Diary

Ichiro Satoh

もともとは研究用ソフトウェアの開発履歴に関するページだったのですが、開発関連よりも雑談の方が多くなったので、2001年分から別のページを用意することにしました。リンクは勝手にしてください(でもリンクしたい人なんているのでしょうか)。

最新版
一覧

2009年3月31日

今日は本年度最後の日。人事異動なので他にうつられる方も多く、ご挨拶の日となりました。

ところで、昨日、書いたフランスと日本の博士課程の違いについてなぜか数件、問い合わせをうけたので簡単に書いておきます。その違いですが、当方はコンピュータサイエンス系しかわからないので、コンピュータサイエンスに限定します。フランスの大学の博士審査では、研究成果そのものよりも研究成果に至るプロセスを重視します。一方、日本は研究成果そのものを重視する傾向があるように感じます。そしてフランスの場合、そのプロセスも複数の方向から研究することを求めます。だから、フランスのしっかりした大学のコンピュータサイエンス系では、博士課程の学生さんには理論と実装の両面から研究成果を出すことを求めるところも多く、例えば実装だけという研究は論文数があってもあまり評価されません。フランス式と日本式のどちらがいいということはないと思いますが、結局、人に博士号を出すのか、研究に博士号を出すのかという問題になるのだと思います。

それと米国の博士審査でもいえていますが、博士号は専門家としての他の人を率いるまたは教育するという能力を要求するので、博士審査ではプレゼンテーション能力は評価します。まぁダメダメなプレゼンテーションでも審査は通りますが、就職などのとき推薦状に「卓越したプレゼンテーション能力」があるとはさすがに書いてあげられないので、大学でも企業でも就職するときに苦労することになります。

2009年3月30日

フランスの大学の学生さんの博士論文審査。といっても日程的に伺えないので公聴会のビデオとスライド、博士論文による審査となりました。フランスの大学がもとめる博士と日本の大学が求める博士はだいぶ違いますよね。前者は博士として思考訓練がされているか、後者は研究そのものを評価する傾向があります。だからフランスの大学向けで書く、博士審査のコメントでは研究評価というよりも人物評価を中心に書くことになります。フランス式と日本式のどちらがいいとはいえませんが、日本だと困るのは、効率的に研究することや、効率的に博士号を取得することに拘る学生さんがおられることでしょうか。

博士課程で身につけるのは「考え方」であって「答え」ではないです。そもそも研究に「正しい答え」があるとは限らない。当然、指導教員も「正しい答え」はわかっていない。だいたい「正しい答え」がわかっていたら、わざわざ研究することないでしょ。仮に博士論文では「正しい答え」を出したしても、問題なのは博士論文ではなく、博士取得後。だから博士論文で「正しい答え」を出すことよりも、「正しい答え」に至る「考え方」を身につけて、これから直面するだろう問題に対処して欲しいですね。その「考え方」を身につけるにはたくさん回り道をして、どれが「答え」に辿り着く道なのかを知る必要があるわけで、効率的に博士号を取得するというのはその大事なプロセスをはしょるようなもので、ものすごくもったいない。仮に効率的に「博士号」はとれても、博士として必要な能力、つまり「考え方」が身につくとは限りませんから。

これは博士論文のテーマ設定にもいえていて、多方面からたくさん「考える」テーマの方がよくて、逆に「答え」に至る道が一本しかなく、その道が研究する前からわかっているような研究テーマは、(学生さんには人気があるようですが)教育的にはいいとはいえないです。日本は良くも悪くも教科書や指導要領などの教育システムがしっかりしているので、そのレールに乗っていれば、なんも考えなくても知識は身につくのかもしれません。このため博士課程にもレールをもとめる学生さんがおられますが、博士課程はそんなレールはひかれていないので自分で考えてもらうしかないです。

2009年3月29日

オフィスで恒例の年度末進行中。その横で自宅で使っている開発用マシン(MacBook Pro 17インチ)のハードディスクの置き換え作業を敢行。このマシンは使い始めて1年と半年ぐらいなのですが、以前にもハードディスクを置き換えており、当初120GB(5400rpm)から160GB(7200rpm)に置き換えていて、今日は320GB(7200rpm)に置き換えとなりました。それにしても現行のMacBook(Pro)と違って、旧型MacBook Proはハードディスクの置き換えはマシンをバラさないといけないので面倒ですね。17インチのMacBook Proは3kgを超す重量で持ち歩けるわけではないのですが、作業はしやすいです。次に置き換えるときはSSDになるのでしょうか。それとも新型MacBook Pro 17インチになっているのでしょうか。

ところで夕方、オフィスから本を買いにちょっと出たときにオフィス近く(神保町)で撮った写真をここにおいてみました。オフィスの隣のビルはリニューアル工事が最後の追い込みのようでした。

2009年3月28日

Google AppEngineがJavaに対応する(かも)という記事がありました。昨年の7月くらいに米国GoogleのAppEngineの担当者と話をしていたときは、Python以外には対応するのと聞いたら、その予定と答えられ、逆にどの言語に対応してほしいか、ときかれたりしていましたが、そのときの様子でもJavaは有力候補という話でした。それが秋以降にApp Engineの担当者と会うと、その質問に答えられないという一点張り。いろいろご事情あるのでしょう。

ただ、App EngineのようなPaaS的なクラウドコンピューティングインフラでJavaをサポートしようとすると現実には乗り越えないといけない問題がいくつかありますよね。少なくてもJava言語の実行系であるJava VMは、サーバや組込機器などの実行を考えているため、パフォーマンスを上げるために計算リソースを最大限に使うように設計されています。一方でクラウドコンピューティングではひとつのマシンでの収容数が重要になるので、最大限にリソースを使われても困ります。このため専用のJava VMを使うか、Java VMを動かす環境となる仮想機械でリソース管理をすることになります。そしてもうひとつの懸念はマルチスレッドの問題。スレッド数をやたらに増やすサービスへの対策として、Java ver.1.1の時代のようにグリーンスレッド方式のJava VMが必要になりそうです。それとクラウドコンピューティングインフラ側のリソース管理を考えると、グローバルインタプリタロック(GIL)のような仕掛けが結局、必要になるのかも。

クラウドコンピューティングというのは、道路などと同じような公共財としての性格があります。道路では交通事故は重大な問題ですが、公共財の有効利用という点では駐車違反やスピード違反、信号無視も問題となります。駐車違反やスピード違反、信号無視は軽微な障害かもしれませんが、その発生数は交通事故よりも圧倒的に多いわけで、システム全体としては非常に重大な問題になります。この問題はクラウドコンピューティングでも起きると予想しています。ですからドライバにマナーの良い運転を求めるように、サービスに計算リソースをいかにマナーよく使わせるかが非常に重要になります。今後、クラウドコンピューティングインフラはいくつか登場すると思いますが、個人的には、サービスに対するマナーの守らせ方が、各クラウドコンピューティングインフラを特徴付ける一番重要な差異になるのではないでしょうか。

2009年3月27日

情報処理推進機構というか、IPAが大学生のIT業界イメージ調査の結果が出ているのですが、調査項目の「技術やスキルが身につく」と「夢がある」ではIT業界が1番で、「かっこいい」はIT業界が2番だそうです。本当なのかなぁ、と思ってしまうのは当方だけでしょうか。少なくても「夢がある」と「かっこいい」というイメージは個人的にはまったくというほどないのですが、もしかして学生さんはもっているのでしょうか。だいたい「仕事がきつい」ではきつい方で2位になっているような業種に「かっこいい」とか「夢がある」とか思いそうもないのにね。

さてさて、その「夢がある」、「かっこいい」はずのIT業界はたいへんな状況になっています。26日にIBMが米国内サービス部門5000人レイオフするという報道(LA Times)がありました。IBMは1月にも3000人近いレイオフが報道(WSJ)されていますが、もう一段のレイオフが必要ということでしょうか。ちなみに今回のサービス部門はインドに移管するようですが、時代を象徴するリストラですね。2月以降だけでもAmazonが200人(NY Times)、Googleが200人(NY Times)、Dellが150人(MSNBC)、Ciscoが3000人(Business Week)、SAPが2000人(プレス発表)、Sun Microsystemsが1300人(Register)、Nokiaが1700人(Reuters)などなどレイオフの報道が続いています。IT業界は一過性の売り上げ減というよりも市場全体が縮小している状況ですから、人件費を含む固定費中心に削減して、損益分岐点下げるしかないということなのだと思います。企業側の事情はよくわかるのですが、その一方でどこまで業界規模を小さくしないといけないのか、その底が見えなくなっているのも事実でしょう。IPAの調査のように「夢がある」業界になればいいのですがね。

2009年3月26日

昨日のNTTの研究開発のことを書いたのですが、当方は国研の研究者なのですが、同時にNICTなどの通信系研究機関の外部評価委員をしており、その立場で見るとNTTの研究開発に関しては費用対効果がいまひとつよくわからないのですよね。

さて通信の研究開発というのは、おおざっぱに言えば通信容量を増やすことが目的です。通信インフラというのは情報を流す川に相当しますから、通信容量というのは水量になります。そして河川で水量を増やすには、川幅を広げる方法と川の流れを速くする方法の二つがあります。そして通信容量を増やすには、通信でいうと川幅を広げるように収容数を広げる方向と、川の流れを速くするように通信速度を上げる方向の二つがあります。

このうち通信速度の向上は通信会社にとっても通信速度が上がれば通信容量を増やせますし、ユーザにとっても伝送で待たされる時間が減るのですから、直接的なメリットがあります。問題なのは収容数の向上の方です。通信会社としてユーザ数を増やせば増やすほど収益性があがります。だから、通信会社としては収容数をあげる技術は収益アップに直接つながりますが、ユーザにとっては直接のメリットがあるわけではありません。ユーザに収容数の向上を還元するには、通信料を下げるしかありません。

80年代及び90年代は光ファイバーや無線通信、デジタル通信、時分割多重化などにおいて革新技術が数多く登場しました。特に光ファイバーや無線通信などの通信速度を向上させる技術と、時分割多重などの収容数の向上させる技術はある程度、独立していたので、収容数と通信速度の両方を延ばすことができたので、通信会社だけでなく、ユーザも得したし、当然、機器メーカも機材が売れるから儲かりました。しかし、90年代後半に入ってくると両方向の技術が重なりはじめて、どちらか一方を上げるともう一方は下がるという状況もみられるようになり、通信会社とユーザの利益が両立しなくなっていきます。通信速度が10倍に上がっても、ユーザは10倍の通信料を払ってくれるわけでもないですから、通信会社としては収容数を優先するしかない。昨日書いたNTTに関していえば、光ファイバーを3000万世帯に接続するなどと、実体とはかけ離れた収容数をインフラ整備の目標に上げてしまったのは固定費負担がかさむNTTにとって不幸でしたが、ユーザにとっても不要なインフラ整備につきあわされることになる、つまり通信料が下がらないので不幸です。

もうひとつの問題は費用対効果が下がってきたことです。一般的にいえば通信インフラ整備は河川工事と同じで設備にかかる固定費は大きいのですが、運用費は小さい。従って、やや乱暴ですが、投資額よりもユーザ数×通信料×償却期間が上まわれば利益が出ます。80年代及び90年代は技術進歩が進んだので、償却期間があけて新しい機材を古い機材にリプレースするだけで収容数も通信速度も一桁あがることも珍しくなかった。でも、いまは性能向上の速度が鈍化しています。このため80年代及び90年代の研究開発スタイルでは通用しません。

その一方で研究開発費は増えてしまっています。通信機器の価格には原価だけでなく、研究開発費が含まれていますが、研究開発費分が増えてしまっているのが現状です。原価は機材台数分かかりますが、研究開発費の方は販売当初はその比率が高いのですが、ある程度、販売台数がでればその比率は大幅に減っていきます。ですから通信会社は、購入しようとおもっている機材の販売台数が増えるのを待つ、つまり機材費用に含まれる研究開発費が減るのを待って購入する方が得ですし、ユーザにとっても通信料が安く済みます。昨日書いたNTTに関していえば、持ち株会社もグループ会社も世界で一番最初が大好き。第三世代携帯電話を世界に先駆けて始めたことが自慢だし、NGNを世界で唯一はじめたことが自慢でした。ただ、これは企業戦略的には自ら高額なコスト負担を進んでやっているようなもの。

研究開発費の高騰は、研究開発の主役を通信会社から通信機材メーカに変えています。その理由はひとつの通信会社が利用する通信機材の数では研究開発費が回収できませんが、通信機材メーカならば世界中の通信会社に機材を売ることもできるからです。今後はますます通信の研究開発は機材メーカを中心にまわっていくことが予想されます。国内の通信機器メーカがこれから世界で販売できるかは知りませんが、機器メーカにとっては顧客であるNTTが研究開発に大幅な投資をしている状況では、機器メーカは研究開発がしにくいというのは確かではないでしょうか。

さて最初の話題に戻りますが、NTTの研究開発が不要とまではいいませんが、国を含めてNTTの株主の皆様方におかれましては、研究開発への投資効果を見極めて欲しいです。ご存知のように2010年にはNTTの組織体制の見直しが控えています。政治的な要素もあり、見直し内容は予測がつきませんが、規模などの相異から企業間競争が必ず時もできていない状況を考えると、なんらかの方法で収益をユーザに還元する仕掛けと、NTTの事業に必要な研究開発に特化させる仕組みを作るべきでしょう。

2009年3月25日

NTTに関してネガティブなことを書くとまわりからいろいろ怒られるのですが、ちょっとだけ(そのかわりにNTTには「様」をつけて書いておきましょう)。Web系ニュースメディアにNTT様に関する記事が出ていたのですが、この記事の要旨は「2009年3月期の決算で、NTT様が営業利益で国内トップになるが、リスペクトされていない」というもの。確かにその通りですね。

昨年まで営業利益で国内トップの常連のトヨタが大赤字状態なので、利益1位といっても他社がズッコケタだけという気もしますが、ちなみに2008年3月期では1位はトヨタで2.2兆円、2位はNTTで1.3兆円、3 位はホンダで0.95兆円でした。4位はNTTドコモで0.8兆円。そしてNTT様は2009年3月期でも営業利益見通しが1兆円を超すとされます。つまりNTT様はこの不況のなか、昨年と同規模の利益をたたき出しているわけで御立派の限りです。

ただ、この記事で書かれているように、NTT様がリスペクトされていない理由はNTT様が提供するサービスや技術に魅力がないことかもしれません。今年のNTT持ち株会社様の事業計画をみると、基盤的研究開発の推進として、3つの重点項目としてインフラ系研究開発、ユーザ系研究開発、基礎技術研究開発があげられています。でも各項目の中身を読むと、どこかで書いてあったようなことが多いと思うのは当方だけでしょうか。当方はNTT様が分割する直前、NTT持ち株会社準備室に講演やレポートを何度か頼まれたことがあったのですが(博士取り立ての若造に部長級や研究所長向けの研修の講師をさせてもね・・)、その当時、危惧していた問題が起きているのかもしれません。それは研究所を持ち株会社の下においたために、事業と研究開発に距離ができてしまうというものでした。いわゆる死の谷の問題です。やはり研究所を地域会社の下において事業をダイレクトに反映させるか、せめてグループ内子会社は研究所への出資者という形をとって、出資相当の成果を要求するような形にした方がいいのかもしれません。

それとNTT自身がリスペクトされたがっていないというのも理由のひとつかもしれません。2004年11月に発表した現在のNTT中期経営戦略では「2010年には3000万世帯に光アクセスを提供する」というのが最大のウリでした。いつのまにか2000万世帯に事実上の引き下げたようですが。それはともかくユーザにとっては自分の家でも光ファイバーがつなげられることが重要なのであって、その接続数はどうでもいい。むしろそんなに利用者がいるのであれば1ユーザあたりの費用は減っているはずですし、そのうえ1兆円も収益をあげているのなら値下げして欲しいということになりますね。

2009年3月24日

Salesforceは1000台のサーバの運用されているという記事が出ておりました(多重化を考えると実質は500台)。これは他のクラウドコンピューティングのインフラ提供業者と比べると二桁以上少ない。クラウドコンピューティングのインフラ提供サービスは構築費も運用費も限界費用まで下げることが求められますが、SalesforceはSaaS業界でパイオニアというだけありますね。Salesforceのシステムは謎に包まれていますが、今回の記事でますます謎が深まったということになりますね。

ただ、1000台という数自体は驚くべきではないです。GoogleやMicrosoftのクラウドコンピューティングはスケールアウト指向ですし、実際、何十万台というサーバを組み合わしてひとつのクラウドコンピューティングインフラを構築しています。しかし、そのサーバ数が多いために失ったものも多い。そのひとつは一貫性制御。例えばGoogleのMapReduceは多数のサーバを相手にデータを管理できますが、そのためにデータ反映速度は遅い(Hadoopを試した方はわかりますよね)。逆に言えばサーバ数が少なければMapReduceを使う必要はなく、効率的な方法が使えるようになります。さらにトランザクションのような厳密な一貫性制御はスケールアウト指向のクラウドコンピューティングアーキテクチャではきわめて難しいです。しかし、もしサーバ数が100台だったらできなくはない。だったら仮に何十万台のサーバがあっても、それをひとつのインフラに見せかけたりせずに、サーバ100台程度単位に分割して、それぞれをひとつのインフラとして扱うという考え方もでてくるでしょう。IBMなどがいっているプライベートクラウドでは100台程度のサーバを想定していますが、運用費用を考えると少数サーバからなるインフラはいいとはいえません。そこで数万台の多数のサーバを提供・管理するけれども、サービスの提供では100台程度単位に分割して運用するという方法はありえるし、その方がトランザクション処理が多いエンタープライズ用途では、GoogleやMicrosoftなどのスケールアウト指向のアプローチよりもむしろ合理的といえます。

Salesforceに関しては情報がないので何ともいえませんが、クラウドコンピューティングは何を求めるかによって、それを実現するアーキテクチャーと規模は大きくかわります。だから、GoogleやMicrosoftのスケールアウトを追求したやり方も、Salesforceのようにそこそこの台数で運用するのもそれぞれ正解なのだと思います。

2009年3月23日

クラウドコンピューティング関連の講演を頼まれることも多いためか、クラウドコンピューティングの研究をしているのかと聞かれることがあるのですが、その回答はイエスでもありノーでもあります。個人的には、クラウドコンピューティングのインフラ側技術に関しては、興味があっても研究としては手を出しにくい分野と考えています。

少なくてもGoogleやMicrosoft、Amazonなどのクラウドコンピューティングのインフラ提供会社の研究者の方が有利。これはプロセッサの内部技術の研究の状況と似ています。大学を含む非プロセッサメーカの研究者でもプロセッサの研究はできなくはないのですが、IntelやIBMなどのプロセッサメーカの研究者の方が有利。資金的にチップが作れないということに加えて、プロセッサメーカの研究者でないと、最新プロセッサの内部情報にアクセスできません。これはクラウドコンピューティングのインフラ側技術の研究も同じです。例えばGoogleのMapReduceを例にとると、HadoopなどのMapReduceの互換ソフトウェアはGoogleがOSDI'04で発表した論文をもとに作っているようですが、現在、Googleが使っているMapReduceは数多くの改良がされているはず。ここ1年間ほどでMapReduceの改良と称する研究に関する論文を見かけるようになりましたが、その改良はGoogleが内部的に進めている改良よりも進んでいるかもわからない。

そして最大の問題は特許。例えばGoogleのMapReduce、BigTable、Google File System (GFS)にしても、Googleはオープンソースのプロジェクトの支援をしていますが、権利を放棄したとはいっていません。また、論文で発表したものと実際に使っている技術は違っていますから、その実際に使っている技術は公開されていないどころか、どんな特許があるかわからない。いずれにしてもここ1,2年でクラウドコンピューティング、特にインフラ関連の相当数の特許がたくさん出願されていますから、インフラ技術の研究をするというのは地雷(出願済みの未公開特許)をさけながら行軍するようなもの。例えば100人で行軍して生き残るのは少数、つまり100個の研究をしても特許と重ならない技術は多くないということ。少なくても海外特許の調査ができる立場でないと、論文発表してみたものの実はどこかの企業の特許と重なっていたという事態になるわけで(それでも未公開特許はわからないのですがね)、特許調査能力のある企業の研究者ならばともかく、アカデミアの研究者には手を出しにくいです。もちろん、アカデミアの研究者としてはたいへん残念なのですがね。

