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![]() DiaryIchiro Satoh もともとAgentSpaceというモバイルエージェントシステムの開発履歴に関するページがあったのですが、開発関連話よりも雑談の方が多くなったので、2001年分から別のページを用意することにしました。 ![]() ![]() 2005年3月31日今年度も今日で終わり。いろんな意味では終わっていないけど終わり。というわけで年度末という意識も希薄というか、それどころではない感じ。さて今年度の論文ですが、海外論文誌は採録&出版済みが2本、さらに採録済みで出版予定が2本、国内論文誌が5本(和文論文誌が2本、英文論文誌が3本)、国際会議が6本。ご存知のようにコンピュータサイエンスの場合は、世界的に研究を周知するのには当該分野の難関国際会議に論文を通すことなので、ひたすら国際会議に論文を書いていればいい。でも国内における研究者評価となると論文誌重視。国内の論文誌に論文を出していないと「最近、彼(彼女)は研究しているの?」ときかれるなど、研究者としての存在が否定される始末。ということで国内学会の論文誌に書く羽目になるのですが、ここで問題なのは和文論文誌はの位置づけ。将来的には和文論文誌は研究者評価の対象でなくなるかもしれませんね。国内のコンピュータサイエンス系研究者の多くは、情報処理学会論文誌または電子情報通信学会和文論文誌に出した和文論文数で研究実績を稼いでいます。このため和文論文を評価対象から外すことには自殺行為だし、徹底的に抵抗するのですが、一方でコンピュータサイエンス系以外の分野、特に自然科学系では和文論文誌は評価されてなくなっています。国内学会ですら和文論文誌は廃止されて英文誌だけになったところも結構ありますし。昔のようにコンピュータサイエンスという閉じた世界にいられた頃はいいのですが、ITの普及とともにコンピュータサイエンス自体が拡散・分裂して、他の分野との境界がなくなりつつある時代では、閉じた世界の理屈が長く続くとは思えないです。 2005年3月30日AMDがハードウェア仮想化技術(Pacifica)をやっと正式発表。Intelの同様技術であるVanderpoolとの互換性が気になるところですが、報道発表を資料見る限りは謎。ただ、Microsoft (VirtualPC)、VMware、XenSourceなどの主要な仮想化ソフトウェアとの協調関係を強調しているところをみると独自路線かもしれませんね。ホストOSとゲストOSのコンテキスト切り替えに限れば機能に差はなさそうですから、仮想化ソフトウェア側でインストラクションの書き換えをすることで対応できるかもしれません。将来的にはメインフレームで使われているリソース分割機構を入れてくると思いますが、そのときが勝負からもしれません。どちらにしてもVMwareやXenSource などの仮想化ソフトウェアの影響はいまより大きくなるわけで、AMDは広く協調することを選んだのでしょうが、逆にIntelは仮想化ソフトウェアの開発企業と組むという話がないのですが、もしかするとどこかを買収するつもりなのでしょうか。リソース分割機構になるとプロセッサメーカだけでは対処できず、仮想化ソフトウェアの開発企業と組む必要が出てくるはず。メインフレームの仮想化では、IBM自身がプロセッサもOSも、仮想化ソフトウェアも作っていたからうまくいったように思います。OSの研究をするにしても、OSのトレンドを予測するにしてもメインフレーム系の仮想OS技術の知識が必須をなるかもしれません。あと気になるのは、仮想化は普及するのか否か、普及するとしてVMwareやVirtualPCに代表されるように通常のOSをホストOSにしてその上で仮想マシンを動作させてゲストOSを実行するのか、仮想マシンを実行することを前提にホストOSを単純化するのか、それとも、OSの内部に仮想化技術を取り入れる方向に行くのか。ただ、現実問題としては、OS開発のたいへんさはカーネルではなく、POSIXやファイルシステムなどの既存ソフトウェアを再利用するための機構やライブラリの開発に手間がかかるわけで、その意味では既存OSのそのものまたは一部が再利用しやすい方式が一番可能性があるように思います。 2005年3月29日「第3期科学技術基本計画」(2006〜2010年度)の素案というか、方向性が決まったようです。重点4分野(ライフサイエンス、ナノテクノロジー・材料、情報通信、環境)以外にスパコン、ロケット、原子力などが重点項目に加えたのが新しいところでしょうか。かなり具体的テーマをあげてきたのは意外なのですが、どれも大型設備が前提になる分野。確かに世界的にも有数な大型設備を金にものをいわせて作ればそれだけで研究成果がでる分野だから、大型予算をつけても失敗が少ないとはいえますが、なんか装置産業的な時代に逆戻りという気がしないでもないです。情報技術はまだ重点に分野にあがっていますが、科学技術予算の総額が大きく伸びることはないでしょうから、重点分野が増えれば今よりは減ることは確実でしょう。こちらは地道に研究するだけだし、研究は頭で勝負するものであって、予算が研究をするわけではないです。ただ、心配なのはポスドクさんの大量解雇などがおきなければいいのですがね。あと変わったところでは「1回異動の原則」。最初に聞いたときは意味がわからなかったのですが、研究者が一つの大学や研究機関にとどまらず、大学卒業後に所属機関を一度は変わることを推奨するという意味だそうです。当方の知り合いで国立大学に勤めている研究者に限ると、出身大学にそのまま勤めているケースは希だったりしますが。もっとも私立大学になると付属小学校から大学、そして勤務先がすべて同じという先生方が結構おられます。その上、自分は生え抜きだといって自慢しているのを見ると、逆に気の毒になります。きっと閉じた世界に生きているのでしょうね。 2005年3月28日科研費の報告書作成が終了。継続年度の実績報告書なので量は少ないのですが、科研費は若手(A)と特定公募班を研究代表者として予算を頂いているので、報告書は2セット作ることになり、ちょっとだけ面倒。例年は記載ミスなどで事務に迷惑をかけていたのですが、今回はミスもなくすんなりOKとなりました。ところで科研費は応募書類も報告書類もフォーマットが決められていて、そのフォーマットは罫線を駆使して作られた複雑な表の中にテキストも予算金額も埋めていくというもの。だから報告書に書くべき情報はすぐに用意できるのですが、フォーマットに埋める作業にほとんどの手間がついやされます。例えば書き込んだ数値や品名などがちょっと長いとフォーマットが崩れて大騒ぎ。そもそもこうした罫線を駆使したフォーマットは手書きで書類を書いていた時代に、必要な情報を必要なところに書かせるためのものであって、ワープロで作成する時代にはあっていないし、手書きを前提にしたフォーマットをワープロで書いても手間が増えるだけ。せめて縦線はなくして、テキストのしたのアンダーラインだけにしてくれると手間がかなり減るのですがね。科研費に限らず、世の中の書類から罫線を一掃するだけで生産性があがると思います。昔、このことを研究助成を担当している某省審議官の方に愚痴をいったことがあるのですが、「手間がかかるほど雇用が増えるからいいでしょう」といわれてしまいました。たしかに一理はありますが、なにかと無駄の多い国ですよね。ちなみに世界的にみて罫線を使いたがるのは日本だけだそうです。 2005年3月27日先週のことですが、IBM Blue Gene/Lが135テラフロップスを記録したそうです。前回は16ラック構成で70 TFlopsで記録更新だったのですが、それを32 ラック構成にしただけともいえますが。それにしても発表資料にでている写真にラックが写っているのですが、ラックマウント用の8ユニットを空冷装置で囲む構成になっているようですね(IBMの資料ではBlue Geneには筐体カバーがしてあった)。冷却装置がうるさそう。オフィスには入れたくない。もちろん、オフィスに入れて使う人はいないでしょうけど。それとはもかく、半年以内に64ラック構成にして250 TFlops越えを発表するのでしょうね。ハイパフォーマンス系は専門外で、たいして関心もないのですが、ペタフロップマシンも手が届くところに来たということでしょう。でも2位はSGIの50TFlops程度のマシンだったはずなので、250TFlopsまであげられると2年間ぐらいは最速の称号を守り続けるかもしれませんね。 2005年3月26日昨日、次期MacOS XのDashboadの仕様書(Web Application)と思われるワーキングドラフトが公開されました。Dashboadは例えばカレンダーとか天気予報などなどデスクトップの片隅に表示する単機能なアプリケーションを作るのが目的であり、その方法もHTMLやCSSでユーザインターフェースをデザインして、アプリケーションロジックはJavaScriptまたはFlashとサーバとの連携で済ませようという技術なので、Macintoshでないといけない理由はどこにもない。実際、仕様書をみるとMozillaやOperaの影がちらほら。逆に言えばWebブラウザで表示していたコンテンツをデスクトップ上でシームレスに表示・利用しようという技術。さてこの仕様ではもうひとつキーポイントがあって、サーバ側から送られてきたイベントをDOM3で処理しようとしていますが、実装がたいへんそうになるので心配になりますけど。どちらにしても今のWeb技術を使ったサービスはHTMLなどのユーザインターフェースをサーバからダウンロードすることになるので、ユーザインターフェースデザインが固定化されてしまいます。また、現在のWebコンテンツはWebブラウザのウィンドウという箱庭の中で表示しているのにすぎないわけで、そろそろWebコンテンツはWebブラウザという枠から出る時期なのだと思います。Webコンテンツをテキストやボタン、リンクなどをバラバラにして、アプリケーションだろうとデスクトップだろうとペタペタ貼って使えばいい。その意味ではWebブラウザそのものが、Web技術の足を引っ張っているように思いますし、少なくてもWebブラウザはもっとも見えなくなって欲しい。個人的には今回のWeb Application(のような仕様)とXForms(のような仕様)が、Webブラウザに限らずデスクトップアプリケーションにおいてキーテクノロジーは結構重要だと思ったりしています。 2005年3月25日だましだまし使っていたテレビがとうとう壊れてしまった。そんなにテレビをみるわけでないのですが、やはりないと困るというか、寂しいわけで買い換え。ただ、2011年には地上アナログ放送は停波するので難しいタイミングに壊れてくれました。液晶にするか、プラズマにするかとか方式もいろいろ。ということで悩んだ末に(15分ほどですが)、ブラウン管のただの音声多重テレビ(つまり地上アナログ放送のみ)をネット販売でお買いあげ(2万円ほど)。プラズマや液晶テレビは設置面積こそ薄いですが、画質という点では昔ながらのブラウン管方式の方が優れているような気がするのですが、気のせいでしょうか。地上デジタル放送や衛星デジタル放送対応にすることを考えたのですが、まだまだ高いし、プラズマや液晶に限定されます。特に地上デジタル対応テレビはあと2,3年すれば安くなるのは明らかですから、先行投資するのもばかばかしい。それにしても地上アナログ放送用ブラウン管テレビと、地上デジタル放送や衛星デジタルに対応した液晶またはプラズマテレビを比較するとほぼ同じ画面サイズだと、その価格差は約10倍あります。安い地上アナログ放送用ブラウン管テレビを買って、3,4年使ってから地上デジタル放送や衛星デジタルに対応したテレビに買い換えた方がお得。テレビ業界とはいろいろ関わりがありますし、某メーカさんと「情報家電・・」という共同研究をさせていただいているので、最新家電には興味はありますが、自分で買う気があるかというとまったくなし。ただ、この辺が情報家電がぱっとしない本当の理由のように思います。商売柄、家電メーカの方とご一緒する機会は多いのですが、情報家電を設計・開発している連中からして、自分では欲しいと思っていないと言い出す始末ですから、市場としては非常に弱いのだと思います。日本のメーカというのは、消費者の要望やクレームを蓄積して、次の商品企画に取り入れるのが下手といわれます。それでもいままでやってこられたのは設計・開発しているエンジニア自身が製品のユーザになっていたので、自分自身の経験をもとに製品の改良をしていたから。しかし、今の情報家電ブームをみていると開発しているエンジニア自身が製品を買う気がないのですから、製品がなかなか進化しないということになります。 2005年3月24日Ubicomp'2005の査読論文割り当てが始まりました。プログラム委員としての責務なのでやりますけど、ともかく査読割り当て数が多い。さてUbicomp'2005の投稿論文数は230本ですが、Ubicompの場合はシングルトラックなので採録は30本弱とすると論文倍率は8倍強でしょうか。他の分野の方だと驚かれる倍率なのですが、ユビキタスコンピューティング系の国際会議では平均的な倍率。ところで、米国大学、それも上位大学ほど学生さんの要領がいいのか、博士課程の学生さんがユビキタスコンピューティングの研究を敬遠するようになっています。理由は米国のコンピュータサイエンス系では難関国際会議に論文が通ることが重視されますが、その国際会議の倍率が高いので、博士課程がとれない可能性があるというもの。ひよってどうする!といいたいですけど、気持ちはわからないでもない。個人的には逆の発想でして、競争が激しい、つまり論文の倍率が高い分野で研究をしたいというか、倍率の高い分野というのはそれなりに盛り上がっていますし、頭のいい人たちがたくさん集まっているので刺激がいっぱい。逆に盛り下がっていて、国際会議の倍率も下がり気味の分野というのは研究自体が行き詰まっているか、停滞しているわけで、刺激が少ないのです。実際、学生の頃は当時最も華やかだった分野の一つであるオブジェクト指向の国際会議OOPSLAやECOOPに論文を出していましたが、当時はオブジェクト指向まわりは頭のいい連中が集まっていましたし、おもしろい分野でした。もちろん高倍率分野を求める生き方は苦労が絶えないのですが、それなりに刺激が多いです。さて査読に話を戻しますが、最近のもう一つの傾向は、国際会議重視だった米国でもジャーナル重視の動きが出始め得いること。これも理由が国際会議がなかなか通らないので、ジャーナルに投稿するという消極的な理由。ただ、研究評価に影響するので要注意かもしれません。Ubicompの割り当て論文数は同じコンピューティング系の国際会議のPerCom程ではなかったのは幸いですけど(PerComは例年、査読割り当てが20本を超えます)。さてそのPerComですが、来年もPublicityChairをすることになりました。投稿の方をよろしくお願い致します。来年のPerCom'06は3/13-17で場所はイタリアのPisa (余計な情報ですが、Firenzeまで列車で1時間です)。投稿締め切りは9月5日でございます。 2005年3月23日午後は某大学の博士課程の学生さんの研究プロポーザルを聞く。聞かせて頂いて思っていたのですが、これからコンピュータサイエンスで博士をとろうという学生さんはたいへんですよね。10年前どころか、5年前と比べてもたいへん。コンピュータや周辺機器は急激に安くなっているし、ソフトウェアの方もオープンソース化が進んだ結果、安価に手に入るようになりました。また、ソフトウェアまわりの研究に関してはさらに厳しい。当該分野の研究室に属していない限り、その研究分野のソフトウェアのソースをみる機会はなかったのですが、現在はオープンソース化の流れとともに、研究用ソフトウェアの相当数がそのソースとともに公開されています。これは非常に幸せな状況なのですが、逆に言えば誰でも研究を始められます。つまり以前は、ある分野の研究をするにはその分野特有の研究設備を買いそろえたり、書物から勉強しなければいけなかったのですが、現在はちょっとした投資で設備がそろいますし、ソフトウェアのソースを見れるので短時間に容易にキャッチアップできてしまう。実際、ソフトウェアを扱っている学生さんを見ていると10年間、5年前、今の学生さんを比較すると、いまの学生さんは、ある一定水準まで達するの時間がすごく早くなっている感じ。経済用語でいえば参入障壁が低くなっているわけで、以前と違って参入できただけでは専門研究者として認められる時代ではない。技術そのものがコモディティ化している時代では、当該分野で他を圧倒する知識や技術を持っていて、第一人者とかオーソリティにならない限りは多くの参入者とともに埋もれてしまいます。これから博士をとって食べて行くには、なんか一つの分野でもいいのでその分野の第一人者にならないとマジで先々厳しいです。当たり前のことですが、研究の世界ではトップクオリティ以外は存在価値がないのです。頑張ってもらいたいところです。さて夜は新国立劇場でオペラ「コジ・ファン・トゥッテ(Cosi fan tutte)」。いつものように格安当日券。さて内容ですが、実質的な出演者が6人と少ないオペラなのですが、全員一定水準があり、演劇よりも歌を楽しむのにはいい講演です。姉妹の姉役は若いソプラノ歌手(Venronique Gens)でしたが、声質がきれいで今後伸びそう。妹役のメゾソプラノ歌手(N.F.Herreta)は後半はなんとかまとめていましたが、最初はぜんぜん声が出ていなかったです。この方はカルメンでカルメン役で一度聞いているのですが、カルメンのときの方がよかったです。あと男性歌手ですが哲学者役のバリトン歌手(Bernd Weikl)は脇役に徹していて、また安定していいよかった。士官役の若いテノール(Gregory Turay)とバリトン(Rudolf Rosen)は後述する理由で力量に差がありましたが、どちらも雰囲気はありました。唯一の日本人はメイド役のソプラノ歌手だけでした、裏声で歌うシーンもありで難役。日本人っぽくない歌い方で、ずっと海外の方だと思って聞いていました。ところでこのオペラは士官役の一人だったジョン健ヌッツォの降板で話題になっていた公演なのですが、降板してくれてよかったかも。実はジョン健ヌッツォが降板したオペラを見るのは2回目。前回はやはり新国立劇場(「スペインの燦き」)だったのですが、このときはあきらかに代役が準備不足でしたが、今回のテノールは代役とは思えない出来というか、いい新人を見つけてきたという感じ。それにしても2回もドタキャンされるというのは新国立劇場もなめられていますね。ところで、この降板のためか、客入りは7割程度でした。ただ、今回の出来ならば来週の公演は客入りは少しは増えると思いますが、格安チケットで見ているのでいえる立場ではないですが、これだけ演目によって出来不出来があると、まずは評判を聞いてからチケットをを買う人が増えても当然。 