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「蕎楽庵 蕎麦匠 源」
(きょうらくあん そばしょう みなもと)
立派な門構え
評価
住所 横浜市青葉区新石川2-32-5
Tel

045-913-7131【要予約】

最寄り駅

東急田園都市線あざみ野駅
又はたまプラーザ駅徒歩10分

アクセス 県道日吉元石川線「新石川東名北側」交差点北50m、バス停「新石川2丁目」
営業時間

11時半〜13時入店、18〜19時入店
不定休 【要予約】

席数

20席

駐車場 數台分
最終訪問

2002.03.23(初囘訪問同じ)

完全予約制の蕎麦懷石の店。予約は中学生未滿を除き2人以上からで、4組または20名を以て予約打ち切りとなる。
品書きは私が行つた時には蕎麦懷石(6000円か9000円)のみであつたが、税込み總額表示が義務づけされた現在ではそれぞれ6930円、10395円、4人で17325円のコースに變更されている。

「蕎麦と楽しむ庵あり 蕎麦匠 源」
一枚板の看板がかけられた門を入ってから砂利の敷かれた小径を歩いて玄関に至る。到着時は日もとっぷり暮れていたので前庭の木々はよく見えなかったが、玄関前の梅の花が綺麗だった。

木製の扉を開けて中に入ると疉敷きの玄関スペースは広大で、ここだけで小さな蕎麦屋一軒分のスペース位はありそうだ。正面に小上がりがあり、向かつて左に和室二室、右手前が洋室となっている。
訪問日、和室の方では宴會でもしている樣で、玄関には大きな声が洩れてきていた。しかし、我々二人が通された洋室ではその声は殆ど聞こえずに靜かであった。

今囘予約したのは9000円の方のコース。餘談ではあるがこういうコース料理を出す店の場合、私は余程の理由が無い限り高い方のコースを注文することにしている。特に大食漢だというわけでも見榮を張っているわけでもなく、その店の供する「ベストの」料理を試してみたいが故だ。

“甲州臼”で甘皮部分まで「碾」きあげられた生粉打ち蕎麦


さて、この日の料理を順に檢証してゆこう。

1. 温かいそば
春とはいえ花冷えのする寒い3月末日、一品目に温まるものを、との心遣いが有難い。
ダシが甘めなのが氣にはなったがさほど嫌味ではなくなかなか美味い。これで人心地がついた。

ほっこりしたところで酒を注文。出羽桜以外はトホホな酒ばかりなのだが、まともな懐石料理の店でも同ぢ程度のラインアツプの所は多々ある。蕎麦の味を邪魔しない爲の氣遣いだと思い、默って飮むことにしやう。

2. 燒みそ
味噌の味がかなりマイルド。酒のアテとしては弱いのが氣にかかるのだが、まあ酒の品揃えがアレだしコースの中の一品としてはこれ位個性を主張せぬ方がいいのかも?

3. そば豆腐
季節らしく桜の塩漬けが載る。華があり季節感溢れる裝いはいいものの、蕎麦の香りがあまりしないのは難点。

4. とこぶしと筍の煮物
こちらも季節感がある。

5. 鮪、カワハギ、蛸の造り
蕎麦屋でナマグサもの、しかも鮪の刺身というのはかなり合わないと思われる。
蕎麦「懐石」なれば刺身を出すのは避けては通れぬ道であろう。しかし、蕎麦を喰う前に食すべき刺身の姿というのをちゃんと考えてのことなのだろうか?蕎麦懷石というものの存在意義を考えさせられてしまう。
まあそこまでなら容認出來るのだが、私が憤慨したのは供されたカワハギは單に身のみで肝が添えられていなかったことだ。
産卵期直前で旬も終わりかけとはいえ、寒い時期のカワハギに肝は欠かせない。その身の味はフグにたとえられる程なのだが、私は肝あってのカワハギだと思っている。
繰り返し言うが、私逹の注文したのは二種類あるうちの高い方のコースなのだ。そのコースの方のカワハギに肝を添えずに、一体何処に持って行くというのだ?!この樣なことをするのならば、いっそのことカワハギなぞ出さない方がよほど潔い。