それで当方はというと、クラウドコンピューティングそのものには興味はなく、むしろクラウドコンピューティングを使う上に必要となる技術の方が興味があったりします。

2009年3月22日

技術的な話題ですみません。JDK ver.7のURLClassLoaderクラスにはcloseメソッドがつくそうです。Javaでクラスローダの再定義やクラスファイルの動的生成させるプログラムを頻繁に書く当方にとってはありがたい機能。実はクラスファイルを一度読み込んだあとに、同じ名前のクラスファイルを動的に作って、新しく作ったクラスローダで読み込みたい場合、前に読み込んだクラスファイルを(OSレベルで)閉じないといけないのですが、いつ閉じるのかはわからなかったのです。実際には大丈夫だったのですが、いつファイルが閉じるかわからないというのは気持ち悪いですよね。

2009年3月21日

一昨日のクラウドコンピューティングの講演に関する質問が数件。一昨日書いたことの繰り返しになりますが、クラウドコンピューティングというと、計算リソースを安価に使えるなどに話題がいきがちです。しかし、これはクラウドコンピューティングの一面に過ぎないように思います。

企業の情報システムおける処理のうちで、その企業にとってコアになるような処理、つまりその企業を他社に対して差別化するような処理はごく僅か。つまり、情報システムおけるほとんど処理は他社でも似たような処理をしており、企業によって差異がありません。しかし、いままでは自前(オンプレミス)の情報システムが前提になっていたので、企業にとってコアとなる処理も他社と同じ処理も全部やっていました。いいかえると、どうでもいい処理、誰がやっても同じ処理もやっていたということです。

クラウドコンピューティングにより事実上、無限の計算リソースが使えるようになるので、クラウドコンピューティングで扱える処理で、なおかつ他社と共通化するような処理は他社と共同で利用した方がいいでしょう。クラウドコンピューティングは計算リソースがいっぱいありますから、そうした共通処理はクラウドコンピューティング上のサービスとして実装して、複数の企業がそのサービスを利用すればいいことになります。つまり他社の差別化できない処理は他社といっしょでいいということですね。例えば税金の処理は国内企業であればほとんど同じです。だったら、みんなでその処理を共同利用すればいいですし、クラウドコンピューティングのインフラ能力を考えると、日本中の企業の税金処理サービスを実現することも夢ではないでしょう。

ここで忘れてはいけないのは、クラウドコンピューティング上のサービスでは差が出せないという点です。つまり、クラウドコンピューティングにある処理を移行させた場合、設備などの導入コストや運用コストは削減できますが、その処理で他社と差別化するのは難しい。もう少し正確に言うと、差別化は不可能ではないかもしれませんが、自前の情報システムでその処理を実現していたときとくらべて差別化はしにくくなるでしょう。

つまり、クラウドコンピューティングというのは他社との差別化できない処理をアウトソーシングするための手段ということです。その代わり、企業は自社の情報システムは、その企業にとってコアとなる処理に集中させることができます。だから、企業にとって、クラウドコンピューティングを使いこなせるか否かとは、クラウドコンピューティングに移行した処理の問題ではなく、コアとなる処理を自社の情報システムに残すことにより、いままで以上にコアとなる処理により他社との差別化ができるかだと思います。

また、ご存知のようにクラウドコンピューティングには向き不向きがあります。企業の情報システムにおいて、クラウドコンピューティングに移行できる処理と移行できない処理がありますし、例えば多くのクラウドコンピューティングインフラはトランザクション処理などは提供していないか、非常に貧弱な機能しか提供していません。そして、企業にとってコアとなる処理は、トランザクション処理を始めてとしてクラウドコンピューティングが不得意なお処理が多いのが現実です。つまり、クラウドコンピューティングの不得意な処理の方が依然重要ということです。

世間ではクラウドコンピューティングによって自前の情報システムは不要になるという論調が多いのですが、すべての処理をクラウドコンピューティングに移行できるわけではないし、仮にクラウドコンピューティングに移行できる処理でも、それが企業にとって他社との差別化できる処理ならば自前の情報システムを使うべきです。その意味ではすべてクラウドコンピューティングに移行するというのは、情報システムで差別化をするという点ではあまり得策ではないでしょう。

もうひとつ忘れてはいけないのはクラウドコンピューティングは自前の情報システムにも大きな影響を与えるという点です。これを詳細に説明していると長くなるのですが、ひとついえることは自前の情報システムは、クラウドコンピューティングが不得意な分野に特化していくことになるということ。例えばトランザクション処理などは、クラウドコンピューティングは不得意ですから、トランザクション処理に特化した自前用サーバ市場は伸びるはずです。

さて話を戻しますが、講演への質問はいずれもSI業者の方からでした。確かにクラウドコンピューティングによりSI業者は大きな影響を受けます。ただ、システム構築や運用ビジネスが成り立たなくなるというよりも、企業が他社と差別化できない処理を他社と共同利用することにより、SI業者の開発案件が減るということの方が影響が大きいでしょう。ただ、顧客企業はミッションクリティカルな処理やトランザクション処理は自前の情報システムを使うことになるでしょうから、そうした処理に得意なSI業者やエンジニアは相変わらず需要があるのではないでしょうか。もちろん大部分のSI業者は、そうした処理が得意とはいえず、クラウドコンピューティングの影響をまともに受けることになりますがね。

2009年3月20日

今日から乗用車の高速道路料金が土日祝日は1000円になったそうですね。個人的には日本高速道路保有・債務返済機構の借金返済はどうなるのとか、排気ガスを増やしていいのとか、政府が鉄道会社などの競争会社を収益悪化させてもいいのとか、数多くの疑問があるのですがね。それとこの値下げは都会にとっては経済活性化になりますが、地方は逆ですよね。

以下に当たり前のことを書きます。乗用車と土日祝日に限定というと、都会から地方に観光に行く方々と地方から都会に買い物に行く方々が二大需要ですが、前者より後者の方が動くお金が圧倒的に多い。トータルでは都会にお金が集まることになります。さて乱暴な言い方を許してもらうと、地方都市の経済というのは移動コストという地域間の不完全性によって成立している部分があります。今回の値下げは移動に伴う経済的コストを下げてしまうと、残るのは移動時間だけになってしまいます。合理的な移動時間で到達できる大都市に買い物客が流れ込むことになります。言い換えればハブに合理的な移動時間で到達できる範囲から大都会にお金が流出することになります。でも日本の場合、大都市というのは東京への移動が便利なことが多いので、結局、東京だけにお金が集まるという状況は変わりませんが。

日本の経済というのは、1970年代の日本列島改造論や1980年代のふるさと創生事業など都会よりも地方経済活性化を行うと経済状況が悪化するという歴史があるそうです。今回の高速道路料金の値下げは都会の経済活性化になりますから、もしかすると日本全体の経済政策としてはいいのかもしれません。ただ、そうならば自動車だけでなくて、鉄道も値下げした方がいいですよね。

2009年3月19日

クラウドコンピューティングの講演。聴衆は企業の方が圧倒的に多かったですね。それもお偉いさんが多い。さて講演はいままでと違う立場からクラウドコンピューティングについて解説してみましたが、いかがだったでしょうかね。

講演では再三話したのですが、クラウドコンピューティングというのは結局、サービスを共有化する仕掛けではないでしょうか。例えば企業であれば、自社のITシステムの中で、その企業にとってコアとなる処理、つまり他社と差別化するような処理はごくごく少数。大部分の処理は他社、特に同業者と大差ありません。でもいままでは自前インフラで動かしていたので、その企業特有な処理も、他社と共通の処理もいっしょに動かしていました。しかし、クラウドコンピューティングのような共通のインフラがあるのであれば、他社と共通な処理は思い切ってクラウドコンピューティングに任せて、自前のインフラはコアとなる処理だけにすることができます。幸い、クラウドコンピューティングが提供する計算リソースは大きいので、業界全体で共通処理をクラウドコンピューティングに任せることができます。

つまりクラウドコンピューティングを使うことにより、企業は自前システムはコアとなる処理だけに集中できますから、そのコアとなる処理を発展させて、いままで以上に他社と差別化ができるようになります。つまり、クラウドコンピューティングというのは、情報システムにおける「選択と集中」を進めるための手段なのです。そしてその「選択と集中」を実現するには、選択されなかったサービスや処理はクラウドコンピューティング上で他社と共有化することが求められます。少なくてもクラウドコンピューティングをコスト削減手段と考えている限りはクラウドコンピューティングは理解できたことにならないでしょう。

2009年3月18日

IBMがSun Microsystemsを買収するという報道がありました。一昔前ならば大騒ぎになるニュースですが、ふーん、という以上の感想はないです。

Sunは大規模リストラを実施するなど経営的には追い込まれているので、生き残りのためには身売りしかないのでしょう。IBMにとってもクラウドコンピューティングというか、データセンターインフラ向けのサーバビジネスの展開を考えると組んでも損はない相手。すくなくてもHPに買収されるぐらいならば自分で買収した方がいいでしょうね。また、独占禁止法の問題やSunの大株主の反対で買収がお流れになっても、IBMにしてみればライバル企業のSunがなくなるだけで、IBMには大きな影響はでないはず。個人的にはJavaがどうなるかも気になりますね。JavaはSunが作りましたが、いまJavaに一番熱心なのはIBMでしょうかね。これでここ数年のSunの人的リソース不足から起きていると思われる迷走に歯止めがかかるでしょうか。

実は某メディアからコメントを求められたのですが、「ふーん」という程度しか感想はありませんと答えました。ちなみに、そのメディアの方によると、他の方々にコメントを求めて皆さん、似たようなコメントだったそうです。

2009年3月17日

ユニクロがJil Sanderと契約だそうですね(記事)。Jil Sanderといえばご存知のようにデザインブランドのJIL SANDERを立ち上げた女性デザイナー。もっともブランドのJIL SANDERはPRADAに買収されたのですが、Jil Sander自身はJIL SANDERを辞めてしまいました(ブランドのJIL SANDERはその後、ヴィトンに売却され、まわりまわって今はオンワードが買収したはず)。現役時代のJil Sanderはシンプルで機能的なデザインを得意としたので、その路線ならばユニクロのティストとは合うのかもしれません。トップデザイナーがファーストファッションを手がけるというのは時代も変わったものです。ユニクロはパリコレでも目指すつもりでしょうか。ちなみに当方はJIL SANDER ものは、頂き物のネクタイを一本だけ持っています。もちろんJil Sander が去ってからものですがね。

2009年3月16日

いろいろ忙しいです。もろもろの作業は間に合うのでしょうか。

2009年3月15日

年度末だからというわけではないのですが、Adobe Creative Suite (CS)の買い足しを検討中。複数台のコンピュータを使う関係で、複数個を買うことになるのですが、さすがに全部を最新版にかえるわけにはいかないので、CS2、CS3、CS4を併用状態。それで思うのは画像系の統合パッケージソフトウェアは、そこに含まれるソフトウェアによって最新版が必要なものと、そうではないソフトウェアがあります。当方の場合はDreamweaver、Photoshop、Illustratorを常用しておりますが、Web作成用ソフトウェアであるDreamweaverは常に最新版にしておきたいのですが、PhotoshopやIllustratorはコンテンツを作る限りはCS2でも不自由はないのが現実。強いていえばIllustratorは他人が作った最新版用データの読み込む都合があるので、最新版のIllustratorはひとつはもっていたい程度。

Adobeとしては客単価をあげるためにも統合パッケージソフトウェアとして売りたいのはわかりますが、統合パッケージソフトウェアという販売スタイル自体が合わなくなっているのではないでしょうか。これはMicrosoft Officeなどのオフィス用の統合パッケージソフトウェアにもいえる問題なのですが、オフィス用の統合パッケージソフトウェアは事実上、PCの有料付属品化しているのに対して、画像系の統合パッケージソフトウェアはPCの寿命よりも長く使われることが多い(実際、いまでもAdobe Illustrator 8で入稿をもとめる出版社や印刷会社は多いですから)。

また、バージョンアップの仕方はアプリケーションによって違います。話をAdobe CSに戻しますが、Web関連は技術トレンドは移り変わりが早いので、Dreamweaverは数年に一回のリリースでは間に合わない。数ヶ月に一回ぐらいのペースでリリースして、最新技術トレンドにあわた方がいいように思います。もっともCMSやブログ系パーツを駆使する時代にWeb作成用ソフトウェアがどのような位置づけをもつかは興味があるところですが。ちなみにこのページはDreamweaverを使って書いています。

2009年3月14日

ところで今日は数学の日だそうです。理由は円周率πの3.14からきているそうです。そのπつながりでパイの日でもあるそうですね。コンピュータサイエンスでπというプロセス計算(Process Calculus)のπ計算(π-calculus)なのですが、何が書きたいかというπ計算などのプロセス計算の主な応用である形式仕様技法のこと。かなり強引な話題のもっていきかたですがね。

実は形式仕様技法ですが、情報規格調査会(ITSCJ)のFDT-SWGの委員であり、ISOにおける形式仕様技法(Formal Description Techniques)、例えばVDMやZ記法(B手法の前身)、LOTOSなどの標準化に関わってきました。形式仕様技法に詳しくない人も多いでしょうから、ちょっとだけ解説。システムの仕様を英語や日本語などの自然言語で書くと解釈にブレが出てしまうので、数学的枠組み裏打ちされた形式仕様技法を使うことで、誰が読んでも一意に解釈できるようにする技法なのです。そして、その形式仕様技法にブレがあるといけないので、形式仕様技法を規格としてきめる必要があり、ISOでその規格をきめていました。形式仕様技法は、計算モデルなどの理論計算機科学やソフトウェア工学ではいまでも研究者には人気のあるテーマのようで、新しい形式仕様技法が提案されています。しかし、ISOという形式仕様技法の主戦場では、5年間ほどは新しい提案もないし、FDT-SWGも開店休業。ということでFDT-SWGは本年度末をもって解散になるそうです。

その理由は形式仕様技法に需要がないから。そもそも実システムは数学的な表現ができるほど単純ではないし、仮に複雑な実システムを記述できるだけの表現性を持った形式仕様技法があったとしたら、その形式仕様技法も複雑になって、数学的な定義ができるとは限らないし、そもそも形式仕様技法でシステム仕様を正しく記述できるとは限らない。また、数学に頼っているために高い専門知識がないと読めないし、書けない。研究者ならともかく、現場のエンジニアさんに使えるとは限らない。国内に限ると形式仕様技法の研究者は多いので、これ以上、ネガティブなことを書くと怒られますね。

もちろん、今日はホワイトデーですよね。以前はキャンディをあげることになっていましたが、いつからチョコになったのでしょうか。

2009年3月13日

午後からはこだて未来大学でプレゼントと議論。ところで都内の某大学から大学院でクラウドコンピューティングインフラについて詳説する授業を頼まれる。クラウドコンピューティングはコンピュータサイエンスの研究者としてみると、技術的にはおもしろいわけで、それなりに最新トレンドは追っていますから、分散ハッシュ、非同期処理、負荷分散、仮想マシンあたりをオムニバス的にまとめれば授業は成立しそうな予感はしますね。でもそれ以前に、その曜日は他の某大学の授業があって、移動を考えると時間的に無理でした。ということで丁重にお断り。

さてそのクラウドコンピューティングですが、研究として手を出すかというと難しいところですよね。クラウドコンピューティングでもインフラの構築技術は、結局、インフラ事業者次第だし、特許などで技術の囲い込みが進んでいるのが現実。また、研究というのは発明と同じで、必要性が研究の動機になることが多い。クラウドコンピューティングの管理に直面している側の研究者や技術者でないと、本当に必要とされている研究課題を設定するのはすごく難しいのが現実。あたりまえのことですが、研究というのは、どんなに研究手法がすぐれていも、研究テーマ設定の段階で間違えるとそれで終わりですからね。おおざっぱな印象をいうと、PCクラスタも数十台と数百台は技術が違うし、千台を超えるといままでとはまったく違う技術が必要。例えばGoogleのMapReduceのような技術は数万台以上の規模になってはじめて意味をもつ方法であって、千台以下のインフラに適応しても更新速度が遅いだけですからね。さてGoogleやMicrosoftは百万台の規模のサーバを目指していますが、数十台規模のサーバ群で遊んでいる研究者に百万台規模のサーバ群における問題を、GoogleやMicrosoftの連中よりも先に見つけられるかというと難しいのですよね。ただ、GoogleやMicrosoftは百万台規模のシステムにフォーカスしていますから、逆に千台規模は穴になる可能性もあるわけで、マスを狙うのか、ニッチを狙うのかということになりますね。

2009年3月12日

先日、クラウドコンピューティングの記憶管理のことを書いたのですが、その続きというか補足。Google App EngineもMicrosoft Azureは、SQLもどきのデータ管理APIを提供していますが、クラウドコンピューティングのデータ管理が、Key Value Storeなのか、SQLのサブセットなのかによって、クラウドコンピューティングの今後はかわってきそう。クラウドコンピューティングでは読出専用データなのか、書込みもするデータなのか、頻繁に書込みをするのか、データの取り扱いがちがってきます。でもいまのプログラミング言語ではこれらを区別できない。もちろん関数型のプログラミング言語は多少は分けられるにしても、その抽象度がいいのかよくわからない。また、先日も書きましたが、クラウドコンピューティングではデータがオンメモリなのか、ハードディスク上なのかはサービスの開発者からは見えないし、内部的にも複数のサーバ間で複製を持っているので、一部のサーバがシュッとダウンすることがあっても、オンメモリのデータも不揮発性があると考えていい。しかし、既存のプログラミング言語の多くはメモリ上のデータ(例えば変数) とハードディスク上のデータ(例えばファイル)を明確に分けて扱っており、クラウドコンピューティングが普及し始めると、プログラミング言語側のメモリモデルにも影響を与えることになるでしょう(もちろん、過去には両者を区別しないプログラミング言語はいくつかあり、そのひとつはSmalltalkでしたが、本質的に分散処理に向くメモリモデルではない)。

ただ、個人的な興味はクラウドコンピューティングがスタンドアローン型や通常のクライアントサーバ型のソフトウェアアーキテクチャやプログラミングにどのように影響するかだったりします。もうすこし正確に言うと、ひとつのアプリケーション全体がクラウドコンピューティングにいっきに移行することよりも、既存のアプリケーションの部分が段階的にクラウドコンピューティング側に移行することの方が多いと予想しているからです。その場合は、ひとつのアプリケーション内で、クラウドコンピューティング的な部分と既存のクライアントサーバ的な部分が混在するはずですし、その移行過程は意外に長く続くのではないかと考えています。

2009年3月11日

そうですか、新しいiPod Shuffleはしゃべりますか。アイデアとしてはおもしろいと思うし、ないよりはあった方がいいと思いますが、そこまで楽曲名をいいたければ、小さい液晶をつけるのとどっちがよかったのでしょうか。もっとも液晶というのは日本のメーカ的な発想かも。ところで、音声によるプレイリスト名の読み上げをするのならば、Liveでミュージシャンが楽曲名を紹介しますが、そのミュージシャンによる楽曲名などの紹介を楽曲データに録音しておくのはどうでしょうかね。もちろんいちいち紹介されるとしつこいので、紹介部分の録音は明示的にオンオフできるようにしておいてほしいですけど。これは当たり前すぎのアイデアですが、そろそろシリコンオーディオを想定したオーディオコンテンツが登場してもいいころだと思います。

ちなみに当方はiPodではクラシック系の曲を聴くことが多いためか、iPod Shuffleは自分の聴き方にはあわないのですよね。というわけではiPod Shuffleにはこれまで縁がありません。

2009年3月10日

クラウドコンピューティングの続きです。クラウドコンピューティングインフラ用のソフトウェアというか、サービスを実装したことがある人ならばわかると思いますが、クラウドコンピューティングはソフトウェア開発上の物理要求が、小中規模のサーバ群とは根本的に違うし、クラウドコンピューティングでもインフラによってまったく違う。昨日はAzureのことを書きましたが、Azureを例にとるとAzureはデータ量を増やしてもサービスの性能低下はあまりおきないはずですが、データ更新の仕方に性能が大きく依存することが想定されます。このためクラウドコンピューティングインフラ用のソフトウェア開発では、ターゲットのインフラに合わせてアーキテクチャを決めてから(または与えられてから)、そのアーキテクチャのなかで、ターゲットのアプリケーションをどう作り込むのかということになってしまいます。

一年ぐらい前に、クラウドコンピューティングが普及するとSI業者は影響を受けるという議論が活発に行われました。実際、コンピュータやネットワーク、データベースの構築や運用はクラウドコンピューティングのインフラ側がやってくれるので、ネットワークエンジニアやデータベースエンジニアと呼ばれている人たちの需要は大きく減るので、ソフトウェア開発能力によってSI業者の淘汰が進むというものでした。たしかにその通りだと思いますが、現状でクラウドコンピューティング向けのサービスを作るには、クラウドコンピューティングインフラの内部機構や癖をどれだけ知っているかに依存します。

