が早かったですね。

2012年8月4日

慶大の大学院授業「計算モデル特論」のレポート採点終了。ここ数年は非情報系の学生さんが、情報系の学生さんより出来がいいという状況でしたが、今年は逆。それが当たり前なのですが、ただ、後者のレベルが上がったというより、前者のレベルがさがったような気がしないでもない。ただ、あいかわらずコピーレポートが多いですね。ざっとみただけで3組6通が見つかったのですが、コピーをしてもわからないと思っているのかしら。

2012年8月3日

通信におけるイノベーション・リーダは、かつては通信キャリアでした。AT&TにしてもNTTにしても、強力な研究組織をもち、研究開発を進めるとともに、購入する機材も自ら仕様を作って、メーカに発注していました。それがインターネットの時代になり、通信機器は共通化するとともに、通信キャリアはメーカが設計・製造した機器を購入するようになり、通信におけるイノベーション・リーダはCiscoに代表される通信機器メーカに移ります。そしていまはイノベーション・リーダのひとつはクラウドプロバイダーに移ろうしています。

大手クラウドプロバイダーであるAmazon、Google、Micorosftは大量なサーバを並べた巨大データセンターを構築・運用しています。また、ちょっと毛並みが違いますが、Facebookも京大データセンターを構築・運用しています。彼らは運用するだけでなく、サーバそのものやネットワーク機器の開発を手がけています。例えばDellやHPなどのメーカからサーバを買うにしても、DellやHPは台湾や中国のOEM/ODMメーカに外注にしているわけで、だったらクラウドプロバイダーが台湾や中国のOEM/ODMメーカに直接外注してもかわらない。この結果、Amazon、Google、Micorosftは内部にハードウェア事業部を抱えているといわれ、彼ら自身が設計、または仕様を作ってOEM/ODMメーカに発注していますし、FacebookもOpen Computeというハードウェアのオープンソース的な開発モデルを薦めています。この結果、通信機器もサーバもイノベーション・リーダはクラウドプロバイダーに移ろうしています。逆に言うとクラウドプロバイダー以外は技術の先端にたてないということです。

この動きはもうひとつ重要な一面があります。クラウドコンピューティングというと大量サーバを思い浮かべる人が多いし、いまでも巨大データセンターが話題になりますが、重要なのは運用と開発がセットになっているということ。それはクラウドプロバイダーはかつての通信キャリアと同様に、開発者であると同時に運用者であるということです。ご存じのように分散システムは複雑であり、クラウドプロバイダーの巨大データセンターという超大規模分散システムは複雑さも桁違いであり、新しい技術が必要だし、その運用も非常に難しい。なぜクラウドプロバイダーがそんな大規模分散システムが運用できるかというと、開発と運用をセットにしているから。構築・運用上の問題点を知っているから、それにあわせて技術開発するからできるようになっています。

さて国内ではどうでしょうか。自称クラウド事業者はたくさんありますが、本当に意味でクラウドプロバイダーはないといっていいでしょう。つまり、いまの通信やサーバ技術で先端にたっている事業者はないということです。この問題を気づく人はまだ少ないわけですが、長期的には深刻な問題になるはずです。ではどうすればいいかという明確な答えは当方にはありませんが、一つにはテクノロジー・リーダとなるデータセンター事業者を育てるしかない。ただ、現状は非常に立ち後れているわけですから、データセンター事業者にメーカの設計部門を買収させて、短期で開発能力をもつデータセンター事業者を作るしかないかもしれません。

2012年8月2日

一昨日、試しにインストールしたMountain Lionですが、やっと試用開始。手待ちのMacintoshはSnow Leopardのままにして、Lionを実質、飛ばしてしまった当方には新鮮ですが(正しくはServerはLion Serverだから、Lion頻繁に使っているわけですが)、iCloudにちゃっと繋がるのが一番のメリットかも。ところでMacintosh用OSは毎年のようにアップグレードされるけど、バージョンアップしても変化は連続的。Windowsも次期Windows 8以降はどうようの形態を取るといわれています。もうOSって、大きな進歩がないということなのですかね。それって絶対つまらないと思うし、OSが進化しないと、コンピュータのハードウェアもアプリケーションも進化が難いのですよね。

2012年8月1日

おもむろにゲームの話で恐縮ですが、ドラゴンクエスト10が発売だそうですね。普段、まったくゲームはしないのですが、ドラゴンクエストだけは別で、スーパーファミコンで発売されたドラゴンクエスト5と6以外は実はやっていたり。9はDSをもっていないのにゲームだけ買ってしまったり。それで10ですが、パッケージで発売されたらどうしようかと思っていましたが、幸いネットゲームだそうで、心置きなくスルーができます。それにしてもドラゴンクエストのファン層は広いので、当方を含めてネットゲームについていけない世代も多いと思うのですが、どうなんでしょうね。また、WizardryやUltimaなどの古いタイプのRPGの感覚からすると、終わりがないRPGというのもついていけななかったり。

