蕎麦屋情報を読む前に蕎麦屋情報INDEX |蕎麦遊樂掲示板|リンク
「月花水」(げつかすい)
暖簾がなければただの民家
評価
住所 大阪市生野区林寺2-10-13
Tel

06-6716-0676

最寄り駅

JR寺田町駅徒歩13分

アクセス R25「林寺2」交差点から北東に入る
営業時間

11時半〜15時、
17時〜21時(売切閉店)木、金、土休

席数

10席(座敷4×2+板の間2)

駐車場 無し
最終訪問

2001.04.08(初囘訪問1996.11.03)

「月花水」はJR寺田町駅から生野本通商店街を拔け、少し南に入った住宅街の一角にある。
外見はごくごく普通の民家であり、暖簾が出ていなければ此処を蕎麦屋だと気付く人は絶對にいないであろう。
玄関を入り、店に上がる。上がったばかりの板の間に2席、奥の座敷が4席2つの計10席。飾らぬ店内はこれまた安普請の建て売り民家そのままだ。

店のつくりが蕎麦屋らしくないのもむべなるかな、店主の野口修平氏の夲業は農家であり、木〜土曜は「農作業のため」休業する。以前は日曜も休みであり、店名の由來ともなった「月、火、水」曜日のみの營業であった。

さて、ここで、いつもなら「先づは・・・」と酒のレポートが來るところだ。しかし、此の店の「春鶯囀」に關しては何故か味の記憶が薄い。蕎麦屋はおろか他所でも飮んだことが無い酒なので、絶対頼んでいる筈なのだが・・・。かくなる理由で誠に夲意ならざるところながら酒の評価は割愛させて頂く。

此の店の品書きは、蕎麦4種と玄米ごはんしか無い。もし二人で行ったなら、その気になれば全メニユー制覇も可能だ。
小皿が一品ついてくるとはいえ(私がの訪問時はワサビの莖の醤油漬けであった)蕎麦の前に酒を樂しむためのアテが無いのが残念と言えば残念だが、店の方向性を考えるとそれも仕方のないところだろう。

と、いうことで、早速ではあるが「もりそば」に行こう。つなぎ無しの十割で打たれた蕎麦は、收穫後半年近くを經た4月頭の訪問にもかかわらず、しっかりと香りが立っていた。やや乾き気味で少々の引掛かりがあるものの口腔粘膜や舌にくっつくほどでもなく、喉越しもまあまあである。
ただツユは關西圈の常として弱く、ダシは効いているがかえしが駄目、コク無く辛さも頼り無い。
以前、T.V.で「月花水」のツユを作るシーンを放映していたが、台所で鍋を使い、ちゃっちゃと2〜3時間で仕上げていた。その時のレポーターがまた無知で「3時間もかけるんですかぁ〜!!」と驚いていたが、「3時間“も”」かけているのではなく、「3時間“しか”」かけていないのだ。その後の詳細の記憶は曖昧なのだが、特にその後何日も寝かせてこなれさせた樣子は無かったので、コクが無いのも当然だ。
そういうところも含めて、此の店でプロの仕亊としての完成度を求めてはいけない。だがそれは、決して貶めているわけではない。後述するが「月花水」の夲質はそういった亊にではなく、別のところに存在するのだ。

種物三種のうち試したのは二種。皿ごとに箸が付いてくる心遣いはなかなかだ。
秋口〜春にかけ供される季節ものの「湯そば(はるそば、と讀む)」には湯葉、椎茸、ワカメが載る。薄目のマイルドなダシは種物としては少々物足りないし、蕎麦を樂しむには具が邪魔する。
また、店名を冠した「月花水」はおろしそばのこと。辛味大根が使われている訳でもなく、自家製の大根を使ってはいるが、ただのおろしそばである。もりそばの100円増しなだけなので、どうしても大根を食べたい方は食べられてもいいが、特にお薦め出來るものではない。此の店の蕎麦の香りを純粹に味わいたいのならば、やはり「もりそば」を選択するがよかろう。

「月花水」の蕎麦はプロの職人の打つ、洗練されたそれでははない。しかし店主自身、そのことは十二分に自覺しながら打っているきらいがある。素朴な、垢拔けない、田舎の家で普通に食されている樣な蕎麦。蕎麦に対して私が求めるものは此の店には無いが、あくまで、主人が栽培した蕎麦を自家製粉し、農業の片手間に打ったものを食す、そのシチユエイシヨンを受け入れ、樂しめる方のみが訪れればよいのだ。

全メニュー:もりそば600円、月花水700円、温(はる)そば700円、山かけそば870円、玄米ごはん250円
酒:春鶯囀(しゅんのうてん・山梨)1500円

back蕎麦遊楽TOP