一方で国内の大手SI業者に限ると、上流設計に特化して、下流設計は下請け任せという傾向があります。もちろん、上流設計のなかでもビジネス・モデルや要求仕様は、クラウドコンピューティングでもオンプレミスのシステムでも変わりはないと思いますが、クラウドコンピューティング上のサービス開発で、パフォーマンスとスケールアウトを考慮したサービスにするには、上流設計の段階でそのサービスを動かす側、つまりクラドコンピューティングインフラの特性を考慮しないといけなくなります。このため、国内SI業者にとってはクラウドコンピューティングは扱いにくいのではないでしょうか。いずれにしてもクラウドコンピューティングのが広まると、上流設計と下流設計の境界が上がるのか、上流と下流で設計が分けられなくなるのかは興味があるところですね。もちろん、上流設計ができて、クラウドコンピューティングインフラの内部的仕組み、例えば祖結合における複製技術やトランザクション、分散ハッシュなどの1990年代後半以降の分散システム研究を知っている方々はすごく重宝されることだけは間違いないでしょう。

なお、インフラの違いは抽象化されるので気にしなく済むと考えることもできますが、個人的には抽象化は難しいと予想しています。その理由ですが、90年代の分散システムの研究は、分散システム特有の問題を隠蔽する方法(研究者用語でいうとTransparencyといいます)にフォーカスされていましたが(××-Transparencyと名付けた研究ばかり)、結局、分散されているものを集中に見せかけるのは無理があったわけで、隠蔽には失敗しました。結局、Transparencyとは真逆のURLが生き残りましたが、URLは分散システムの構造をわざわざ見せている方法なので皮肉ですよね。それはともかく、この歴史を考えると超大規模な分散システムであるクラウドコンピューティングインフラがそれぞれの癖というか、特性や制約を抽象化するのは難しいのではないでしょうか。

ところでクラウドコンピューティングはSI業者だけでなく、(当方を含めて)研究者の淘汰も進めそうです。流行のWebサービスも90年代前半のCORBAのサブセットにすぎないこともあって、これまでの分散システムの研究は1990年前半以前の知識しかない研究者でも生きて来れらることになってしまいました。でもクラウドコンピューティングでは1990年代後半以降の知識が必要になりますから、これで分散システムの研究者も世代交代が進みそうです。ただ、心配なのは分散システムについてはコンピュータサイエンス系の大学院で教えることが多いのですが、海外の定番教科書ですらいまだに密結合の分散システムのことばかり(もちろん基礎としては大事ですが)。当方も分散システムの教科書で、(密結合を前提にした)分散オブジェクトの章を担当して、レガシー技術、例えばCORBAやEJBについて書いたことがあるので、人のことはいえませんがね。

2009年3月9日

わけあって、あるアプリケーションがMicrosoftのクラウドコンピューティングインフラのAzure上に実装できるか検討。Azureはそのアーキテクチャは可用性とスケールアウトを徹底的に重視した設計。Eric BrewerのCAP定理がいうところの、C+AでもA+PでもP+Cでもなく、Aの可用性だけを重視したような感じ(分類としてはA+Pでしょうがね)。Azureは参照系のアプリケーションには向くのかもしれませんが、更新系はサポートが弱いという段階ではなく、Entity(Azure上のデータ管理単位)間のトランザクションはサポートしないなど、トランザクション的処理は眼中にないという感じ。もちろん、キューベースでトランザクションを実装する方法はありますが、通常のトランザクションと同じセマンティックスを実現できるわけではありませんから。Microsoft にいわせれば更新系はWindows Serverをオンプレミスで使ってくださいということなのでしょう。これはGoogleには真似できない割り切りの良さといえましょう。

ところでAzureは他のクラウドコンピューティングインフラと違って、素直に分散ハッシュを使っているそうですが、当該分野の研究者なら常識なのですが、Chordベースのデータ参照方式なので、Pastryなどの他の方式に比べてノード数が増えたときにホップ数の増加が大きい傾向があります。Azureはスケールアウトを重視したのであればChord以外の選択もあったと思うのですが、どうなのでしょうか。それとも実際のアプリケーションではホップ数はそれほど増えないのでしょうかね。

その代わりなのかはわかりませんが、Azureはオンメモリのデータ管理を前提しているというのか、ストレージへの記録は可能な限りに遅らせることを想定しているようですね。これはなかなか興味深い設計です。なぜかという電源システムの可用性が予想できるからです。オンメモリベースでデータを管理すると速度は上がりますが、コンピュータの電源が落ちるとデータは消えるので、通常はストレージに記録します。ただし、クラウドコンピューティングインフラではデータは冗長に管理されるので、あるコンピュータの電源が落ちても、他のコンピュータがデータが保持されているので大丈夫ということなのでしょう。とはいっても停電があると複製先のコンピュータもいっしょに落ちることがありますが、Microsoftは非常用電源を確保すれば停電による多数のサーバが同時に落ちることはないという自信があるのでしょう。当方の予想通りだとすると電源管理はGoogleよりもMicrosoftの方が進んでいるかもしれません。なお、こうしたオンメモリベースのデータ管理が広く使われるようになると、将来的にはMRAMやFeRAMなどの不揮発性メモリへの需要が生まれることから、将来のメモリ技術にも影響を与えることになります。

2009年3月8日

来週、クラウドコンピューティング関連で講演を頼まれていることもあり、何を話すか思案中。クラウドコンピューティングといえば、ここ数週間のあいだにGoogleのApp EngineやIBMのクラウドコンピューティングの料金設定が発表されています(IBMのサービスはただのホスティングサービスのような気がしますが)。ただ、10年先を考えると課金モデルはどのようになるのでしょうかね。個人的な予測を少々。いまのクラウドコンピューティングインフラは基本的には計算リソースやストレージに応じた課金モデルを採用しています。これはクラウドコンピューティングといっても、インフラ自体が有限であるために、計算リソースやストレージを使い果たされることを恐れているからですが、今後、コンピュータの値段やストレージの値段はさらに安くなるでしょうから、ハードウェアの値段はただ同然。運用上のコストは電気代がほとんどになりそう。

実は2002年、いまから7年弱前(ちょうどワールドカップで日本対トルコ戦があった日だったはず)に、日経新聞に頼まれて次世代ITとして、コンピュータのコモディティ化するとハードウェアはティッシュみたいにただ同然になったときの、課金やビジネスモデルについて講演したことがあるのですが(その講演に関する日経記事)、ひさしぶりに読み返してみると、7年前にクラウドコンピューティングはほとんど予測できていましたね。ただ、いまは予測精度の高さを自慢している場合ではなく、むしろ次の10年先を予測することの方が大切。

クラウドコンピューティングの課金は電気代に限りになく近づくというのが当時の予測でしたが、この先を考えると電気代は温室効果ガスの排出問題などがあり、電気代の料金モデルが10年先はいまとは代わる可能性があります。ラーニングコストは自体は電気代に近づいていくと思いますが、ただ、課金というは経済的な合理性以外に、課金システムが作れるのかという問題があります。そうなると再考してみる必要はあるかもしれません。例えば計算能力やストレージは数で勝負することができます。つまりサーバの数を増やせばある程度は計算能力はのばせます。また、ストレージも結局はハードディスクの数と容量次第。問題はネットワークで、計算能力やストレージほどは伸びないのではないでしょうか。そうなると予想できるのは、クラウドコンピューティングインフラとクライアント間で流れるデータ量(または流量)による課金ではないでしょうか。結局、個々のステップ数とかプロセッサ時間で細かく課金するのもいいのですが、おおざっぱに見てしまえば、クラウドコンピューティングインフラとクライアント間で流れるデータ量(または流量)だけでいいのかもしれません。

2009年3月7日

昨日の続きです。当方は博士課程時代にXeroxの研究所の客員研究員でしたが、当時のXeroxとしてはユーザインターフェース研究は相当先端にいましたが、大幅に縮小に向かっていました。ご存知のようにXeroxはAltoやSmalltalkなどのユーザインターフェース研究では先駆的だったのですが、ユーザインターフェース研究そのものはビジネスにはなりませんでした。ユーザインターフェースは手段ですから、ユーザインターフェースだけでは製品化ができないのです。それともうひとつ忘れていけないのはXeroxの顧客というのは企業。生産性をあげるという視点、つまり経営者目線に立たないと売れないということ。当時、Xeroxが研究していた直感的なユーザインターフェースというのはユーザ体験としてはよかったのかもしれませんが、生産性向上に役に立ったのかは疑問でしたし、仮に生産性につながってもカメラによる画像認識などコストと信頼性で業務に使えるレベルとはいえなかったように思います。

この信頼性というのは重要で、ユーザが専門研究者ならば仮にシステムが動かなくてもセンサーの測定ミスなどの理由が想定できるし、計算処理量が推定できるので、ユーザインターフェースのレスポンスが悪くても許容してくれます。でも一般人はそうではありません。いいかえれば一般向けの場合は信頼性に少しでも問題があったら致命的。一度でも不具合を経験するとそのシステムは排除されます。そして、一般の方はちょっとでも処理が遅いと不安に感じます。だから一般向けにこそ高速な処理が要求されます。90年代前半にはXeroxはカメラやセンサーを駆使して、90年代後半に流行った実世界ユーザーインターフェースを先取りするような研究をしていましたが、信頼性の問題が致命的となりました。

ただ、こうした失敗の理由は公にされることがないことが少ないこともあり、その後も似たような実世界ユーザーインターフェースを以前を知らない人たちによって再発明されるのだけど、同じ問題で下火になっていきます。そんなわけで似たようなユーザインターフェースの研究が流行っては消えていくという興亡が何度も繰り返されているのですが、その結果、実は以前研究を再発名をしただけの研究者なのに、その後に類似研究が再び登場するのを見ては自分は先駆者だと言い出す方々までおられます。本人は幸せなのでしょうが、なんだかねぇ、という感じになります。

2009年3月6日

勤務先のビルでユーザインターフェース系のイベントが開催されていました。ユーザインターフェースは専門が以内のですが、当方は博士課程時代にXeroxの研究所に転がり込んでいたために、Xeroxによるユーザインターフェース研究の末期を間近でみる機会がありました。さてXeroxがユーザインターフェース研究を打ち切ったのかというと、最大の理由はXeroxの財務的な問題と人材流出(いい人材からApple、Microsoft, Sunの順に流れた)。もちろん、それ以外にもいくつかの理由があるのですが、当時、よく議論していたのはユーザインターフェース研究の方向性。

当時どうなったのかというと、GUI系のユーザインターフェースの研究は一巡していて、Xeroxのユーザインターフェース系研究者は特定のシナリオやアプリケーション、例えばお絵かきソフトウェアとか、電子会議用の設計図共有システムなどなどに特化したユーザインターフェースを研究していました。確かにそのターゲットのシナリオやアプリケーションで使う限りは有益そうでしたし、ACM CHIなどのメジャー国際会議にも論文は通せていました。でも特定のシナリオやアプリケーションを想定する研究、つありケーススタディ指向の研究は進化が深まるほど、そのケースから少し外れるとまったく役に立たなくなります。このため有用性が高まるほど汎用性が低くなるという問題がでてきました。結局、特定のシナリオ、特定のユーザ、特定のアプリケーションを前提にすれば思いつきレベルを含めて新しいユーザインターフェースはまだまだ作れそうですが、汎用なユーザインターフェースとなると簡単ではないということですね。でも有名国際会議を含めてユーザインターフェースの研究はケーススタディ指向が強まっているので、端から見ているとXeroxの研究と同じ道をたどりそうで心配になりますね。

それと人材流出も痛かったですね。当方がXerox在籍していた時代はAppleやMicrosoft、Sunに人材がすでに流出してからでしたが、それでも優秀な人材はケンブリッチの研究所に残っていました。そうした連中と議論する機会も結構あったのですが、ユーザインターフェースの研究はメインストリームにいる連中ではないとわからないことが多い。例えばユーザインターフェースの研究では必須のユーザ評価もノウハウの固まりで、徒弟的というか、身近で見聞きしていないと知り得ない情報ばかり。当方は学生時代にうけたユーザインターフェースに関する授業はその後の米Microsoftのユーザインターフェース部門のディレクターになった有名研究者から受けたのですが、米国流のユーザインターフェース手法を知り得たのは良かったですし、そのときの授業や議論水準を思い浮かべると、国内からはユーザインターフェースのメージャー国際会議のフルペーパー論文がほとんど通らない理由もわかります。

2009年3月5日

午前中はビックサイトで見本市。おもに商業施設向けの見本市なのですが、ICカード&タグ関連と商業関連の情報システムのところをみて、早々に退散。ICカード&タグは、ソニーを中心としたFelica系はソニー製テレビでFelicaカードによるコンテンツ購入ができるようにした新製品をこの見本市にあわせて発表したこともあり、Felica関連は人があつまっていたものの、ICタグ系は予想通り低調。商業関連の情報システムですが、在庫管理用などのシステムが中心ですが、時代を反映してか、ASP方式の低コストシステムの展示が多く、新機能などをウリにするところは少ないですね。それからどの企業もブースが地味。また以前はショー仕立てな度派手なブースもありましたが、今回は実務ベースがほとんど。もちろんこの方がいいのですがね。それとアンケート交換などでくれるノベルティグッズも激減しているみたいです。グッズはともかく(どうせあとでゴミになるから)、企業名入り手提げ紙袋をくれる企業は多かったのですが、大手電機メーカでも紙袋がおいてあるところも少ない状況。企業の経費削減ムードが実感できました。そうそうコンパニオンのお姉さん方も激減。こうした職業も不景気の影響を受けるのですね。代わりにプロジェクタースクリーンを作っている会社が、人型プロジェクタースクリーンを展示。コンパニオンのお姉さんの代わりになりますといって宣伝していました。説明するのが難しいのですが、上半身は半透明スクリーンで下半身は服を着ているので、結構、人間のように見えるから不思議。

ところで今日から定額給付金の交付が始まったそうですね。税金から払うわけですから、定額還付金というのが正しい名称だとは思ったり、定額とはいいますが、年齢によって金額はちがって12,000円または20,000円となりますから、定額というのもなんだかなぁ、という気がしてしまいますが、立場上、疑問をもっていはいけないのでしょうね。もっとも情報系の研究者としての関心は定額給付金向けのシステムの方だったりします。多くの地方自治体では来年度以降も続く制度とは思えず、実施は一回限りと思っているでしょう。そうなると定額給付金のためにわざわざシステム構築することはありませんから、ASPなどを利用することになりそうです。クラウドコンピューティングまたはSaaSインフラ事業者あたりが、定額給付金向けのサービスを安価に提供するとおもしろいのですがね。

実は地方自治体に通知された実施要領を見る機会があったのですが、事細かく事務処理方法が記載されていますね。おそらく事務処理方法が不明確という批判が多かったので、詳細に決めたのでしょうが、要領に従うと話題になっている地域商品券の直接配布はできないはずです(受取後に商品券を買うという扱いにする必要がある)。さて給付(還付)方法ですが、原則として振込先口座を記した申請書を本人確認書類とともに市町村に郵送して振り込みにより受給する方法か、振込先口座を記した申請書を窓口で提出し振込により受給する方法。テレビなどの報道されていた窓口での現金渡しは例外という扱い(心理効果を狙うならば振り込みではなく、現金渡しでしょう)。というわけで儲かるのは、システム事業者をのぞくと、振り込み手数料収入が見込まれる銀行、引換券や申請書の印刷事業者、引換券や申請書の送付する郵便事業者、身分証明書などの写しを作るために使われるコピー機器設置者とコピー機器メーカあたりでしょうか。それにしてももっと確実かつ効率よく実施する方法はあるでしょ、と思ったりしますがね。

2009年3月4日

さて出張中におきたことなのですが、ある日、突然、多くの企業から当方の研究への問い合わせがやってきました。何かの記事になたのかと思ったのですが、問い合わせ内容は記事を念頭にしたものではなく、共同研究の問い合わせ。ありがたいことなのですが、クビをかしげていたのですが、結局、某省が某大型予算に応募書類に記載例に当方の研究の報道発表で使った名称がたまたま入っていたため、その予算獲得を狙った企業の方々が当方に声をかけてきたということでした。確かにその名称を使う研究は他にはあまりないはずですし、Googleでその名称を検索すると上位に当方の研究紹介する記事などにたくさんでてくるようです。ただ、突然の大量問い合わせでしたし、出張中なので訳がわからないとうことでびっくりしておりました。

2009年3月3日

会議や打ち合わせなどいろいろ。出張中の残務処理中。ところでAppleは新型Mac mini、iMac、Mac Proを発表したのですが、値下げにはなっていますが、代わり映えがしない新製品。現在、PC市場は売上&出荷台数ともに落ち込んでいるので、拡販するには値下げしかないけど、値下げをしたからといって売れるとも限らない世界。ところでMac miniは性能の割にお買い得ですね。WindowsユーザがWindowsマシンのために買いそうな予感。

2009年3月2日

やれやれ帰ってきました。月曜着のフライトなのにANAの成田行きは団体旅行(主に卒業旅行)と思われる人たちで結構混んでいますね。さて今回の出張では時間をみつけてはミドルウェアの実装をしておりました。実はその評価実験の関係でコンピュータを二台を持ち込むという臨戦態勢で出張に臨んだものの、実装・評価はあまり進まず。進まない理由は、オペラを観ていたというのもありますが、それ以上にアーキテクチャ的に迷いが生じたため(すでに往路の飛行機で迷い始める始末)。そのミドルウェアについて説明できる段階ではないので、概念的にしか書けませんが、何に迷ったかというと、ミドルウェアをRPCベースで実装するのか、メッセージキューベースで実装するか、ということ。手軽に実装するのならば前者。一方で後者にして祖結合ならではの特性を活かすというのも一つの方法。仮に後者にするにしても自前でメッセージキュー機構を作るのか、既存のメッセージキューのミドルウェアを使うのか、使うとしたらどのメッセージキューミドルウェアを使うのか。なかなか難しい判断ですね。というわけで前者で後者で判断もつかないまま既存のメッセージキューミドルウェアを集めては評価中。後者ならば素直にErlangあたりを持ち出して実装すべきなのかもしれませんが。まぁ出張中はアーキテクチャをいろいろ迷ったのですが、システムソフトウェア屋としてこの先、何をすればいいのかの見通しが立ったのでよかったのでしょう。出張中でもないとまとまった思索の時間はとれませんからね。

2009年3月1日

さてパリ経由で帰国です。ところで一昨日、フィンランドの経済状況のことを書きましたが、ヘルシンキ市内では謎のブタ貯金箱のポスターを町中や地下鉄構内で見かけます。フィンランドの方によると「貯金をやめよう」という意味だとか。景気をよくするには消費の拡大が重要なのはわかりますが、確かに貯金箱にお金を入れるのが怖くなりますね(ちなみにブタ貯金箱は海外では定番の貯金箱)。写真だとわかりにくいですが、結構、牙のあたりは生々しいです。それにしても、こんな過激なポスター,を公然と出せるというのも欧州における文化に対する許容力に懐が深さでしょうか。日本でやったら非難囂々で大変なことになります。日本は異端を徹底的に排除する文化ですからね。もっと多様性への許容できるような国にならないと価値観が均一化してしまって、経済だけでなく、文化的にも衰退していくのでしょうね。こうした欧州の懐の深さを目の当たりにすると日本から脱出した方がいいのかなぁと考えてしまいますよね。日本は研究的には恵まれていますが、社会的には息苦しいです。

フィンランドは出張は春か早秋ばかりで冬のフィンランドは今回が初めて。実は日が短いと思っていたのですが、この時期は日の光が一日中3時過ぎという感じですが、ただ6時ぐらいまでは暗くなりません(12月は3時には暗くなるそうです)。さて年間を通した日照時間の差はフィンランドの文化に大きな影響を与えています。明るい時間が季節に応じて変わるためにフィンランドでは残業時間の調整制度が導入されているそうで、簡単に言うと日が長い時期(または業務が忙しいとき)に残業をたくさんして、逆に日が短い時期(または業務が暇なとき)に休みを多くとる制度です。季節による失業率変動を避けるための制度だそうで、実際、お店も夏場は営業時間を延ばして、冬場は早々に閉める店が多い(デパートも夏場は日曜日も営業しますが、冬場は日曜日は営業しません)。フィンランドの気候が生んだ制度といえますが、企業にとっても残業代抑制策になるので、日本で導入できるかもしれませんね。もっとも当方が知っているフィンランド人は日の長い時期は働かないというのか、早々に仕事を切り上げて、夕方には釣りやヨット遊びに出かけて、世の中まで遊ぶ人が多いので、日の長い時期に遊ぶ時間を増やすための制度としても有効なのかもしれません。