2005年3月22日総務省の研究助成の報告書を作成。去年、同予算報告書は事務上の問題から締め切り直前になって作成依頼がやってきたりで、たいへんなことになったのですが、今年は1日仕事で終了(と思いたい)。研究助成に報告書はつきものなので書くわけですが、ただこうした方向書は誰にも読まれないことが多く、書いてもいまひとつ張り合いがない。この予算に限れば報告書などに関しては審査員が読むことからいいのですが、某省の予算では報告書の製本まで求めるのですが、その製本した報告書は段ボールにまとめられて国会図書館に送られるだけ。その国会図書館も事務処理が追いつかず、奈良の分館にある倉庫に段ボールに入ったまま保管されているケースも多いらしい。国会図書館としても滅多に読まれない書物に手間暇はかけられないでしょう。ただ、こんな状況を続けるよりは、紙による報告書は一切やめる。そしてファイルだけを集めて、どこかのWebサイトにおいておいた方が報告書が読まれる可能性は高くなるように思います。ただ、Webサイトで報告書を公開というと研究助成機関によってはWebサイトの構築にお金をかけ始めるのですが、今の時代はGoogleなどのWebサーチサービスがありますから、適当なWebサーバに報告書をいれておけば、あとはその報告書へのリンクが辿れればあとはWebサーチサービスが探してくれる。あとはWebサーチサービスにキーワードを適当に入れれば欲しい報告書に行き着くようになるはず。そもそも国内の論文検索サービスより、Webサーチサービスの方が使い勝手がよかったりします。まぁ利用者の利便性よりも予算獲得が目的化している論文検索サービスもありますけど。 2005年3月21日研究の都合があって、ここ数日をかけて1980年代のオブジェクト指向言語の論文を10本ほど読んでおりました。OOPSLAも86年や87年あたりは、まさにカンブリア期状態で、いまでは考えられないような変な言語がいっぱいで読んでいて楽しい。90年後半になるとほとんどの論文が重箱の隅を突っつき回している感じ。ただ、これはオブジェクト指向に限ったことではなく、他の分野にもいえるのですが、研究分野ができてその分野の国際会議が始まってから、3,4年間ぐらいがカンブリア爆発状態なのですが、その後は収斂に向かっていきます。もちろん分野が確立したともいえるのでしょうが、つまらないのも事実。 2005年3月20日私用でお出かけだったのですが、地震の影響による新幹線が遅れなどなどで断念。直接影響をうけた区間ではないので頑張ればいけたのかもしれませんが。 2005年3月19日久しぶりの休日でぐったり状態。ということで論文査読をした以外は一日ぼっーとしております。ところでニュースによると愛知博のリニアモーターカーが乗客の重さで止まってしまったそうです。原因は定員オーバーではなく、車両の先頭部に乗客が集中したためだったとか。確かにリニアモーターカーは宙に浮いていますから、車両の端に乗客が集まれば支えきれなくなります。意外な盲点かもしれません。飛行機では座席予約システムで乗客の配置を考慮していますが、リニアモーターカーも予約が必要な運行以外は難しく、通勤電車では無理があるのかも。昔、21世紀になると鉄道は全部リニアーモータカーになると信じていたけど、建設費以外にもいろいろ問題があるのでしょう。 2005年3月18日ソフトウェア開発用のノートPCを移行中。以前はemacsとコマンドラインコンパイラの組み合わせでプログラミングができたのですが、すっかりEclipseなどの統合開発環境を使わないと数行のプログラムも書けない状況。ということで表示解像度が多いマシンが必須なのですが、デスクトップPCでは30インチ液晶(2560x1600)を使っているので、どのノートPCも狭く感じます。ところで都内にThinkPad T42pの15インチ液晶SXGA+(1440x1050)をQXGA(2048x1536)解像度に改造して販売している業者があると聞いて欲しくなってしまいました。2048x1536といえばXGA(1024x768)液晶の4倍の表示解像度。ただし、50万円を超すそうで断念。さてデスクトップPC用の液晶ディスプレーは、17インチのSXGA(1200x1024)はPCメーカへの納入価格が2万円以下、19インチのSXGA(1200x1024)でも4万円程度だそうです。また、20インチのUXGA(1600x1200)液晶は店頭売りでも10万円割れで、PCメーカへの納入価格は6万円程度という話ですから、今年後半ではバリューPCセットでも17インチか19インチ、ちょっと高機能PCセットの場合は19インチ以上が必須になるのでしょう。SXGA+クラスまではいいのですが、UXGAになってくると空き地が増えるというか、ウィンドウを多数あげるにしてもデスクトップが見えてしまいますし、ひとつのアプリケーションをフルスクリーンに使っても、現在のアプリケーションのGUIデザインだとフルスクリーンに使うには表示解像度が広すぎ。空いた画面を何に使うか重要だと思います。前にも書きましたが、ソフトウェアが売れない理由はいろいろありますが、単に画面に空き地が少ないからという部分があると思います。やはり部屋が手狭だと、いい家具が売られても買えませんからね。おそらく天気予報やスケジュール帳などなど小さいウィンドウの中で常時画面に表示されているようなユーティリティソフトウェアが流行るような気がします。そうそう一部の関係者以外はわからない表現で恐縮ですが、今日で今年度のお買い物クマさんとお別れとなりました。年度末になると、お買い物♪、お買い物♪、と頭の中で歌って踊るので休まる暇がありません。ところで先週出張で行ったKauai島の写真をおいてみました。 2005年3月17日オフィスにいってから玉川大学に移動して情報処理学会のUBI研究会とMBL研究会の合同の研究発表会。両研究会の運営委員会があったのですが、同じ時間に運営委員会を開くので、今回はUBI研究会の方に出席。それにしても今年は国際会議のUbicompが東京であるのですが、投稿数は230以上あったそうですが、プログラム委員の一人としては査読論文の本数の方が問題。この分だと30本は覚悟しないといけないようです。それからまたオフィスに戻ってお仕事。ところで3才ぐらいまでは玉川学園の近くに住んでいたので、玉川大学の農学部?のウシやヤギを相手に遊んでいたことがあるはずなのですが、さすがに覚えていません。 2005年3月16日ともかく忙しい日々です。午前中は駿河台にあるJEITAでReal Time Locating SystemsのISO 委員会。午後は某社の方がオフィスに来られて電灯線(つまり100Vの電源コンセント)ネットワークの説明とデモをしていただきました。確かにコンセントを介して通信ができれば便利だけど、コンセントにはある程度のノイズが乗っているのでその度合いに使える、使えないが決まる製品は一般の方に売るのは難しい。それにコンセントにつながった家電製品を一元的に電源のオンオフを制御するだけならば、米国などで広く使われているX-10 のような安価な製品群で十分。実は通信速度などかなり期待していたのですが、使っているモデムチップの名前を見た瞬間に興味を失ってしまいました。他社と同じチップを使っていたら差が出ないのです。ところで、国内では電灯線というとエコーネットが出てくるのですが、いい加減、エコーネットは卒業して欲しいです。国内は某省の資金支援もとで、家電メーカを主体にエコーネットコンソーシアムを作り、白物家電のネットワーク制御の規格を作ったわけですが、まったく使われていないし、エコーネット対応の家電製品などはどこにも売っていない。このエコーネットのおかげで家電製品向けネットワークは7,8年は遅れたような気がします。だいたい始めた1997年頃からダメダメ規格であることはわかっていたと思うのに。 2005年3月15日海外出張は出張よりも帰ってからの残務処理の方が疲れます。海外出張中はまた海外出張してもいいと思うのですが、帰国してからの残務処理中は2度と海外出張をするまいと思います。ということで今日も一日中、出張中の残務処理できりきり舞い。夜は書類作成きりきり舞い。明日は朝が早いので急いで仕上げないと出かける時間までに間に合わない。やはり国内にいると集中して研究できないですね。本来おかしいと思うのですが、出張中の方が割り込みが少なくて集中できます。ところで、花粉がひどいです。出張する前はそれほどひどくなっていなかったのですが、今日はひどかったです。ところで何度も書きますが、これだけ多くの人が花粉症にかかっているのですから、花粉病と呼ぶべきです。それから出張中に届いたメールの返事は順次していますが、もう少し時間をください。 2005年3月14日なんとか帰国。Honoluluから成田まではJAL便だったのですが、完全に満員でした。機内では食事をしながら映画を見た以外はずっとプログラミングしていたのですが、結構捗りました。といっても昨日分に書いたようにノートPCの不調で進まず、書けたのは500行ぐらいですけど。それにしても最近は海外出張のたびにプログラムを実装するか、論文を執筆するという変な癖がついてしまい、逆に国内にいるとかえって雑用に割り込まれて捗らないです。よく海外出張があるので研究が捗らないとおっしゃる方がおられますが、きっと研究に集中できる職場なのでしょうね。ある意味でうらやましいです。そうそう機内では噂に聞いていた機内ビンゴ大会が着陸前にありました。ただ、プログラミングに集中していて、気がついたときには始まっていましたけど。 2005年3月13日帰国です。Honoluluに出てから成田へ。ところで今回の出張では、持参したノートPC(ThinkPad T40)が、発表をした10 日ぐらいから不調。赤いぼっつのトラックパッドを使っているとPCごと固まります。ということで今日になるともう1時間に2,3回はフリーズしてしまい、その都度リブートを繰り返すという事態に。ThinkPad T40はトラックパッドとタッチパッドの両方が付いているのですが、タッチパッドでは問題がないところからトラックパッドのハードウェアかドライバーの問題だと思いますが、ひとまず赤いぼっつをとってトラックパッドをさわらないようにしてその場をしのぐことに。ただ、固まったタイミング悪かったのか、10日までに送られたメールはメールフォルダーごとなくなってしまいました。一応、目は通してあったので、緊急なモノから対応しました。添付ファイルは生きていたのは幸いでした。やはり素直にPowerBookを持って行くべきでした。 2005年3月12日国際会議の最終日。やれやれという感じ。初日と同じでワークショップの日。ひとまずコンテキスアウェアネス関連のワークショップに参加。前半は面白かったのですが、今ひとつだったので退散。ところで日本でブームのユビキタス○○の会議だからでしょうか、それとも場所なのかは謎ですが、例年以上に日本からの参加者が多いです。もちろんPublicity Chairとして大いに感謝です。ただ、参加だけでなく論文の方でも貢献して欲しいです。会議関係者からは、日本からは投稿数の割に採録が少ないね、とさんざんいわれており立場上辛いのです。それにしても参加登録した日本の方は結構な人数だったのですが、会場でみる日本人の人数はそれよりも少ないような気がしますけど、みなさんはどこに行ってしまったのでしょうか。 2005年3月11日国際会議の4日目。今日は座長。担当したセッションは発表が3件だったのですが、一つ目は質問が一件しかでずにあわてて座長が質問をする羽目に。結構疲れます。ところで最初は招待講演でDARPA関係者だったのですが、さすがに米国の研究者は有力スポンサーであるDARPAの講演ということで真剣に聞いていました。国際会議PerComのテーマもあってか、センサー関連の話がメインでしたが、意外にもセンサーネットワークのルーティングなどの研究的に流行の分野に関する話は少なく、むしろ既存のセンサーネットワーク研究ではほとんど関心が集まっていなかった分野に講演内容に比重が置かれていました(その分野が何かについてわかるのは会議に参加した人だけの特権ですね)。ご存じのようにDARPAはセンサーネットワークの研究では最大のスポンサーですから、そのDARPAが明らかに今までとは違う方向性を打ち出したことは今後のセンサーネットワーク研究の流れに影響しそう。日本では最近になって、センサーネットワークの研究を始める研究者が出てきており、政府予算もつくようになっていますけど、この調子だと、いつものように周回遅れのトレンドに追うことになりそう。実は夜、DARPA の方としばらく話す機会があったのですが、DARPAから見て今のセンサーネットワーク研究にはいろいろ問題があるようです(彼は日本の研究予算スキームに興味津々でしたが)。DARPAの状況をいろいろ聞けただけでも、今回、海外出張した価値があったというものです。さて夜は国際会議のコミッティメンバーで内輪の夕食会。会議のPulicity Chairだったので景品(MP3 プレイヤー)を記念としてもらっててしまいました。まともな食事を食べれたという気分。実は会場兼宿泊先のホテルで朝昼晩と食事が出るのですが、同じようなもの、というかほとんど同じものしかでない。 2005年3月10日まだまだ続く国際会議。今日は発表。無事に終わってやれやれ。今回は出張前に別件で忙殺されており、まったく発表準備をせずに出発することになりましたし、急ぎの論文査読があったので、現地についても発表準備どころではなく、発表スライド自体が間に合うかも危ない事態だったのですが、なんとか間に合ったという感じ。もっとも発表の30分前になっても、スライドに使うために実装したシステムの実行画面ダンプをとっている始末ですからぎりぎり。それにしてもさすがに30分話すと疲れます。実は今朝も査読論文を2本ほど読む羽目になっているのですが、いったいいつ発表準備をするのかという感じ。さて発表も終わったので、これからは予算関係の報告書作成が待っています。 2005年3月9日国際会議の2日目。キーノートスピーチは今ひとつ。講演者から予想された展開なのですが。論文発表は2パラレルセッションなので全部は聞けないのですが、面白そうな発表を求めて、2つのセッションの行ったり来たり。もちろんプログラム委員の一人としてはいうべきではないですが、採択倍率が7.5倍あったのに見合う内容かというとちょっと疑問。ところでプログラム委員長によると日本からの投稿は19件だったそうです。でも採録は一人(というか当方だったりしますが)。倍率からすると2人か、3人は通ってもいいはずですけど。現状ではユビキタスコンピューティング関連の国際会議はUbicompやPervasiveなどがありますが、PerComが投稿論文数、採択難易度ともに高いわけで、日本ではユビキタス○○ブームとかいって、研究者を含めてみんなでユビキタス、ユビキタスと叫ぶならば国際会議でもう少しプレゼンスをあげてもいいと思いますけど。おそらく日本のユビキタス○○ブームと海外のユビキタスコンピューティングでは内容が違うということなのかもしれません。 2005年3月8日国際会議PerCom'05の一日目。ところで学会会場は海岸沿いの風光明媚なところなのですが、会議に出ている限りはそれもあまり関係です。今日はワークショップ。3 つほどワークショップが開催されていたので渡り歩いていたのですが、どちらかというと学生さんの発表ばかりで、オリジナリティも完成度も高くないものが多いのが現状。もっともそうした研究に議論の場を与えるのでワークショップの目的なので当然といえば当然ですが。ただ、PerComの場合は本会議は233本の投稿論文のうち31本を採択したので、採択倍率がだいたい7.5倍なのですが、併設開催のワークショップのほとんどが採択倍率が3倍を超えている状況。もちろん本会議の倍率の7.5倍はユビキタスコンピューティング系の国際会議としては珍しくない難度なのですが(ただ、2パラレルセッションの会議としては高めかも)、ワークショップとしては厳しすぎるかもしれません。ところで当方はPerComのPublicity Chair兼Program Committeeなのですが、Publicity Chairとしては論文&参加者が集まったので責任を果たしたということになりますが、Program Committeeメンバーとしては論文査読がたいへんだったりします。実はユビキタスコンピューティング系ではUbicomp'2005のProgram Committeeメンバーだったりすのですが、その締め切りが昨日だったのでそろそろ査読論文が大量に回ってきそう。もちろんUbicompはPerComほどは投稿数も倍率も上がらないと思いますが、Program Committeeの人数が少ないだけに20本は査読させられるのでしょうね。昨日と今日だけでも別の国際会議の査読を4本こなしたのに。 2005年3月7日国際会議のために海外出張です。でも夕方までオフィスで雑用をして成田空港に移動。JAL便でHonoluluに行き、そこからHawaiian AirでKauai島に移動。でも現地に着いたのは7日の午前中なのでなんか変な感じ。ところで、成田発Honolulu行きの飛行機は観光客だらけ。当たり前といえばあたりまえなのですが。満員でしたが非常口座席だったこともあり、ノートPCを広げて仕事。かなり浮いてしました。ところで欧州線や北米線と比べると明らかに飛行機に不慣れなお客さんが多くトラブル続出。スッチーさんもたいへんです。ところでソニーが首脳陣を刷新したそうですね。社員の方、特に技術系のの方と話すと現行首脳陣への不満は大きかったので、経営的な業績の問題以前に社内的に限界がきていたのかもしれません。それと今回おやめになられた役員の何人かは話したことがあるのですが、(他社の役員の方々と比較して)雰囲気が怖いんですよね。下から上に情報が流れることはないかもしれませんね。ところで当方が学生だった頃からソニーは就職先として人気がありましたが、一番人気ということは決してなく、どちらかというと変わった連中が就職していったのですが、数年前にソニーが優良企業としてマスコミにちやほやされた時期は、大学でも一番優秀な学生が就職していたように思います。東芝や日立のように横並び主義の企業の場合は、バランスのとれた優等生タイプの方でもいいのですが、ソニーのように他社のと差別化が必須の企業では、優等生的な学生さんよりも、一芸に秀でているとか、変わった社員の方がいいのですがね。その意味ではソニーは優良企業に祭り上げられて、優等生を採用する羽目になったのが最大の不幸だったかもしれません。だとするとこの世代が主戦力になっている間は、ソニーが活力を取り戻すのは難しいかもしれませんね。 2005年3月6日明日の夜から海外出張なので、ひたすら雑用。