なんでこんな話題を書いたのかというと、ドラゴンクエスト10は、ゲームに限らず、ソフトウェア開発の現状を表しているから。高校や大学の同期はゲーム業界関係者が多く(売れっ子も多い)、今回のドラゴンクエスト10の開発もいろいろ小耳にはさんでいたのですが、今回のドラゴンクエストは社内開発だそうです。ドラゴンクエストの元の発売元だったエニックスは開発はアウトソースして、社内には開発者を置かない方針でしたし、スクエアとの合併後もドラゴンクエストの開発は外注していたはず。ネットゲーム化すると、日々改良&拡張となるので社内開発に切り替えたそうですが、この状況は、ゲームはもちろん、一般のソフトウェア開発にもいえるかもしれません。ソフトウェアがサービス化してくれば、ソフトウェアを開発して、納品して、終了というサイクルではなく、日々改良となりますから、今回のドラゴンクエストと同様に社内開発が増えるはずです。もちろん、既存のネットゲームも社内開発が多かったわけですが、ドラゴンクエストのような有名タイトルのネットゲーム化と、それに伴う社内開発化は、他のゲームソフトウェアにも影響を与えるはずですし、国内に数多くあるゲーム受託開発会社にも影響を与えるはずです。

もうひとつ興味があるのは課金。ネットゲームは従量課金なので、未成年者に向かないという話がありましたが、前述のようにドラゴンクエストのように年齢層の広いゲームがその問題をクリアできるかは興味があるところ。無料利用時間帯を用意するようですが、ゲーム以外の有料ネットわービスにも広がるかもしれませんね。また、ネットゲームには否定的な保護者が多いと思いますが、ドラゴンクエストで育った世代が保護者層になっているわけで、自分の子供にどう対応するのかも気になりますね。小学校低学年からネットゲームをしている世代が出てくるかもしれません。

ところでドラゴンクエストはマルチプラットフォーム化ではなく、シングルプラットフォームを貫いてきました。ゲーム発売時に特定のひとつのプラットフォームしか対応させない。数年経って、別のプラットフォームに移植することはあっても、プレーステーションならばそのプレーステーションだけで、他のゲーム機用は出さない。これはビジネス的には販路を狭めるわけですが、開発コストは下がります。さてネットゲーム化すると、ゲームの主要部分はサーバ側で、クライアントは小さくなり、他機種への移植は容易なはず。これも気になるところです。特にスマートフォンやタブレットの移植をしてくると、その場合、ゲーム専用機というカテゴリを危うくするかもしれません。

2012年7月31日

国内大手IT系って、特に経営者の方々は、ユビキタスコンピューティングが流行れば、ユビキタスといいだし、クラウドコンピューティングが流行ればクラウドといいだす。そして最近はビッグデータが話題になっているので、ビッグデータといいだす。流行のキーワードにのるという戦略なのでしょうか、それとも自らビジョンが打ち出す能力がないということなのでしょうか。

というのは国内IT系でも大手メーカは、かつてはIBM汎用機の互換機をビジネスの柱にしていました。もちろん互換機を作るのも難しいわけですが、IBM の後追いが多いのは現状。例えばIBMが「Autonomous」という言葉で自動管理技術を打ち出せば、各社が「Autonomous」を類推させるよく似たキーワードを標榜。もちろん対抗上、仕方なかったという反論はあると思いますが、後追いばかりで、他者のオリジナルのビジョンや商品企画に十分なリスペクトを払ってきたとはいいにくいし、実際、IBMの先行してビジョンを出してきたことは少ない。

さて、時代はかわって、国内ITメーカでは、IBMの後追いをしてきた時代に現役だった方々が経営陣になっているわけですが、いつのまにかIBMはサービス&コンサルタント企業に変貌を遂げてしまい、IBMの後追いはできない。かといって自らはビジョンが出せる経営者はいいとしても、そうではない経営者はメディアが騒ぐキーワードのあとを追ってしまうのかもしれません。

もっともIBM互換機ビジネスとは関係なかった電機メーカもビジョンがないというのか、例えばTV画面の大型化、高精細化など、相対的かつ定量的な高性能化ばかり。

2012年7月30日

遅ればせながら、Mountain Lionこと、Macintosh用新OSをダウンロード&インストール。もちろん、現用機ではなく、待機中ノートPC。現用機はすべて、LionにあげずにSnow Leopardのまま。基本的にOSとハードウェアは一体だと扱っており、ハードウェアをリプレースしない限り、OSをメジャーバージョンアップすることはないし、予算もないのでマシンも買ってないし。