ちなみにフィンランドの労働情勢ですが、欧州では失業率が低い国のひとつですが、特徴的なのはパートタイム労働者が欧州で一番少なく、逆に派遣労働者比率が高いことが上げられます。これも上述の残業調整制度も影響しているかもしれませんね。フィンランドは教育水準が高いことから教育系研究者の調査対象によくなっていましたが、失業率の低さはやはりは教育水準の高さがあるように思います。フィンランドの方はフィンランド語はもちろんスウェーデン語も教育されているし、英語の水準も高いですよね。最初の貯金をやめようポスターに戻りますが、給与水準は日本よりもやや低い程度で住居費は日本と同水準。ただ、社会保障がしっかりしているので老後の蓄えは必要ないのですよね。今回の世界的な経済危機の大きな要因として、日本や中国、中東の貯蓄が米国や英国市場で投機資金の供給源になったことが上げられますが、同じ失敗を繰り返さないためにはそれぞれの国のなかで投資を促進する仕掛けが必要ですし、その方法の一つは社会保障の充実、つまり貯金をさせないことかもしれません。

2009年2月28日

フィンランドの情報系研究をみていると良くも悪くもNokiaの影がちらつきます。今回の訪問したHIITはNokia本社とは場所は近いですが(市内路線バスのバス停で4つか5つぐらいの距離)、研究的には多少距離をおいている感じ。ただ、そのHIITも研究対象は携帯電話絡みの比率が高い。研究者もNokia出身または兼任者が多い。そのため当方などから観ると研究がすごく偏っているように感じます。もう少し詳しくいうと、何かあるサービスを実現するときに最初から携帯電話ありきで、携帯電話を使うことがベストソリューションなのかを議論しないし、実際、サービスよりも携帯電話を使うことが目的に変質してしまっている研究も多い。もちろん、人的なリソースが限られているので特定分野に集中するのは当然だし、Nokia という携帯電話のトップ企業があるのですから、携帯電話に特化するのは当然ですが、所詮、携帯電話は道具ですから、目的に応じて道具は使い分けるべきです。というわけでフィンランドの(Nokia以外の)研究機関の方と議論していると、携帯電話に入れ込みすぎているので、大丈夫なのかなぁと思ったりしてしまいます。

実際、携帯電話はコモディティ化してきていますし、技術トレンドも携帯電話に何か新しいデバイス、例えば加速度センサやタッチセンサをいれるという方向性から、携帯電話向けの(ネットワーク側にある)サービスを開発するという方向性に移ってきています。こうしたサービスはPC向けなどの他のサービスとも同じですから、どこかで携帯電話向けサービスの流れと、PC向けサービスの流れは一緒になることになります。Nokiaそのものは研究開発部門のトップをはじめとして、米国人スタッフで研究開発をマネージメントしており、PCを視野に入れたサービスに切り替える可能性がありますが、フィンランドの大学や研究所で携帯電話に特化している人たちがどうなるかは興味あるところです。今回はそのサービス的な分野を研究している方々と会ったのですが、それでも携帯電話しか眼中にない方々でしたからね。携帯電話に高度な機能を求めるほど携帯電話はPC化していきます。一方でPC側もIntel Atomプロセッサがネットブックだけでなく携帯電話相当の小さいPCにも利用されるでしょう。携帯電話からPCに向かうのか、PCから携帯電話に向かうのかによって、企業も研究者も命運がわかれそうですね。

ところでフィンランドでは今日はKalevalaの日。正しくいうとエリアス=リョンロートによる民族叙事詩が発表された日だそうですが、夕方に国立美術館でKalevala展をみにいってきました。国立美術館は普段はがらがらなのに、今日は人が一杯。チケットを買うのにも長蛇の列。さてKalevalaというのはフィンランドの、口承文芸の集大成であると同時にフィンランド文化の原点とされています。Kalevalaの主人公はキリスト教伝来とともにフィンランドを去ったことになっており、キリスト教を母体にする西洋文化に対してフィンランド固有文化を確立したとされる重要な叙事詩。さてKalevala展ですが、いわゆる神話的な世界をモチーフにした作品が並んでいましたが、さすがにフィンランド人でないとわからない作品世界で、家族連れからトサカ頭にしたロック少年グループまで真剣な眼差しで作品を見ていました。

2009年2月27日

ヘルシンキのHIITで打ち合わせ。HIITに行くのは3回目か4回目。場所はエスポー(Espoo)というヘルシンキの西側にある地域。人口ではヘルシンキが50万人に対して、エスポーは24万人でフィンランドではヘルシンキに次ぐ第二の都市(Tampereよりも多いそうです)。といってもヘルシンキの中心部からは路線バスで20分弱なのでいける距離(日本でいうと東京と横浜のような位置づけ、距離はもっと近いですが)。さてHIITはヘルシンキ大学とヘルシンキ工科大学が共同で作った情報系の研究所。東京には情報系の研究所(当方の勤務先) や情報系の学科や専攻を持っている大学がいくつかありますが、バラバラにやっていても通用しない時代なのかもしれません。拠点を集約して、研究する必要があるかもしれません。もちろん当方の勤務先はその情報家の研究拠点となることが期待されているのですがね。せめてポスドクを集約できるような研究拠点を作るというのは一つの方策だと思ったりします。やはり日本は理研などの一部の研究機関をのぞくと、ポスドクが大学内の小さいプロジェクトに縛られているので、その能力がいかし切れていませんよね。

さてフィンランドですが、決して景気がいいわけではないのですが、むちゃくちゃ悪いわけでもないようですね。ただ、ノキアなどの主力企業(フィンランドの輸出の25%はノキアが占めます)が海外市場の伸び悩みで苦労していますから、順風満帆というわけにはいかないようです。さてノキアというか携帯電話メーカ全般の問題ですが、高額なスマートホン市場は伸びていますが、機能向上とともに低価格ノートPCとの差分化が難しくなり、市場的にも小型ノートPC市場とスマートホン市場は重なり始めています。一方で主力の普通の携帯電話に関しては機能向上は飽和気味となったために価格競争となり、端末の低価格化が進んでいます。ノキアはシーメンスの携帯電話インフラ事業との合弁(実質はノキアによる買い取り)などインフラ側の増強に動いていますが、発展途上国向けが主力であり、先進国ではエリクソンに差を広げられている状態。ノキアはかつて成長セクターとなりえる携帯電話以外の事業を譲渡・撤退したという大リストラをした過去がありますが、今後のノキアは携帯電話が引き続き成長セクターかどうかによりますね。そしてノキアの今後はフィンランドの今後にもなりますね。

今日もオペラを観られなくはなかったのですが、さすがに5晩連続は辛くなりそうなので、やめておきました。オペラ鑑賞は忍耐の部分がありますが、以前、バイエルン歌劇場で5晩連続でオペラを観たことがありますが、さすがに辛くなります。

2009年2月26日

今日は移動日。ということでストックホルムからヘルシンキに移動。ストックホルムは列車ではいることが多く、ストックホルムの空港は初めて。結構離れているのですね。さて夜はヘルシンキの国立オペラ劇場でモーツアルトのオペラ「魔笛」。4晩連続でオペラという気もしなくもないのですが、気にしないでおきましょう。それに現地時間では勤務時間外ですよ。念のため。

さて「魔笛」はほぼ毎シーズン、どこか観ている演目。ただ、今回、驚いたのは観客に子供が多いこと。たしかに魔笛はストーリー的にも歌的にもオペラ入門にはいいかも。ということで演出もすごくわかりやすいし、子供ウケのいい演出をいろいろいれていました。さて出来ですが、高いクオリティとはいえないのですが、演出、舞台、歌、演奏がバランスがとれていて、全体としては楽しめました。指揮はずいぶん若い指揮者Kurt Kopeckyでしたが、歌を引き立てるタクトでよかったです。歌手はTamino役のJorma SilvastiとPamina役のTiina Vahevaaraはむちゃくちゃ旨いというタイプの歌手ではないのですが、終始安定していて好印象でした。またPapageno役のJussi MarikantoとPapagena役のMerja Wirkkalaは好演でした。特に魔笛はPapageno役の道化ぶりの出来不出来で印象がかわりますからね。高僧Sarastroですが、この役は魔笛という演目をオペラ作品にするかを決める重要な役所。重い声質のバリトン歌手がいいのですが、Sarastro役のHannu Forsbergは歌自体よかったのですが、声質が明るすぎで雰囲気にあっていたかは疑問。歌手の問題というよりもミスキャストでしょう。さて魔笛の最大の聞きところは夜の女王役のソプラノ歌手のコロラトゥーラなのですが、今回の夜の女王役のSirkka Lampimakiは、圧倒ようなコロラトゥーラではなかったのですが、魔笛というオペラを堪能するのには十分な出来だったのではないでしょうか。魔笛はもともとオペラではなく、大衆向けの歌芝居(ジングシュピール)だったので、今回のようなわかりやすい演出や舞台は魔笛本来の位置づけに近いのだったと思います。ところで途中で動物の着ぐるみがでてきたのですが、そのなかでもハリネズミの着ぐるみがすごくいい出来でした。ハリネズミの着ぐるみって考えてみると珍しい。さて今シーズン(2008-2009シーズン)では9本目のオペラとなりました。

2009年2月25日

スウェーデン王立工科大学で講演です。聞き手はコンピュータサイエンスだけでなく、心理学者など専門外の研究者が多いのでプレゼンが難しかったです。夜はストックホルムの王立歌劇場で、Verdiのオペラ「Macbeth」を鑑賞。Macbethは2005年に新国立劇場で観た以来。指揮は一昨日と同じPier Giorgio Morandiなので心配だったのですが、今日は演奏に問題がなくてよかったです。さて出来ですが、なかなかよかったです。昨日のRheingoldが非常にいい出来だったので比べるといけませんが、Macbethもよい出来でした。Macbeth役のMarco Vratgnaは歌もよかったし、好演でした。また、Banquo役のJaakko Ryhanenは風貌からして適役という感じで、歌も善かったです。また、Macduff役のBadri Maisuradzeの独唱はよかったです。気になったのはMacbeth夫人役のLena Nordin。歌はいいのですが、善良な夫人という感じで、Macbeth夫人の役回りである悪女っぷりがないのがちょっと残念でした。演出は衣装は中世風ですが、Macbethが機関銃をもっていたり、SWAT風の兵士がレーザー照準機でMacbethを狙ったりでユニークでした。

2009年2月24日

スウェーデン王立工科大学。ワークショップはすでに書くべき内容がないので、夜にストックホルムの王立歌劇場で観た、Wagnerのオペラ「Rheingold(ラインの黄金)」のこと。すごくいい出来でした。昨日と違って演奏&指揮ともに非常にいい。指揮者のDirigenten Leif Segersamは太め&ひげもじゃという風貌でしたが、指揮は繊細でしたし、全編違和感なくオペラを楽しめました。また、演奏の王立オーケストラの管弦が非常にきれいなおとでした。歌手ですが、Nebelungar族となるAlberich役のMarcus Jupitherは声量、感情表現とともに圧巻。Wotan役のTerje Sensvoldはスマートな神々の長でしたが、声質もよくたいへんいい出来でした。またDonner役のGunnar Lundberg、巨人族のFasolt役のHans-Peter Konig、Fafner役のLennart Forsenも役にあったいい出来。また、女声はFricka役のMartina Dike、Freia役のSara Olssonはよかったのですが、4 幕目で少しだけ登場するErda役のAnna Larssonですが、存在感がありました。なかなかの歌手だと思って聞いていたのですが、Anna Larssonは2008年のスウェーデンオペラアワードを受賞したそうで、公演後にAnna Larssonへの花束贈呈がありました。

ところで、冬の北欧というと寒いということになりますが、室内に関していうと実はあまり寒くないです。理由は建物の構造と暖房器具の配置。例えば泊まっているホテルの壁は30センチ。これは北欧では普通。そしておそらく壁の中には断熱材が入っているはず。ホテルの窓は三重ガラス。これも北欧では珍しくない。また、密閉度をたかめるために日本のような引戸式にはしません。というわけで暖房は必要最小限ですみます。日本だと断熱効果の二重ガラスの窓がありますが、その窓がよりもよってアルミサッシだったりします。アルミは金属なので熱が伝わりやすいので、二重ガラスにしても無意味なのにね。ちなみに今回泊まっているホテルはアルミではなく木製サッシでした。ところでよく勘違いしている人がいますが、断熱材をたくさんいれたり、三重ガラスにすると保温されて夏は暑くなると信じている人が多いのですが、むしろ暑い外気を中に入れないので室内は涼しくなります。

欧州では暖房器具の置き方が日本とはちがいます。暖房器具は窓などの熱が逃げやすい場所において、対流(空気は冷たい場所から暖かい場所に空気が流れます)を使って部屋全体を暖めます。日本人はせっかちなのか、放射熱や温風ですぐに暖かくなる暖房器具に人気が集まりますし、それを人の近くに起きます。暖かい場所をさらに暖かくしてもその場所が不必要に暑くなるだけで、冷たい場所は冷たいまま。こんなあたりまえのことは多少の物理に知識があればわかるはずなのですが、日本だと理系出身でもわかってない人が多いのが悲しいところ。日本は環境技術が進んでいると信じている人が世の中には結構いますが、基本的なところからして相当遅れているというのが現実ではないでしょうか。いい加減、東京と、外気温が低い北欧の都市で、室内を同じ温度にするには東京の方がエネルギー使用量が多いという現実をすこしは考えてほしいですよね。

2009年2月23日

スウェーデン王立工科大学でPersuasive Servicesに関するワークショップ。テーマは環境支援や持続可能社会を狙った内容が中心なのですが、想像で問題設定をするといかに危険かということの見本のような研究がいくつかあったのですが、当方も他山の石にしないようしないとね。環境支援のようなテーマは理念としては正しいのですが、理念だけでは研究が出来ないし、研究する前にせめて当該分野について勉強してから研究を始めてほしいですね。それでも質疑の水準が高くて救われました。

夜はストックホルムの王立歌劇場で、Pucciniのオペラ「Tosca」を鑑賞。Toscaを観るのは初めて。オペラらしいストーリーの演目ですね。出来ですが、ローマ警視(Scarpia)役のJohan Edholmと画家(Cavaradossi)役のMector Sandovalはよかったのですが、Tosca役のGitta-maria Sjobergは悪くない出来なのですが、迫力不足なのと歌に余裕がないので、なんか必死に歌っていますという感じがしてしまうのがちょっと残念でした。さて演奏ですが、オーケストラそのものは実力は高そうでしたが、歌と演奏がかぶってしまっているし、そもそも鳴らしすぎで、特に一幕目は歌が演奏に埋もれていました。これはオーケストラの問題ではなく、指揮者(Pier Giorgio Morandi)の問題なのでしょう。全般に指揮が大味。ところで王立歌劇場ですが、小さい歌劇場。パリオペラ座をスケールダウンしたような歌劇場でした。気になったのは音質が堅いのと、歌手の声がうずもれがちのようですね。というわけで演目はよかったのですが、ちょっと欲求不満という結果になりました。

2009年2月22日

ヨーテボリからストックホルムに移動です。TGVタイプのスウェーデン版新幹線で移動することになったのですが、約3時間。この区間にのるのは往復を含めると3回目。ただ、今回は日曜日に移動となりましたが、平日と比べて本数が1/3ぐらいに激減。スウェーデンでは破綻したSAABの国有化有無が問題になっているようですね。SAABの拠点はヨーテボリから北東にあるそうですが、ヨーテボリはVolvoも抱えていることもあり、たいへんですね。たしかに90年代の経済危機でスウェーデンは一部の銀行を国有化することで乗り切ったのですが、金融はスウェーデンにとって重要な産業ですが、いまのスウェーデンにとって自動車が重要な産業なのかということになりそう。また、地域的にも限定されるのも前回と今回はちがうところですね。

同じ北欧ではスウェーデンと同様に自国通貨に拘ったデンマークはユーロ導入に動き出しました。スウェーデンクローネはデンマーククローネほどは下がっていないとはいえ、やはりユーロ導入は時間の問題かもしれません。スウェーデンはデンマークと比べて今回の経済危機への影響が少ないといわれていますが、今回のSAABのように実経済への影響が出始めていますからね。

2009年2月21日

Chalmers大学の研究者とホテルまで向かいにきてもらって、Chalmers大学に移動。土曜日の訪問となってしまいましたが、先方にはいろいろ気を遣わせてしまいました。ところで、いい機会なのでスウェーデンの雇用システムについていろいろ質問。ご存知のように経済学系研究者のあいだではスウェーデン及びデンパークの雇用システムは従業員の移動(転職)が多いことから関心の的なので。ただ、日本で語られているスウェーデンモデルとは実際はちょっと差がある感じ。まず、転職率が高いのは事実のようですが、企業は従業員を一人雇うごとに社会保障費などの税金の都合、雇用後に短期間の転職されると負担になるようですが、転職は結構行われているようですね。また、同じ職種への転職が多いそうですが、そうではない場合はジョブトレーニングなどの制度が整っているようです。

具体的には失業前の給与の80%が14ヶ月間支給されます。失業して6ヶ月しても次の就職先が見つからない場合は、職業訓練プログラムに移行して、その訓練中は手当てが支給されます。また、同プログラムの参加者を雇用した企業には賃金の75%を国が補助します。

他の欧州の国と比べると新卒の就職率は結構高いようですが、大学卒業前から就職する学生がもいるそうです。スウェーデンは米国や日本のように卒業というものに学生も企業も拘らないようです。

2009年2月20日

スウェーデンのヨーテボリに移動。二回目のヨーテボリ。スウェーデンは寒いです。最高気温が0度以下の状況。雪は氷のパウダーになっています。さて、今日、スウェーデンの自動車メーカ、SAABが経営破綻したようですね。親会社のGMに支える余裕もなく、スウェーデン政府も金融支援を拒否。おそらく今回の経済危機で最初につぶれた欧米自動車メーカになるでしょう。ヨーテボリには同じ自動車メーカのVOLVOの本社があります。ご存知のようにVOLVOは乗用車部門はフォードに売却したのですが(Volvo Cars)、そのフォードはVolvo Carsを売却予定。そしてVOLVO本体のコア事業であるトラックは世界的も大幅に需要低迷。

そうそうヨーテボリ(Goteborg)は比較的新しい街だそうですが、スウェーデン人=ゴート族という伝承(ゴート起源説)から、ゴート(Gote)の名前がつけられたそうですが、その後の研究ではスウェーデン人=ゴート族というのは怪しいということになっていますが、欧州ではゴート族というは勇敢な民族ということになっているのでしょう(攻め込まれた方はゴート族を野蛮人扱いしていますが)。それにしてもローマ帝国の歴史もローマ側を中心とせずに、ゴート族やフン族の歴史からみると結構おもしろいですよね。そうそうアニメ映画でルパン三世カリオストロの城がありますが、あれもローマ帝国とゴート族の関係がわからないとピンとこないストーリーでしたね。

2009年2月19日

移動の関係でパリに一泊。ということで夜にパリ市内にたどり着き、そのままポンピンドーの国立現代美術館。もちろん、今年初めてですが、今年度でいうと3回目か4回目。

2009年2月18日

ASP/SaaS事業のSalesfource.comが定額給付金管理システムの構築サービスを発表したのですが、定額給付金は今回が最初で最後になりそうですから、自前でシステムを作ることはなく、ASP/SaaS向けのアプリケーションかもしれません。SaaSやクラウドコンピューティングを普及させるもっともよい方法は、一回しか使わないようなシステム案件を作り出すことかもしれませんね。その意味では定額給付金はSaaSやクラウドコンピューティングの普及には大きな貢献となるかも。

2009年2月17日

年度末ですね。勤務先の他の先生方が頼んだ物品で、教員用(物理的)メールボックスの近くは納品物で足の踏み場がない状態。各教員の部屋に届けさせた方がいいと思うのですが、諸般の事情でそれができないのがつらいところです。それにしても大量の納品物を検収する事務方はたいへんそうです。本当にごくろうさまです。検収を省くわけにはいかないのですが、せめて検収の手間を減らす手だては考えてもいいですよね。もちろんバラバラと物品を頼む教員(はい、当方です。すみません)も問題ですが、業者さんも検収を前提にした納品を考えてほしいですよね。いまのままでは事務方も業者も(教員も)手間ばかり増えていってしまいます。