6. カブラの煮物
冬野菜の蕪を煮たものに春野菜の芹を合わせ、それを揚げ蕎麦がまとめているなかなかの力作。
カワハギの肝をどこかに持っていかれた怒りが少しは緩和されたかも知れない。

7. 鰆の幽庵燒き
山椒が澤山載せられていた。鰆自体の味はまあまあ。

8. フキノトウ、タラの芽、茄子、かぼちゃ、ゼンマイの天麩羅
多分彩りを考慮してのだらうが、茄子とカボチャは不要であった。虚飾に走って餘計なものを載せてしまったことにより折角の季節の山菜のピユアーさが削がれてしまったのは殘念至極、見た目に惑わされぬ実質夲意で勝負して頂ければまた違つた印象であったのに。
季節の天麩羅を用意するなれば目指して頂きたいのはあの「慈久庵」の山菜の天麩羅である。あれは夲当の旬の山菜をストレートに味わわせてくれて、美味かつた・・・

9. 蕎麦
さて、御自慢の“甲州臼”で甘皮部分まで「碾」きあげられた(詳細はお店のURLを御參照下さひ)蕎麦粉10割で打たれた生粉打ち蕎麦である。
その宣伝文句に期待が大きかったのだが、いざ食してみると10割なのに香りは立たず、喉越しこそまずまずの出來であるもののごくごく普通の蕎麦であった。とくにマズイ訳ではないのだが凡庸で、蕎麦だけ喰いに來てこれを出されたらがっかりしてしまうだろうレヴエル。
ツユは甘ったるいという程ではないが、舌に甘さが殘ってしまうのが難点。ダシは弱いがバランスはまあまあ。

10. よもぎそばがき
きな粉がかかったデザートタイプのそばがきは、よもぎの香りは良かったものの当然ながら蕎麦の香りは全くしない。よもぎを入れるのなれば、何故蕎麦掻きの形態にしたのだろうか?どう考えても餅米でよもぎもちを作つた方が食感は上であると思う。
「そば懐石」なのだから、と蕎麦掻きにしたのだろうが最初の方から蕎麦に関係のない品書きも結構あったのに今更蕎麦掻きにする必然性が見えて來ない愚作である。

11.蕎麦カステラ
当然ながらぼそぼそした食感だが蕎麦の味はしっかりしている。

たかだか9000円で滿足な懷石を食べられるとは最初から思ってはいなかったが、懷石としても蕎麦としてもやや中途半端な印象を受けた。ただ店構えは立派で綺麗だし、個室になっているのでとても落ち着けるのはいいところだ。昼間に訪れたら庭の風景も樂しめることだろう。

純粹に味を追求しに來るのではなく、氣の合った仲間と一緒にゆったりと時間を過ごす空間だと考えたら10395円のお値段分の価値が出るのかも知れない。

追記
お店のホームペーヂもあるのだが、店の紹介というよりは臼だの何だのを売らんかな、という姿勢が見え見えなのがとても鼻につく。當然、店としての利益は上げねばならないだろうから、ホームペーヂを宣伝媒体として使うことに異論を挾むつもりは毛頭無いが、あまりにも商売っ氣ぷんぷんだと宣伝としては却って逆効果の樣な氣もする。

まあ下手に完璧な仕上がりのものよりも、こういう風にギラギラとした慾望がストレートにつたわってくる方が、却つて正直で微笑ましく感ぢないこともないのだが。

皆さんはどう感ぢられますか?

主なメニュー:蕎麦懷石(6930円、10395円)又は4人で17325円のコースのみ
酒:久保田、八海山、出羽桜枯山水

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