というわけで、ざっと使ってみた印象ですが、一言で言うとiPhoneの方向に向かっているということでしょうか。UIは誰も評論家状態になるので、あまり議論したくないのですが、Mountain Lionは、LionでみせたiPhoneとの親和性へを高める方向をより進めたということなのでしょうが、スマートフォンと違って、PCの操作はマウスが主体、マウスとマルチタッチでは操作が根本的にちがうわけで、PCのディスプレーをタッチパネルにするならば話は別でしょうが、疑問を感じますね。というわけでWindowsに乗り換えてもいいかもと思ってみたりしますが、かといってWindowsも迷走中。特に次期WindowsのMetroはディスプレーをなぞる操作を多用するので、スマートフォンはともかく、PCに向くとは思えない。

むしろ興味があるのは、Macintosh用(MacOS)を含めて、PC向けOSの進化の方向。iPhone用OSであるiOSはユーザに管理者権限が基本的にわたさない。つまり自分のスマートフォンであっても、自由に設定を変えたり、自由にソフトウェアをインストールできるわけではない。つまり、PCもスマートフォンのように、自分所有のPCでも自由に改変できない時代がくるかもしれないということ。これは自由を奪われることだけど、セキュリティのことを考えたら、自前PCでもユーザから管理者権限を奪った方がいい場合もある。

コンピュータの進化というと、プロセッサ性能が何倍になったとか、性能に目がいきがちだけど、管理・運用の方法の変化も重要。例えばMountain Lionではスリープ中も、アプリケーションを含めてソフトウェアのアップデートを確認する仕組みが入りますが、ユーザにメンテナンスを見せないという運用の変化は、UIの操作性の変更と違って、地味だけど、コンピュータの使い方自体に大きく影響を与える可能性が高い。これはWindowsも同じ。例えばスリープから回復時間を短くする方向だけど、PC使用後に電源オフをしないというのは、PCそのもの位置づけを大きく変えるかもしれません。

2012年7月29日

国内学会の仕事はほとんどしておらず、周囲からお叱りを受けております。国内学会自体はあってもいいと思いますが(整理は必要でしょうが)、和文論文誌や国内シンポジウムは必要なのでしょうかね。個人的に和文論文誌や国内シンポジウムに否定的なのは内向きを助長しかねないから。例えば国内シンポジウムに人が大勢集まって、論文もたくさん集まっていれば、それが世界のすべてに見えてしまうかもしれないし、その中で論文を発表していればいいと思ってしまいがち。そうなると海外論文誌や国際会議に論文を出すという意欲が下がることはあっても高まることは期待できない。コンピュータサイエンスは研究対象であるコンピュータが企業製品であり、企業活動とは無縁ではいられない。国内のIT市場がある程度の規模であれば、和文論文誌や国内シンポジウムも存在意義があったと思いますが、ご存知のように国内のIT市場は縮小を続けています。例えばサーバの出荷額は10年前の半減状態。もちろんサーバ価格が下がっているとはいえ、サーバ需要が低迷していることが大きい。今後、国内IT市場の縮小していけば国内IT企業も整理される状況になったら、和文論文誌や国内シンポジウムもその存在意義が失われてゆきます。そうなったときに例えば論文実績が和文論文誌ばかりだと、最悪、ゼロカウントになりかねないわけで、別に和文論文誌や国内シンポジウムで研究実績を稼ぐのはリスクが高いと思うのですよね。ただ、これをいうとお偉い先生方から怒られるわけですが、年齢的に40代以下の研究者は影響が大きいのではないでしょうかね。

2012年7月28日

Scalaはまぁ好きな言語なのですが、普及するかというと正直いって否定的。最大の理由はマルチパラダイムという点。Scalaはオブジェクト指向と関数型の二つをパラダイムを融合させたマルチパラダイム言語ということになっていますが、これまでオブジェクト指向と論理型や、関数型と論理型などなどマルチパラダイム言語は数多く提案されてきましたが、普及した言語は皆無。その理由は簡単、多くのプログラマーは、ひとつのパラダイムでも使いこなせないのが現実。そうなるとマルチパラダイム言語は身に付けないといけないパラダイムが複数あるわけで、使いこなせない。逆に言うと相当、優秀なプログラマーでないと使いこなさないはず。Scalaが普及するとしたら、メニーコアプロセッサを前提に、関数型の特質をうまくつかって、副作用の少ない並行プログラミングだと思います。というのは並行プログラミングも逐次プログラミングと比べると格段に難易度が高いので、その難易度についていけるプログラマーならばオブジェクト指向と関数型の二つをパラダイムを使いこなせるかも、というのが理由。

