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「竹邑庵太郎敦盛」
(ちくゆうあんたろうあつもり)
路地の中の店。「そばハくすり」の文字が
評価 ★★
住所 京都市上京区椹木町通烏丸西入養安町
242-12
Tel

075-256-2665

最寄り駅

地下鉄烏丸線丸太町駅徒歩3分

アクセス 烏丸丸太町交差点を北上、ひとつ目の信号を西進(椹木町通)してすぐの路地を南下
営業時間

11時〜15時、日、祝休

席数

不詳(1Fは座敷机2×2+8×1)

駐車場 無し
最終訪問

2004.09.18(初囘訪問同ぢ)

此の店の存在はかなり前から知ってはいたが、箱に入れて蒸すタイプの「あつもり」はどうも邪道に思えて、なかなか足を向ける機会が無かった。しかしルーツに基づいて細かい亊を言えば、蕎麦が蕎麦切りの形になつた慶長年間では蕎麦切りといえばこちらの「熱盛り」形式であり、茹でられた蕎麦を水で締めて供さるる現在の蕎麦になるのはもっと後の話である。從って「熱盛り」が一概に邪道とも言い切れないのだが、少なくとも現在の夲流にあらざる亊は疑うべくもなき亊実であろう。
さて今囘、その樣な店に行く氣になつたのは、端境期で他の蕎麦屋に行く氣もあまりしないし、また前夜濃厚和風豚骨ラーメンを食した爲にラーメンに対する野望も無いという条件が揃った土曜の午后のことであった。

店内(一階)

壁に貼られたお品書き


烏丸通から一夲西に入った路地に位置する此の店は、看板こそかかっているが造りはごくごく普通の民家である。
玄関で靴を脱いで上がり、奥の座敷に通されるとアンテイークなのかただ古ぼけてるだけなのかわからない家具や調度品などが雜然と置かれ、流れるB.G.M.はクラツシツクありジヤズあり、と何とも節操の無い雰囲氣だ。
端から大した期待はしていなかったので、最初にお茶ではなく(薄いけど)蕎麦湯が出て來たことには一寸驚かされた。

先づは酒、なのだが此の店の品書きは「敦盛そば」、「追っかけ皿そば」、「金箔蕎麦」の三品しか無いのでいきおい、蕎麦を肴に酒を頂くことになる。銘柄を記されていない「御酒」は冷やなのに、何故か「燗酒」より100円高いがその分量は結構入っている。酒の味に關しては、わざわざ語る程のものでは無いことは御想像に難くない。

敦盛そば一斤820円。蒸されて湯氣が立っている


最初は店名を冠した・・・というか、その蕎麦から店名を取つた「敦盛(熱盛り)そば」を頂くことにする。
私は後から「追っかけ皿そば」を追加するつもりだつたので一斤で注文したが、量が一斤でも一斤半でも値段は820円と同ぢであるし、「敦盛そば」一斤と「追っかけ皿そば」5枚を食してもまだお腹に餘裕がある位なので健康な成人男性なれば一斤半、或ひは二斤位注文しておいた方がよかろう。
仰々しい木箱に入れられて御登場の「敦盛そば」は、蓋を取ると湯氣がもわつと立ちのぼる。箱の中に敷かれた簀子の下に湯が張られてをり、それにより蒸される形になつているのだ。食感はふわりと柔らかい、と言うと聞こえはいいのだが、噛むとぐんにやりと柔らかく、齒応えも頼りなくぶつぶつと切れる。それ故喉越しの良さは望むべくもないが、熱盛りにすることによって蕎麦の香りはなかなか立っている。
私が蕎麦を肴に酒を飮むことが嫌いなのは、蕎麦がのびるのを厭うとゆっくりと酒が樂しめないからだ。しかし、此の「敦盛そば」は最初からのびてしまっている樣なものだから、その心配が無いのは氣分的に助かる。
また、私は蕎麦を喰ふ時は江戸流で噛まずに呑み込むことが多いのだが、いくら消化に良いと言わるる蕎麦とはいえ、そういう喰い方をすると胃にもたれてしまうことが多い。しかし、「敦盛そば」ではその「もたれ」が全く無かったのはさすが「そばハくすり」である。まあ喉越しが惡いので噛まざるを得ないということも影響してはいるのであらうが。

ツユを入れる椀にはあらかじめ卵と九条ネギが入れられて來るので單品での味について述べても仕方がないかも知れないが、醤油の香りが殘るやや甘口なツユはかえしがしっかりと作られており、それのみの味としては私の好みからやや外れるものの蕎麦のキヤラとのマツチングが良く、このテの店としては想像以上にレヴエルが高い。
しかし、問題は卵の存在である。ツユにこの卵を溶くことにより、先程指摘した喉越しの惡さは改善されるのだが、肝心の蕎麦の香りがマスキングされてしまうのは痛し痒しといったところだ。
注文時に卵とネギを入れてもいいか訊ねてくれるので、香りの邪魔になるなら卵を拔いて貰うという選択枝も無いではないが、あのもっさりとした食感が最後まで続くとなるとそれも少々躊躇わるる。ここは椀をもうひとつ貰ってひとつはツユのみ(或いはそれにネギを入れる)とし、もうひとつの方は卵を溶いて双方を比較しつつ食すのが妥當な線かも知れない。

追っかけ皿そば820円

ゴワゴワした太打ち


冷たい方の「追っかけ皿そば」は一転して出石風皿蕎麦となる。こちらは水で締められた分ゴワつきが強く、喉越しも今ひとつである。(そもそも出石の皿蕎麦に喉越しの良さなんぞ最初から存在しないのであるからそれを求むる方が無理だとも言えるのだが)
香りもさして立っている訳ではないので、まあ熱盛り一品だけではちよっとなあ・・・と感ぢらるる方が目先を変えるのに食されればそれでよかろう。

純粹な蕎麦を探求さるる方には到底オススメ出來ないが、タマ〜に食べる変化球としてはなかなか出來が良い。北山に住む私が「なからぎ」「じん六」「かね井」「小川」「にこら」をパスしてまで「太郎敦盛」を訪れる機會はそうそうないであろうが、実は私はこういった味の方向性も結構好きだったりする。

主なメニュー:敦盛そば一斤/一斤半各820円、二斤970円、追っかけ皿そば820円(追加1皿100円)、敦盛金箔蕎麦1800円
酒:銘柄不詳

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