某有名海外論文誌に投稿していた論文の修正締め切りが迫っているのですが、変更要求がマイナーだったことをいいことに、1,2時間で修正済ませてしまったのですが、これでいいんだろうかという感じ。それにしても年度末の海外出張は考え物です。ところでIntel Developer Forumの続きですが、プロセッサまわり以外にデジタル家電関連の資料も頂いたのですが、多くのプレゼンテーションは家電の統合に関するもの。DLNAのように基本的にUPnPをベースにするものばかりで、似たものばかりで透け。Intelが家電メーカの主導権をとれるかはどうかはわかりませんが、スライドを見ていて改めて思いましたが、家電まわりはアカデミアサイドは手を出すべきではない分野ではなさそう。結局、家電メーカの意向しだいということもありますが、メーカサイドで開発が進んでいる技術が見えないのは仕方ないにしても、DLNAでもそうですが標準化プロセスもその規格も囲い込まれていて第三者には見えない。また、隙間がないほど特許で固められています。これはデジタル家電に限ったことではないですが、ソフトウェアの研究でもシステムよりの研究の場合、アカデミアサイドとしていったい何を研究すべきなのかは本当に難しい。結局、いま旬な技術に手を出すべきではなく、いまは誰からも見向きもされていないけど、10後ぐらいに流行るかもしれない分野を見つけて、それを先取りして研究をしないとけいないようです。 2005年3月5日今週はIntel Developer Forumが開催されていたことがあって、プロセッサまわりはいろいろニュースが多い週でした(どれも予想されたものばかりでしたが)。ひとまずIDFの講演スライドなどをいただいたのですが、今回はデュアルコア、プロセッサ仮想化(Vanderpool)、実行保護機構(LaGrande)などが注目どころなのでしょうが、一つめのデュアルコアは単にプロセッサダイを2個をいれたチップでした。確かにデュアルコアですが、ギャグとしか思えない構成。そういえばIntelにはPentiumProでプロセッサのダイとキャッシュのダイをワンチップ化した前科がありました。方々で叩かれるでしょうから当方から付け加えることはありませんが、マルチコアは並列プロセッサかシングルプロセッサかの議論に影響を与えそう。Oracleがマルチコアのコンピュータは複数コンピュータとしてライセンス料を課しますと言い出して問題になっていますが、この構成ではOracleの主張に反論するのが難しくなってしまいます。プロセッサ仮想化はご存知のように複数OSを同時に動かす技術で、ゲストOSが他のゲストOSに影響を与えることなく動作させるもの。ただ、IBMのPower系チップに使われているPartitioning技術と比べると一世代前という感じです。それと入出力デバイスは各ゲストOS上のメモリマップはそのまま割り当てられるので、不用意に入出力ポートにアクセスすると他のOSに影響をあたえる危険性は残るはず(手持ちのスライドには情報がない)。メインフレーム系のハードウェアに多少の知識があるとわかると思いますが、メインフレームのように入出力へのアクセスは入出力プロセッサを導入して、入出力へのアクセスを制御してもらわないといけません。実はLaGrande技術を使って制御するのかと思ったのですが、今回は具体的な発表がなかったようです。どちらにしてもメインフレームの入出制御プロセッサのような機構を導入するのではないでしょうか。その場合、OSを大幅に書き換えなければいけないのがネックになっていたのですがこれからは仮想プロセッサ化していきますから、ホストOSだけが入出制御プロセッサに対応して、ゲストOSは変更しなくて済むかもしれません。それと、仮想化技術の発展段階ではハードウェア側の技術発展と密に連携しないといけないので、Intel自らホストOSを提供することもあるように思います。また、ここ数年はPCにメインフレーム向け技術を導入する方向にすすみそうですから、メインフレームの知識の有無が企業も研究者が重要になるかもしれませんね。 2005年3月4日雪の中、電通大にいって情報処理学会の全国大会の座長。いろいろいきさつがあって断れなくなってしまいました。それぞれの発表時間は質疑をいれても15分と短いのですがさすがに9件もあるとね。全部の発表とはいいませんが、ほとんどは指導教官がいわれたまま研究しているという感じ。逆に言えば指導教官の程度があからさまになるのですが。論文などはCD-ROMとして配布されるのですが、これもいいのか悪いのか。全国大会のように質より量という学会ではハードコピーで論文集にしたら電話帳のような論文集を数冊ということになるのでご勘弁願いたいのですが、どうせ電子的に配布するのであればネットワーク上でアクセスできれば十分です。CD-ROMをもっている人でもCD-ROMをPCに入れて論文を読んだりせずに、ネットワーク上で探すように思います。最近、PC雑誌などはCD-ROMを付録するのをやめて、Webサーバなどからアクセスさせるようになっているのにね。個人的にはブロードバンドアクセスが普及した現状で、700MB弱という中途半間な容量をもったCD-ROMは最悪のメディアだと思うのですが。それにしても全国大会をいい加減やめたらいいのに。もちろん全国大会は学会の会員でないと発表できないことにして、会員を集めるという営業上の目的があるのはわかりますが、2ページ程度の論文で研究的なインパクトをもつはずもないし、逆に内容のある研究ならばもっと発表時間も論文ページ数も長いところで発表した方がいいです。学会発表したという経験を作っている以外に全国大会に存在意義があるとも思えない。当たり前ですが研究の世界はトップクオリティ以外は存在価値がないのです。 2005年3月3日ICタグ(RFタグ)の見本市にいってきました。やたらに人出多いのですが、展示内容を見る限りはICタグブームはすっかり萎んだ感じ。ICタグを展示するだけでは見向きもされず、具体的なアプリケーションをデモしないと人が集まらない。もっとも実際にICタグを製品を出しているメーカさんは最初から覚めきっているので、まわりが勝手に騒いでいただけなのですが。さて見本市ですが、パッシブタグに関しては、リーダライターで変わった製品がありましたが。タグに関しては去年と大きな変化はありません。アクティブタグの方はおもしろい製品がいろいろ出てきているので、位置依存サービスの研究に興味がある方は見本市に行くといいです。それにしてもICタグの市場予測では、一昨年は「来年はICタグがブレークする」といい、去年は「来年はICタグがブレークする」といったのですが、今年も「来年はICタグがブレークする」とおっしゃいます。いったいいつブレークするんでしょうかね。ところで当方はICタグに限らず、見本市で説明員さんに質問するときは、専門ぶっても仕方ないですから、素人として質問することが多いのですが(説明員さんにとってはすごく嫌な人になっているかも)、今回も「ICタグはよくわからないのですが、これを使うと非接触でタグが読めるのですか?」とか聞いてしまったのですが、「(RFタグの)ISOの委員会で一緒でしたよね」とか「RFタグの講演を聞きました」とかいわれてしまい、作戦が通じなくなっています。 2005年3月2日原稿修正。気にくわないところがたくさんでてくるなど、手間取ってしまい終わったのは朝の6時でした。来週は海外出張なのでもろもろのことを前倒し遂行中。国税庁のWebページで確定申告の入力をしてみました。結局、印刷して税務署に持って行くことにしたけど。それにしても電子政府ということで中途半端なオンライン納付をするより、土日に税務署を開くことの方が先決だと思います。ところで納税種類はカラー印刷しなければいけないのですが、世の中ではカラープリンターが常識という判断なのでしょうけど、カラーをふんだんに使った手書き提出用と同じ形式の書類にする必然性もないわけで、もうすこしやりようがあったような気がします。単に(手書き用の)提出書類の作成を電子化するのと、提出そのものを電子化するのは意味が違うし、どうせ情報技術を使うのならば税務署の仕事(つまり人員)を減らせるようにしないと、情報システムへの投資を償却できないです。ところで税金はクレジットカードでは払えないのでしょうか。 2005年3月1日午前中は自動認識システム協会の事務局で、ISO委員会の関係で来日した米国のアクティブRFタグの会社の方から説明をきいて、そのあと昼食。2.45GHzビーコンを発信するタグが複数点測量で位置を測定するというもので、電波強度ではなく到着時間差を測定するというところがウリのもの。国内でも電波強度を使って、数メートルの誤差で位置を測定する製品はありますが、壁などがあると反射波をひろってしまってまともに測定できないのが現状なので、その意味では有効なのですが、逆に距離が狭いと使いものにならない。どちらにしても周波数チャネルも測定距離も全部アメリカ仕様で国内で利用するのには工夫がいるかも。RFIDはパッシブタグよりアクティブタグの方がおもしろいです。今週はRFIDの見本市もあるので、いろいろ動きがあります。そうそう勤務先で開催されていた某学会のユーザインターフェース系のシンポジウムに潜り込んでしまいました。知り合いに会うのが目的で、会場に滞在したのは15分ぐらいなのでお許しください。会場では、たくさんのデモを展示されていて盛り上がっておりました。正規参加者ではないのでコメントは避けますが、展示の多くは思いついたので、ちょっと工作してみましたというものが少なからずあるようですね。過去にXeroxの研究所に転がり込んでいたこともあり、CHIなどの海外のユーザインターフェース研究者には知り合いが結構いるのですが、国内と海外で研究トレンドがこれほど違う分野は情報系では他にないかもしれません。海外のユーザインターフェース研究では評価重視というか、定量評価のない論文は通らないし、最近は新しいユーザインターフェースに対して評価手法をそのものを開発することが研究トレンドになっていますが、国内ではあくまでもアイデア重視で評価は不要とまで言い切られる方が多いです。評価だけで新しいインターフェースが生まれるわけではないのですが、かといって思いつきだけでいいという分野でもない。 2005年2月28日なんかバタバタした一日です。たいてい月曜日はこんな感じなのですが。そういえばジェフ・ラスキンがなくなったそうですね。Macintoshの基本コンセプトを作り、Macintoshの名付け親。そしてMacintoshのボタンを一つにしてしまった人。彼の著書、Humane Interfaceをまた読んでみることにします。実は原書を読んだのですが、その後、翻訳書も買ったはずだから、今回は和書の方を読んでみます。本書を読んだことがある人でないとピンと来ないでしょうが、どこか独善的なところはMacintoshのユーザインターフェースと本書は通じるところがあるかも。つまり確かにいいデザインだけど、それがベストだと断言されるとちょっと抵抗があるかも。ところでMacintoshのマウスボタンはそろそろ2つにしてもいいと思いますけど。デスクトップはマルチボタンマウスを買えばいいのですが、PowerBookやiBookはそうもいかないので、なんとかしてほしいです。 2005年2月27日なんとか英語書籍の原稿を仕上げる。この5日間、たいへんだったというより、こんな急ぎ仕事でいいのかという感じ。それと勤務先の英語資料を作成。数日前にいただいたCellの特集がでている日経エレクトロニクスを拝見。新味の話はすくないものの、メモリロック機構と、ロックされたメモリ内のタイマーは興味深いかも。ぜんぜん話は違うのですが、iPod miniにハローキティバージョンがあるそうです。世の中、いろいろなものがあるだとひたすら感心。それにしても売れるのでしょうかね。当方にはまったく理解不可能な世界なのでわかりません。ちなみに付属しているクマのスタンドは、HMVとかで5000円ぐらいで売っているiPod miniホルダーと同じもののような気がしますけど、気のせいでしょうか。そもそもキティなのにクマは変でしょ。思い起こせば小学生時代からキティは苦手なのですが、いったい何がいいのでしょうかね。でも最近は海外に行ってもキティグッズが氾濫しています。以前、フランス人に、同じ欧州であるオランダ生まれのミッフィ(小うさぎ)より日本生まれキティ(キャラクター設定的にはロンドン郊外に在住しているそうですが)の方が、どうしてフランスで人気があるのかと聞いたことがあるのですが(ミッフィーを比較対象にしたのは絵が似ているので)、ミッフィが不人気な理由はウサギだからだそうです。つまり、フランス人はウサギ=食べ物なのだそうです。ちなみにフランス人はピーターラビットを見ると「おいしそう」と思うそうです。 2005年2月26日H2Aの打ち上げが成功したそうです。というか今回も失敗したら宇宙航空研究開発機構がなくなる事態も取りざたされていましたから、さすがに今回は関係者は必至だったのでしょうね。それにしても確定申告の時期にやるとは勇気があります。だって失敗したら納税意欲がさがりますから。もちろん成功したからといって納税意欲があがるというものでもないですけど。以前、同機構から、一日延期になるだけで3000万円程かかると自慢されていました(人件費が含まれるか否かは聞き忘れた)。もっとも予算がかかっていることは自慢することではないと思いますが。どちらにしてもお金がかかっていますから、打ち上げるからには予定通りに成功してもらわないといけません。そういえば勤務先には同じ文科省ということもあって、今回の打ち上げの見学会への案内が来ていたのですが、一度ぐらいはいってみたいです。 2005年2月25日さすがにぐったり。ペースが落ちて今日は1500ワードほどしか進まない。やはり5日間で10000ワードほど書くというのには無理があったかも。でも週明けまでになんとかしないと。さて知り合いから「銀河ヒッチハイク・ガイド(The hitch-hiker's guide to the galaxy)」が映画化されるという話を聞きました。絶対に映画化はありえないと思っていたので、衝撃です。国内ではうけなかったようで、新潮社から1作目から3作目まで翻訳が出たのですが、早々に廃刊になってしまいました。もっとも海外では人気があるようで、テレビ化されたという話を聞いたことがあります。そういえば10年ぐらい前に、知り合いのお偉い先生が作者のダグラス・アダムスに会ったと自慢されたことがありました。正しくは会った本人はいったい誰かわかっていなかったようで、当方ならばダグラス・アダムスが誰だかわかるだろうと聞いてきたのですが。だいたい大学生の頃、1番好きな小説はきかれると「銀河ヒッチハイク・ガイド」と答え、2番目はときかれると「宇宙の果てのレストラン」(続編)、3作目はとはきかれると「宇宙クリケット大戦争」(続々編)と答えておりました。そうそう作者のダグラス・アダムスはモンティ・パイソンの脚本を書いていたそうです。やっぱりイギリスのコメディはいいですよね。先日、映画「カジノ・ロワイヤル」のDVDが1000円で売っていたいので買ってしまいました。いちおう007シリーズの映画化の一つだし、出演者は超豪華なのですが、知っている人は少ないでしょう。映画化を機会に「銀河ヒッチハイク・ガイド」の4作目と5作目の和訳が出ないでしょうかね。できれば翻訳は同じ方だといいのですが。でもそれ以前に国内で上映されるのだろうか。この手の作品は国内ではうけないので。 2005年2月24日昨日は花粉症だとおもっていたのですが、実は風邪っぽいだけだったみたい。さて英語の本の方は今日も執筆中。なんとか2000ワード強を書いたのですが、それでもやっぱり先は長い。そうそうソニーのCLIEが新製品開発を中止するそうですが、CLIE部隊には知り合いが多かったのですが、ほとんどがソニー社内の他の事業部に移られいたので製品開発は去年の今頃で終えているのだとばかり思っていたのですが、発表はこれからだったのですね。それにしてもCLIEは国内PDA市場ではもっともシェアが高かったそうなので、今回の撤退劇はシェアトップでも市場が縮小しているときは撤退すべきというビジネススクール向きのいい教材かもしれません。ただ、ソニーはマイナー製品というか、一部のユーザに受ける尖った製品が得意な会社であって、シェアトップになって王道的な製品を作る状況はソニーにとっても、ユーザにとっても不幸だったように思います。CLIE撤退を受けてメディアではPDA vs. 携帯電話という構図で、PDA不振の原因探しが大流行ですが、個人的には通信機能の有無以前に、PDAというよりもPDAが特有のペン入力するものが全般にダメだっただけだと思いますけど。PDAと同様にペン入力を前提とするTablet PCはPDA以上に散々たる状況ですからね。そうそうCLIEに変わって国内シェアトップになるであろうZaurusは小型キーボードがつくようになって、使っている人を見てもキーボードで必至に入力していて、ペン入力はあまりしていないみたい。実はポインティングデバイスとしてはペン入力は古く、主力をしめていた時期もあったのですが、マウスにその座を奪われたという経緯があります。やっぱりなんか問題があるのでしょう。 2005年2月23日出たり入ったりで忙しい日。結局、オフィスに3回行ったような状態。なんか地下鉄ばかりのっていました。それからいまだに執筆中。移動の合間にもせっせと書いたためか、今日は2000ワードほど書けました。でも先は長い。ところで電車に乗ってもマスクをつけてられる方が多いのですね。花粉症でマスクをされている方、風邪の予防でマスクをされている方、風邪をひいてマスクをされている方がいりまじって、なんでマスクをしているかはわからない状態。でも大勢でマスクをつけている様子はちょっと異様。さて話は変わって、MicrosoftがPOSシステムなどの流通機器向けのWindows XPを発表したそうです。POS端末にまでWindows XPを使わなくてもいいのに思いますが、学生さんと話していると研究用システムでもWindowsを使いたがるのですよね。でも、よくよく考えてみるとある年代以下は物心ついた頃からWindows95以上に囲まれていたはずなので、Windows=コンピュータと思っても仕方ないのかもしれません。だから、彼らが組込系ソフトウェアを書くことになっても、使い慣れたWindowsを使いたいということになりそう。なお、Windows CE系は名前こそWindowsですが、PC用のWindowsとは似て非なるものなので、Linuxなどの他のOS同様に彼らのお好みではないようです。なんだかんだいっても、ソフトウェアの場合は開発する人がいないことは話にならないわけで、その意味では当面、Windowsの天下は続くように思います。逆にLinuxはデスクトップ市場で弱いというのは人材確保という点であとあと致命的になるかもしれません。