こうかくとScalaに否定的に思われるかもしれませんが、普及する言語というのは、できるプログラマーに好かれるだけでは十分ではなく、そうではないプログラマーにも敷居の低いことは要件なんですよね。逆に言うと圏論や型推論など、一般のプログラマーには難しい理論を要求する言語というのは普及は難しいのではないでしょうかね。もちろん完全に隠し込めればいいのでしょうが、コンパイルエラーやデバッグなどで顔を出す限りはなかなか難しい。というわけで頭の言い方々が推奨されるプログラミング言語については、その普及という点では否定的に見ております。なお、アカデミアのプログラミング言語を専門とする研究者(特に優秀な研究者)が設計した言語が大きく普及しないというのも、この辺りに遠因があるのではないかと邪推しております。

2012年7月27日

PDCAサイクルの話の続きですが、研究者は成果達成が数値しやすい職業。例えば論文数とか、著名論文誌とか、著名国際会議などへの採録とか、最近だと参照論文数だとか。個人的には数値は後に付いてくるものだと思っており、数値はまったくというほど気にしない。著名国際会議の採録も研究の目的ではなく、あくまでも結果のはず。それと何事も目標を立てない主義なんですよね。これをいうと成り行きに身を任せる、成長がない人間とかいわれるわけですがね。でも現実世界もそうですが、研究の世界もどんどん変わる、自分の目標を立てたところで、研究の世界は自分の目標達成を待ってくれるほど甘くないと思うのですよね。だから目前の課題の解決に集中するだけ。ただ、研究って、努力すればいいという分野ではなく、ヒラメキや発見が必要。ヒラメキも発見も同じことを繰り返している限りは得られる可能性は低いので、昨日の自分とくらべて今日の自分は何か違っているように保ち続けることでしょうか。個人的にはそんなに機用な方ではないので、どんなに忙しくても、分野外の書籍や論文を読んで、自分が知らない、新しいことに触れ続けるぐらい。

2012年7月26日

研究予算評価などをしていると、提案書に書かれた研究計画通りに研究されているかを評価しろといわれることがあります。最近、研究マネージメントでPDCAサイクルを持ち出されることが多いわけですが、PDCAサイクルは生産管理や品質管理にいいのでしょうが、個人的には研究にPDCAサイクルが向いているとは思えなかったり。もちろん研究でも、何らかの知見をもとに仮説を立て、その仮説を実証するための研究計画(Plan)を立て、その計画に従って研究を行い(Do)、それを計画通りにいっているかを確認する(Check)。そして計画通りにいっていない部分をなんとかする(Act)。というのは大切。ただ研究の場合、設定した課題に集中するだけ。そもそも研究って、ある種のヒラメキ的な要素があり、例えば研究予算の開始後1年以内に画期的なヒラメキがあるなんて計画できない。逆にヒラメキ的な要素のない研究なんてしてもしかたない。研究がうまくいかないのは当初の課題設定を間違えていることが多く、仮に確認(Check)して計画(Plan)通りにいっていないのであれば、課題設定を見直した方がいいし、仮に課題設定がうまくいっているとしても計画そのものを変えた方がいい。企業でもうまくいかない事業計画に縛られるのであればその計画を変えた方がいいはずだし、そもそも研究と同様に完璧な事業計画なんて作れないはず。さて研究予算評価の話に戻すと、研究目的を実現できるのであれば研究計画はどんどんかえてもいいと思うのですが、それを認めない評価委員も多いんですよね。方法論で研究がうまくマネージメントできるならば苦労しません。

2012年7月25日

明日からオリンピックが始まりますね。でも開会式もテレビもみないし、試合もテレビで見ることもないし、新聞も記事を読むことはないと思う。オリンピックに興味ないとかいうのではなく、テレビを見ない。普段、テレビの視聴時間は一週間で合計30秒ないはず。別にテレビを見ている人を暇だとかはまったく思っていません。ただ、一日の時間が限られているから、時間を作ろうと思ったら、何かの時間を犠牲にしないと時間が作れない。当方の場合、その対象がたまたまテレビだったというだけ。ただ、テレビをみないとオリンピックって興味がわかないのですよね。

2012年7月24日

昨日の続きになってしまいますが、この10年間で分散システムの技術そのものは大きく変わったとはいえないのですが、分散システムを取り巻く状況は一変しましたね。そのひとつはクラウドコンピューティング。GoogleやAmazon、Micorosoftがサーバ数に驚きましたが、それ以上にインパクトがあったのは分散システムの開発側と運用側が一致していることでした。

