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「虚無蕎望なかじん」
(こむそぼうなかじん)
古川橋商店街の中にぽつんと存在する

MEMO

店主;中村一臣氏
(店名の「なかじん」とは店主の名前の
「中」と「臣」を取ったもの)
評価 ★★★★
住所 京都府京都市東山区東山三条一筋東下ル
古川町546 古川町商店街内
Tel.

075-525-0235(ほぼ完全予約制)

最寄り駅

地下鉄東西線東山駅より南下徒歩2分

アクセス 東大路「東山三条」交差点一筋東の
古川町商店街を南下徒歩2分東側
営業時間

12時〜14時半、18時〜20時半
(いずれもL.O. 予約優先)
水曜、第三火曜休
(他の火曜は昼のみの営業、ただし火曜が
 祝祭日の場合は昼・夜とも営業)

席数

14席(カウンターのみ・店内禁煙)

駐車場 無し
最終訪問

2004.06.26(初囘訪問2000.11.24)

ホームペーヂあり
東大路の一筋東、古川町商店街という何ともいい雰囲氣の商店街の中に、ひっそりとこの店は、ある。
ざわついた商店街の中というのはこの手のこだわり手打ち蕎麦屋を開くのにあまり向いている場所とも思えないのだが、店内に一歩入るとシンプルな落着いた空間が待っている。
カウンタ14席のみの店には何と、窓が無い。その上照明が暗い目なので、昼でも夜でも同ぢ環境で食べることが出來るのではあるが、私の樣に陽のあるうちに酒を飮む背徳感をこよなく愛する人間にとつてはいささか物足りない感もある。

・・・と言いつつも、店内に陽が入ろうが入るまいが先づは酒、にかわりはなし。きりりと辛い久寿玉純米には蕎麦味噌が付くが、此が白味噌である所はそれが京都の味である故か。

品書きは昼と夜で違っていて、昼間は一品物も注文可能である。しかし、だからといってわざわざ予約してまでこの店に來て、蕎麦だけすすって歸るというのではあまりにも淋しすぎるではないか。「お昼のおきまり」という廉価版もあるが、ここはそば粥、粗碾きそば、そばがき、せいろと蕎麦系の四品を楽しめる「蕎麦三昧」(小2100円、中2625円、大3150円)を注文して頂きたい。勿論、昼間でも飮み助の爲には氣の利いたアテが何品か用意されているので安心して腰を落ち着け飮むがよろしい。

一方、夜の品書きは「蕎麦点心」というプリフイクスのコースのみとなつている。雪3900円、月4400円、花4900円と三種類あるが、蕎麦とそばがきの量が違うだけでその内容はそば粥、粗碾きそば、そばがき、せいろ、デザート(突き出しに變更可)の他に夲日の品書きより前菜と主菜を一品ずつチヨイス出來る仕組みだ。この前菜と主菜がもう酒飮みにはこたえられない内容(^-,^)となつてをり、それぞれ一品ずつしか選べないなんて殺生な!!と思うのだが心配御無用、前菜から二品、或いは主菜から二品選んでも構わないし、また追加料金がかかるが二品だけでなく、何品追加注文してもオーケイである。

先程、昼間でも「蕎麦三昧」を注文した方がよいと書いたのは、此の店の「そばがき」を是非とも食して頂きたいが故である。その舌触りは例えて言うと麻布のようなさらりとした荒挽きの食感で、しかしながら適切な空氣含有量によるふわりとした柔らかさも持ち合わせており、この兩者の調和が見亊に取られていている出來の良さは全国でもベスト1、2に推すことが出來る。
初訪時の2000年11月、品書きの表記が「蕎麦掻き」であったのに現在は「そばがき」に変更されているのは、それを読めない関西人の客が多かったのであろうか?(笑)

以前は「石うす吟びき」という冠詞がつけられていた「せいろ」は香り強く、10割なのにブツ切れにもならづ喉越しも良い。少々打ち方が柔らかめなのだがそれをものともせぬいい味を出している。初訪時のメモを紐解くと、「関西圈でのこの感動はろあん松田以来だ」と評していた。
そして、そのせいろ以上の香りが立つのが「(手臼)粗碾きそば」である。蕎麦は「挽きたて、打ちたて、茹でたて」を以て良しとする「三たて」の常識を敢えて破り、打ってから何と半日も「熟成」させて出されるこの蕎麦は、挽きぐるみなので喉越しはさほど望めないが、此以上の香り、食感のものは他所ではまずなかなか出会えるものではない。