それはともかくスーパーのレジで会計を仕様としたら、POS端末がいきなりブルースクリーンになったら嫌だなぁ。ところで、六本木ヒルズにビックハットを通りに抜けるときに、ビックハット内にある大型ディスプレーをみたら、WindowsのWarning Dialogが出ているのを見てしまった。 2005年2月22日あいかわらずSpringerから出る本の執筆中。英語でわかりやすくというのは、当方の英語力では難しい。ところでAMDには少し遅れましたが、Intelもデスクトップ用に64bit版x86プロセッサを投入するという発表がありました。これでサーバに続いてデスクトップも64bit時代になるのでしょうか。もっとも肝心のソフトウェアの方が対応していないので何のメリットもないのですが。ただ、x86系の64bitへの以降はバッファーオーバーフローを使った不正アクセスを防止するDEP(Data Execute Prevention)技術が要因になるかもしれません。もちろん、直接64bitとは関係ないけど。ただ現状では他にデスクトップ利用で64bit版x86プロセッサを利用する積極的な理由が思いつかない。ところで、Windowsの64bit版はいつ発売になるのでしょうかね。Windows向けの32bitアプリケーションには過去の経緯から16bitコードを含んでいるものが結構あるのですが、64bit版Windowsでは32bitコードは動きますが、それが16bit コードを含んでいる場合は動かなくなってしまうので、混乱があるかもしれませんね。おそらく仮想機械上で32bit版Windowsを動かせということになるかもしれませんが。ところでx86はその一部は8008から引きずっているわけですから、8bitから64bitまでしぶとく生き残ったことになります。もっとも、生き残った価値があるかは疑問なのですが。そういえばiAPX432はどこに行ったのでしょうか。x86の32bit化とともに消えてしまいました。実はCellのメモリ回りにはiAPX432の再来を期待していたのですが、残念ながら普通のプロセッサになっていました。すこしだけCellの話になってしまいますが、ソフトウェアCellのような実行単位を導入するのであれば実行メモリ単位もハードウェアで面倒を見てくれないとソフトウェア的に手がおえなくなるのです。 2005年2月21日某省関連の原稿を作成・送付。それから共著で書いているSpringerからでる英語教科書の執筆。結構、平易な英語というのは難しいというか、教科書向けの英語がどのようなものかがわからない。大学院向けのテキストでしょうから論文調でもいいのかもしれませんが。それにしてもプログラミングどころか、論文も書いている暇がないですね。全然、関係ないのですが、iPodに使っていたS社製のヘッドホーンが断線して片側しかならなくなってしまった。Appleの純正のヘッドホーンはケーブルがだらーんと前にくるのと、材質的に絡みやすいのが嫌なのです。だから、S社製の片側のケーブルが短くてもう一方を首の後ろから回すタイプにかえていたのですが。ところでヘッドホーンのケーブルは被覆している材質しだいで強度をもたせると思ったりしますけど、メーカにしてみれば強度がなくて壊れる方が買い換え需要が生まれるので儲かるのかも。 2005年2月20日昨日書ききれなかったので続き。マルチコアの最大の問題は、発熱やメモリ幅などの半導体に関わることではなく、マルチコアの並列性をいかせるソフトウェアを用意できるかということになります。ただ、ハードウェア屋さんはソフトウェアが対応してくれないとマルチコアはいかせないと安易にいいますが、これはナンセンスな要求かもしれません。科学計算のようにプログラム中の並列実行可能箇所が抽出しやすく、さらに実行環境がある程度、事前に特定できているのであればコンパイラでマルチコア実行に最適化したネイティブコードを生成するのは合理的なのですが、一般のオフィス向けアプリケーションは実行環境が多様、つまりコア数やメモリなどが事前に特定できるわけではない。このため、マルチコアを前提にしたプログラム設計することには限界があるし、コンパイラが特定のコア数を前提に最適化したコードを生成されても困るのです。ただ、意外にマルチコアが効果的なのが、仮想機械の実行時最適化。Javaの仮想機械やMicrosoftの仮想機械CLRではいわゆるJITで実行時にネイティブにコードに変換して実行していますが、変換処理そのものをプログラムとは別のコアに割り当てて並列実行すれば実行時最適化のオーバーヘッドが相当減らせます。一般のアプリケーションが仮想機械向けに書き直されるとは決していいませんが、仮想機械の実行とネイティブコードの実行の性能的な差異がいまより小さくなることは確か。マルチコアプロセッサが普及するということで、去年あたりからマルチコア実行に最適化されたネイティブコードを吐き出すコンパイラ最適化の研究が盛んになっています。これは本当に正しい道なのでしょうか。もちろん、科学計算のようなソフトウェアには有益なのでしょうが、多くのソフトウェアの場合はむしろマルチコアに最適化された仮想機械そのものを開発した方がいいように思います。それとJavaもCLR対応言語もコンパイル時には教科書通りの最適化にとどめて、むしろ仮想機械での実行時最適化が中心になっていますが、マルチコアになるとこの傾向は強くなるかもしれません。もちろん、仮想機械向けのコードでもコンパイル時に最適化をするといいのですが、下手に最適化すると実行時最適化に悪影響することがあります。コンパイルのコード最適化の指標もマルチコア化とともに変わっていくのかもしれません。 2005年2月19日本当は13日に書こうと思っていたことの続き。ここ1年間でプロセッサはクロック重視からマルチコア化に大きく方向転換したわけですが、問題はその先。前にも書きましたが、Mooreの法則、つまり18ヶ月で集積度は2倍になるという計算だと、3年だと4倍になるわkで、2005年が2コアとすると、3年後の2008年は8コア、さらに3年後の2011年は32コアになる計算。ただ、最近はプロセスが微細化されても動作電圧はあまりさがっていないことや、寄生容量の上昇(プロセスを1/2にすると2倍になります)を考えると、(細かい計算は書きませんが) 例えばプロセスを90nmから65nmに移行して、面積あたりの集積度は2倍になっても、消費電力(または発熱)を90nmと同じにするにはチップ面積を0.7倍程度にする必要があることになります。そうなるとコア数増加速度はさがるのですが、コアそのものアーキテクチャを単純化する可能性はあるので、Mooreの法則以上に増加する可能性はあるように思います。コア数を優先する場合はコア回路が単純な方がいいわけで、そのときは回路が複雑化したx86は不利な状況かもしれません。過去にもx86の問題を考えて、x86以外のアーキテクチャを提案しては失敗してきたのですが、マルチコアは同じアーキテクチャのプロセッサコアを積む必要はなく、プロセッサに少数のx86コアをのせて、x86用に作られているレガシーアプリケーションの実行環境を確保しつつ、残りのコアはマルチコア向けのインストラクションのプロセッサコアをたくさん積むという選択もあるように思います。その意味では前にも書きましたが、一番怖いのはx86コアをもっているAMDと、PowerPCコアをもっているIBMが組んだ場合です。Intelはx86回路を改良してしのぐ可能性がありますが、ただ、マルチコアプロセッサになるとJITなどの仮想機械向けの最適化を別のコアに割り当てられるので、仮想機械の実行が速度があげれます。このため、仮想機械でx86インストラクションのアプリケーションを実行する方が普及してしまうと、x86インストラクションを使ったアプリケーションは残っていても、仮想機械で十分となり、ハードウェアとしてのx86用コアの価値が下がる可能性があります。その意味ではIntelがx86アーキテクチャにハードウェア的な価値があるうちに他社にx86コアをライセンス販売した方がいいと思います。ところでプロセスの話に戻しますが、SCEIがCell を65nmプロセスではなく、90nmプロセスで製造するのも実は90nmを65nmにしたからといって、実は電力というか発熱量が半分になるわけではないという読みがあるのかもしれませんね。もちろんSCEIはチップ数削減に異常なほど執着をもっているので、いずれは65nm に踏み切るのでしょうがね。 2005年2月18日午後は講演。それも場所は商工会議所。それにしても今週は出かける先が千代田区内ばかり。それも勤務先から半径2km範囲内で収まっています。便利とはいえば便利なのですが、さすがに日比谷や霞ヶ関となると道の都合で実際には3km近くあるはずなので地下鉄で移動しましたが。それにしても丸の内はビルがどんどん建て替えられていて日々変わっているという感じ。丸ビルが建て変わったときはでかいビルができたなぁと思いましたが、いまでは特に目立たなくなっています。ところで16日にMac miniクラスタに光り物がほしいと書いたら、早速教えていただきました。いろいろな製品があるものですね。もっともどうせUSBでライトの電源を供給するのならば前面にUSBポートを用意してもいいように思うのですが、余計なことを考えてはいけないのでしょう。 2005年2月17日朝から夕方までRFIDのISO委員会(SC31-WG5、WG4)。RFIDそのものを専門としているわけではないのですが、国内委員会ではアカデミアからの唯一の委員になっています。さて委員会の詳しい内容は書けませんが、某省のプロジェクトの経過報告などもあったのですが、報道では国際標準になるなどとなっているのですが、現状はずいぶん違うものです。というか標準化に関わる立場からいうと、国際標準への審議が拒否されたと解釈すべきケースなのですが、逆に報道されている感じ。ところでRFID以外にもISOなどの標準化に複数関わっていますが、どうも標準化を勘違いしている人が多いです。ISOに限らず標準化を提案するだけならば簡単だし、標準化では審議中が長く続くとキャンセルされるし、そして標準化されたからといって使われるとは限らない。でも、日本は妙に標準化を神格化する傾向あるようで、○○という技術を標準化に提案中だとか、○○という技術はISOで審議中だとか、標準化されたとかというと、○○はすごい技術だと思いこむ人が多いです。でも現実は標準化や規格化された技術や仕様のほとんどは使われていないのです。逆にそもそも使える技術は標準化や規格化する前から使われるようになっていることがほとんど。なんか面子を保つだけで標準化に提案しているケースが少なからずあります。そのうえ審議中になっても標準化が通らないと、どこどこの国が反対したといって、いじめられているとかいって大騒ぎ。多くの場合は需要がないといって拒否されているのですが。ところで話を戻しますが、今日の委員会でUHF帯タグの医療機器への影響についても報告があったのですが、13.56MHzタグであれば周波数が低いので心配はないのですが、915MHzや950MHzを使うUHF帯タグリーダ/ライターは周波数も電波出力も携帯電話端末並ですから、リーダ/ライターから数センチの至近距離だとペースメーカーなどに影響がでないとはいえないですね。プライバシー問題よりもはるかに深刻化かもしれません。ただ、逆に言うと携帯電話はもっと危ないということです。 2005年2月16日講演のスライドを作成・送付。国際会議のカメラレディ論文を作成・送付。国際会議の投稿論文を作成・送付。書籍の図版の不足分を作成・送付。書いては送りの繰り返しです。目が回りそう。ところでその合間に出張中に届いていたMac miniをセットアップ。といっても普段持ち歩いているPowerBookの環境をそっくり複製。MacintoshはIEEE1394ケーブルがあれば環境が引き継げるので楽。さて性能的にはPowerBookと構成が似ているということもあり、PowerBookと同じ程度(あたりまえですね)。普段の事務仕事をする限りは必要にして十分ですが、Mac miniというよりもプロセッサG4のバス性能の制約からメモリをいっぱい使うアプリケーション向かないようです。さて心配していた発熱は本体もACアダプターは思ったより少なく、クロックが1/3以下のPowerMac G4 Qubeよりは冷たい。Qubeに搭載されたG4(MPC7400)と、miniに搭載されている低消費電力版のG4(MPC7447A)の違いということでしょうか。実はMac miniを積み重ねたPCクラスタを計画中。ひとまず今回の納品された1台をApple Remote Desktopで使っているのですが遠隔デスクトップで運用中。結構使えるものですね。性能的にはMac miniはPCクラスタ向きではないのですが、ミドルウェアを研究・開発する立場だと性能よりも運用が楽な環境の方がいいのです。ちなみに設置方法は、Mac miniは形状からして重ねても使えそうなので、重箱のようにしてMac miniを重ねる予定(雑な絵を作ってみました)。これで光りモノとか入っているとおもしろかったのに。なお、タイルように並べるというアイデアもあったのですが、放熱的に得策ではなさそう。冗談だと思われるかもしれませんが、結構本気でひとまず8台分を見積もり依頼。 2005年2月15日日立がディスクレスのノートPCを発売するそうです。ノートPCの紛失や盗難に伴う情報漏洩対策として内蔵フラッシュメモリもデータ保存ができないようにしてあるようです。実は正月にこの話が報道されたときは、ネットワークを介してサーバなどで実行されているアプリケーションをMetaFrameあたりを使って遠隔表示・操作するのだと思っていたのですが、サーバ共有方式以外に社内のデスクトップPCにつないで一台のディスクレスノートPCで一台のPCを遠隔操作する構成もあるとは思っていませんでした。そもそも管理が面倒になるだけになりますから。ただ、サーバの性能的に共有が難しいということもあるのでしょうが、企業の多くはサーバシステムをもつわけでもなく、各社員のPCでデータを管理している状況ですから現実的な方法なのかもしれません。一方で現時点で社内サーバを整備していない企業や組織が今後もサーバを導入するとも思えないので、一段飛躍してユーティリティコンピューティングに向かう可能性もあるかもしれません。たとえばディスクレスPCを一台購入すると、ユーティリティコンピューティングサービス会社が提供するサーバ上で、ディスクレスPCが接続する仮想的コンピュータとアプリケーションが1年間無料で使えるようになって、その後は有料更新というようなビジネスモデルもあるかもしれません。専属システム管理者がいないような企業や組織の方がユーティリティコンピューティングには需要が大きいように思います。それと一つの流れになりそうなのが次期WindowsのLonghorn。WindowsもGUI APIが遠隔対応になるので、GUI描画するコンピュータは別のコンピュータでもいいことになります。X-Windowsでは昔からできたということになりますが、API設計がXMLベースUI記述に近いところがあるので単純なビットマップ転送とはやれることが違ってくる可能性があるのです。Windowsに対しては思い入れは一切ないのですが、Longhornの出来不出来によってPCが発展するか停滞するかの分かれ道になるように思います。それにしてもディスクレスPCのOSとして組込用バージョンとはいえWindows XPを使わなくてもいいと思うのですが。 2005年2月14日海外出張中の残務処理に奔走。それと出張中の8日と9日に、日経産業新聞の記事の中に当方のコメントが記名付きで出ていたらしいのですが、親切にも研究所の事務方からコピーをいただいてあって確認。新聞に名前が出ているということだけは知り合いからメールで知らされていたのですが、海外出張中だと内容の確認がとれないのでちょっと不安だったのですが、いっていないことは書いていないのでまずは一安心。ところでびっくりしたのが、通信会社のVerizonがMCI(昔のワールドコム)を買収するそうです。当方はてっきりQwestがMCIを買収するのだと思っていました。ここ数か月でSBCコミュニケーションズによるAT&Tの買収や、SprintによるNextelの買収など米国通信業界は大再編が進行中。一年前の業界勢力図は一変したといってもいいでしょう。AT&T分割では地域会社と長距離会社にわけたのですが、ITバブルを経てこうなるとはね。ただ、この状況から地域会社と長距離会社の分離策が間違っていたかといわれると微妙。夜は新国立劇場でAlban Bergのオペラ「Lulu」。いつものように1500円の当日チケット。オペラに興味がない方にはぴんとこない話でもしわけないですが、ちょっとだけオペラの感想。実は今回はかなり曰く付きの公演で、主役ルル役歌手の技量不足で三幕目をカットする事態になったという話ですが、二幕目で無理矢理三幕目の展開を押し込んだので無理のあるストーリーになってしました。もちろんBergの作品らしく不協和音が多いので、主役は難しい役であることはわかりますが、歌詞もはっきり歌えていないし、冒頭からヴィブラートで誤魔化しているだけ。カーテンコールの拍手でも主役よりも脇役の方が明らかに大きいという事態になっていました。休憩時間に聞こえてくる観客の会話でも「オペラになっていない」とまでいわれる始末。過去に歌が覚えきれずにオペラを短縮したという前歴もあるそうですから、本人の技量よりも配役した方に問題があるのでしょう。ただ、ラストシーンは早々に主役を引っ込めて脇役で固めたので技術的な体裁を保って終わった感じなのは幸いでした。ちなみに「Lulu」は国内ではマイナーなオペラなのですが、欧州では定番な演目なようで、当方も昨シーズンにパリオペラ座で一度見ていたりします。それと比べると素人の当方にも水準の差がわかってしまいます。というか同じオペラとは思えないというのが正直なところですが。このオペラに限らず国内では原語を聞ける人が少ないためでしょうか、歌詞がいい加減でもヴィブラートをきかせる歌手がうまい歌手と評価されるのですよね。もちろん1500円だから文句は言いませんけど、この水準を続けると新国立劇場そのものが危なくなります。 2005年2月13日海外出張にいっているとどうしても最新情報に疎くなってしまい、今頃、ISSCC'05のCellの発表資料も読んでいるのですが、わからない点も多いですよね。例えばPlayStation 3に使うとするとGPUをどうするのか。どうもNVIDIAのGPUを使うようですが、どこに載せるのでしょうか。3Dゲームなどを考えるとGPUとCPUの通信帯域が勝負になるし、次期XBoxがキャッシュをCPUとGPUが共有することで帯域を確保しているので、Cellも帯域確保は必須のはずでCPUにGPUをオンチップにするのが順当でしょう。