いままでの分散システムは開発側と運用側は別れており、前者は後者の要求を想像して機能を作るし、他社製品との競争から機能過多になりがち。その余計な機能が分散システムの性能や信頼性の足を引っ張ることが多かったのです。でも分散システムの開発側と運用側が一致していれば、必要最小限の実装することになり、システムの機能は費用最小限に限定されて、上述のような問題を回避できます。さて学術研究の立場からみると、研究は課題設定できまるところがありますが、実運用している側が課題を知るうえでは有利であり、その運用側が開発をすると課題設定の段階で負けてしまう。また、分散システムの開発側と運用側が同一事業者に閉じると課題すら出てこなくなる。

もうひとつは痛感したのは米国の技術史家Melvin Kranzbergが提唱した技術進化の法則があるのですが、その中のひとつ「Technology comes in packages, big and small」がまさに起きていたということ。これは文字通り大きな技術進歩はパッケージ化されて一塊でやってきますね。クラウドコンピューティングぐらいに複雑なシステムになると、それを構成する個々の要素技術はすでに研究されていても、それらを密に相互接続しないとシステムを構成できないし、その相互接続技術が重要だし、その相互接続技術同士も複雑に絡み合う。だから、技術進歩はひとつのシステムとして現れる。ただ、アカデミア側の研究者には個々の要素技術はできても、相互接続技術は難しいのですよね。

2012年7月23日

勤務先の大学院授業「分散システム」終了。全部は授業できないので、テーマを選ぶのですが、今年は分散システム上のデータ複製。20年前ぐらい昔ならば、相違なベンダーのハードウェアやOS、ミドルウェアを接続することが課題になっており、コンピュータ間通信、例えば沿革手続き呼び出し(RPC)に注目を集めた時期もありました。また、10年前はWebの普及で、無数のWebブラウザから送られてくるリクエストを複数サーバに効率よく振り分けることが注目の的。いまはどうかというと、上述の技術はある程度使えるようになり、その先にいっていることになります。その一つの方向性は高信頼性&高性能。このときキーになるのはデータ複製。もちろん、分散システムのデータ複製は昔から研究がされているわけですが、そうした技術は分散システム向けのミドルウェアの技術者が知っていれば十分だったのですが、高信頼性と高性能はトレードオフ問題でありことと、分散システム上のアプリケーションが多様化していることがあり、アプリケーション単位で最適な高信頼性と高性能を選ばないといけない。そうなると、アプリケーション開発者でも高信頼性と高性能の基礎となるデータ複製技術について知識が必要だから。

2012年7月22日

世の中はOpenFlowをはじめとして、Software Defined Network (SDN)が流行っているそうですね。電子情報通信学会のネットワーク仮想化研究会の委員だったりするので、流行の中にいるのかも。ただ、2000年前後に、SDNの前身技術の一つであるアクティブネットワーク絡みの研究に関わっていた身からするとデジャヴ感いっぱいだし、いまの流行は違和感が強い。そもそもSDNを使うべき人は限られているはず。コンピュータを仮想化したら、次はネットワークの仮想化というか、コンピュータの仮想化にあわせてネットワークもカスタマイズしたいというの動機はすごくわかるのですが、それはIaaS系パブリッククラウドのプロバイダーが考えればいいし、そのパブリッククラウドを使うユーザが直接SDNを駆使する必要があるかというとそれも疑問。それにSDNによるカスタマイズは、ATMやMPLS並にカスタマイズは難しいはずで、カスタマイズできる人材は少ない。それとアクティブネットワークの時代からいわれてきたことですが、SDNのようなプロトコルのカスタマイズ技術は、独自プロトコルを増やすことになり、相互接続性を危うくするリスクもあります。それと物理層展開する通信事業省から見れば、SDNはソフトウェア的に物理層を多目的化する技術ですが、逆にいうと物理層には余計なことはやらなくていい、というか余計なことはやってほしくない。そうなるとSDNは土管化が進めることはあっても、土管化をとめることはないはず。

2012年7月21日

朝の4時過ぎに羽田空港に到着。モノレールも京急もリムジンバスも5時半近くにならないと動かないので、空港内でぼっーとすることに。せめてリムジンバスぐらいまで走らせればいいのにと思いましたが、TCAT行きの最初のバスの乗客は当方一人。

2012年7月20日

今日は午前1時過ぎの飛行機に乗って、羽田に移動したので、日付変更線の関係で存在しない実質1時間ちょっとしか存在しない一日になったので、昨日の続き。夕方、シアトルからロサンゼルス空港(LAX)に移動したのですが、LAXはあいかわらず最低な空港ですね。ターミナル移動をする羽目になったのですが、ターミナル移動の空港内バスが1時間近くまっても来ない。そのうえ何本か別路線の空港内バスがくるのですが、バス前の行き先を示す電光表示が「HAVE A NICE DAY」とでているだけ。