「そば読本」「新そば読本」著者、フードエッセイストの宮下裕史氏は「obra」2002年2月号誌上で黒姫高原の「ふじおか」を“草へと昇華されるそば”、茨城県久慈郡の「慈久庵」を“土へと回帰するそば”と呼んだ。京都で言えば“草”の蕎麦の代表が「じん六」、そして“土”の蕎麦の最右翼がここ「なかじん」となることであろう。
「なかじん」の蕎麦について、これは蕎麦の香りではなくただの醗酵臭だ、と述べたペーヂを見た記憶がある。確かにこの香りは蕎麦夲來のものではなく、蕎麦の純粹な清冽さを求むる向きには邪道と評されても致し方あるまい。しかし、その香りも蕎麦自体から産み出されたものであるということはまごうことなき亊實であり、季節による香りの劣化が少ない“土”の蕎麦の方が“草”に較べて遙かに安定していることもまた、確かなのである。

惜しむらくは関西圈の蕎麦屋の常で蕎麦に対してツユが格段に落ちることだ。以前より大分改善されたとはいえ、薄いツユはダシこそ効いているものの味醂のせいか甘めで辛さも足りず、到底ここの力強い“土”の蕎麦を支え切れるだけの力は持たない。初訪時などはあまりにも酷い出來で、こんなツユが最初に出てきた時はどんな蕎麦が出てくるのかとても不安だったが結局、蕎麦が美味かったので殆どツユに浸けずに食べてしまった。
この店でも荒挽き蕎麦には塩が添えられる。しかし「ろあん松田」の項でも述べた通り私は蕎麦に塩だけをつけて食する方法を良しとはしないのでやはりツユが弱いと評価を厳しくせざるを得ない。
画竜点睛を欠く、とはまさにこのこと、蕎麦掻き、蕎麦ともに關西圈ではトップレベルにあるのに☆☆☆☆☆の評価を与えられないのはひとえにこのツユのみの問題なのだ。
種ものも「鴨汁そば」のダシなども実に良い味なのに、勿体無い限りである。

ご主人の中村一臣さんが上野藪そばの出身、と聞いて驚いた。どう考えてもあそこの蕎麦と通じるものが全く無いではないか。まあ上野の後にも他も修行に回ったそうだから、一度ゆっくりとそこいらの話も聞いてみたいものだ。
(2001年記亊、2004.10.18改編)


食べものをつくる
美味いものをつくる
もともとあたり前の事なのに
なかなか できない。

土と 風と 水と
大地の恵み
自然からの 大切な
贈りものだから

手間はかかるけど
大切に 大切に
手づくりの やさしさを
大事にしていこうと想う。

「虚無蕎望なかじん」名刺に刷られた言葉である。

主なメニュー:せいろ1050円、粗碾きそば(枚数限定のため一人一枚まで)1260円、そばがき630円、焼き岩のり420円、ぬか漬け525円、琉球豆腐525円、イタリア豆腐840円、そば屋の焼きとり840円、地鶏の粗塩焼き945円、地鶏の天ぷら840円、そばの実アイスクリーム400円、そば葛餅(きな粉又はぜんざい)600円、酒かすのアイスクリーム400円
お昼のメニウ;蕎麦三昧小2100円、中2625円、大3150円
       お昼のおきまり雪1470円、月2205円、花2625円
夜のメニウ ;蕎麦点心雪3900円、月4400円、花4900円
酒:久寿玉、天恩(飛騨高山)各400円 、旭(伏見 月の桂)400円、祝(伏見 月の桂)500円 、歓びの泉(岡山倉敷)500円 、常きげん(石川加賀)500円、浪の音(滋賀堅田)650円 (以上冷酒、グラス一杯分の値段) 梅錦(愛媛川之江)600円(以上熱燗のみ、一合分の値段)
ビール:ヱビスビール小瓶480円、中瓶630円、ビットブルガー700円 (ピルスナービール)、ケストリッツァー(黒ビール)700円
ノンアルコールビール:580円
グラスワイン:ローゼン(白)、フーバー(白)各600円
(2004.10.17H.P.確認)
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