メディアの報道をみていると、Cellは8コアのマルチコアプロセッサという説明が散々されていますが、2年前に出されたCellの特許をよく読むと通常のAPUを8個ではなく4 個にするタイプも書かれているのですよね。Playstation 3用はコアを減らしてGPUを載せるつもりかもしれませんね。もちろん65nmプロセスで作ってもチップが大きくなるのは間違いなしですが(プロセス問題はいずれ)、なによりも発熱の問題があるのでゲーム機にそのまま載せられるとは思えない。それと一番がっかりしたのはメモリ部分。マルチコアではメモリの同期制御が難しいのですが、Cellは新規アーキテクチャですし、メモリも既存のDDRの使い回しではなくRAMBUS系になるので、何らかの機構を入れてくると踏んでいたし、実は読み書き同期機構のことが特許には書かれていたので期待していたのですが、意外におとなしいですよね。Cell ですが、マルチコアを前提に再設計したプロセッサというのが、一番いい形容だと思います。ただ、RISCプロセッサと同じでソフトウェアの方に工夫がいるので、いかすも殺すもソフトウェア次第。RISCのときは単純にコンパイラ最適化の出来不出来が勝負でしたが、Cellの場合はマルチコアプロセッサなので、OS側のスレッドスケジューラが重要になることから、コンパイラだけでなくOSが出来不出来にかかっています。ただ、ゲームに関しては凝ったOSを用意するとは思えないので、スレッドプログラムが書けないゲームプログラマーは淘汰されるのでしょうね。かつて2Dゲームから3Dゲームに移行した際にかなりのプログラマーは3Dゲームに移行できずに淘汰されたのと同じことがおきるのかもしれません。でも、Cellは一番肝心なのはHardware Cell、つまりプロセッサではなく、ソフトウェアレベルのSoftware Cellだと思いますが、残念ながら半導体専門のISSCC'05の発表資料ではさっぱりわからない。 2005年2月12日JAL便は定刻より5分ほど遅れて成田に着陸。シートテレビがつまらないので仕事に身が入ります。なんとか論文を仕上げて、飛行機を降りたらすぐに送付。なんとか米国時間の締切にセーフになったはず。あいかわらずぎりぎりの生活が続きます。海外出張だと集中して論文が書けるので捗ります。というか国内は雑用が多すぎるのですがね。ならばオペラを見ずに論文に集中しろといわれそうですが、それはいわないことにしてください。ところで出張中に半導体集積回路の国際会議ISSCC'05があったのですが、やっと頂いた資料に目を通しています。なぜかメディアはCellに話題が集中していますが、技術的にはIntelが発表したItaniumベースのデュアルコア(Montecito)の方がおもしろい。Itaniumというと引いてしまうのも事実ですし、実際、当方も12月にアブストラクトが公開されたときはあまり関心を持ちませんでしたが、キャッシュアーキテクチャ的にはなかなか斬新。いただいた論文をざっと見ただけなのですが、Itanium特有のVLIW技術を前提にした部分もありますが、他のプロセッサに影響を与えるように思います。そのわりにメディアがほとんど取り上げていないのが不思議。Cellの話はまたいずれ。 2005年2月11日帰国です。成田で復路フライトを切り替えたりといろいろあったのですが、結局当初の予定通り。フライトは夕方だったので、急ぎ足でOrsay美術館とPompidou Centre(国立近代美術館)はまわりました。この二つを見ずにパリから帰るわけにはいきません。もちろん今年はどちらも初めてですが、今年度では実は3回目だったりします。特にPompidouの4階は少しずつ新しい作品に入れ替えているので、それなりに新鮮だったりします。さて帰国はチケットはAirFranceですが、コードシェアのJAL便。まぁどっちもどっちだけどね。そういえば、パリの地下鉄駅構内にあった愛知万博向けのJALの広告には大きく"Hello Tokyo"と書かれていて、結局、万博よりも東京目当ての客を狙っているようです。実はこれ以外にも愛知万博の広告もパリ地下鉄構内で貼られていましたが、未来クルマの絵が書いてあるだけで、近づいても万博の広告だとはわからないものでした。スポンサーの都合があるのでしょうが、クルマを宣伝したいのなら、最初からトヨタ万博にした方が良かったのではないでしょうか。 2005年2月10日パリ第6大学で講演とディスカッション。結局、2時間プレゼンをして、さらに2,3時間は先方の各研究にコメントすることになったので結構ハード。拝見した研究は適応型分散システムやモバイルエージェントで、内容的にはおもしろいのですが、もう少しデモを工夫するとかなりいい研究になるように思います。また、誘われたので年内にまた行くことになりそう。それからパリオペラ座BastilleでMozartのオペラ「魔笛」を鑑賞。実は昨シーズン(6月24日)にもパリオペラ座で「魔笛」を見ていて、そのときは衣装デザインは高田賢三だったりと斬新な衣装と舞台セットだったのですが、今回の「魔笛」は前衛すぎて、ほとんど原型をとどめていません。正直言って言葉では形容できない斬新さ。舞台セットは大きな白地の巨大中空マットが八枚ほどあるだけ。背景はすべてプロジェクターで投影、それも文字が流れたり、環境ビデオ的なものが中心でメディアアートの世界で、本来の魔笛に対応するような背景は一切なし。そのうえ闇女王様役はクレーンでつるされていて小林幸子を超えてアクション、そのうえ衣装はミラーだらけで、直視できないほどまぶしく、おそらく松健サンバの衣装を超えておりました。そのうえダンサーはクレーンでつるされて風車のようにまわされながら踊っているし、天井から発泡スチロールのボールが舞台一面を覆うほど降ってきます。パリのオペラ座は前衛的演出で知られているのですが、これは群を抜いていると思います。それとパリオペラ座の観衆は「魔笛」はなんども見ているでしょうから、その期待を超えるためには普通ではダメなのでしょうね。そうそう昨日と同様に、舞台をカメラでうつして、それを投影するという演出を使っていたのですが、流行なのでしょうかね。それから肝心の歌ですが、歌手のクオリティの高く、アラがまったくないものでしたが、個々の歌手の技量としては昨シーズンの方がやや高かったかもね。 2005年2月9日TGVでパリに移動。発表したときのセッションチェアのフランス人となぜか隣り合わせ。お互い話していたのですが、確率的にはゼロに近い偶然。さらにパリ市内で向かう場所も同じ。その方は国立通信研究所(ENST)の方なのですが、フランスは通信系、特に移動体通信で出遅れたことが問題視されているようで、通信関連の科学技術施策などを聞かせて頂きました。夜はパリオペラ座のGarnierの方で観劇。演目が変わっていて、創作バレエ2本と、オペラともバレエともつかぬ作品(Todsuden作、"Les Sept Peches Capitaux")。創作バレエ2本は身体表現は前衛的なものとはいえませんでしたが、1本目は踊りの一部をカメラで撮ってそれをそのままプロジェクターで舞台に投影しており、新しい演出でした。3作目の"Les Sept Peches Capitaux"はミュージカル的作品でした。20世紀初頭の北米の大都市が設定のようですが、Pop-culture的な舞台セットとコスチュームで見た目には楽しめますし、演出はCartoon的で笑えるシーンが多かったです。パリオペラ座は過激な演出が多いのですが、前衛性を許容する余裕はさすがです。国内の場合は客入りなどの都合もありますが、劇場・主催者側も観客側も前衛作品を評価せず、スタンダードなものしか許容しないようですから。 2005年2月8日飛行機では少しは寝たものの、感覚としては昨日が続いている感じで長い一日でした。この48時間のうちで寝たのは3,4時間だけという状態。今年は初めてですが、今年度では3回目のパリ。Charles de Gaulle空港には朝の4時半についたものの、バスや列車は動いておらず、空港で足止め。午前中に国際会議の会場であるBesanconに行く直行列車はないので、ひとまずLine BとLine Aを乗り継いでGare de Lyon 駅に移動。それからZurich行きのTGVにのってDijon Villeで途中下車。そして、在来線に1 時間ほど揺られてBeasanconに10時半頃に到着。そのまま会場に移動して発表。今回は発表時間の半分以上をデモにあてたのですが、国内と違って海外はデモをすると受けがいいです。これが国内だと哲学優先なので逆効果。某予算の報告会でデモをしたときは「ソフトウェア研究で実装やデモなんてするからサイエンスになれないのだよ」とお偉い先生に注意されたこともありますし。それはさておき、国際会議では妙に気に入られて馳走されたり、講演依頼を受けたのですが(欧州にいるわけではないので無理だよ)、来年の会議に役員にされてしまったのは余計でした。実は今年だけでプログラム委員をしている国際会議が10を超えているのですが、普通よりも多いということを5-6日の会合で指摘をされていたのですが、ある程度の数になると数が増えても誤差状態になっています。 2005年2月7日勤務先の後期博士課程の入試面接と判定会議。面接担当の受験者は欠席するということでしたが、試験室で面接官全員待機。入試である以上は規定通りすすめないといけません。判定会議で入試案件が終わった5時過ぎに、成田空港に移動。21時55分発のエールフランスの夜行便でパリへ。なんか忙しい日なのですが、フランスについたその日に発表があるのですが、そちらの方が問題。いつものように発表準備が終わっていないので、機内で寝ているわけにもいかない。ちなみにパリに着くのは朝の4時30分。ところで季節のせいなのか、機体がBoeing 777だからなのでしょうか、よくわからないけどフライト時間は14時間40分。多くの場合パリ便は12時間前後なのでちょっと長い感じ。 2005年2月6日さきがけ研究21「情報と知」の同窓会の続き。今日はアドバイザーの先生方、文科省や科学技術振興機構のお話。ところで滞在中は合間を見つけては慶大大学院の期末レポートの採点。受講している学生さんがコンピュータサイエンス系ならば課題も出しやすいのですが、他分野の研究をされている学生さんが多く、コンピュータサイエンス系はむしろ少数派となっている状況では、何かをレポート課題にするかも難しい。さらにその採点基準をどこにおくのかはもっと難しい。ただ、これは現状のコンピュータサイエンスの縮図かもしれません。コンピュータサイエンスは数学のように、様々な学問分野のコアになりつつありますが、その一方で数学と違って、応用性や実用性を度外視してやっていけるわけでもなく、応用分野に応じて分断していく運命なのかもしれません。その意味ではコンピュータサイエンス系以外の学生さんの受講が多いという状況は健全なのだと思います。でも授業する側はやりにくいけどね。 2005年2月5日科学技術振興機構の研究助成、さきがけ研究21「情報と知」の同窓会で葉山の湘南国際村。今回の幹事だったのですが、1日目は無事に終わりました。すでに1年半前に終わった研究予算だというのに高い出席率。一体、どういうコミュニティなのかと思ってしまいます。研究予算では金の切れ目が縁の切れ目にはなりません。それはさておき研究予算は期間が終わってしまうとそれっきりになってしまうものが多いのですが、期間後の成果発表や近況報告は重要なのかもしれません。それから2月2日に書いた位置サービスの問い合わせを何件か頂いたので、特許番号だけを書いておきます。当方が念頭に置いて書いたのは特開2002-199423です。再度読み直すともっと要求項がもっと広かった。ちなみに米国では2002年に成立(6377793と6480713)しているようです。モバイル系の研究開発をされている方ならばよく御存知でしょうが、特許では結構うるさい企業で、米IBMと日立もこの企業の特許と重なったために、噂では単独発売ができなくなったと聞いたことがあります(こうした内実は表になることはないので)。 2005年2月4日国際会議の査読を一気に6本片づける。MIMO (Multiple-Input and Multiple-Output)対応の無線LANの出荷がそろそろはじまるようです。Airgo社のチップ依存なのでIEEE802.11nへの対応など、将来的な互換性が心配ですけど、当面は実験・評価需要ですから、先のことは心配しなくてもいいのかも。MIMOというと広帯域幅と通信安定性が目的となるのでしょうが、複数の送受信が同時できるわけですから多元全二重無線システムとみることもできます。上位のソフトウェアから各接続制御ができるようになればMIMO対応のコンピュータはゲートウェイとして利用できるはず。似たような話は複数Ethernetカードを使った通信でもあったのですが、ソフトウェア的には難しい。そのうえMIMOの場合は無線のパワー制御や干渉が絡むのでたいへんそう。それにしても通信屋さんというのはどうして広帯域化にしか関心がないのでしょうかね。もちろん帯域は重要なのですが、同時に複数通信できる方がおもしろいことができそう。 2005年2月3日飛行船がオフィス近くの上空で旋回していました。当方の部屋は19階。もちろん、飛行船の高度の方がはるかに高いのですが、横から見ているという感じに見えます。結構ゆったりした乗り物だと思っていたのですが、機首を大きく上げたり下げたり頻繁にしているので、旅客機の離発着時以上に傾くようです。でも乗ってみたいです。たぶん、愛知万博の宣伝用に都心を飛ぶ飛行船があるというので、その飛行船だと思います。船体に書かれた「ようこそJapanの文字」はよく見えたけど、愛知万博の宣伝は目視できず。そうそう愛知万博といえば去年の11月に名大の大学院に集中講義にいったときに、学生さんに「愛知万博って、知らないうちに終わったけど、いつ終わったの?」と大失言をしてしまいました。関心もないので、知らないうちに始まって、知らないうちに終わったのだ思ったいたのです。ただ、その場にいた学生さんはショックをうけていました。申し訳ないことをしました。ところで飛行船に話を戻しますが、子供の頃読んだ未来空想図では、空には飛行船が飛び交い、鉄道は全部リニアモーターカーになっていて、車は空を飛んでいたはずなのに。どこで間違えたのでしょうか。 2005年2月2日Justsystemと松下の特許裁判の判決のこと。今回の裁判はGUIネタが対象になりましたが、昨日も書きましたがUIネタは思いつき系のアイデア一発ものが多いので、発明性や進歩性の弱いものまで広範囲に特許権を認めていると身動きとれなくなる可能性が高いです。そうそう勤務先と同じビルで毎年、2月末にぐらいに某学会のUI系のシンポジウムがあって、そこではデモセッションが人気を集めていますが、格好の餌食ですよね。デモセッションに展示されたネタは既出アイデアとなりますが、その過程で得たアイデアや将来構想は未出。当方が企業関係者だったら、デモの展示者にいろいろ質問して根掘り葉掘り聞きます。展示説明は学生さんが多いのですが、学生さんはガードが甘い。デモを見てくれた来場書がたくさん質問すると、研究を気に入ってくれたと思いこんで、未発表ネタまでべらべらしゃべる、そうすると次の週には特許として出願されていたりするのがオチ。年度末向けに特許数ノルマが未達成の企業開発者の方々はこうしたデモやポスターが多い学会に行くといいことあるかもね。まぁ冗談はともかく、これまでのソフトウェア特許はアルゴリズム的なものが多かったのですが、今回のように発明というよりも思いつきに相当するものでも広範囲に解釈して特許として認め始めると、収拾がつかなく可能性が高いです。最近、ひどい状況になっているのが、いわゆるユビキタスコンピューティングと呼ばれる分野。国内では大ブームになったおかげで、大手企業が総力戦で大量の特許出願。これらの特許の開示がそろうまでは、新規ネタに手を出したくても出せないのが実情。研究の都合上、特許庁と米国の特許庁のWebデータベースにはよくアクセスするのですが、信じられないような広範囲な要求項をもつ特許が成立しています。その一例をあげると位置依存サービスをしようとしても、携帯端末がGPSなどから取得した位置情報を何らかのメッセージ(メールを含む)でサーバに転送して、そのサーバから現在位置に関するコンテンツを携帯端末が受け取ると特許に抵触します。実際、GPS携帯を使ったサービスをしている国内携帯電話キャリアはライセンス料を支払っているという噂。特許掲載広報が出た段階で異議を申し立たなかった方がいけないといわれる方がおられるのですが、ユビキタスコンピューティングのようにブームになって特許出願数が多い分野では全部をチェックできるわけでもないのです。ユビキタスコンピューティングは、特許に脳天気なアカデミアの研究者(当方もその一人)をのぞくと、怖くておいそれと手を出せない。官民マスコミ上げてブームを盛り上げたのですが、残ったのは特許出願の山だけ。企業の方々はそろそろ実を刈りたいのですが、お互い特許に縛られて事業化がなかなかできない。結局、ユビキタス化したのはコンピュータでもセンサーでもサービスでもなく、特許だったということなのでしょう。ユビキタス特許はやっぱり嫌ですね。 2005年2月1日なんとなく昨日の続き。個人的にはNTTのことなどはどうでもいいといえばどうでもいいですが、かつてNTTはIT分野ではもっとも優秀な人材を集めたのですが、その人たちが気の毒。ITの世界というのは破壊的イノベーションで進む世界。最大手かつ事実上の独占状態にあるNTTにとどまっている人たちが破壊的イノベーションを考えるはずもないし(組織維持のためには持続的イノベーションを追い求めないといけない)、またNTTという大組織に安住している人たちが自ら外に出るという冒険はしそうもない。ただ、破壊的イノベーションを進めるためにはそうした優秀な人材を外に放出させないといけないわけで、その意味では長期的にNTTという守旧体質の組織を温存しておくのがいいのかはわからない。日本は破壊的イノベーションに弱いといわれるのですが、それはNECや富士通、日立、東芝といった優秀な人材を集めた大手企業がどこも潰れなかったので、本来、破壊的イノベーションを考えつく優秀な人材が大手企業から出てこなかっただけのように思います。だからといって、そうした大企業を潰しましょうとはいいませんが、全般に大企業はメインストリーム指向になりがちだし、考え方もどうしても保守的になってしまって、イノベーションの足を引っ張るだけのように思います。どちらにしても数が多すぎませんかね。ところで話は全然違うのですが、Justsystemと松下の特許裁判の判決がニュースになっています。早速、某省からコメントを求められたのですが、Justsystem の反論の仕方に問題があるような気がしますが、ソフトウェア特許を広範に解釈するということでしょうか。