2012年7月19日

飛行機まで時間があったので、Seattle市内を探索して、またBellevueにもどる。路線バスで35分ほど。Seattleは3年ぶりぐらいなのですが、市内交通が便利になっていますね。地上の渋滞解消のために、地下を走る路面電車(市電)が整備されていましたBellevue。地下を走るならば路面電車である必要性がないようにみえますが、路面電車が走る線路というか、道路をバスも走る。だから、からのバスも地下の路面電車駅を走ります。地下をバスを走ると排気ガスで充満しそうですが、ハイブリッドバスになっていて、それほど廃棄は出ないようです。日本にいると日本の公共交通は進んでいるとおっしゃる方が多いのですが、海外からみると遅れていますよね。

2012年7月18日

3日目はワークショップ。並列がらみの小さなワークショップに出させていただきましたが、かの有名なUCB大のDave Patterson教授、UIUC大のDavid Padura教授とJose Torrellas教授、MSRのBurton Smith,Jim Latrusなどなど豪華な顔ぶれ。内容的には意外にも並列計算の性能を上げる話は少なく、むしろ次世代アーキテクチャやソフトウェア開発がメイン。というわけで次世代アーキテクチャ、並列計算のプログラミング、開発ツール、アプリケーションがMSR、UCB、UIUCの研究者から語られました。その中でもUCBに関しては、Pythonを使って簡単かつプラットフォーム独立な並列プログラミングできるようにする話(これを実現するためのPythonの実装が研究)や、テスティングツールなど、並列プログラミングで開発効率を敷居を下げることを狙った研究が多かったことでしょうか。また、Intelでメニーコアプロセッサの研究開発されているTim Mattson氏が、メニーコアを想定した並列ソフトウェアの話をされていて、メニーコアでは共有メモリや(明示的な)マルチスレッドは使わずに、メッセージパッシングでプログラムを書け、というのは印象的でしたね。いわれてみれば共有メモリやマルチスレッドはプログラムが書きやすいし、コアが少ないときは性能がでますが、コア数が多くなると性能が出なくなるし、プログラムも難しくなります。細粒度並列は専門ではないのですが、今後、何年間の並列計算のトレンドを垣間見られたのは大きな収穫でした。

2012年7月17日

MS Faculty Summitの2日目。MSRと大学との共同研究を中心に説明が続き。いろいろやられていますね。またいろいろ勉強になりました。一方で不思議だった点もあります。Microsoft Researchから講演やデモで紹介された研究のほとんどは個人・ホーム向け。実際、エンタープライズ向けの話は皆無。業務向けを狙った研究を聞いてみたかったですね。Microsoft Researchは企業の研究所だし、Microsoft自体は業務向けと数多く関わっているはず。大学でやっている、または大学でもやれるような研究を聞きたいわけではないのですよね。それと研究機関なので、トップ国際会議への論文採録は重要なのはわかりますが、大学ではなく、企業の研究所ですから、米国大学とは違う切り口というか、トップ国際会議に通らない研究でも、重要な研究では積極的にやってほしいところ。

2012年7月16日

Microsoftのヘッドオフィスで、Faculty Summitに参加。Microsoft Researchによる招待ベースのイベント。世界中から、コンピュータサイエンスを中心に400人ほどの研究者が招待されています。有名研究者がいっぱい、というより勢揃いという状況。

2012年7月15日

夕方からUAでシアトル移動、満員エコノミーで、しかも真ん中席という状況。それから友人とレッドモンド付近を案内して頂く。さてUAですが、たまたま新しい機体だったのですが、座り心地は悪くなく、ANAの旧型エコノミーよりはいい感じ。ちなみに見ませんでしたが、シートテレビも画面が大きめだし、オンデマンドでした。UAといえば修行僧の気分だったのですが、多少は改めていいかも。ただ、CAさんたちの愛想のなさは相変わらず。それと自動チェックインカウンターの使い勝手が一層悪くなっていますね。

2012年7月14日

某社のモノクロ専用デジタルカメラ(わかる人にはわかるはず)を試写させていただく。ローパスフィルターはもちろん、カラー撮影を前提にした様々な光学画素面フィルターがないためにものすごい解像度。このカメラを前提に開発したという、50mmの単焦点レンズをつけておりましたが、こちらのカメラもすごい解像度。このところほしいと思うデジタルカメラはなかったのですが、これはほしいかも。すごい値段だから手が出ないけどね。モノクロフィルムのフィルム代、現像代、プリント代が上がっている現状では(カラー印画紙にプリントした方が安い)、モノクロフィル写真は早々とれるわけではないんですよね。