2009年2月16日

今日は来客が多い日となりました。延べ人数でいうと10人を超えていますね。

2009年2月15日

あいかわらずいろいろ忙しいです。某省の「雇用増大と景気浮揚につながる研究説明」はいまだに思いついていません。ITというのは省力化という側面が強いですから、景気浮揚はまだしも雇用増大につなげるのはなかなかたいへんですよね。まぁそれを考えるのも仕事なのですがね。それにしても今年は霞ヶ関からの依頼がはやい。こうした依頼は毎年来ますが、4月に入ってからが多い。さらに来年度の予算関連の審査委員の依頼までくる始末。事業系の予算では年度あけ早々に事業に入ってもらうために3月末に審査委員会にいろいろ招集されるのですが、来年度は研究系予算審査スケジュールも早くなるかもしれませんね。

2009年2月14日

Webメディアにプログラミング言語別の求人数と給与の調査データが出ていたのですが、求人情報の条件に記載された情報からの調査だそうですが、求人数が多いのはJavaで、給与が多いのはC#だそうです。個人的には、いいプログラミング言語とは、プログラマの給与が高い言語と考えております。言語設計がきれいとか、表現性が高いとかいっても、その言語で開発しても給与が安けれやはりダメ言語ではないでしょうかね。

その意味ではいまはC#が一番いい言語ということになりますね。Javaは求人数が最多とはいえ、減少傾向。こうしたデータだけで判断するのは危険ですが、Javaは低落傾向なのですが、対抗馬がまだ現れていないというところでしょうか。それにしてもMicrosoft系の言語は給与が高いですね。C#、ASP.NET、VisualBasic.NET、VBAが上位にランキング。お金の臭いがする限りはMicrosoft系の言語の人気は続くのでしょうが、それは金の切れ目が変の切れ目ともなります。

2009年2月13日

今日もいろいろ忙しいです。最近、多いのが省庁から研究内容説明の書類の依頼。まぁ書けといわれれば書くわけですが、今年は妙に多いですね。ただ某省の依頼のように「(当方の研究についての説明を)雇用増大と景気浮揚につながるように書いてください」とかいわれるとさすがに困ります。書類ばかり書いているとプログラミングする時間がなくなるので、ある程度セーブしたいところ。でも今年は多いといっても、複数省庁から同じ趣旨の書類の依頼がやってきたりするので何とかなったり。おそらく内閣府当たりから各省庁に依頼をしたのでしょうが、締め切り日まで同じなのはびっくり。

2009年2月12日

いろいろ忙しいです。ところで先週、Sony VAIO Type-Pについて散々なことを書いたら、何人かの方から改善方法をおしえてもらいました。確かにフォントサイズを変えると多少はよくなりました。トラックポイントは反応速度を下げればいいという助言をいただいたのですが、ThinkPadを使う立場だとやはり調整不足を感じますね。

それにしてもソニーのVAIOは常時、製品ラインナップが多いのですが、各製品ラインの個性があるとうか、キーボードもトラックパッド、バッテリ、ACアダプターが製品ごとにバラバラ。多様な製品を構成するのがVAIOシリーズの強みなのはわかりますが、共通化すればするほどコストが下げられます。

PCメーカには二種類あって、製品を開発しつつ部品を買い付ける。そしてその部品の分だけPCを作って、その部品がおわると次の製品に移行するタイプと、数がでる製品を開発して、その数にものをいわせて部品メーカに部品を作らせるタイプ。後者の典型がLenovo ThinkPadやApple MacBook(Pro)。前者がソニーVAIOとなります。前者は多様な製品を展開できて価格も抑えられますが、各製品の出荷数は限度があります。後者は出荷数が多いことが前提になりますが、需要におうじて出荷数できます。どちらがいいとはいえませんがね。

2009年2月11日

先日、情報系Webメディアの取材があったのですが、そのときにネット広告の状況をご教授いただきました。ネット広告は不況に強いということになっていますが、IT系のメディアに限ると不況の影響をまともにうけているようですね。IT系のメディアでは、大手広告主、特に外資系広告主の出広抑制が広がっていて、特にエンタープライズよりメディアは出稿数が半減という事態になっているようですね。他のメディアと比較して、ネット広告が堅調というのは、ターゲティング広告などの効率の高い広告技術が開発されたからなのですが、ターゲティング広告は個人客には有効ですが、エンタープライズ系よりの広告で、個人ベースのターゲティング広告は効果が低いようですね。ネット広告も分野によってばらつきがでているようですね。

2009年2月10日

昨年なPC業界はたいへんだったみたいですね(記事)。国内PCメーカはネットブックPCに乗り遅れたのですが、EeePCで一躍、有力PCメーカとなったASUSも赤字転落。

MicrosoftはWindows 7では実質的にネットブックへのライセンス料をあげることで、ネットブックPC市場の縮小させるつもりですが、Microsoftの意向というよりは、ネットブックのメーカを含むPCメーカ全体の総意なのかもしれません。ただ、ユーザはネットブックという格安小型ノートPCが作れて、そこそこ使えることを知ってしまったので、Microsoftやメーカの思惑通りにいくかはわかりませんね。Economist誌が"Good Enough Computing"という言葉を使っていますが(なかなかいいネーミングですね)、ユーザはいまのコンピュータで充分だと思っています。あとは性能はそのままで、ひたすら価格競争になっていくのでしょう。ネットブックは"Good Enough Computing"のひとつの現象であって、ユーザが"Good Enough Computing"と感じている限りは、ネットブックをはじめとして格安PCはこれからも存在することになるのでしょう。

ただ、Good Enough computingはコンピュータサイエンスの研究にも大きな影響を与えそうです。当方はソフトウェアの研究をしているわけですが、これまでのソフトウェアの研究はハードウェアの進化に頼りすぎていました。例えばオブジェクト指向言語もコンセプトはよくてもコンピュータの性能が低ければ、処理が重くなるので役立たずとなります。例えば研究で開発したソフトウェアやアルゴリズムはいまは遅くても実用に耐えないけど、3年先のコンピュータは速くなるので大丈夫、というエクスキューズをいれたりするのですが、これまではコンピュータが速くなったので許されました。しかし、これからはいまのコンピュータで遅いソフトウェアやアルゴリズムは3年先も遅いことになります。つまり、コンピュータサイエンスの研究の大前提が崩れるわけで、これまでの研究手法はもう通じないことになります。コンピュータサイエンスの研究コミュニティも新しい価値観のもとで研究を始める研究者と古き良き時代にすがって生きる研究者に分かれそうです。

2009年2月9日

今日は霞ヶ関にお出かけの日。いろいろありますね。さて話はかわって特許のこと。先月末になるのですが、Transmetaの特許はIntellectual Venturesに買われたようですね。Intellectual Venturesは情報系の関係者ならば説明する必要はないでしょうが、MicrosoftやIBM、Intel、Sun などが出資している特許管理会社。倒産したベンチャーなどから特許を買い集めているところ(5千件を超えるらしい)。ただ、個別の特許を売るのではなく、高額な出資金を出した企業には保有する特許の使用権をあたえるというビジネスモデル。表向きは、非出資会社が保有特許を侵害しても高額なロイヤリティの請求はしないことになっていますが、この辺は闇の中。メーカならばクロスライセンスですませることができますが、こうした企業は特許侵害に対しては金銭的な代価、つまりロイヤリティを請求するので面倒です。

当方の専門でいうとモバイルエージェントの基本特許の多くをGeneral Magicというベンチャー企業がもっているのですが、そのGeneral Magicが倒産して、General Magicの特許を買い取ったのがIntellectual Ventures。ちなみにモバイルエージェントが商用化できなかったのは、セキュリティの問題でもなければ、アプリケーションの問題でもなく、特許の問題。特にGeneral Magicの特許は基本的なものなので、General Magicの特許を回避して、モバイルエージェントを実現することは難しく、そのため多くの企業は研究開発まではしましたが、特許侵害を恐れて商用化は断念したというのが裏事情(もちろん、こうした特許侵害に関する情報も企業にとっては機密事項なので表になることはありませんが)。ただ、いまだにモバイルエージェントで既存システムが使っていない新しい方法を思いついたという論文の査読がまわってくるのですが、そうした方法のほとんどはどこかの特許にぶつかっている方法。こうした論文を書いてくる研究者というのは研究は論文の世界だけで回っていると思っているのでしょうね。純粋無垢といえば聞こえはいいのですが、わざわざ無知を宣言しているようなもの。査読者として著者の名誉のために論文をリジェクトにしてあげるべきかは悩ましいところ。

モバイルエージェントに限らず、誰でも思いつきそうな方法をみんなが避けているということは何か理由があると思ってほしいのですがね。どの国際会議とはいいませんが、超メジャーな国際会議でも特許侵害の研究論文が結構あります。特にWeb関連だとメジャー国際会議で発表された論文で提案されている、使える方法というのはあらかた、どこかの企業の特許にぶつかっているそうですね。でもアカデミアだから関係ないという主張をされる方はおられますが、論文内容が既知の方法という点では変わりませんから、その国際会議の論文を選んだ人たち、つまりプログラム委員は自らの知識がないと宣言しているようなものになりかねません。Web関連の研究者から伺ったのですが、Web関連でメジャー国際会議に通すための安易な方法は、自分でアイデアを考えたりせずに、当該分野で企業が出した特許でよさそうなものをみつけて、その特許を論文の体裁に書き直すことだそうです。コンピュータサイエンスに関していうと、純粋学術研究の分野はいいですが、ビジネスに近い分野は学術研究は商業研究にだいぶおいてかれてしまった感じですね。国際会議や論文誌の論文だけを読んでいれば世界の先端が知れるというのは遠い昔の話となりました。ただ、そう思っている人がまだまだ多いのですがね。

さてTransmetaに話をもどしますが、Crusoeなどのx86プロセッサの技術はいまさらどうでもいいとしても、問題は省エネ関連の特許がIntellectual Venturesの手元に移ったとなると、PCメーカにとっては怖いですよね。

Intellectual Ventures関連で気になるのは、RPX社などIntellectual Venturesの役員や弁護士が会社を作り始めていること。景気が下降状態になると、ベンチャーキャピタルはベンチャー企業から資金を引き揚げます。そうなるとベンチャー企業が倒産するのですが、そうすると倒産したベンチャー企業から特許が大量に出回り、特許買い取り企業にとっては安価に特許を買い集めるチャンスとなります。というわけでしばらくは特許を買い取る企業が増えそうです。そしてこうした企業は景気が良くなると、こうした特許を買い取り企業のいくつかはパテントトロールに変身して、特許侵害があろうとなかろうと訴訟を起こしては企業からロイヤリティをふんだくるという光景が繰り返されることになります。特に再生エネルギー関連はすごいことになりそうですね。

そして心配なのは米国の新政権はパテントトロールを後押しする可能性があること。関税というと保護主義ということになりますが、特許侵害に対するロイヤリティであれば自由貿易の堅持といいながら輸入を制限することができますから。知的財産の権利行使が、ソフト関税になる予感がありますね。

2009年2月8日

Webのニュース記事にハードディスク(HDD)の業界組合のセミナーに関する記事がありました。HDDで気になるといえばSSDの影響なのですが、この記事を読むと立場によっていろいろ意見があるのがわかって興味深いですね。結局、低価格PCでは容量あたりの値段よりも、モジュールとしてHDDまたはSSDの単価の安さが問題なのようですね。だとするとSSDの方が分があるように思います。というのは、現在のSSDはHDDの取り替え需要なので、SSDはHDDと同じモジュール化&インターフェースとなっていますが、個人的には将来はPCのマザーボードに直接フラッシュメモリを実装することになると予測しています。そうなるとSSDの価格は限りなく、Flashメモリと制御チップのチップ代となりますから、部品が複雑なHDDは単価では勝てないことにない、つまりPCに乗せてもらえないということになります。というわけでSSDの次のステップは、マザーボードに直接チップを実装したPCが登場するときだと予想しています。これはマザーボードの評価にも影響を与えます。フラッシュメモリ及び制御チップによってSSDのアクセス速度差がでるでしょうから、マザーボードの評価は内蔵SSD容量とSSD制御チップの性能となるのではないでしょうか(それと電力消費量。なお、プロセッサの性能はあまり気にしなくなっていますね)。明日からはISSCC'2009ですし、暫くはデバイスの話題がいろいろでてきそうですね(ISSCCはアブストが事前公開されるので予想できるわけですが)。

2009年2月7日

今朝の日経新聞のトップ記事は、東証上場の製造業全体の2009年3月期の連結最終損益が1兆円超の赤字見通しという記事。自動車・電機系などの輸出比率の高い業種の企業の業績悪化が要因のようです。景気が回復しても元にもどる保障はないわけですから、各企業とも構造改革が求められます。その方向性が気になるところです。当方は国研の研究者なわけですが、企業の動向は多かれ少なかれ影響を受けるわけで気になるところです。

国内企業に限るといわゆる垂直分離、つまり自社設計&自社生産に拘っているわけですが、製品需要数が変動する市場状況では水平分離、設計と生産をわけるしかないでしょうね。例えばソニーは一部製造部門を別会社にしているにしても、基本的には自社で設計した製品を自社の工場で生産していますが、Appleなどの海外企業は自社で設計した製品を他社に生産委託。このため需要変動に強いですし、企業という組織も大きくならずに済みます。

ここまでは新しい話はないのですが、むしろ気になるのはその先。(同じ業種でも)水平分離ができる企業と、できない企業がありそうということ。つまり垂直分離に最適化されている企業ほど、設計部門と製造部門のリンクが密にそして複雑になっていますから、水平分離化するために例えば生産部門を切り離したとしても、設計会社と製造会社も業務に支障を来すし、結局、設計会社はその製品のもともとの工場だった製造会社にしか仕事を出せないことになりかねません。つまり設計部門と製造部門のモジュール化が進んでいて、インターフェースがきっちりできている企業ではないと水平分離ができないということになります。水平分離に成功した企業についても、その製造会社は再編が進みそうですね。製造部門は規模が重要ですから、例えば電機系の企業から分離した製造会社同士が合併して巨大な製造会社ができる可能性もありますね。

こうした企業の再編にはコンピュータサイエンスの研究は一件関係がないようですが、上記のモジュール化やインターフェースの設計というのは情報系に近く、情報系の研究がいきるところは多いと思います。例えばコンポーネントの技術は各部門の再構築に使えるかもしれませんし、プロトコル階層の設計技術が製造会社と設計会社間のインターフェース設計に役立つかもしれません。コンピュータサイエンスも対象をコンピュータ以外に広げてみればいろいろなことに応用できるはずです。

2009年2月6日

Amazonがついに伝家の宝刀を抜きましたね。決済サービスを構築できるAPIを正式に公開。Amazonはネット販売の最大手。その背景には(特許としては認められなかったものの)1クリックなどの決済技術があります。このAPIを使って、商取引だけでなく、ネットワーク上のサービスへの課金を実現する企業がでてくるでしょう。

これはクラウドコンピューティングという観点から見ても重要でしょう。クラウドコンピューティングにおいて、Amazonのライバルにとなる、GoogleやMicrosoft、Salefourceは決済技術に弱い。Microsoftは所詮、PCへのプレインストールと昔ながらのパッケージ販売から脱却できていませんし、Salefourceは基本的には月単位の契約。そしてGoogleは広告収入から利益を得るというビジネスモデルなので、個々のサービスに課金はしていない。以前、Googleの方に課金についてきいたところ、課金はGoogleで一番弱いところだとあっさり認めていました(だから自覚はあるということですね)。

それと今回のAmazonの決済サービスAPIの公開はネットサービスのビジネスモデルの変換点です。Googleを含めて多くのネットサービス事業者はユーザに無料でサービスを提供する代わりに、広告収入によって利益を得るという広告収入型のビジネスモデルとなっています。広告収入モデルでは利用者数を増やせば増やすほど広告収入も増えることから、利用者の獲得に必死になっていました。しかし、昨今の経済情勢の中、ネット広告収入が伸び悩み、広告収入だけに頼ったビジネスモデルに限界が見え始めています。今後、ネットサービスは、Web 2.0という言葉で表された広告収入による無料サービスの時代から、いよいよ有料サービスの時代に移行するでしょう。このとき今回のAmazonの決済サービスAPIの公開はサービス有料化においてたいへん重要な意味を持ちます。もちろん今後も無料サービスは一部は残るでしょうが、(広告収入を増やすために)無理をしてまでしてユーザ数を確保していた無料サービスは消えていくでしょう。多数ユーザ数を前提にしたサービスはその方向性の転換が求められるでしょう(その意味では多数ユーザの集合知を使った研究も方向がかわるでしょうね)。そして長期的には客単価が高い有料サービスが重視されることになりそうです。今回のAmazonの決済サービスAPI の公開は、いわゆるWeb 2.0的なサービスがいよいよ終わりになり、次の時代が始まることを象徴していますね。

2009年2月5日

Sony VAIO Type-Pの納品。まわりで自慢する人が多く、わかっていたとはいえ、実際使ってみると小さいし、軽いですね。PCというよりも、昔のポケットコンピュータに近い感覚。同製品のイメージ広告のようにジーンズのポケットは無理でしたが、コートのポケットには入りました。ただ、使い勝手という点では大きな?マークがつきます。OSがWindows Vistaということがあるのですが、それを差し引いてもその設計には大きな疑問があります。ディスプレーは8インチと小さいのに解像度が1600×768なっているので、解像度が高すぎて見るのがたいへん。机の上ならばともかく、電車のように揺れる状況で使うのには無理がありそう。ほかのネットブック(ULCPC)と同様に1024×600を使った方がよかったのではないでしょうかね。製品企画に疑問が残ります。それとポインティングデバイスはいまどきありえないほどの動作がぎこちない。これはアップデートなどで将来解決される問題かもしれませんが、現状ではストレスがたまるユーザが多いのではないでしょうか。当方はPCクラスタのモニタPCにつもりだったので、これらの問題はなんとかなりそうですが、VAIO Type-Pはモバイル用PCとしてみたら失格ではないでしょうか。

ところでAppleがネットブックが出すか否かが話題になっていますが、Windows用のネットブックによるMacOS Xのパフォーマンスレポートが出ているようです。このレポート通りだと最終期のiBook程度(4年ぐらい前)の性能になるようですね。Webブラウザ程度はいいとしても、オフィスアプリケーションを使うのには厳しそう。仮にAppleがネットブックを出すとしても、Macintoshとしてではなく、iPhoneの大型判という位置づけの方がいいかもしれません。

2009年2月4日

今日は勤務先の大学院の入試と業界団体での講演。間に合う計算でしたが、合否判定会議に若干遅刻することになり、大反省です。

勤務先の大学院の4月入学受付は終わってしまいましたが、10月入学もあるので、ちょっとだけ宣伝。不景気のなかで無理をするより、大学院で勉強して、景気回復に備えるというのも一つの方法だと思います。歴史的にいって、大きな不景気では不景気前後で世の中が変わっています。だから、不景気前に需要があった知識や能力も景気回復後に需要があるとは限りません。プロパーの学生になるのか、社会人学生になるのかは入学される方のご事情によるのですが、大学院で景気回復後に備えるというのもいいと思います。もちろん勤務先の大学院でなくてもいいので、景気回復後に需要があって、いまはまだ供給が少ない知識や能力を選んでいただければよいかと思います。いつの時代でも、世の中が変わっているときは、変われる人でないと生き残れませんから。

これは研究者にもいえて、学生時代の研究テーマを引きずっている研究者とテーマを変えた経験がある研究者もおります。もちろん研究テーマがコロコロ変わる研究者は困るのですが、問題は前者の方。そのテーマに需要や発展があるからそのテーマを続けるべきです。一方で、すでに研究テーマに需要や発展もないのに、単に研究テーマを変える能力がないのでので同じテーマにしがみついている方もおられます。ご本人はいいとしても、不幸なのはそうした方のところの学生さん。ただ、その学生さんもそれに気づいていないことも多いのでいいといえばいいのですが。

2009年2月3日

一昨日、RFIDのことを書いたらいくつかお問い合わせ。さてそのRFID業界ですが、景気原則の影響をまともにうけている感じ。RFID関連の新規受注が減っているだけでなく、受注分のキャンセルもかなり出ているようです。RFIDの用途の多くは、工場内や物流にける商品管理なのですが、その商品が動いていないのですから、RFIDに需要がなくなるのは当たり前かもしれません。そろそろRFIDをコスト削減のための道具として使うのか、付加価値をあげるための道具として使うのかをはっきりさせないといけないのかもしれません。どちらがいいということはないのですが、こうした位置づけが不明確なのも遠因になっているような気がしますね。