それにしてもこのレベルで特許権が認められると怖くてソフトウェアの研究できないです。思いつき的なアイデアが多いGUI系はこの裁判の行方次第では特許の訴訟合戦が起きそうです。よくよく考えるとWindowsにも似たような機能があったようなないような。 2005年1月31日このページの去年の8月5日と10月26日に書いていたのですが、AT&Tが子会社に買収という噂はとうとう本当になってしまいました。この子会社は1980年代中程にあったAT&Tの分割によってできた地域子会社なのですが、その分割を手本にしたのがNTTの分割。今回のAT&Tのなれの果てはNTT再編議論に影響を与えそう。NTTはAT&Tほど切迫していないとはいえ、ジリ貧になのにはかわりなく、特に8月31日にうだうだ書いたように加入線使用量の値下げに踏み切ったことでNTT東とNTT西の収益モデルは崩れ始めています。また、長距離会社であるNTTコミュニケーションはライバルキャリアとの価格競争で収益は急激に悪化しています。問題は今後なのですが、長距離会社は売れるうちに売った方がいいのですが、代わりになる長距離通信キャリアが他のもあるので、社会的になくなって困ることはない。NTT持ち株は資産が減るので困るかもしれませんけど。さて問題なのはNTT東とNTT西。なんらかの政治的な手段を使って再び独占状態にならない限りは先があるとは思えない。ただ、全国の各家庭に通信回線を引いているというある種のユニバーサルサービスですから潰れてもらうと社会的に問題が起きそう。でもよくよく考えるとNTT東とNTT西のなかで魅力のあるのは全国の各家庭への通信回線だけなのです。だから通信回線だけあればあとは他の会社がADSLやIPなどを組み合わせてサービスを実現できるし、その方がサービスの質・量ともに広がるでしょう。やはりNTT東とNTT西には物理層に徹してもらう。つまり回線維持会社になってもらう方がいいような気がしております。ところで、ここ数年でNTTの研究所にいた知り合いの大多数がやめてライバル会社や大学などに転出したのですが、いまだに数人残っています。その数人は皆さんそろって「他に移りたい」というので、当方もその数人の一部には求人情報とかを送ったりしたのですが、最後は皆さん口をそろえて「NTTにいられるうちはNTTにいる」といって断ってしまいます。まぁ御本人の自由だから当方が口を挟むことではないのでしょう。でも組織というのは外と内では見え方は違うことがよくあります。 2005年1月30日最近、回りの方からは研究予算申請をするときは「安全」と「安心」というキーワードを入れなさいとサジェスチョンをいただきます。実際、今国会の所信表明演説でも「安全」と「安心」がたくさん入っていたので、きっと重要なのでしょう。ところで某省の委員会の都合で資料をいただいた中に別の某省が作成した科学技術政策における安全と安心の懇談会資料が入っていました。そこで発見したのは「安全」と「安心」は単独では使われていないこと。御丁寧にも文頭で「社会における安全と安心(以下、安全・安心と記す)」と断り書きがされていて、以降は「安全・安心」が一つの単語のように使われていて、「安全」と「安心」は不可分のようです。ただ、そもそも「安全」の意味は危険ではないこと、損害や危害を受けないことですが、「安心」の意味は気にかかる事がなくて心が安らかなこと(元は仏教用語だと思う)。意味も違うし、「安心」は個人の主観に依存します。科学技術政策としては「安全」までは面倒が見ることはできても「安心」は科学技術だけで解決できる問題ではないです。安全性を高める科学技術と安全を安心につなげるための啓蒙活動とぐらいいってくれればわかるのですがね。もちろん安全なら安心という考え方もありますが、現実はそれほど単純ではない。例えば鉄道と飛行機を比べると飛行機の方が危険と思う人が多い、つまり鉄道旅行の方が安心する人が多いようですが、統計的にみれば飛行機の方が安全。どうも心理と現実にはギャップがあるみたいです。まぁ「安全」と「安心」を科学技術政策や予算申請のキーワードするのは結構ですが、ちゃんと定義しておかないと変な精神論に落ち込んでしまうような気がします。ただ、逆にあやふやだから予算・政策用語として適切なのかもしれませんが。 2005年1月29日郵便局にいって投函。それから新年会。ところで今日はAppleのMac miniの発売日だったのですが、Apple Storeには行列ができたとか。列に並んでまでして買うコンピュータとは思えないですが。それに普通にコンピュータを使いたいの方はiBookを買った方がお得だと思います。Mac miniは搭載しているプロセッサのG4はクロックこそ1.25GHzですが、バスが167MHzなのでデスクトップとしては性能は決していいとはいえないです。そめてキーボードとマウスぐらいは付けて売った方がいいと思います。PCユーザの場合はMac miniを買ってはみたものの実は手持ちのキーボードがUSB接続用ではなくPS2コネクタだったりして、途方に暮れている人も多いような気がします。それからACアダプタが結構大きいそうですが、普段PowerMac G4 QubeのACアダプタを見慣れている当方としては驚くに値しません。でも実はMac miniは発注してあったりします。明日あたりに届くのでしょうか。 2005年1月28日忙しいというよりは体力がもたないです。午後からはへたっていました。なんとか書類を書き上げるものの5時すぎてしまって近所の郵便局は閉まってしまうし。だからといって、すでにヘトヘトで東京駅近くの中央郵便局まで行く気力はない(2kmぐらいだから歩ける距離)。郵政民営化とかは別にして、近所の郵便局の閉店時間をのばして欲しいです。それとついでだからヤマト運輸の取次店になってくれませんかね。 2005年1月27日Windows XPとServer 2003の64ビット版の製品評価版の配布が始まったそうです。これでWindowsも64ビット対応が本格化します。サーバはわかるのですが、クライアントで64ビットプロセッサが必要なのかは疑問ですがね。ところで64bit版のWindowsはDEPは常時オンで、オフできないという話があったのですが、どうなったのでしょうか。Microsoftの資料ではデバイスドライバに関しては32ビット版との互換性がないといっているので常時オンかもしれません。どうもDEP=バッファーオーバーフロー対策だけと思いこんでいる人が多いです。別にバッファ入力を監視するルーチンを埋め込むのではなく、メモリページ単位にそのページからプログラムコードを実行できるか否かの属性を設定できるようにして、実行許可が設定されていないページの実行を禁止する仕掛け。だから、いろいろ使い道はあるはずなのです。 2005年1月26日もうぎりぎりという感じ、忙しくて時間がないです。昨日の続きというわけではないのですがマルチコアプロセッサの話。どうもマルチコアプロセッサの話題は性能面が主体になるのですが、むしろプロセッサ業界の産業構造を一変させてしまうかもしれません。流行の表現でいえば、擦り込み型から組み合わせ型に移行させてしまうと予想しています。現在、プロセッサの設計は複雑化していますが、すでにプロセッサの複雑性は人間の能力を超えているのかもしれません。例えばItaniumの開発の遅さを考えるとすでに一線を越えているのかも。一方で、マルチコアになればコアの回路パターンをコピーして貼るだけですから。それとソフトウェアの再利用でもいえるのですが、コピーをするという行為がモジュール化を推し進める部分があるので、プロセッサの設計もモジュールの組み合わせ的な方向に移行するように思います。また、マルチコアプロセッサは必ずしも同じコアを複数積む必要はなく、別の種類のコアを積んでいい。例えばx86、PowerPC、ARM、SPARC、MIPSの各コアが入ったプロセッサを作ってもいい。ただ、混在したマルチコアは設計に手間取るので避けてきたのですが、プロセッサコアがモジュール化されて、プロセッサコア間のインターフェースが標準化されれれば、種類の違うマルチコアでもモジュールをペタペタと貼って作ればいいので、いろいろ組み合わせが選べることになります。PC業界におけるDELLではないですが、プロセッサコア内部には一切関知しないが、コアを集めてはチップ化する企業と、プロセッサコアを設計する企業に2分されるかもしれません。一般にチップ内の半導体パターンのモジュール化では、モジュール間のインターフェースの標準化が難しいのですが、プロセッサコアに関していえば機能がよく似ているので、インターフェースの標準化は意外にできるかもしれません。それと今のソフトウェアはオフィスやサーバ用途はx86、組込系はARM用に作られることが多いのですが、互換性維持のためにx86やARMのプロセッサコアを1,2個残しておいて、後は新しい命令セットをもつプロセッサコアをたくさん載せるということもありえるかもしれません。まぁ5年以上さきでしょうが、x86はレガシーソフトウェア用プロセッサコアという位置づけになっているかもしれません。長期的にはIntelにとってマルチコアは諸刃の剣になるように思います。 2005年1月25日眠い一日でしたが、仕事の合間に査読、査読、査読。忙しい一日です。さて噂話をひとつ。今年になってから、ソニー、IBM&東芝のCellとPlaystation 3に関する噂話をいろいろ見聞きするようになってきました。Cellは期待が高かっただけに・・・。ということで個人的な関心は次世代XboxのIBM製PowerPCチップに移りつつあります。当然、情報は噂しかなく、想像するだけなのですがね。さて、ちまたの噂では次世代Xbox用のPowerPCチップはクロックが3.5GHz以上で,2命令同時発行のCPUコアを3つもっているらしい。この通りだとすると合計6個のスレッドがハードウェア的に並列に動作することになります。同様にマルチコアプロセッサを使うCellもそうですが、このさき並列プログラミングができないゲームプログラマーは生き残れないのでしょう。それとマルチコア向けプログラミングのノウハウはゲーム業界から生まれてくるかもしれません。次世代XBox用プロセッサで一番興味が引かれるのはL2キャッシュ。L1キャッシュは各コアはコード用とデータ用にそれぞれ32KB用意されるようですが、(1) L2の方は特殊で、セグメント単位でエントリ掃き出しを禁止できるらしい。いまひとつピンときませんが、ゲームでは重要なのかもしれません。(2) GPUからCPU のキャッシュをアクセスできるらしい。ご存知のようにマルチプロセッサの場合は場合はL2 キャッシュを共有できるので当たり前といえば当たり前なのですが、本来グラフィック専用回路にすぎなかったGPUが、一般の汎用演算プロセッサなみの機能を持つようになったことになります。問題はL2キャッシュへの読み込みだけなのか、書き出しもできるのかが問題なのですが、後者ならばGPUがCPU と対等になったということかもしれません。これが本当ならばPCアーキテクチャにも影響を与えるかもしれません。ただ、この方式はシステムソフトウェア的には面倒なはずで、Microsoftの場合はグラフィックライブラリとAPIを用意できるので面倒な処理は隠蔽できるのでしょうか。ところで、PowerPCで3.5GHzも出せるのでしょうかね。パイプラインの段数を増やすなどしているのかもしれませんが、やはり不思議。何しろ現行のハイエンド向けPowerPCプロセッサのPowerPC970(G5)ですら、予定されていた3GHzが未達成な状態ですから。それともPowerPC980(G6)を前提にしているのでしょうか。PowerPC系のMacintosh を使うユーザとしてはこちらの方が気になります。ただ、こうした高クロックの要求はMicrosoftからだと思いますが、だとするとMicrosoftがXBoxのプロセッサをx86からPowerPC系に乗り換えたのは価格よりも発熱の問題だったのかもしれません。どれもこれも噂ですから真偽は謎です。それともよく知られた話なのでしょうかね? 2005年1月24日朝方に論文投稿。締め切りは米国時間の夕方だったのですが、何とか滑り込みました。体力も論文内容もかなりボロボロ。でも書籍の執筆の仕上げと、さらに別の論文が残っています。一つの仕事に集中できないのが辛い。そのうえ某国内学会の和文論文誌の最終稿確認(1本)、別の某国内学会の英文論文誌の最終稿確認(2本)が同時に来てしまいました。あまり真剣にチェックするわけではないのですが、3本同時にくると面倒。ところで国内学会の論文誌は論文が採択されると強制的にその論文の別刷り100部以上買わされることになっていて、最終稿確認通知と一緒に別刷り購入書類が送られていきます。英文論文の方はそれぞれ8ページと9ページだったのであわせて20万円ちょっとだと思いますが、和文論文の方は書きすぎてしまい14ページになっており、この和文論文だけで別刷り代が30万円近くになってしまいました。立場上、研究予算から別刷り代を支払えるのですが、やっぱり高いよね。今年度は国内学会の論文誌に5本の論文を書いていまが、別刷り代支出は80万円はいっているはず。こうした費用を考えると国内学会への論文投稿は考えものかもしれません。実際、世の中、すべての研究者が潤沢な予算をもっているというわけではなく、論文をたくさん書かれる方だと別刷り代が研究費から払えなくなってしまうケースでも出ているのかもしれません。もちろん論文誌の維持コストがかかっていることは重々承知していますが、やはり世の中は経済原則で動いていますから、論文別刷りによっては論文が逃げていくことになります。もちろん論文誌という性格上、別刷り代が安いからといって投稿が集まるということはないでしょうが、やはり高ければ投稿が減るように思います。 2005年1月23日14種類のメモリカードに対応したリーダ/ライターがあるそうです。SDカードとMMC(マルチメディアカード)を別に数えているということもありますが、14種類もいろいろメモリカード規格があったものです。わけがわかりませんね。いったいどんなカード規格があるかは製品Webページを見て頂くとしても、そのカード規格の多くが国内メーカが主導して作ったもの。規格の善し悪しというより国内メーカ同士の競争という感じ。国内メーカはどうして競争相手が国内メーカだと意地を張るのでしょうかね。 2005年1月22日ソニーのプラズマTV撤退表明以降、東芝と続き、今週になるとプラズマTVパネルを作っている富士通まで縮小・撤退が報道される状況。今回撤退を表明した富士通はプラズマパネルでは老舗中の老舗。現在は日立と合弁で設立した会社でプラズマパネルの製造をしています。プラズマテレビという最終プロダクツの組み立て・販売では富士通よりも日立の方が目立っていますが、この合弁会社の技術部隊の多くは富士通出身者が多いようですし、少なくても当方が関わりがあった範囲では富士通主体の会社に見えていました。その富士通が撤退を考えるのですから将来を見越した判断なのでしょう。実際、価格引き下げ競争が激化は相当なものなようで、北米市場では去年後半、韓国メーカ同士(SamsungとLG)のトップシェア争いのために、両メーカの低価格攻勢があり一気に価格が下がりました。このため国内市場のプラズマテレビは割高にみえます。また、国内でもプラズマパネルそのものの価格、つまりプラズマパネルメーカから家電メーカに部品として売られるときの実勢価格を知るとプラズマテレビはとても買えないです(買う気もないですけど)。今後ですが、シェア3位といわれる松下はまだいいとしても、4位の富士通日立のプラズマパネル製造会社と、5位のパイオニアはたいへんそう。今にして思うと早々にプラズマ事業をパイオニアに売却したNECは先見の目があったことになります。ところでBusiness Week誌の先週号はLGの特集だったのですが、SamsungよりLGの方が伸びるかもしれませんね。財務的にはLGの方が上という話はよく聞きますしね。話をもとにもどしますが、富士通と日立のプラズマパネルの合弁会社は日立が買い取るようですが、せめてパイオニアのプラズマパネル部門も一緒に買い取らないと韓国メーカに太刀打ちできそうもないように思います。ただ、個人的にはプラズマテレビには懐疑的でした。プラズマディスプレーは液晶ディスプレーと比べると消費電力が2倍以上で、さらに電源回路が大型化するので小型テレビを作るのは難しい。家電というのは典型的な大量生産品ですから、安価製品から高級製品まで展開できる技術を使わないと普及しないように思います。つまり最後は価格勝負なので、数を作ってコストダウンしないと勝負にならない。家電メーカのプラズマテレビ部門の方々と話すと、液晶テレビに比べてプラズマテレビは(ディスプレーパネルに対して)電子部品比率が高いのでコストダウンの余地が大きい、と揃っていわれるのですが、液晶テレビは小型&安価製品に展開されるので液晶パネルをのぞく部品は急速にコストダウンが進みます。それらの部品を取り込むことで大画面液晶テレビでも価格が下がる余地が大きいように思います。プラズマテレビは次世代テレビといわれながら、松下をのぞくとコンシューマー向け製品に強い家電メーカがプラズマパネルそのもの製造に本格参入しなかったのは現在の状況をわかっていたのかもしれません。 2005年1月21日Intelは2005年中に仮想プロセッサ技術であるVanderpool Technology (VT)をデスクトップPC用プロセッサにも導入するという発表がありました。ただ、一緒に発表になった仕様も見たのですが、去年の7月ぐらいに出たリーク情報からの新味はないようです。むしろ意外だったのはVTのデスクトップPC用に導入がロードマップより一年ほど早いこと。思ったよりソフトウェア側が対応するのに時間がかかるとわかったのでしょう。個人的にはVTを使い切れるようなホストOSが普及するのは5年以上先のように思います。ちなみに IntelのVTは極力ハードウェアで制御してOSを含むソフトウェアには透過的に見せるという方式らしいです。(IBMと違って)Intelは仮想化に対応したホストOSを持たないので、ハードウェアレベルで仮想化を制御できるようにしておく必要があるのでしょう。ただ、仮想プロセッサの制御は単純になるため、プロセッサ自体は仮想的に分割できてもI/Oやメモリがボトルネックになるのは必至。例えばネットワーク処理と3D画像処理、ウィルスワクチンのようにアクセスするI/Oが相違する場合はいいのですが、サーバ処理のように各アプリケーションが似たようなI/Oに頻繁にアクセスする場合には性能低下は避けられません。また同じ種類の複数OSだと似たようなI/Oアクセスをする可能性があるので、種類が違うOSを動かした方が性能がいいという状況もありえるかもしれませんね。例えばWindowsとLinuxは性格が違うだけに、かえって仲のいい友達になるのかもしれません。