2012年7月13日

課題設定の話が続いてしまっていますが、課題設定は重要なので。国内電機メーカの低迷が伝えられています。一研究者が語ることでもないのですが、低迷の一番原因は課題設定能力の低下ではないかと思っています。ここでAppleをあげても仕方ないのですが、Appleはユーザが気づいていないけど、解くべき課題を見つけて、それを解いている。でも国内電機メーカの課題設定というと、テレビでいうと、画面を大きくする、解像度を上げる、2Dを3Dにしてみるなど。こうした数値的な向上という課題は誰でも思いつくけど、解くべき課題とは限らない。コンピュータ系も同じ。クラウドコンピューティングが流行れば、これからクラウドコンピューティングと言い出すし、ビッグデータが流行れば、これからクラウドコンピューティングと言い出す。そうではなく自分で課題を見つけて欲しいのですよね。それから課題を設定するのは現場ではなく、経営者のはず。

2012年7月12日

昨日の博士課程では課題設定が重要という話の続き。オープンソースの信仰者の方から反感をかいそうですが、オープンソースも課題設定に関して危うさを感じるのですよね。そもそもソフトウェアというのは何らかの課題を解決するための手段にすぎないはず。ただ、オープンソース系の一部の開発者の方々の言動をみていると、ソフトウェア開発・提供が目的化しているとしか思えないことがあります。ソースを公開することでも、開発コミュニティを作ることも重要でしょうが、そのソフトウェアで解決する対象の方が重要なはず。それと個人的にはGNU系のオープンソースに疑問があったりします(GNUライセンスという意味ではなく、GNUによるオープンソースという意味ね)。GNUのソフトウェアの多くはUNIX互換を狙っていますが、ということは各ソフトウェアに対する課題を見つけたも、ソフトウェアの機能要件を見つけたのもAT&Tベル研であって、GNUではない。EmacsにしてもMITで作成されたエディタが元なっており、完全オリジナルとはいえない。ソフトウェアを開発する、つまり課題を解決することもたいへんですが、課題を見つけることもたいへんなはず。どうせソフトウェアを作るのであれば、いままで解かれていないけど、解くべき課題を見つけて、その課題を解決して欲しいのですよね。

2012年7月11日

立場上、博士進学の相談をうけるわけですが、学部が当該分野の基礎を教えるところだとすると、修士は課題解決(問題解決)方法を学ぶところになるし、博士は課題設定能力を身につけるところ。だから博士でどんな課題を解きたいのかを考えてほしいのですよね。逆に言えば進学の相談で、博士で研究したいことの課題設定が間違っていたり、修士で研究したいたから続けたいといわれると、相談された側は困ってしまうのですよね。例えば性能が10%あがることが見込まれる方法があったとしましょう。それを博士課程で研究したいという前に、その性能向上は世の中で望まれているのか、それ以外の方法で十分ではないのかを考えてほしいのです。博士課程というのは3年以上かかります。その方法が旬なのはいつまでかも考えるべき。いまは有効な方法でも、3年後には需要がない方法というのは博士課程の研究では不向きなのです。また、まともな指導教員だったら、修士課程のテーマは2年間である程度、形になるテーマを設定します。もちろん深掘りできるテーマもありますが、修士課程における短期決戦型の研究テーマを博士で続けるのは正しいとは限らない。個人的には博士という学位は人的にも経済的にも、さまざまな直接的または間接的なサポートがなければとれません。だから、個人的には人類にとって解くべき問題を解いてほしいと思っています。逆にいうと、それが特定のシステムや特定の組織にだけ、有益な研究というのは個人的には指導したくない。あまり精神論はいいたくないのですが、博士課程は3年以上かかるので、その間、研究を続けるには精神力は必要だし、自分の研究テーマが重要だという信念は必要不可欠。だから、相談をうけて、提案していただいた研究の問題点を指摘したときに、自分の研究テーマを簡単に変えていいというのも、相談を受ける側からみるといい印象はないのですよね。間違った課題設定の研究は止めるべきですが、簡単にあきらめないといけないような課題しか思いつかないというのは、課題設定能力が問題があることになりますから。

2012年7月10日

分散システムではその構成方法として密結合と疎結合が問題になります。ただ、どちらがいいかは簡単ではなく、密結合より疎結合がいいとはいえないし、逆もいえない。例えば密結合は耐故障性に欠けるとおっしゃる方がおられますが、そんなに簡単にいえるものではないはず。実際、密結合の方が部分故障を見つけやすい場合があるし、そもそも部分故障がおきたとき、その故障した機能を他で代替えできなければ疎結合にしたところで部分故障で全体が止まることになります。また疎結合ではトランザクションを作りにくいので、むしろ信頼性はさがることがあります。結局、個々のケースを見て判断するしかないのですよね。

2012年7月9日

午前中は慶大の授業、午後は勤務先の授業。先週は授業後に飛行機にのったので、なんとなく時間が止まった感じ。もちろん、学生さんにとってはそんなことはないのでしょうが。それにしても出張直後の授業は結構辛い。これも学生さんには関係ないことなのですがね。