ところで、どの業界も同じですが、キャンセルの後始末はたいへんですよね。キャンセルされた側も、別の会社に外注を出していることは多いわけで、キャンセルされた側が今度はキャンセルする側になった頭を下げることになります。そして負の連鎖が続いていくことになります。これがIT業界だと川下に行くほど経営規模の小さい会社になる傾向があるので、一件の発注キャンセルでも死活問題になってきます。それと気になるのはインドや中国のIT業界。世界中のIT業界の下請けになっていたので、相当しわ寄せをうけていると推測されます。

2009年2月2日

企業関係者とお会いすることが多いのですが、リーマンショックから昨年末にかけては企業の方々の関心はコスト削減だったのですが、今年に入ってからは自己資金拡大と(事業の)縮小均衡に関心が移っていますね。景気が回復してももとの経済規模にもどれるとは限りませんから、売り上げが少なくなってもやっていける経営規模や収益性に企業体質を変える必要がありますし、銀行の貸し渋りが予想される状況では、手持ちの資金を増やすというのは経営の鉄則ですから。

縮小均衡と自己資金拡大の動きはIT産業に影響を与えますよね。まず縮小均衡ですが、新規の情報システム需要がシュリンクするのは仕方ないとしても、運用中のシステムにも影響が出そうです。最近の情報システムは、運用開始してからも規模を拡大できる余地を残しておくことが多いのですが、規模の縮小は考えていませんし、いままで規模縮小への要求はほとんどありませんでした。ただ、現在のような経済状況ですと情報システム側も規模の縮小が求められそうです。誰でも思いつくのは、例えば3台のサーバを使っていたところを2台で運用するなどが考えられますが、コストや信頼性などの様々な要素を考慮しながら規模の縮小するとなるとただサーバや機材を減らせばいいというものではありません。

自己資金拡大への方策の一つは運用コストの削減ですが、その先にはオンプレミス(インハウス)の情報システムからクラウドコンピューティングへの移行という動きが出てくるのでしょう。もちろん、オンプレミスの情報システムを維持する場合でも、費用モデルが実際のデータ量や処理量にリニアに比例するシステムアーキテクチャが求められるようになるのでしょう。

2009年2月1日

昨日の続きですが、RFID(ICタグ)が普及しなかった理由のひとつは、某省の研究開発促進策が市場を逆にシュリンクさせてしまったこと。

差し障りのないレベルで説明すると、某省は米国の業界団体(EPCGlobal、当時はAuto-IDセンターと呼んだ)が言い出した「RFIDタグは5セント以下になる」というはったりを真に受け、そこに某H社が「当社なら5円で作れる」といい出し、某省は20億円予算をつけて某H社に研究開発を委託。この政策が最悪だったのは成果が出なかったということよりも、市場を潰したということ。この研究委託があった当時タグの価格は30円程度だったのですが、一部の企業は、RFIDタグが30円程度を前提にRFIDの導入を模索しはじめたところでした。そこに某省と某H社が5円タグを作りますと言い出したので、RFID導入に積極的な企業は5円タグが普及するまで、RFIDの導入計画を延期してしまいました。経営者としては、30円タグを導入しても、数年で5円タグが製品化されるのであればRFID導入を延期しようと考えるのは当たり前です。まぁそれでも5円タグが実際に製品化されていればまだよかったのですが、結局、5円からはほど遠い水準なのはもちろん、同等の他社製タグと値段的に違いがあるかというとかなり疑問(というかむしろ高い)。結果としてはRFID市場を潰すだけで終わりました。

某省としてはRFIDを普及させたかったのはわかりますが、結果としてRFID市場に対してはネガティブキャンペーンになりました。ということで役所の思慮の足りない政策で市場をつぶす事例となりました。ただ、この問題は科学技術振興策では常に考えない解けない問題です。例えばiPS細胞がもてはやされていますが、iPS細胞による医療効果への期待が大きくなればなるほど、ES細胞を含む代替技術の研究はシュリンクしてしまいます。有望な技術に研究予算をつぎ込むのは正しいのですが、対抗技術や代替技術の研究開発が停滞しないようにしないといけません。

余談ですが、某H社が某省予算で作ったタグは、お値段が5円からほど遠い水準でしたし、委託時にRFID規格(EPCGlobal Gen2)に準拠させるといっていたのに、試作品として作られたRFIDタグは規格準拠していない中途半端なタグ。そのうえ、その規格団体がそのタグを規格として認めないといったのに、某H社は某省には「その規格団体がそのタグを規格として認めた」と報告したために大混乱(当方は委員だったので、某H社の担当者がつるし上げられる現場に同席することとなりました)。ちなみに某H社で5円タグの開発をしたのは半導体部門、しかし、某H社にはもともと極小RFIDタグを作っている事業部があって、その事業部は5円ではタグは作れないことを知っていたので強く止めたそうです。ただ、某H社の上層部で現場の声を無視して委託を引き受けてしまったそうですが、5円タグのプロジェクトの散々な結果により、信用を落としたのは事業部の方。お気の毒です。

もう一つ余談を書くと、そもそも5円という価格も根拠がなかったのです。当時、3大コンビニスーパーのうち二つが当方のところにも相談にこられていたのですが、コンビニスーパーはRFIDで商品の個別識別をする場合、タグ単価が50銭を切ったとき、とそろって同じ数字をあげていました。RFIDは決して安定した技術ではなく、商品にタグを貼った場合、商品100 個中、2,3個は読みと落とすことはざらです。2,3個ミスして許されるような商品というのは100円以下の商品です。100円以下の商品に5円のタグを貼る人はいません。メーカ側の話だけでなく、使う側、例えばスーパーや物流側の意見、例えば価格要求も聞いておけばこんなことにはならなかったでしょう。

2009年1月31日

ひさしぶりにRFID(ICタグ)のこと。ISOのRFID規格委員なのでメディアなどからRFIDの問い合わせをよくけるのです。今回の問い合わせはRFIDはなぜブレークしなかったのかでした。ブレークしなかった理由ですが、最大の理由はそもそも市場はなかった。バーコードでうまくいっているのですから、あえてRFIDをいれる必要はなかったということでしょう。RFIDタグメーカなどの当事者は今も昔も工場のようにRFIDが必要とされている分野しか狙っていないのですが、IT業界が自社ミドルウェアを売ろうと思って勝手に騒いでいるという状況。

2番目の理由は認識率です。RFIDタグは信頼性の高い技術ではありません。商品にタグを貼った場合、同時読み込みができるといっても、商品100個中、2,3個のタグは読みと落とすことになります。そのうえ読み取れない理由を調べるにしても、たまたま読み取れなかったのか、外来電波の影響か、タグが壊れているのかをしらべるのすごく手間がかかります。その点、バーコードは目で見れば汚れているか否かがわかるので管理もしやすい。また、メーカにもいろいろでして、不良品率が1割を超えるようなタグを売るところもあります。

3番目の理由はUHFタグ神話。135KHz未満のタグや13.56MHzのタグと比べると、UHFタグは通信距離が長くなります。前者がせいぜい2,30センチなのに対して、後者は3〜5メートル程度は大丈夫。ただ、RFIDタグは通信距離が長ければいいというものではありません。使い分けなのです。倉庫内などでRFIDタグで在庫管理をした場合、UHF帯タグを使うと倉庫の出入り口に入出庫をチェックする分にはいいのですが、倉庫が小さい場合や密集している場合は、関係のない在庫品に添付してあるタグまで読み込んでしまいます。だから通信距離が短いタグの方がいい場合もあります。それとUHFタグがよくなかったのは、せっかく、135KHz未満のタグや13.56MHzのタグが普及し始めたときに、当時、試作品が出始めたUHF帯タグに妙に期待がふくらんでしまったこと。実際には通信距離が長いだけだったのですが、RFIDタグの様々な問題もUHF帯タグですべて解決すると信じてしまった人が多かったことです。この結果が、13.56MHzのタグ導入計画をやめて、UHF帯タグをまつ企業が続出。でもUHF帯タグは万能ではなく、結果としてRFIDタグは市場は伸びませんでした。13.56MHzのタグが普及してから、UHF帯タグの開発をしていたら、ここまで市場はシュリンクしなかったかもしれませんね。

4番目の理由はEPCGlobal(旧AutoID Center)のミスリード。EPCGlobalは、Walmartなどの商業関連の企業が中心になって、RFIDによる商品管理を狙ったのですが、商品管理をするだけならばRFIDは高すぎるし、タグの認識率が低すぎます。というわけで老舗のRFID関連企業はEPCGlobalに対して距離をおいていたのですが、IT業界とRFID関連ベンチャーがEPCGlobalを中心に大騒ぎをしていたという感じでしょうか。EPCGlobal主導によりGen2とよばれるUHF帯タグの標準化とタグの低価格化は少しは進みましたが、小規模実証実験以上の進展がない。これをいうとEPCGlobalの関係者は反論されるのですが、継続的にRFIDが使われている事例は少ないの現実。そのうえ米国のRFID市場で唯一有力市場の医薬品業界がEPCGlobalから分かれて独自団体を作って逃げ出したことから、EPCGlobalは風前の灯火状態。さてEPCGlobalはいつまで続くのでしょうかね。日本でもEPCGlobalの日本支部を受けた大学がありましたが、多少でもRFIDに関して知識があれば先がないのはわかるはずなのに、EPCGlobalに入れ込んでいますね。実は日本支部を作ると言い出したときに、当方は関係者には強く止めたのですがね。

2009年1月30日

打ち合わせなどで外出。それにしても最近は出かけることが多いです。ほとんどは企業との打ち合わせなのですが、企業の方に来ていただくより、行く方がいいです。やっぱり行けばいろいろ見られますからね。自分が動かず、人に来てもらうようになると情報も入らなくなりますからね。

2009年1月29日

国内電機メーカは総崩れ状態ですね。08年度連結業績予想では営業損益は軒並み赤字。報道されている数字をあげてみると、パナソニックが1000億円規模、東芝が2000億円規模、ソニーが2600億円、NECが2900億円規模、日立が7000億円規模、富士通が500億円規模の赤字。ちなみにトヨタは4000億円規模の赤字予想。最終的に08年度連結業績予想は5月の後半以降に数字が確定しますが、さらに予想が下方修正されないことを祈るばかりです。

今後の展開は予想できませんが、ひとつの方法はPhilipsのようにヘルスケアと電灯に絞って、他の部門を売却・分社化することでPhilips本体の収益性を確保した例や、エルピーダメモリのようにNEC、日立、三菱のメモリ事業部を統合するとともにメモリに専業化することで、組織の迅速性をあげて機器に立ち向かう例などが参考事例になっていくかもしれません。

2009年1月28日

昨日は広告の話になったので、その続き。ネットサービスは広告が集まらないので、サービスに課金したいというネット事業者が多いようですね。でも広告料とサービス料では要求される技術も体制も違うので、ふるいに落とされる事業者は多そうですね。というわけで今年は相当数のネットサービスが、広告収入が減る、かといってサービス課金もできずに消えるのではないでしょうか。特にユーザ数が多い無料ネットサービスほど要注意。無料サービスではユーザーが増えれば増えるほど、サーバや管理者などのコストが増えますからね。

ただ、課金は経済学者さんがいうよりは簡単ではありません。そのひとつはマイクロペイメントの問題。例えばサービス料をクレジットカードによる決済したとすると、その決済コスト、つまりカードからお金を引き落とすためのもろもろの手数料や通信費、機材費の方が高くなってしまうことが多い。そこで考えられたのがネットマネー(ネット上の電子マネー)とプリペイドカード。ただ、ネットマネーは手続きが煩雑なことに加えて、ネットマネーであっても決済コストはかかるのであまり普及せず、結局、iTunesをはじめとしてプリペイドカードの方が生き残っているというところでしょうか。

逆にいうとマイクロペイメントというコスト問題のパズルが解けた人、つまりコストに見合うサービス課金という技術をもっている企業は、広告収入で規模を拡大していったGoogleを超えることもできるでしょう。やはりGoogleは良くも悪くも広告収入に特化した企業ですからね。いまはこのパズルを解くべき多くの人が挑戦をしているのでしょう(当たり前だけどお金になる話なので、皆さん、話したりせず、まずは特許にすることを考えますよね)。

ひとつの方法は寄付かもしれません。Wikipediaの寄付という金額あたりの決済コストの低い方法で資金を調達しました。これはひとつの方法だと思いますが、一般の商業的ネットサービス事業者が寄付という形で資金調達をするのは難しいでしょう。ただ、税法的な方法はあるかもしれません。寄付に対する税金、例えば贈与税制度をかえることにより、寄付をすることにインセンティブを与えることを可能かもしれません。それから、ネットマネーではなくプリペイドカードが広く普及していることは、ネットワーク上だけで行われる情報の譲渡よりも、物理世界における実体の譲渡を組み合わしたハイブリッドな方法の方が実現コストが安いということを意味していますが、これは注目に値することだと思います。個人的には、課金に限らず、物理世界と仮想世界をハイブリッドにして、物理世界の長所と仮想世界の長所をうまく組み合わせて、コストや手間を小さくした方法が、ここ数年はトレンドになるように予想しています。

2009年1月27日

昨日の量販店の影響の続きですが、広告代理店の方と話すと、家電やPCメーカはもちろん、食品メーカの広告も減っているそうです。その理由もやはりスーパーや家電量販店が強くなったので、例えば食品メーカは消費者に宣伝を宣伝するよりも、スーパーに販売奨励金を払った方がいいということ。

TVCMや新聞の広告が落ち込む中、ネット広告はまだ好調なようなですね。その理由はTVCMや新聞と違って、検索連動広告や行動ターゲッティング広告などの効率が高い広告手法があるから。ただ、ネット広告が効率が高いといっても、スーパーや家電量販店は購入者に近い立場。ネット広告もスーパーや家電量販店に奪われる可能性はありますよね。これを発展させるといろいろなビジネスモデルが考えられます。例えば家電量販店そのものを広告にするというのはどうでしょうか。家電量販店は複数メーカの共同ショールームという位置づけにしてしまいます。各社の製品を並べて、説明員をおいているけど、製品は一切売らない。お客さんは携帯電話や店内のネット端末からメーカの直販サイトを介して注文して配送してもらう。そして家電量販店はメーカから広告料という収入を得るというビジネスモデル。

2009年1月26日

仕事柄、家電やPCメーカの方々と会うことも多いのですが、去年の秋以降は一応の商品が売れないという話題になりがち。でも家電やPCメーカが売れなくなっている理由をすべて経済状況にするのには個人的には疑問だったりします。経済状況以前に商品力が落ちているからではないでしょうか。

その背景には家電量販店の存在があると考えています。家電量販店が圧倒的に強くなっているために、いまの家電やPCメーカは消費者ではなく、家電量販店を向いています。つまり、家電やPCメーカは消費者に商品を訴えるよりも、家電量販店に販売奨励金を払った方がいいということになり、商品力をおざなりになっていったように思います。

わかりやすいように例をあげて説明します。Apple のiPodとSonyのWalkmanを考えてみます。Walkmanが、iPodがヒットした理由はいろいろ挙げられています。そのひとつはApple のiTunesというネット戦略かもしれませんが、個人的にはメーカ直接販売と量販店経由の間接販売の違いだと思っています。AppleはあくまでもApple Storeなどの直販に拘ったのに対して、Walkman はあくまでも量販店で売られる商品。従ってAppleは消費者にiPodに関心もってもらうことに注力しますが、Sonyは量販店に売ってもらうことを注力します。消費者に関心をもってもらうためには商品力を高める必要がありますが、量販店に売ってもらうためには、商品力を高めるよりも販売奨励金を増やしたり、販促員を大量に送り込んだ方がいいということになります。購入する消費者は、商品にお金を払っているのであって、量販店への販促活動にお金を払っているわけではないですから。今後、量販店の合併が続くでしょうから、国内メーカはますます量販店の方を向いてしまいそう。

上記と関わるのですが、Webニュースに某家電・PC系の市場調査会社による家電やPCの販売授賞式の記事がありました。販売台数の上位に対して表彰するものですが、この賞の受賞を販促に使っているメーカも多いのですが、そうしたメーカをみていると悲しくなりますね。あくまでも量販店の販売実績。つまり商品力があったから売れた商品もあると思いますが、量販店における販売数は販売奨励金に依存します。うがった見方をすると、量販店に対する販売奨励金がついた商品に対する表彰ともいえますね。なお、この賞はメーカの直販サイトやネット専門販売店の販売数ははいっていないので、ネットを含む実販売数とどのぐらいギャップがあるのでしょうかね。それから当方は量販店が悪いとは思っていません。むしろ量販店に頼り切っているメーカの方が問題なのでしょう。

2009年1月25日

先日インストールしたiWork’09ですが、iWork’09といっしょに発表されたiWork.comという書類公開サービスがベータ版ということでやっと始まったようです( インストールしたときは準備中でした)。結局、ただのファイル共有なのでがっかり。

何を期待しているのかというと、オフィスアプリケーションに特化した共有サービスなので、ファイルという単位ではなく、文章とか図とかのもっと小さいデータを単位にした共有サービス。それとある種のデータ変換付きのの共有システム。前者はHTMLを使うことで文書中で他のサーバ上のテキストや図も混在して表示することでもできますが、共有のもとなったテキストや図はファイルなどの独立したデータとして管理されていることが前提ですが、ひとつの文書の中のテキストや図も自由に共有したいのです。これは差分データを保存するという意味でも重要。ネットワーク上のファイル共有サービスではファイル単位でセーブするので、大きなデータでは時間がかかります。やはり変更があった箇所だけを保存、読出をしたいですよね。

後者のデータ変換の方は、PDFとかWordといったデータ形式だけでなく、データの中身も変換したいのです。例えば翻訳や要約もあるでしょうし、部分的な変換もありえますよね。わかりやすい例でいうと顧客向けの文書を共有サーバに保存しておいて、ある顧客がその文書をダウンロードするときに自動的にその顧客の名前を入れるということもできるでしょう。そうなるとネットワーク上へのデータ保存を想定したテンプレート的なデータ形式が登場するかもしれませんね。

ただ、こうしたサービスはデータを作成するアプリケーションに依存するので(いずれはすべてWebベースになるのかもしれませんが)、現状ではオフィスソフトウェアをもっているMicrosoftとAppleにしかできませんからね。いずれにしてもデータの保存場所はローカルディスクではなく、ネットワーク上のデータ共有サービスが主になるとでしょう。そのときにいまのファイルというデータ単位がいいのかは再考した方がいいと思います。

2009年1月24日

海外大手IT関連各社の決算書を読んでいるのですが、いろいろ見えてきますね。

例えばMicrosoftの決算書を例にとると、Client部門、つまりWindows XP/Vistaですが、売り上げが$39.82億(2007 年度は$43.34億)、利益が$29.46億ドル(2007年度は$33.86億)ということで、対前年比で減収減益。これはPCの出荷台数は伸びていないことがありますが、ULCPCなどの安価なライセンスの比率が上がっていることと思われます。そしてServer部門は売り上げ$37.43億(2007年度は$32.61億)、利益が$14.89億(2007年度は$11.54億)ということで順調。それで問題なのはオンライン部門です。売り上げが$8.66億(2007年度は$8.63億)、利益は$4.71億の赤字(2007年度は$2.47億の赤字)ということで、売り上げは全然伸びていないのに、赤字幅だけは増えている状況。ここからわかるのはMicrosoftはネットビジネスでは全然儲かっていないし、売り上げに関しても市場が広がっている中、微増ということは相対的には縮小傾向ということ。Microsoftはクラウドコンピューティングへの投資を続けるでしょうが、クラウドコンピューティングを構成するサーバは日に日に価値が落ちていきます。クラウドコンピューティングのビジネスから利益が出るころには、現在保有しているサーバの償却はできない可能性が高いです。

ここまではMicrosoftの問題なのですが、個人的に気になるのはクラウドコンピューティングのインフラへの影響。インフラに投資した以上はその費用を回収すべきなのですが、インフラがあまって遊んでいる状態にしておいても仕方ないので、AmazonのEC2のようにMicrosoftも採算度外視の大幅ディスカウントをしてくる可能性がありますね。個人的にはMicrosoftは自社オフィスソフトウェア商品との価格バランスから、大幅なディスカウントはしてこないと予想していたのですが、今期の決算書をみるとわからなくなってきますね。