ただ、将来的にはIBMがPower5で導入しているようにプロセッサの分割単位の動的調整が必要になるのでその段階でVTはインストラクションを含めて再拡張が必至になりそうです。噂ではPower5はメインフレームで使われているHypervisorのような機構で一個のプロセッサを10個程度まで分割でき、また忙しい仮想プロセッサに実行クロックなどを割り振るような制御ができるらしく、複数分割しても単体プロセッサに近い性能を出すといわれています(複数の仮想プロセッサが同時に忙しくなるわけではないから)。噂通りならばIntelは現時点ですでに数年遅れていることになります。おそらくIBMはプロセッサの分割により複数のサーバを運用する代わりに一台のサーバですませられるというメンテナンスコストや故障率の低減の方をウリにしてくるのでしょうが、IntelのVTは性能が出せるアプリケーションの組み合わせが限定されるので、当面はメイン処理をするOSとは別に、ファイアオールやワクチンソフトウェアを裏で動かすぐらいしか応用がないかもしれません(もちろんこれだけでも十分だけど)。ところでIBMはPowerプロセッサ系サーバではLinuxはあくまでも自社の仮想機械上のゲストOSとして利用するのが目的だったりします。だから、いくらIBMがLinuxコミュニティに自社のOS技術を無償提供するといっても、ゲストOS向けの技術であり、ホストOS向け技術は出さないでしょうね。どちらにしてもプロセッサの仮想化が進むと、それを有効に使い切れるホストOSがあるか否かが重要になりますし、IBMがしきりに強調するようにOS(正しくはゲストOS)のコモディティ化は当たっているのかもしれません。どちらにしてもLinuxもWindowsもゲストOSとしてはオーバースペックですから、ゲストOSに特化すればいろいろ機能が削れます。なお、研究ネタとしては、ここ数年はVT向けのOSのチューニング技術の研究がOS分野で流行るかもしれませんね。当方は手を出す気はありませんが。 2005年1月20日ほとんど徹夜で論文執筆。結構眠い。ただ、何とか昼までに書き上げられました。というか日中は論文を書いている暇がないですよね。ところで論文はいまだにLaTeXというは前近代的な整形システムを使っております(いまだにLaTeXを教えている大学があるとか)。MS-Wordにした時期もあったのですが、参考文献リストが扱いやすいという理由でLaTeXに戻っています。その関係で論文執筆はテキストエディターで書くことになります(こちらも前近代的なEmacs)。ここで問題になるのが(もちろん英語の)スペルと文法チェッカー。スペルチェックはいくつかツールが出ているのでいいのですが、文法チェッカーはMS-Wordなどのワープロなどに組み込まれてしまっていて、単体の文法チェッカーは以前のことを思うとかなり減っているようです。特にWindowsでは全滅に近い。本来、マーケット小さいはずのMacintoshでは単体文法チェッカー製品が生き残っているので、Windowsは文法チェッカーが埋め込まれたMS-Wordが広く普及したのがかえって悪影響したのでしょうか。ただそのMS-Wordの文法チェッカーは10年ぐらい進歩していない感じ。どこかにいい文法チェッカーはないものでしょうか。もちろん文法チェッカーで調べられるのは三単現のsなどのごく一部なのですが、でも調べれば何個かミスがわかるので使わないよりは使った方がいい。最近は文法チェックをしてくるCGIを公開しているWebもあるようですが、精度と使い勝手がまだまだの感じ。使い勝手の方はワープロから呼び出せるようになればだいぶましになるかも。さて夜は新国立劇場では格安当日券(1500円)でVerdiのオペラ「マクベス」を鑑賞。演出が結構よかったです。マクベス役もよかったです。それとマクベス夫人役のソプラノは代役の方だったのですが、これがかなりいい。新国立劇場はカーテンコールを見ずに帰る人が多いのですが、ほとんど人が出なかったです。それから実はガラガラだったので途中からStall席でみてしまいました。ごめんなさい。 2005年1月19日iPod Shuffleを拝見。転送速度が遅い感じ。iPod Shuffleは容量が少ないですし、頻繁に全部の曲を入れ替えるような使い方でもしない限りは気にならないのでしょうが。ただ、音楽プレーヤーよりもUSBメモリとして使いたい場合は遅いかもね。おそらくFlashメモリそのものか、Flashメモリのコントローラがボトルネックになっていると思われますが、これも無理した価格設定をしたしわ寄せでしょうか。Webページに転送速度を書いていないはずね。もっとも高速版のFlashメモリとコントローラでは1GB版はメモリ関連だけで2万円近くなるはずですから仕方ありませんね。 2005年1月18日なんか毎日査読をしている状態なのですが、今日は久しぶりに理論、それも並行計算理論の論文を査読。もちろんここで内容を書くことはできませんが、その論文の参考文献の年代とかをみていると、なんか時間が止まったような世界ですよね。実は当方も学生の頃は理論系の研究をしていたのですが、その頃と参考文献の論文があまり変わっていない。実は当方が修士学生の頃に書いた論文がいまでも参照されるのですが、ありがたいというべきなのか、これでいいのかというべきなのか。それにしても理論系論文の査読は勘弁して頂きたいです。ある程度は証明を追う必要があるので、システム系論文の査読の10倍は疲れます。実はこの論文を査読するために、理論系の論文を4本をまともに読む羽目になってしまいました。ちなみに普段査読をするときは、査読論文を読み始める前に例えば1時間と査読する時間を決めてしまいます。そして、その時間で理解できない論文はプレゼンテーションに本質的な問題があるように思います。こう書くと手を抜いているように思われるかもしれませんが、やはり集中して読んでも内容がわからない論文というのは何らかの問題があるのだと思います。もちろんコメント書きなどがあるのでその時間で終わるわけではないのですが、時間を決めておかないと一日に数本はこなせれません。 2005年1月17日慶大大学院の授業。学生さんは毎年変わるのですが、こちらは3年目で完全に内容にもあきてきたので、来年は違う内容にしようと思っています。ところで30インチ液晶ディスプレーですが、何人かの方に「なんで大型液晶を買ったのか?」ときかれたのですが、今後、ディスプレーが大型化と高解像化が進むことは間違いない。そして30インチのクラスの液晶が一般に普及するのは早くても5年後でしょう。ですから、これで5年は先に行けたことになります。30万で5年間分先取りできるとしたら、研究の世界でこんなにお買い得なものはない。特にディスプレーはPCのコンポーネントの中で一番進化が遅いので、ハイエンドを買えば数年はアドバンテージがとれますが、これがプロセッサやハードディスクではそうもいかない。ともかく速いプロセッサにこだわる人が多いのですが、一番高速なプロセッサのPCを購入しても、プロセッサ性能は向上速度が速いので、先取りができるのはせいぜい半年です。科学計算のように速い計算機が今すぐ必要ということであれば別ですが、ソフトウェアでも何らかのデバイスを使う研究であれば、むしろ研究がある程度進んだ時点で普及していそうなデバイスをねらった方がいいと思います。研究の世界では先取りは絶対に必要なのですが、その一方で何を先取りするのかと、それでどのぐらいアドバンテージを稼げるかを常に考えないといけない。ここで予測と選択を間違えると貴重な研究費を無駄に使うことになります。仮にユーザインターフェース、特にGUI関連のの研究をしていたとすると、デスクトップの15インチXGA液晶やノートPCの12インチXGA液晶などの今の主流のデバイスを使っている限りは、今必要な技術の研究はできても将来に必要な技術が研究できるとは限らないのです。それから、いくら技術的に先取りしても価格的にこなれないものは普及しないので、デバイスの将来価格も予測できないといけません。 2005年1月16日年末から30インチ液晶ディスプレー(解像度2560×1600)を使い始めているのですが、その感想を少々。ともかく画面があまります。画面の半分以上でデスクトップ背景が見えている状態で、使い切れません。これからわかることは余った場所を埋めるソフトウェアがほしくなること、最近のソフトウェアでいうとDashboardのような小さなアプリケーション、例えばカレンダー、天気予報や株価のリアルタイム表示などの操作をしなくても見ているだけで使えるアプリケーションや、辞書やMP3プレーヤーのように簡単な操作で扱える単機能なアプリケーションが欲しくなります。それとフルスクリーンを前提にしたアプリケーションはいらない。Windowsのアプリケーションに多いのですが、例えばMS-WordやExcelを起動するとデフォルトでは画面全体に表示されます。Excelの横セルはAから始まるアルファベットの番号がつきますが、30インチ液晶でExcelをフルスクリーン表示にするとZを超えて横セル数は30個以上になってしまい。広いは広いですが、広すぎで使いにくい。MS-WordでもA4ドキュメントを160%表示にしても2枚同時に表示されてしまい、書き物には不便。この他にもドラッグアンドドロップが使いにくくなるとか、たくさん気がついた点があるのですが、それがわかるのは日々使っている人だけの特権です。ところで画面の広さはソフトウェア市場にも大きな影響がありそうです。ソフトウェアが売れない理由は価格とかOSへのバンドルとかではなく、単に画面が手狭になって複数のソフトウェアを同時に実行できないだけかも。家と同じで家が広くなれば家具が売れます。ソフトウェアも画面が広く、解像度が増えれば、まだまだ売れる可能性は大いにあります。以前はハードディスクの容量がネックになっていたのですが、動画や音声データでも溜め込まない限り40GB もあれば一般の用途であれば足りなくなることはないでしょうから、昨今のハードディスク容量を考えるとハードディスク容量が、新しいソフトウェアのインストールの障害になることは少なそう。ということで皆さん、奮発して大画面・高解像ディスプレーを買いましょう。 2005年1月15日今日と明日はセンター試験。幸いにも勤務先は後期博士課程しかないので、学部入試のセンター試験とは無関係。ということで試験会場になることなく、当然、試験監督にかり出されることもない。前の勤務先では毎年、試験監督をしていたので、この時期になると試験監督マニュアルにある試験監督の台詞がフラッシュバックのように頭をよぎるのですが、もしかしてこれって一つの労災?。まぁそんなことはないでしょうが、実施会場となる大学の事務官や教官もたいへんなのですよね。それにしても、大学も通常の入試に加えてAO入試や秋期入試などを場当たり的に増やしてしまい、内部の手間は当然として、外から見た複雑性もあがっている感じ。 2005年1月14日査読を一気に6本。でもまだ20本以上残っています。ところで、Mac miniの見積もりをAppleStoreでとってみました(AppleStoreだとアカデミックディスカウントがきくのです)。Mac miniに搭載されているPowerPC G4プロセッサの問題は167MHzという遅いシステムバス。キャッシュミスすると一気に性能低下します。念のため仕様を調べましたがやはり167MHzでした。もちろんバス速度は早いほうがいいのですが、早いだけに筐体自体を小型化するとなると回路面積や発熱の問題が出てきますから、Mac miniのような小型パッケージではG4のようにバスクロックとプロセッサクロックを独立にしたプロセッサの方が向いているかも。これがG5だとバス性能を含めて高スループットを前提に設計されているので、回路側のスループットが悪いと同クロックのG4の性能も出ないかもしれない。Pentium系を含めて今後のプロセッサはクロックよりもマルチコアになって処理時間ではなく処理量重視にかわるわけですが、そうなると周辺回路の方はクロックだけでなくスループット重視にしないといけない。話を戻しますが、PowerBookやiBookならばノートPCということであきらめがつくのですが、デスクトップ機で167MHzというのはどう考えても遅すぎです。Mac miniにはPowerPC G4が1.25GHzのモデルと、1.42GHzのモデルがありますが、キャッシュに収まるようなアプリケーションだけを動かすならば別ですが、一般のオフィスソフトウェア用途では性能的な差はほとんどでないと思われます。 2005年1月13日今日も科研費特定領域「情報学」の報告会。当方は昨日発表してしまったので、ひたすら聞くだけ。学生さんの研究を発表される方が多いのですが、あたかも自分で研究したように説明しておいて、問題点を指摘すると学生の研究だからといわれるととちょっとね。もちろん教官が全部はやれるないのはわかるけど、ならば最初から学生の研究といって発表すればいいのに。別件で忙殺されているので今日はここまで。 2005年1月12日科研費特定「情報学」の報告会で発表。一応、デモもしてみたのですが、いかがでしたでしょうか。ウケは期待していませんが。やはりソフトウェアの研究は技術的に新規性のあるものを考えて、そして作って動かすることが大事だと思ったりしております。ところで会場は勤務先ということもあって途中で勤務先の知財委員会に出席することになったりといろいろ会ったのですが、委員会出席中以外は各発表をきいていました。いろんな意味でいろいろですよね。どこかの首相の発言と同じになってしまいますが、ほんといろいろ。さて注目のMacworld Expoでは新製品、フラッシュメモリiPod、Mac mini、iWorksが発表になりました。噂通りに展開ですね。ただフラッシュメモリiPodは当方の予想よりも20%ほど安かったです。一応、フラッシュメモリチップの値段などから原価計算していたのですがね。Mac miniはディスプレーもキーボードも、マウスもないデスクトップマシンが6万円弱のマシンなのはお買い得なのかは謎なのですが、逆にPCクラスタの実験マシンとしてはいいかもしれません。20台ぐらいを柱のように積み上げて見ましょうか(それでも1メートぐらい)。それともタイルのように敷き詰めましょうか。実はかなり真剣に考えているところが自分でも怖いです。ただ、小型デスクトップ型のMacintoshはPowerMac G4 Qubeのユーザとしては発熱が気になるところ。Qubeと違っていちおうファンを積んでいるようですが、大丈夫なのでしょうか。それと夏ぐらいになると、よく似たWindowsマシンがいろいろ出てくるのでしょうね。 2005年1月11日慶大大学院の授業。火曜日なのですが、月曜日の授業の振り替え。やはり月曜日は休日になることが多く、授業数が少ないらしい。それにしてもいろいろ忙しいです。本当は昨日ですが、NeoOffice/Jをインストールしてみました。オープンソース系のオフィスソフトウェアのOpenOfficeのMacOS X版。Microsoft Office 11を持っており、そのMicrosoft Officeの互換オフィスソフトウェアをわざわざ使うこともないのですがが、レスポンスを試したかったのインストール理由。このNeoOffice/Jですが、コアはOpenOfficeのネイティブアプリケーションですが、GUIだけはJavaでできています。そのGUIですがなぜかMicrosoft Office 97 (MacintoshだとOffice 98ですが)風のデザインになっているので、MacOS XのAquaのGUIのなかでは浮いていますが、レスポンスは思ったよりもあります。多くの場合GUIはネイティブソフトウェアとして実現して、レスポンスをあげることが多いので逆なのですが、Macintoshに限ると正しい戦略かもしれません。Macintoshではワープロなどのソフトウェアは、日本語などの2バイト文字の表示や入力の相性が悪く、試行錯誤をしてプログラムをする必要があるのです。一方で、Javaプログラムの場合は何もしなくてもインラインの漢字入力ができます。だから、日本語などの2バイト文字圏用のアプリケーションソフトウェアでは、ソフトウェアのコアはネイティブで作って、GUIだけをJavaというのは一つの方法かもしれません。Windowsを使っている人には信じられないでしょうがね。 2005年1月10日専門的な話で恐縮です。先日、Javaプログラムのメモリリークの話を書いたら、親切にもJMXを使った解析をすすめられました。確かにJavaの開発に関わっている人ならば、同じことを思うかもしれないので説明しておきます。実は使いたくても使えないので使っていないのです。ターゲットのソフトウェアは通信プロトコルの処理の都合でURLStreamHandlerを自前で実装しているのですが、JMXも内部でURLStreamHandlerを実装しているみたいでぶつかるのです(遠隔モニタリングだからといって、わざわざURLを実装しなくてもいいのに)。個人的にはJ2SE ver.5でもGeneric型もenum型も使わないので、JVMがJMX対応になったことが、ver.5の一番の価値だったりします。簡単に言うとJMX (java Management Extensions)をイネーブルにしてターゲットのソフトウェアを稼働させておいて、J2SEに付属のjconsoleを使えばJMXを経由してJVMの管理情報の多くが遠隔&GUIベースで表示・制御できます。例えばGCの管理領域の監視は他のツールもあるのですが、強制的にGCを実行できるためGCのタイミングに関わらずメモリ使用量がモニタリングできるのです。また、各スレッドの情報(実行中のスタックトレース)などがわかるので、遠く離れたコンピュータ上のどのスレッドが同期待ちまたは無限ループになっているかを発見するのには便利。他にもいくつかツールがあるのですが、当方のようにネットワークに絡んだソフトウェアを開発している立場だと遠隔監視・制御できるのはありがたい。それと先日、java.util.loggingを使ったと書いたら、なんで使いにくいものに手を出すのとメールをいただいたのですが、java.util.logging を使ってみたのもjconsoleからjava.util.loggingを使ってみたのもjconsoleから制御できるからです。 2005年1月9日見本市CESから戻ってきた方々から早速、メールが届いているのですが、あまり新しいものはなかったみたい。それに国内では話題の次世代光ディスク争い、Blue-rayディスク vs DVD-HDは現地では話題になっていない様子。さてMacintoshユーザにとっては年に数回ある見本市Macworld Expoの方が関心事かも。その時期が近づくと新製品のうわさ話で一喜一憂。そしてSteve Jobsのキーノートスピーチで絶頂に達するという、ほとんど宗教団体。