2012年7月8日

往路はANA便の遅れでたいへんだったのですが、復路はANA便は予定通り出発、予定通りに到着。論文のカメラレディを仕上げないといけないのに、機内ではプログラミング。ただし、捗ったとはいえないところがね。

2012年7月7日

さて帰国の途に。PalermoからRomaにはアリタリア航空で移動だったのですが、予想通りに遅れる。そのうえ当方が乗る予定だった便よりもあとの同じ経路の便が先に飛び立つなど、相変わらずむちゃくちゃ。10年ほど前、アリタリアはオーバーブッキングでRomaで一泊する羽目になったこともありましたが、相変わらずいい思い出はないですね。なんとかRomaにたどり着いて、ルフトハンザでMunichに移動。

2012年7月6日

国際会議(CISIS)の3日目。今日は論文発表。さてその論文ですが、国際会議のBest Paper Awardをいただく。マルチセッション形式で発表件数は多い会議なので、ありがたいことです。

2012年7月5日

国際会議(CISIS)の2日目。市内のホテルの方が安かったこともあり、会場ホテルにとまらなかったのですが、距離は離れていないものの、ともかく道中は日差しが強くてたいへん。

2012年7月4日

国際会議(CISIS)の1日目。マルチセッション形式だし、各セッションの内容がいろいろ。おそらく論文登校時の分野でわけたのでしょうが。ところで採択率は25%だとか。

2012年7月3日

1AM発のANAフランクフルト行き便に載ることになったのですが、機体トラブルで大幅遅れ。コクピットと地上間用の通信系が立ち上がらないとのこと。ちなみに機体は最新のボーイング787。スタッフさんから耳打ちされたところでは、新しい機体なので小さいトラブルがまだまだ多い。電子系は修理方法がなく、リブートを繰り返すしかない。リブートしてひとつの機能が直ったかと思うと、別の機能が立ち上がらなかったりで、全部の機能が一回で立ち上がることは少ないとのこと。現場はたいへんそうですね。結局、1時間ちょっと遅れて出発。たいへんになったのはそのあとの乗り換えだったのですが、なんだかんだで昼過ぎにシチリアのPalermoに到着。午後は自由時間なので、Palermoを見物させていただきます。

2012年7月2日

午前中は慶大の大学院授業「計算モデル」、夜は勤務先の大学授業「分散システム」。前者は内容が大きく変わることがないというか、ある程度、確立した分野。ただ、毎年同じ話をしていも仕方ないので、自主的に中身を入れ替えますが、後者は毎年変わるのですよね。技術トレンドがどんどん変わるから、それに会わせると前年とくらべて、内容の7割以上は変わっている感じ。夜は授業後、全日空のフランクフルト便に載るために羽田空港に移動。授業二コマ、その感も打合せをして、深夜、海外出張にでるのは結構きついのですが、どれもお仕事、お仕事。

2012年7月1日

休日出勤。外資系IT業界の方々と話をすると、垂直統合ビジネスモデル指向が話題に上ります。確かにアップル流の垂直統合ビジネスに憧れるのは無理がないのですが、個人的にはアップルは他のIT企業と比べると決定的な違いが他にもあるように思います。それはアップルの製品やサービスを実際につ買う人からお金を取っているということ。当たり前なのですが、他のIT企業は違うことも多い。例えばGoogleはWeb検索サービスやメールサービス(Gmail)などをユーザに提供していますが、お金はそのサービスを絡めた広告枠に出稿する企業からとっていて、サービスを使う人とお金を払う人が一致しない。Microsoftも基本的には同じ状況。Windowsを使っている人はWindowsの開発費を分担していますが、お金を直接払っているのはPCメーカ。そうなるとWindows搭載PCを作るメーカはMicorosoftにとって主要顧客ですが、そのPCを使うユーザは主要顧客とはいえない。実は日本にもあって、携帯電話ビジネスでは、端末メーカからみると通信キャリアが端末を買い取ってくれる直接的な顧客であって、端末をつ買うユーザではない。結局、垂直統合モデルを模索したところで、これを解決しないとうまくいかないように思います。MicrosoftはSurfaceでPCをユーザへの直接販売に乗り出しますが、GoogleもAndroid搭載機器を自社販売に切り替えないと、Androidビジネスは難しいと思います。というのは商品・サービスを使う人からお金を取るビジネスをしないと、商品・サービスの改良は進まないし、無駄も多い。

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Ichiro Satoh

Ph.D, Professor
National Institute of Informatics

2-1-2 Hitotsubashi, Chiyoda-ku, Tokyo 101-8430 Japan
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