2009年1月23日

Microsoftまでリストラ発表。Sunは6千人、MicrosoftとIntelが5千人、モトローラが4千人、・・・。など。不況の影響がIT業界にも及んだとみることもできますが、IT業界そのものの成長戦略が見えなくなっているのも事実でしょう。例えばPCの技術トレンドはすでに性能向上よりも低価格化に移っています。携帯電話も機能過多ですから同じ道を歩むでしょう。

かつて多くの研究者はMooreの法則が破れて、コンピュータの性能向上がコンピュータへの性能要求に追いつかなくなることを真剣に心配していましたが、現実はコンピュータへの性能要求が鈍ってしまい、Mooreの法則に追いつけない状態になってしまいました。

コンピュータサイエンスの研究者としては性能要求が飽和しているという状況は認めたくない状況ですが、現実は受け入れないといけません。前にも書きましたが、コンピュータサイエンス、特にソフトウェアの研究はハードウェアの性能向上を大前提にしてきました。例えば今のコンピュータでは遅くて使えない高機能ソフトウェアでも数年後にはコンピュータの性能が上がっているのでサクサク動くというエクスキューズが許されたし、実際、そうなってきました。しかし、これからはコンピュータは安くなっても性能が上がることは期待できない時代になります。従って、コンピュータサイエンスの研究はその大前提が崩れるのですから、コンピュータサイエンスという分野は成立しなくなるかもしれないし、すくなくても研究方向性を根本的に変えないと終わってしまいます。

2009年1月22日

午前中は霞ヶ関関連で再来年度予算に関するヒアリング。IT業界は不況ということで、IT企業を下支えのための補助金は必要なのはわかりますが、いま必要なのはIT業界を含む既存産業の延命ではなく、新しい成長セクターを作って長期的な経済成長を作ることだと思うのですがね。各省庁とも役人の方々はそれぞれの立場で本当によくやっていると思うのですが、複数省庁と関わる立場からみると、それぞれのベクトルがばらばらで結果として打ち消しあっている感じなのですよね。それぞれお立場あるのはよくわかるのですが、もう少し広い見地で政策立案をしてほしいですよね。午後はISOのRFID規格の委員会。

2009年1月21日

3月の海外出張のためのチケット予約をしているのですが、飛行機はすいていますね。企業が出張規制をかけているようですね。当方が聞いている範囲でも、例えば某大手自動車メーカの方によると11月後半ぐらいから海外・国内出張は半減、上級の役員以外はビジネス席はもちろん、新幹線グリーン席も禁止。電機や情報系はそこまでは絞めていないようですが。それから3月といえば学生さんの卒業旅行で多かったのですが、就職重宝サイトのアンケートによると卒業旅行に行かない大学生は4割。行かない理由としては、「卒論や授業で忙しい」と「お金がもったいない」がほぼ同数で多い。そもそも卒業旅行には意味がないという学生さんは4割だそうです。最近の学生さんは堅実ですよね。当方は卒業旅行にはいっておりません。

2009年1月20日

Seagateの一部のHDDでアクセス不能になる不具合が発表されたのですが、なんと手持ちのコンピュータに該当するHDDが入っていました。それもオフィスでメインに使っているMacPro。困りますよね。ちなみにSeagateによる担当サポートにメールを送れというので送ったのですが、3日たってもいまのところお返事はありません。それと日に日に対象HDD製品が広がっているようなので、SeagateのHDDを使われている方は当初発表で対象外であって、その後、対象になっている場合がありますから、注意された方がいいです。

ところでデジタルカメラ用のSDカード型の無線LANカード(Eye-Fi)を使っていて思ったのですが、HDD型の無線LANはないのでしょうかね(もちろんEthernetでもいいです)。もちろんデータストレージサービス付き。つまりSATAなどのHDDと同様のインターフェースをサポートしているのですが、データ書込は無線LANを介して接続されたインターネット上に用意したデータストレージサーバに格納して、データ読出はデータストレージサーバから読み出すというもの。だったらPC側の無線LANで接続すればいいというコメントをいただきそうですが、OSやアプリケーションのサポートの有無にかかわらずネット上のデータストレージを使えるメリットは大きいはず。もちろん自分のデータだけでなく、インターネット上のさまざまなデータにもアクセスできるようにすると、HDDがインターネットそのものに見えるはず。

2009年1月19日

午前中はATRで打合せ、午後はNICTで外部評価委員会。ということで新幹線で京都に出て、京阪奈地区にいくことになったのですが、おどろいたのは新幹線。往路は「のぞみ9号」でいったのですが、「のぞみ9号」は何回か乗っていますが、以前は指定席は満員だったのに、今日は一番混んでいる新横浜-名古屋間で7割前後でしょうか。復路は7時半頃に京都駅にたどり着きましたが、以前は数本先の新幹線でないと指定席はとれなかったのにどの新幹線も空きがある状況。また以前はサラリーマン風の方でも複数人のグループで新幹線に乗られる方々が目に付きましたが、お一人で出張という方ばかり。というわけでしーんと静まりかえった車内。企業で経費削減で出張規制がかかっているのでしょうね。不景気を実感する一日となりました。それと来年度はさらに経費削減が厳しくなることが予想されますが、いったいどうなってしまうのでしょうか。

2009年1月18日

プログラミングの一日。ちょっと思うところがあって、ちょこちょことプログラミング言語を設計してちょこちょこと実装。YaccやLex相当のツールを使えば良かったのですが、文法定義のメモ書きを見ながら再帰を駆使した字句解析と構文解析プログラムを作ったので手間取ることとなりました。プログラミング言語を実装するときは毎回同じ失敗をするのに学習をしていません。それに手書きの字句解析も構文解析を作るにしても宣言型言語で実装した方が簡単・きれいになるのはわかっているのですが、いつも汎用言語で書いてしまいます。プログラミング言語も他人に使わせようとするとたいへんなのですが、自分の研究用に作る分には楽でいいですね。

2009年1月17日

今日はセンター試験ですね。このページをお読みの方は大学関係者が多く、試験監督他の仕事にかり出されている方も多いかと思います。おつかれさまです。当方の場合、勤務先に博士課程はあっても、学部はないのでセンター試験に参加していません。でも前の勤務先は国立大学ということもあって、毎年、2日間朝から晩まで試験監督をしておりました。

この試験監督もいろいろたいへんなのです。まぁ不都合がない範囲で書いてしまいます。結構たいへんなのが答案枚数のチェック。試験が終わって答案を回収すると回収漏れがないか枚数を、受験生の視線を浴びながら大急ぎで数えるのですが、先生方によっては数えるという行為そのものが苦手な方もおられるので、ハプニングもおきることになります。問題配布と答案回収は教室の大きさに限らず大忙しなのですが、試験が始まってしまえばあとは受験者の写真照合と不正がないか見張るぐらい。このため試験監督が多く割り当てられる大教室は試験が始まれば監督役の負荷は少ないのですが、小教室は試験監督の人数が少ないので常時監督となります。

さらにたいへんなのが事務方。どこの大学でも入試というのは一大イベント。その中でもセンター試験は規定通りにこなしてあたりまえ、ささいな不都合でもマスコミや全国高等学校長協会からたたかれます。ということで万全を尽くすことになります。例えば年末ぐらいから最寄り駅から大学までの道を下調べから、前日には机の受験番号や案内を貼ります。そして当日は早朝出勤。雪が降るような場合はさらに早い時間に出勤か前泊して雪かき。そして大学入り口での受験票チェックなどなど本当にたくさんの業務があります。もちろん手分けをするにしても総出で対処されることになります。ということで受験生はもちろんのこと、事務方と試験監督にエールを送りたいですね。

2009年1月16日

Windows 7をインストール。といっても数日前ですがね。特殊なPCよりも一般的なPCの方がいいだろうということでThinkPad T40にインストールしてみました。印象としてはWindows 7の出来よりも、Windows Vistaがいかにダメだったのかを再認識できたことでしょうか。結局、Windows VistaというのはWindows 7のベータテスト版だったということなのかもしれません。当方を含めてWindows Vistaのユーザはそんなテストにつきあわされたわけですから、いい迷惑ですよね。

さてWindows 7ですが、基本的にはユーザインターフェースも構成もWindows Vistaとほとんど同じなのですが、Windows Vistaよりはレスポンスもユーザインターフェースもいい感じ。説明するのが難しいのですが、Vistaを使っているときの苛つく感じはだいぶへりました。ただ、安定性はいまいちでした。メディアの記事ではハングすることもなく安定しているということでしたが、当方の場合は突然フリーズすることが何度かありました。もちろんベータ版だから仕方ないのですがね。ところでVistaからのアップグレード版とXP版からのアップグレード版に価格的な差を付けるかどうかは気になりますね。そうそう驚いたのはオマケアプリケーションの代表だった「ペイント」が大幅に機能アップしています。機能アップしたということはユーザから要求があったのだと思いますが、ということは「ペイント」のユーザというのはいるのですね。

もうひとつソフトウェアのネタですが、Macintoshに入っているオフィスソフトのiWork'08をiWork'09にバージョンアップ。Windowsユーザには耳慣れないソフトウェアかもしれませんが。当方の場合、MacintoshにはMicrosoft Office 2008とiWork'08を使っています。ただ、ワープロ仕事の場合、MS-Wordは機能てんこ盛りで動作が重いので、軽いiWorkのワープロソフトPagesで書いて、そえをMS-Word形式でセーブすることが多いのです。スライドは人に渡すことも多いのでPowerPointで作りますが、iWorks'09のプレゼンテーションソフトウェアであるKeynoteはPowerPointとの互換性が向上しているようで、手持ちのPowerPointスライドを何枚か読み込ませてみた限りでは、複雑な図を含むスライドでも破綻がみられないです。

2009年1月15日

いよいよ米国では政権が変わりますね。ブッシュ大統領は共和党の大統領候補受諾演説においてOwnershipという言葉と登場させました。"Ownership brings security and dignity and independence. In all these proposals, we seek to provide not just a government program, but a path - a path to greater opportunity, more freedom and more control over your own life."。そして就任演説でOwnership Societyというビジョンを打ち出しました。

結局、ブッシュ政権の政策はこのOwnership Societyという言葉でまとめられるのではないでしょうか。理念的には米国の建国精神やプロテスタント的な思想があり、自己責任社会という意図なのでしょうが、ブッシュ政権における実際の政策ではOwnership Societyは(資産)所有社会となってしまいました。つまり「政府は国民を支援しないけど、自分で資産を作れば豊かな生活がおくれる機会が増えますよ」ということになり、具体的には(高額所得者層の)所得税減税に加えて、相続税などの資産に対する大幅減税が行われました。経済政策では大幅な金融緩和による資産運用が促進されましたし、住宅という資産の所有が促進されました。それを受けてアメリカ人はクレジットカードやローンによる買い物が増えるなど、かつてないほど所有欲が高まった時代だったのではないでしょうか。ただ、ご存知にように最終的には、所有社会は住宅価格の下落がトリガーになり、所有した資産の価値を大きく下がってしまいました。

さてオバマ次期大統領は民主党の大統領候補受諾演説の冒頭において、ブッシュ大統領のOwnership Societyに対して、"In Washington they call this the Ownership Society. But what it really means is that you are on your own. Out of work?Tough luck, you are on your own. Born into poverty? Pull yourself up by your own boot straps. Even if you don't have boots you are on your own. Well it's time for them to own their failure. It's time for us to change America. "といって、ブッシュ大統領のOnwershipの考えを否定しています。またアメリカ人もいままでのような所有欲はなくなるのではないでしょうか。つまりいままでのように自動車や電気製品は売れないということですよね。

ところで歴史的にいうと大きな不況の前後では価値が変わったのですが、今回の不況も経済が回復してもいままでとは価値が変わると予想しています。そして「所有」に対極にあることは何かというと「共有」です。米国の今後を占う上で「共有」がひとつのキーワードではないでしょうか。

2009年1月14日

3日前にEye-Fiのことを書きましたが、ソニーのデジタルカメラ(DSC-G3)は無線LANだけでなく、Webブラウザまで内蔵。これでmixiやYouTubeなどには撮影した写真や動画像を簡単にアップロードできるそうです(Flickrに対応していないのは不思議ですが)。もちろん同じことはiPhoneなどでもできるのですが、個人的にはデジタルカメラ、携帯電話といった商品カテゴリという境界が溶解してきていますよね。DSC-G3の場合、デジタルカメラなのか、インターネット端末なのかがわからない。もうカテゴリで商品をわけるという発想自体が古くなってしまったのでしょう。一昔前にユビキタスコンピューティングが流行しました。結局、ユビキタスコンピューティングというのは、さまざまなデバイスを分けるカテゴリを溶解させることだったのかもしれません。

残念ながらDSC-G3を持っていないし、使ったこともないのですが、Eye-Fiを使っている感覚でいうと、DSC-G3からみるとDSC-G3からインターネット上の写真を共有するコミュニティサイトにつながっていて、写真を共有するコミュニティサイトからみるとDSC-G3はそのコミュニティサイトの一部にみえるのでしょう。感覚という曖昧な言葉は使いたくないのですが、手持ちのデジタルカメラにEye-Fiをいれて使うことで、(実用性は別にして)未来を感じることができましたし、DSC-G3はその先を見せてくれるかもしれませんね。これでAtom APIに対応してくれるとさらにその先の未来をみせてくれるはずなのですが、残念ですね(Webブラウザを載せただけで終わってしまう、詰めの甘さがソニーの限界なのでしょう)。

ただ、DSC-G3は国内デジタルカメラメーカにとってはパンドラの箱を開けてしまったかもしれません。mixiなどの国内SNSは凝ったJavaScriptは使わないので、組込向けWebブラウザでもいいのかもしれません。しかし、デジタルカメラがさまざまなWebサービスを使うようになれば、機能豊富な汎用Webブラウザが求められるようになります。そうなるとデジタルカメラにもPCなどに使われているWebブラウザを使うことになるでそうし、サードパーティのアプリケーションが用意されるようになるでしょう。そうなるとOSもWebも汎用品となります。こうなるとソフトウェア的にはデジタルカメラはPCと同様にコモディティ化されて、国内デジタルカメラメーカの優位性は薄れます。結局、デジタルカメラはOSがAndroidで、WebブラウザがChromeという組み合わせあたりになるのかもしれませんね。そうなったときには国内デジタルカメラメーカはレンズやシャッターユニットなどの部品供給メーカになっているでしょう。

2009年1月13日

昨日、CO2排出量という尺度を使うと物理世界と仮想世界が統一的に効果が評価できると書きましたが、これは研究にもいえます。CO2排出量は情報科学、化学、物理、機械などの多種多様な学術分野についてその効果を横断的に評価をするメトリックスになります。おそらく自然科学や工学、社会学を統一的に評価できるという点では唯一のメトリックになるのではないでしょうか。そして大学や研究所などは、研究成果で何トンのCO2排出量の削減できた、あるいは削減効果があるなどを主張し合う時代が来るのでしょう。

そんな主張をして意味があるのかと疑う方も多いと思います。一方で日本政府は京都議定書の削減目標を達成にむけて毎年度、百億円単位の税金をつかって排出権を海外から買っています。来年度以降はさらに購入額が増えるでしょうし、現在の排出量水準で削減目標を守るには将来的には一兆円規模の購入費が必要になる計算。ですから大学や研究所の研究成果で0.1%いや、0.01%でもCO2排出量削減ができれば、国全体としてみれば研究予算を投入する価値があるのです。一方、大学や研究所はCO2排出量削減技術は無償提供しても、その技術を削減に使ってくれればいい。だから予算獲得目的に削減量を自慢しあう状況は容易に想定されるます。同床異夢にしても地球全体としてCO2排出量が減ればいいのだと思います。

もちろん研究評価のメトリックスはいろいろありますし、排出削減量はひとつにしかすぎないでしょう。ただ、学術研究に期待されている成果はいままでとはだいぶ変わってきているように思います。研究者としてその研究内容まで世の中の流れに迎合することはいいとはいえませんが、世の中の評価を受けなければいけません。世の中が求める研究評価メトリックスが変われば、われわれ研究者はそのメトリックスに応じて自分の研究成果を説明することを求められます。また、研究成果の普及方法も変わってきそうです。例えばCO2排出削減技術に関していうと研究成果の使用料をいただかなくても、その技術が削減に貢献すればいい。というわけで当方の関わるCO2排出量削減関連技術については民間企業に無償提供をすることを勤務先首脳から確約をいただいたのでした。

2009年1月12日

Googleの一回の検索でCO2が7グラムが排出されるそうです。CO2排出量が7グラムというのはヤカンで水をわかすときに排出されるCO2の半分ぐらいだそうです。つまり2回の検索でヤカンが沸くということですね。これはHavard大学のAlex Wissner-Gross氏による指摘なのですが、Googleが早速反論していて、Googleによると0.2グラムとのことです。どちらが正しいかはわかりませんが、Web検索によるCO2排出量はゼロではないですし、Googleは他社と比べてエネルギー効率がたいへんよいシステムを使っているはずなので、他社はもっと多いことになります。もちろん排出量全体という見地からは、Web検索をした側のPCの排出量も考えないといけません。

いずれにしても今後は社会活動全般において、CO2排出量が手段を選ぶ基準になるのではないでしょうか。例えば一般的な月刊雑誌の場合、製紙、印刷、製本、(書店への)配本を含めると一冊あたり1kg程度のCO2を排出しているといわれています。オンライン情報におけるCO2排出量に関する情報は極めて少ないのですが、今後はオンラインサービスも積極的なCO2 排出量の提示が求められるでしょう。また、PCの方にも画面の下の方に利用しているサービスとそのPCを含むCO2排出量が提示されるようになるかもしれませんね。

CO2排出量がおもしろい部分は、CO2排出量という尺度だと物理世界もコンピュータによる仮想世界も統一的にコスト対効果を評価できることです。その結果、オンラインサービス間でのCO2排出量の競争はもちろん、物理世界と仮想世界のあいだで競争が起きるでしょうし、いまオンラインが当然となっているサービスのいくつかはCO2排出量という視点から拒絶されるでしょうし、逆にオフラインサービスが当然だったものもCO2排出量という視点からオンラインサービスに移行するものもでてくるでしょう。

2009年1月11日

話題のEye-Fiを使い始めました。すごいです。おもしろいです。価値観が変わります。一言でいうとSDカードがインターネットになったというか、インターネットがSDカードになった感じでしょうか。もちろんSDカードと同じ形状。コンピュータに専用アダプターでつないで無線LANの設定をしたら、あとはデジタルカメラにSDフラッシュメモリカードの代わりにEye-Fiをいれて写真を撮るだけ。シャッターを押すと自動的にコンピュータとインターネット上に撮られた写真が送られます。シャッターを押してからコンピュータおよびインターネットが写真を受け取るまでの時間は数十秒程度。事実上、インターネットを無限大のサイズのメモリカードとして使えるようになります。また撮った写真の再利用もコンピュータ上やWeb上にあるので簡単です。今後、デジタルカメラに無線LANなどの通信機能が入ってくると思いますが、SDカードを無線LAN化するのは一つの方法ですね。また、フラッシュメモリを使う他の機器にも利用されるのでしょう。例えば産業機器のログをEye-Fiでサーバに飛ばすなどなど応用はいっぱいありますね。Eye-Fiは久しぶりにおもしろいと思ったデバイスでした。

ところで本家のSDフラッシュメモリカードの方は2009CESでSDカードの新規格(SDXC)が発表。SDXCではmicro SDを含めて最大容量が2TBになるそうです。もちろん規格上の最大容量であって、当然、まだ実装されたわけではないですが、SDカードは8年前は8MBや16MBだったものが、いまでは32GBのSDカードも売られている時代(8年で4000倍)。数年先には2TBのSDXCカードが数千円で売られる時代も十分考えられますね。ただ、上述のEye-Fiを使った後だと、いくらSDXCが大容量とはいえ、容量が決まっていること自体が窮屈な感じを受けてしまいます。Eye-Fiはインターネットの一部ですから、容量はいくらでもおおきくできる感覚ですからね。いずれにしてもSDXCの大容量メモリカードはデジタルカメラよりもビデオカメラを中心に使われるのでしょう。ただ、個人的にはコンピュータのストレージとして使うのもおもしろいように思います。いろいろアイデアが思い浮かびますが、いずれ書きますね。