10日からのExpoの話題は、TigerことMacOS X 10.4の発売日発表、フラッシュメモリiPod、500ドルのiMac、オフィスソフトウェアのiWorkあたりでしょうか。個人的には軽いノートPCを出してほしいのですが(iBookとPowerBookは年明けの価格改定リストに入っていなかったので、もしかすると・・・)。それはいいとして、今後の業界動向を占う上で重要なのはフラッシュメモリiPod。出すのか出さないのか、もし出すとしたらいつ出すか。だいたいフラッシュメモリの単価は年率30%で下がっており、価格的には出し頃かもしれませんね。どちらにしてもAppleの場合はiTunesという囲い戦略をもっているので、ユーザをiTunesに慣れさせられれば後はiTunes対応機器、つまりiPodシリーズを買い続けてくれるので、早めの囲い込みが重要となります。囲い込みの数を増やすためには価格的にiPodが買えないユーザ層をねらうべきなので、メモリ容量を削ってでもいいので低価格モデルを出してくる可能性は高い。どちらにしても携帯音楽プレーヤーは、各ユーザが持っている音楽データ数を考えると今のiPod miniあたりが主戦場になるのでしょうから、5GB前後が主戦場になるのでしょう。ただ、ハードディスクは容量あたりは安くても最低価格が高いという制約を考えると5GB前後では価格的にフラッシュメモリとの優位が少なくなり、むしろ消費電力、つまり電池持ちが勝負になるように予想しています。1インチのハードディスクの消費電力はだいたい1000mWなのですが、フラッシュメモリならばその1/20〜50と少ないのです。携帯音楽プレーヤーに関してはフラッシュメモリが主力になり、小型ハードディスクは携帯ビデオプレーヤーや携帯電子地図に市場を見いださないといけなくなるのでしょう。 2005年1月8日実装も一段落したので論文執筆モードに移行。本当は実装と論文執筆を並行にできないといけないのですがね。その実装したソフトウェアの動作実験で、2台のPC間で通信をさせているのですが、通信セッションの生成・通信・削除を30万回を超えるあたりでヒープ領域を使い果たして止まってしまいます。もちろん原因はメモリリークなのですが、ネットワークが絡むとリーク発見ツールでも限界があって結局ソースを追うしかないのですよね。いくらJavaはガベージコレクションがあるからといっても、プログラミングの仕方でしだいで消し忘れのオブジェクトはいくらでも出てきますし、特にJavaで多用されるイベントリスナーのパターンは巡回参照をする可能性がありますから。ところでJava Logging APIは何がいいのでしょうか。以前はApatachのLogging API(今のLog4j)ぐらいしか選びようがなかったのですが、今はJ2SE付属のjava.util.loggingや、こけてしまったAvalonプロジェクトのLogging APIなどなどいろいろあって迷うところです。今回のソフトウェアではjava.util.loggingを使ってみました。やっぱり世間でいわれるように使い勝手も機能もLog4jの方がいいです。いまさら何を言っているといわそうですが。ところでMacOS Xは画面出力のオーバーヘッドが高いのか、Terminal内で実行されたjavaプログラムからlogを画面出力すると、プロセッサパワーを結構使ってしまいます。この問題はWindowsやLinuxでも似たようなものなのですが、MacOS Xはやや負荷が大きい感じ。 2005年1月7日年末年始に作り始めたJavaソフトウェアですが、以前書いたプログラムの再利用した部分もあるにはあるのですが、実質7日間で7000行強になっていました(他の仕事もあるので、学生さんのように毎日書いているわけにはいかない)。数字の上では1日1000行ペースなのですが、これもEclipseなどのツールがあってからこそ。以前、エディタとコマンドラインコンパイラと原始的な開発環境でも1日1000行以上書けていたはずなので、プログラミング能力が落ちているのかもしれません。いったんはMacromedia Flashでユーザインターフェースを書き始めたもの、結局、システム自体のモニタリングツールが必要なのでSwingでGUIを急遽作成。ところでJavaのGUI、特にSwingのGUIというとレスポンスが悪いというイメージを持っている方が多いのですが、世間でいうほどは遅くないように思います。むしろ、インタフェースビルダーやビジュアルエディターなどのGUI作成ツールに問題があることが多い。こうしたツールは汎用性を維持するためにちょっとした画面でも複雑なオブジェクト構成のプログラムを作成するので、完全なオーバースペック状態になり、GUIレスポンス、特に起動時のロードが遅くなっていることが多い。実際、ツールによっては、生成したソースを読むと理解できないほど複雑ですから、レスポンスが悪くて当然です。GUI作成ツールはプロトタイプ開発にはいいのでしょうが、最終プロダクツに使うのは考え物です。ただ、研究ネタとしてはおもしろいかもしれません。何らかの方法で作成するGUIに最適化されるようにデータ構造とかクラス定義を変更してくれると、エディターとしての柔軟性を維持しながら作成されたGUIの性能も改善されますから。オブジェクト指向の研究ではアスペクト指向が流行っていますが、アスペクト指向は手書きのプログラムよりGUI作成ツールで作成された機械生成プログラムの最適化や改変に特化させた方がいいと思います(少数研究事例があるみたいですが)。 2005年1月6日今週はCESがあるのでいろいろ新製品の話題で華やぐのですが(今年は行こうと思えばいけただけに残念)、個人的に去年のCESで発表されたもので一番のインパクトがあったのはTiVo to Goでした。今年もTiVoを中心にして動くようで、いきなり出てきたのがTiVoとMicrosoftの連携。Tivoで録画したビデオコンテンツをWindows(正しくはWindows Portable Media Center)で見られるようになるそうです。国内ではTiVoはあまりしられていませんが(というか使えないから当然です)、TiVoは簡単に言うとハードディスク付きのセットボックス。Tivoのサーバとオンラインでつながっていて、地上波からケーブルTV、衛星放送など各テレビ局の番組表から番組を見たり録画予約ができるというもの。国内ではDVD&HDDレコーダーが話題になっていますが、TiVoは最初に番組表がメインであり、機材によってはHDDやDVDに録画ができるというアプローチ。ビジネス的に重要なのは安いTiVoのHDDレコーダは100ドルちょっとで売られているということ。結局、携帯電話と同様に月額の利用料で商売する方式。それともうひとつが不正な改造が流行っていること。当方が孫氏ならば、携帯電話や球界参入などをせずに、ADSLモデム配布の要領で、TiVoもどきのHDDレコーダをただ同然で街中で配って、月額の利用料でがっぽり儲けます。それにしてもTiVoはいろいろは参考になる部分が多いです。例えば国内のHDDレコーダーではHDD容量を誇示した宣伝ばかりですが、TiVoはHDD容量は非公開でその代わり録画可能時間だけを提示しています。実際、TiVoは常にHDD容量を使い切るように録画しているようで、ある時間だけは常に貯まっていることになります。本来、録画可能時間が重要なのであってHDD容量はどうでもいいはず。国内メーカも少しは見習ってほしい。それと先にあげた改造も重要。TiVoはユーザの改造事例を製品に取り入れているケースが多いので、ユーザにただで製品企画の代行をしてもらっているようなもの。それとTiVoにとっては個々の製品を長く使ってくれるほど儲かるのですが、概して改造したユーザは改造の手間を思ってか長く使ってくれるそうです。この作戦は国内の携帯電話キャリアにとって参考になりそう。国内の携帯電話もイニシャアルコストを小さくして、ラーニングコストで儲ける戦略なので、1年程度機種更新されると儲からない。つまり携帯電話の軽微な改造、例えばペインティングするとかを流行らせれば、ユーザは愛着ができるので端末あたりの利用期間が伸びるのはずで、携帯電話キャリアは収益拡大ができます。当方が携帯キャリアの社長ならば、去年流行った白地のスニーカーのようにペインティングやシール貼りに向いた携帯端末を出します。 2005年1月5日外出のあいまにプログラミング。なんとか基本動作だけは動くようになりました。ということでユーザーインターフェースの開発を始めたのですが、今回は安易にユーザーインターフェース部分はFlashにしてしまう予定。ということでFlashのActionScriptと格闘中なのですが、問題は実装したソフトウェアのサーバ部分とFlashクライアントあいだの通信。過去にもクライアントをFlashで済ましたことはあるのですが、今回はやりとりされる情報量が多いのでHTTPベースとはいかず、ActionScriptのXMLSocketを使うことになりそう。でも生ソケットで通信するのでどうしても実装依存になりやすく、スマートではない。ただ、この問題は当方のソフトウェアにかぎらず、いわゆるリッチクライアント(またはRich Internet Application)の共通の問題かもしれません。既存のリッチクライアントは入力されたデータを独自フォーマットでサーバに送るので、個々のリッチクライアントにデータ形式が依存していますし、さらにサーバ側とリッチクライアントを対にして開発しないといけない。このため、世間ではまったくというほど注目されていませんが、W3CのXFormsが意外にリッチクライアントのキーテクノロジーになるかもしれません。XFormsになればリッチクライアントのプレゼンテーション部分とデータ部分の分離できるだけでなく、個々のリッチクライアントに独立したデータ形式で通信できます。XFormsは実装が難しいのか、今のところXFormsを実装したWebブラウザはないのですが、XForms対応のブラウザが出てくるとFlash などのリッチクライアントアプリケーションとHTMLベースの簡易クライアントも区別せずに扱えるようになるはず。また、XML Signatureが楽に使えるのもありがたい。ところでOpenOfficeがXForms対応することになったそうですが、これは重要かもしれません。今まではオフィスソフトウェアのドキュメントは表示するだけですが、ドキュメント内にフォームをいれて、その内容をサーバ側と交換できることになりますから、サーバ側の情報とクライアント側のドキュメントがシームレスに融合することができるはず。XFormsを知らない方には何をいっているのかもわからない話かもしれませんが。 2005年1月4日昨日の続きですが、昨年の暮れのIBMのPC部門売却もそうですが、PCはコスト的に山をすぎたのかもしれません。確かにPC自体の単価は安くなってコモディティ化が進んでいますが、それ以上にセキュリティ対策や維持に手間がかかるようになってしまいました。ノートPCなどの物理的な盗難とそれに伴う情報漏れは深刻になっていますが、それを防ぐにはハードディスク内データの暗号化から指紋認証などなどいろいろ対策を立てなければいけない。また、ネットワークを経由した不正アクセスやコンピュータウィルスはもっと増えるでしょうし、巧妙化するでしょうから、PCパワーの9割以上をファイヤーウォールやワクチンソフトウェア、データの暗号化に使って、残りの1割でアプリケーションを動かすという状況が冗談ではなくなりそう。今の時代、インターネットに接続するというのは犯罪多発地域を深夜、無防備にうろつくようなものですから。それはさておき今後は日立と同様にPCをネットワーク端末に置き換えるところが出てくるでしょう。それにしてもStupidなネットワーク端末が主体になると、情報システムの構成自体が分散から集中に向かうので、分散システムの研究は今後はやりにくくなりそう。PCなどのIntelligent端末による分散処理よりも、サーバ側の技術をフォーカスするとか、Stupidなネットワーク端末が向かない分野にフォーカスすべきなのかもしれません。ただ、分散指向と集中指向は数年おきに入れ替わるのも事実だったりします。周期ははっきりしないのですが、以前よりも周期が早まっている感じ。4,5年前に流行ったPeer-to-peerのおかげで分散に傾いていたのが、ここ1,2年はセキュリティ的な要求で集中に傾いているというところでしょうか。もちろん次の分散への流れを読んで地道に研究を続けるのも一つの方法でしょうね。 2005年1月3日日経新聞の一面に日立が社内PCを全廃して、ネットワーク端末に切り替えるそうです。まぁ新聞だから大げさに書いてあるところはあるでしょうが、ネットワーク経由の不正アクセスよりもPCの物理的な盗難や紛失、持ち出しが情報漏洩の最大要因になっていますから、サーバ側で情報を管理して、端末には情報を持たせないようにするというのは一つの方法です。朝刊もインターネット版も技術的な情報がないので方法がわからないのですが、データをサーバで格納管理するとして、(1)ソフトウェアもサーバで動かしてその実行画面を端末に転送して、端末ではソフトウェアを実行しない方法や、(2) Web専用端末にして、Web上のソフトウェアだけ、例えばJavaScriptやFlashなどを端末側で実行する方法、(3)端末がサーバからソフトウェアダウンロードして端末側でソフトウェアを実行する方法などが考えられます。おそらくは日立の場合は(1)なのだと思います。過去にもセキュリティ重視のネットワーク端末にはSun Rayなどがあったのですが、Sun Rayが登場した6年前は性能的な制約もあり、ワープロなどのオフィス業務は難しく特定用途の専用端末ぐらいにしか使えませんでしたが、いまはPCクラスタの技術が進んでいますし、なによりも今後はプロセッサのマルチコア化が進みますから、一つのサーバまたはクラスタがたくさんのネットワーク端末の向けのソフトウェアを実行することができるようになります。実際、Intelは100コア以上のマルチコアマシンに興味があるようですが、現状用途のサーバやクライアント端末にも100コアは不要なのですが、ネットワーク端末のサーバとなれば話は別でしてmany-coreプロセッサが必要になるのです。もちろんケースバイケースなので、(1)〜(3)に従来のPCベースの方法を加えた4つから企業規模や情報システムの使い方で選択するようになるのでしょう。ただ、維持コストやセキュリティ対策を考えると(1)が有力かも。ところで、企業などの情報システム担当者のなかには、最新技術にはついていけず、PCのメンテナンス係やPCまわりのよろず相談員になっている人ともおられるのですが、そうした方々はPCそのものがなくなるとなると別の仕事を見つけないとたいへんそう。もっとも、クライアント端末と違ってサーバは企業内にある必要はないので、サーバはサーバ運営会社に委託・利用すればいい。つまり、クライアント端末がPCからネットワーク端末になれば各企業は情報システム部門を抱える理由が減るのです。このためシステム部門の大幅に縮小するところも出てくるのでしょう。当方をふくめてですが、どうも情報系の研究者はどうもシステム初期購入費用と性能だけで判断して、維持コストや人件費を考えない傾向があります。でも現実は情報システムの場合は購入コストよりも維持コストの方が大きいことが多いですし、何よりも人件費がむちゃくちゃかかる。だから、いいか悪いかは別にして、人を減らせる技術が一番いい技術になってしまうのです。どちらにしても今年は多くの企業でシステム部門の余剰人員問題が表面化してくるのでしょう。実際、ITバブル時代に大量に雇った"なんちゃって"SEさんの処分に多くの企業では頭をいためていますから。 2005年1月2日今日もプログラミング。というか徹夜状態なので時間の感覚がなくなりつつあります。これを書いているのも午前4時半だし。なんかたくさん書いたのですが、無駄なのコードも大量生産。それとネットワークまわりの処理ではまることに。基本的にHTTPベースのプロトコルなので素直にJakarta commonsのHTTPClientsあたりを使えればいいのですが、メソッドを拡張した都合から自前でプロトコルハンドラーを用意する羽目に。29日から別件の仕事をしていた1日をのぞくと、ほぼ1日1000行ペースで書いているのですが、当初は3000行程度でできると予測しており、できているははずなのですがね。いっこうにできる気配なし。失敗プロジェクトによくある甘い見積もりの見本みたいな状態になっています。やはりプログラム勘が落ちているのかも。普段はいろいろ仕事があり、集中して実装する機会は年末年始ぐらい。集中して実装すると普段見えてこないことも見えてくるというか、ソフトウェアアーキテクチャは試行錯誤をしながら、うんうん唸ることが必要なのかもしれません。それにしても学生さんは年がら年中、研究に専念できるのでうらやましいですね。 2005年1月1日正月休みは時間があることもあり、プログラミングして過ごすのですが、今日もプログラミング中。専門の関係でマルチスレッドを駆使したプログラムを作るのですが、これが結構難しい。スレッドを多用したプログラムは普通に実行すると不具合起こすものも、なぜかデバッガーを使うと動いてしまうことがよくあり、今日は原因不明のデッドロックに4時間ほど悩んでしまいました。Eclipseのデバッガーでは正常に動いてしまい、結局、昔ながらのprint文(JavaだからSystem.out.println)をプログラム中に埋め込むという前近代的な方法に逆戻り。ただ、今回はprint文を埋め込むと動くけど、取り除くとまた動かなくなるという最悪パターンで往生してしまいました。夜はWine PhilharmonikerのNew Year ConcertをTVで拝聴。正月は特にイベントがないのですが、14, 5年間続いているのがこのNew Year Concertを聴くこと。今年はLorin Maazel指揮でしたが、さすがにNew Year Concertのベテランだけあって、余裕がありますし、相変わらずバイオリンを弾いたり、歌ったりと嗜好をこらした演奏でした。それと曲の最後に、右手を大きく振り落とすという彼独自のスタイルも健在。ところで、今年はインドネシアの地震・津波災害を考えて、恒例のラデツキー行進曲を演奏しなかったのですが、これは本当に強いメッセージになったと思います。いろいろ考えさせられました。そうそうニューヨークのタイムズスクエアのニューイヤーカウントダウンでも津波被害者への黙祷があったそうですね。来年の1月1日にラデツキー行進曲が楽しく聞けるよい年になることを祈りつつ。
Ichiro Satoh
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