2009年1月10日

ちょっとした実験のために、JavaからAppleScriptを呼び出そうとしてこちょこっとプログラミング。MacO X を使う場合はMacOS X自身や他のアプリケーションを呼び出すにはAppleScriptが一番お手軽。のはずなのですが、JavaからだとAppleScriptが起動できずに悩む。引数のシングルコーテーションやダブルコーテーションがうまくAppleScriptに渡せなかったため。解決しましたが、結構不思議。このトラブルは何年か前に学生さんから同様にJavaからAppleScriptを呼び出したときに手間取ったという話を聞かされていたのですが、そのときに解決策をきちんときいておくべきでした。

それはさておきWall Street Journal紙の記事によるとオバマ次期米国大統領はデジタルTV放送の延期をするようです。これは次期米国政権の政治姿勢、特に通信行政をかいま見せている点と日本へのテレビ放送の二つの点で注目すべきニュースですね。多少解説をさせていただくと、米国は2009年2月17日に地上アナログ放送を終了し、地上波デジタル放送に移行することになっています。ただし、地上アナログ放送しか見られない人向け(CATVや衛星放送が見られる人は除外)にデジタルTVチューナーの格安で買えるようにするクーポンを配布したのでした。ただし、そのクーポンが底をついてしまって、地上アナログ放送が見られない人が残っているということが延期理由のようです。ただ、米国政府はアナログTV放送停波により、使われなく電波周波数をオークションで通信会社などに売却済みなので、停波延期をすると周波数を買い取った通信会社から契約不履行で賠償請求されるますから、延期期間は長くはできないはず。それと米国の場合、CATVや衛星放送が非常に普及しているので、地上アナログ放送だけしかみれないという人は限られており、地上アナログ放送をやめても大きな影響は限定的。問題なのは、地上アナログ放送が見られない人には経済的に豊かではない人も多数含まれており、今回のアナログTV放送の停波延期はそうした方々への支援という側面があります。従って今回の停波延期からは次期米国政権は弱者対策に熱心ということが予測されますし、通信行政に関して思い切った変革(Change)は期待できないかもしれませんね。

次に国内への影響ですが、国内の地上デジタルTV放送への移行は米国の動きに応じた部分があります。このため今回の米国における停波延期の動きは国内にもそれなりの影響をあたえそうです。おそらく経済状況などを理由にして、地上デジタルTV対応テレビやチューナー購入負担を提言するなの弱者保護を前面に出した議論が始まるのでしょう。ただし、延期の本当の理由は別かもしれませんがね。地上波デジタルTVが普及は遅れています。一方、TVCMの料金は視聴者数に比例する仕組みですから、2011年に停波してしまうとTV局も広告代理店も2〜3割の減収になることになり、こうした状況はなんとしても避けたいでしょう。そのうえ不景気で広告会社もTV局も収入が落ち込んでいます。当面は地上デジタルTV放送化の音頭をとる総務省の顔を立てるでしょうが、最終的には減収を避けたい大手広告代理店の意向には逆らえないでしょう。ただ、延期をするには大義名分が必要でしょうから、TV局はアナログTVしか受信できない受信者を救えなどを理由にして停波延期キャンペーンをやり出すのではないでしょうか。

2009年1月9日

来客の多い一日になりました。当方の研究に関心をもっていただきありがたいことです。ただ、それぞれ相違する研究に関するものでしたので、頭の切り替えがたいへんでしたが。それから先月の12日に報道発表をした研究が、今日の日刊工業新聞の記事になっていました。この研究は業界紙を含めると6紙ほどで記事にしていただいたのですが、今日になって出てくるとはいささかびっくり。とはいえありがたいことです。

2009年1月8日

不況後の世の中はどうなるのでしょうか。この質問をうけることが多いのですが、個人的にはシェアリング(Sharing、共有)の時代なのかなぁ、と思っています。ご存知のように20世紀は大量生産・大量消費の時代だったのですが、今回の不況は時代の終焉を早めるかもしれませんね。近代の所有権は自由な処分権となりますが、いまは所有すること自体にもコストがかかりますし、さらに処分することに大きなコストがかかる時代になりました。つまり生産財も非生産材も所有することは得ではなく、損になる時代になっていくのでしょう。

社会的な変化は社会学者や経済学者に任せればいいのですが、情報系の研究者としては、仮に所有から共有に変わった場合、何をすべきなのでしょうかね。まず思いつくのは電子商取引への影響です。現在の電子商取引は所有権の移転のためにシステムですが、共有の時代になると既存の電子商取引システムは役に立たなくなってますから、共有のための新しい枠組みが必要になるでしょう。いずれにじても物理的なもの非物理的なものを共有するには何らかの情報システムのサポートは必須です。そして、そうした共有を円滑化させる仕組みが情報系の研究開発のメイントピックになるのではないでしょうか。

また、情報システムも変わりますよね。いまの主役はPCや携帯電話ですが、どちらも私的所有を前提にした商品。しかし、所有から共有に時代が変わるとしたら、私的所有を前提した情報システムは淘汰されるので、共有を前提としたコンピュータや携帯電話が求められるでしょう。どんな情報システムのなのかはまだ人に説明できるほどイメージが具体化していないのですが、クラウドコンピューティングは共有型コンピュータの一つの形態になることはたしかでしょう。またSNSも一つ形態でしょうね。SNSは情報共有するためのシステムですから、共有の時代の一つのヒントになると思います。情報の共有に徹したSNSに人気が集まるのではないでしょうか。その意味では国内SNSは情報共有よりもコミュニケーション指向が強すぎるので役不足ですね。

もちろん不況後にすぐに共有の時代になることはないでしょうが、所有から共有に軸足が動いてきていると思いますし、今回の不況はその動きを速めることになると予想しています。それから当方に限ると、12月29日に書いたように、去年から何らかの共有(シェアーリング)に関わる研究テーマだけに絞り込んで、他の研究はやめてしまいました。予想が外れると目も当てられないのですがね。でも世の中は変化していますから、従来の研究を続けていては世の中に合わなくなります。世の中に取り残されるリスクよりは世の中を先取りをするリスクを選びたいです。

2009年1月7日

勤務先の道路を挟んだところにある人材派遣会社で希望退職募集と就職内定者130人に辞退募集というニュースがありました。結構身近でおきているものですね。ところでIT業界はどうなのでしょうか。IT業界は不況に強く、不況の影響は軽微といわれていましたが、当方が知る限りでもリーマンショック後は新規大規模ソフトウェア開発案件は激減しているようです。20世紀の大恐慌の時にフランスは当初、一番被害が少ないといわれていましたが、その油断のために対策が後手に回って、結果としては一番被害が長引いたとされています。当時のフランスとIT業界が似ているとはいいませんが、一次被害の直撃を免れたからといって油断していると、一番大きな被害をまともにうける可能性があります。大きな不況では悪いところから順番につぶれていくのですが、順番が後に回ってくればくるほど他業界のしわ寄せまでうけるので、被害が積み重なって増幅されるいることがあります。

アカデミアの研究者である当方は、業界のことを評論するべきではないでしょう。ただ、大学院大学の教授という立場からいうと、こうした状況が2,3年続くのであれば、専門職大学院などで勉強して、将来に備えるのも一つの方法だと思います。こうしたことをいうと学者は世間知らずとか、脳天気とかいわれるのですが、デフレ状況で最も効果的な投資先は教育です。歴史的にみても、大きな不況の前後では価値感は大きく変わるし、もとめられる技術も職種も変わっています。不況下を生き抜いても、不況回復後にいまの技術や職種に需要がなくなっているというリスクもあるわけですから、次の時代への備えをして欲しいです。

勤務先の大学院は4月の入試の募集時期は終わってしまいましたが、4月から研究生で入って、10月入試で入学すればそれまで研究生として受講した授業の単位を大学院にまわすこともできます。こうした制度は多くの大学がもっているはずですので、自分の興味がある分野や不況後に役に立ちそうな分野を研究している先生方を探して、ともかく連絡してみるといいかもしれません。そうした先生方と面識がないので連絡しにくいという方が多いのですが、当方のところのように大学院大学ですと、面識がないほうが普通です。もちろん博士課程は3年間なので、それなりの財力と時間がかかりますし、大きな決断が必要だと思いますが、不況後は技術者にも求められる専門性はいまよりずっと高くなることは確かではないでしょうか。我田引水的になってしまいましたが、大学院にいかないまでも、いまのうちに専門性を高めて不況後の時代に備えて欲しいですね。

2009年1月6日

外出のついでにH&Mにいってみる。副都心線に乗ったこともあり、銀座ではなく原宿の方の店。日本のH&Mに行くのははじめて。海外出張などで服がないときはH&Mで調達したこともあり、海外ではH&Mには何度かはいっています。印象は海外のH&M店よりもモード系の服が多い感じ、海外はもうすこしトラッドというか、ベーシックな服がもう少しあるのですがね。なお、海外のH&Mでも「東京都渋谷区神南・・・」という日本語の住所表記のある商品が大量に売られているので、日本のH&Mで売られている商品は海外でも売られているのでしょう。

もちろん、モード系が多いのは場所柄というのもあると思いますが、飽きられるのも早くなるわけで、ブランドイメージが旬なうちに地方展開ができるか否かでしょうね。商品構成ですが、メンズに限れば妙にアウターの比率が妙に高かったのですが、ファッション性で印象づけるためにはアウターを前面に出す必要があったのかもしれませんね。プライスはH&Mはファストファッションといっても、すでにユニクロプライスに慣れた日本人からみるとH&Mはプライス的に驚きがないし、そもそもH&Mの商品クオリティを考えるとむしろ割高に感じる人も多いかもしれません。

それにしても表参道も明治通りも人が少なかったですね。いまはバーゲンセールのまっただ中のはずで、例年ならばバーゲンで買い物の紙袋をさげた人が行き交うのですが、今年はほとんど見かけません。ちなみに原宿のH&Mはそれなりに混んでいましたが(入場制限などはありません)、メンズに限るとレジ待ちはありませんでした。海外のH&Mではレジの行列待ちがいつもあって、買うのに時間がかかるのが普通なのですがね。結局、20分ほどの表参道探索でしたが、消費不況をしみじみと実感できた20分間でした。もちろん何にも買っていません。

2009年1月5日

アカデミアの研究者といえども、IT関連を研究する以上はIT業界の動向の影響を受けるのですが、今年はIT関連設備投資が激減しそうです。もちろん顧客側企業の収益悪化が最大要因ですが、ITのコスト構造が背景にあるように考えます。ITを積極的につかう大手企業でもIT予算のうち8割程度は、「システム保守」や「運用費」、「人件費」、「電気代」などの固定的費用といわれています。そうした企業も経済状況から収益悪化していますが、低収益でも利益が得られるように企業体質にするために、固定費の圧縮に動きます。こうした企業も今年度中はSI業者などとの契約があるので払い続けるでしょうが、来年度は「システム保守」や「運用費」の大幅割引を求めることが想定されますね。システム保守や運用で収益を得ているSI業者はたいへんなことになりそうです。

それと同時にITのコスト構造もかわってくるのではないでしょうか。つまり固定費の比率を下げる、つまりITのコストを変動費として扱う動きが増えることになりそう。当たり前のことですが、経済状況の先行きがわからない状況では経営を身軽にするのが得策ですから、企業は固定費の圧縮に動きますし、ITコストも例外ではありません。クラウドコンピューティングがもてはやされるのは、クラウドコンピューティングではその費用が固定費ではなく、変動費だからではないでしょうか。ですから仮に、自前ITシステムからクラウドコンピューティングに移行した場合、現行の自前ITシステムの場合と比べてIT費用が2,3割が増えてしまっても、固定費が減らせられるのであればメリットがあると考える企業も多いでしょう。その意味ではクラウドコンピューティングの是非に関する議論が活発が行われていますが、ITのコスト構造の変化、つまり固定費から変動費への移行を考えていない議論は非常に表面的ということになります(残念ながら技術屋さんや技術系メディアのクラウドコンピューティング論に多いのですがね)。もちろん、クラウドコンピューティングまでいかなくても、SI業者を含むIT業界は、顧客側のコスト(ITコストも含む)、特に固定費を削減する技術やソリューションの開発・提供することが求められそうです。

ところでコスト構造の問題はSI業者さんなどIT業界にもいえます。SI業者は顧客に固定費負担を強いているだけでなく、SI業者自身も人件費などの固定費比率が高いといわれます。そのSI業者も収益が下がってきていますから、固定費の圧縮に動くしかなく、今以上にアウトソーシングをすすめるしかないでしょう。インドや中国のIT技術者の給料はあがっていますが、仮に自社IT技術者の能力と給料と、アウトソーシング先のインドや中国のIT技術者の能力と給料が同じか、またはやや高かったとしても、アウトソーシング費用は変動費ですから、アウトソーシングを選びたいというSI業者は多くなりそうです。ただ、国内では様々な要因から人件費の圧縮が容易ではないので、国内SI業者はむしろ固定費比率が上がる可能性がありますが。

コンピュータサイエンスの研究者も、ITコストの固定費の削減、例えば「システム保守」や「運用費」、「人件費」、「電気代」などの削減方法を研究することが求められるでしょう。いまは性能や機能の向上のためなら採算を度外視したような研究が多いのですが、需要は大きく減りそうです(もちろん誰かは研究すべきかもしれませんが)。ちなみに当方はというとITコストの固定費よりも、顧客側企業の業務に関わる固定費の削減方法を研究をしていたりします。ドメイン知識を得ないといけないのでたいへんなのですがね。

2009年1月4日

経済状況からIT関連企業はコスト削減のためにIT活用を宣伝文句にするところが増えましたね。確かにその通りだと思いますが、削減されるコストの多くは人件費になるわけで、IT活用というと聞こえはいいですが、単純ではありません。そもそもITというのは人間がやっていたことを機械にやらせる手段という側面は否定できませんから、ITが普及すれば普及するほど人間が幸せになるかどうかわかりません。ただ、いまのITは幸か不幸かどこかで間違えていて、人間を忙しくしているし、人間をたくさん必要としますけどね。ところで、年末ぐらいから、海外中心に超大手IT企業の大規模リストラ(従業員の10%以上)の噂がいろいろ出てきていますね。もちろんその多くは噂にすぎないでしょうが、それなりに説得力のある噂や現実味がある噂もあるところが恐ろしい。

2009年1月3日

今日もプログラミングですが、研究上のアイデアがソフトウェア的に実現できるかを調べていることもあり、試行錯誤が続いています。それはさておき研究用のソフトウェア開発も簡単にはすまなくなりました。例えば研究で分散システム用のミドルウェアを作ったとして、以前は同時アクセス数は高々10個程度を想定すればよかったのですが、いまは1000個程度を要求されることもあります。もちろんハードウェアの性能が上がっているといっても、大規模&スケーラブルなシステムを作るにはアーキテクチャレベルから見直さないといけません。今回のソフトウェアは最初からスケーラブルに作っていますが、なかなか面倒。さらに面倒なのはそのテスト。いちおうオフィスには20台構成のPCクラスタを構築してあるので(さらに12台を追加作業中なので年度内に32台までは増やせます)、それを駆使してテストするのですが、例えばミドルウェアやサーバ用ソフトウェアの場合、メジャー国際会議に通そうと思うと、パフォーマンス狙いの研究でなくても100台程度の評価もとめられるので、追いつかなくなっている感じ。でもソフトウェアの研究は、開発したソフトウェアを大規模PCクラスタで実験・評価できるとか、実ソフトウェア開発や実運用に研究成果を応用・評価できるという立場または研究環境にある研究者だけしか生き残れない時代なっていますが、トレンドに追いていくしかありません。

2009年1月2日

正月というと年賀状が届くのですが、その年賀状で興味があるのはmixi年賀状。ちなみにmixi年賀状というのは、SNSのmixiのユーザが別のユーザに物理的な年賀状を送るときに、mixi内のユーザ名をmixiに伝えるとmixiが作成や投函を代行するのでお互いに実名や実住所を知らなくてもいいというサービス。このサービスがなぜ気になるかというと、ネット世界の名前が実名や実住所に取って代わっているから。物理世界にもネット世界にも大きな影響を与えます。

まず物理世界への影響ですが、何らかの理由で人に氏名や住所を教える必要があっても、その氏名や住所の代わりにSNSのユーザ名などのネット世界上のユーザ名を教えればいいということになります。そうなると初めてあった人に名乗るときは実名の代わりに仮想世界のユーザ名を知らせることになるでしょうし、各種書類の住所氏名記入欄も、物理世界の住所氏名かネット世界のユーザ名かを選んで入力することになるかもしれません。ただ、どうせこうしたサービスを実現するのならば、年賀状などにユーザが直接、ハガキに送り先ユーザの(SNSなどの)ネット世界上のユーザ名とそのネット世界の名称を書くと、それを郵便局などの配送会社がそのユーザ名とネット世界の名称を読み、そのネット世界にユーザ名のユーザの物理的な住所氏名を問い合わせて、年賀所を送ってくれる方がいいと思いますが。それと物理世界の住所氏名とネット世界のユーザ名の表記の差により処理が面倒になるのであれば、ネット世界にも仮想的な県名や市町村名を割り当てて、物理世界の住所氏名とネット世界のユーザ名を統一的に表記できるようにしてもいいかもしれません(例えばSNS県mixi市・・・のような感じでしょうか)。

一方、ネット世界も影響を受けそうです。ネット世界のユーザ名が匿名性を失うことです。mixi年賀状のようなサービスによりネット世界のユーザ名と物理世界の住所氏名のあいだにリンクができてしまいます。そうなるとネット世界における言動や人格が何らかの形で物理世界にも影響してくることになり、匿名性を前提とした自由な言動やなりすましはできなくなるでしょう。そうなるとネット世界でも最善の行動を取ることが求められます。つまりいつもお行儀よくして、間違っても悪口や嫌がらせはしてはいけません。Yahooオークションなどに代表されるようにネット世界ではユーザの評判が可視化されることが多いので、物理世界以上に最善の行動が求められるかもしれません。

いずれにしても物理世界とネット世界は区別がつかなくなってきていますね。それで興味があるのはネット世界の裁判所を作れるかです。もちろん裁判の対象はネット世界上の言動とし、原告はユーザ名で他のユーザに裁判を起こす。そして裁判では原告も被告もユーザ名で行われますが、賠償や罰金などの法的措置については裁判所を通じて物理世界に対して行われる仕組みです。もちろん物理世界の言動をネット世界に影響させる仕組みもありでしょう。ところでネット世界は「千と千尋の神隠し」の湯婆婆のような存在になり得るでしょうか。湯婆婆のように人の名前を管理できるという立場は非常に強力になりえます。さてmixi年賀状に話を戻しますが、次の関心はmixiバレンタインプレゼントがあるか否かです。ちなみに残念ながら当方はmixiユーザではないのでmixi年賀状はは届きませんでした。

2009年1月1日

元旦というとウィーンフィルのニューイヤーコンサートのテレビ中継をみるのですが、今年は指揮がダニエル・バレンボイム。個人的には指揮者としてのバレンボイムというと、ワグナーものなど重厚な交響曲の指揮者という印象が強いのですが、ニューイヤーコンサートの演奏もやや重く、ワルツやポルカの軽やかさとはちょっとあわなかったかも。でもどの曲も完成度がたかく、さすがの一言ですね。第二部はハイドンつながりでハンガリーに因んだ曲をフィーチャーするという変わった曲目でした。というわけでニューイヤーコンサートでは珍しくハイドンの曲まで演奏したのですが、楽しみだったのはハイドンの交響曲第45番『告別』の第4楽章。これは演奏中にオーケストラ楽員が次第次第に姿を消して行き、最後が指揮者だけが残る趣向の曲。話には聞いていましたが映像で見るのははじめて。バレンボイムも楽団員もなかなかの役者ぶりだったのではないでしょうか。この曲に限らず、バレンボイムは場を楽しませるという点ではここ数年でベストワンでした。ニューイヤーコンサートはお祭りですから、道化に徹してもいいですよね。もうひとつの注目点は挨拶。バレンボイムはユダヤ人かつイスラエル国籍ということもあって、イスラエルのガザへの空爆が続いていますが、これに言及するか否かが注目でした。さすがは中東和平の推進してパレスチナから名誉市民権を受けているだけのことはありますね。去年は最後の最後で中東では起きてはいけないことが起きてしまいましたからね。平和な一年でありますように。

 

最新版
一覧

Ichiro Satoh

Ph.D, Professor
National Institute of Informatics

2-1-2 Hitotsubashi, Chiyoda-ku, Tokyo 101-8430 Japan
Tel: +81-3-4212-2546
Fax: +81-3-3556-1916