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「手打ち蕎麦 かね井」
(てうちそば かねい)
お店は紫野の風情ある町家
評価 ★★★★★
住所 京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
(鞍馬口智恵光院角)
Tel

075-441-8283

最寄り駅

地下鉄烏丸線鞍馬口駅徒歩20分

アクセス 船岡山公園南東、鞍馬口通沿い
(大徳寺より南徒歩5分)
営業時間

11時半頃〜14時半、17時〜19時 
月休(祝日の場合は営業)

席数

座敷、板の間計16席(店内禁煙)

駐車場 無し
最終訪問

2003.12.05(初囘訪問2002.01.05)

紫野の一角にある、築80年以上という町家を改裝して99年12月にオープンした蕎麦屋。
広い土間と梁が剥き出しの天井が特徴的で照明は暗め、落ち着いた雰囲氣だ。夏は奥の障子が開け放たれ、濡れ縁と竹垣が涼しげな空気をかもし出す。
席についてもなかなか注文を取りに來ないことに一瞬、忘れ去られたのではないかという疑念が浮かぶかも知れないが焦ってはいけない。氣長に待つのが「かね井」流なのだ。
しばし待っていれば蕎麦茶とともに揚げそばが出てくるので、これでしばしの間、飢えをしのいでもらいたい。

さて、先づは酒である。品書きにある酒は一般的には名前が通っていないが個性のあるものばかり。どれがいいとかいうことではなく好みで選べばよかろうが、私がただ一種類選べと言われたら、琵琶乃長寿を推す。生の荒々しさがさほどではなく、吟醸香が豊かで飮みやすいので蕎麦とも合うと思うし、酒をあまり飮まれない方にも歡迎されることだろう。無論、飮みすけの方々は限定酒ほか個性派揃いの酒を片っ端から試して頂くがよい。
酒のアテは品數こそ大してないが、基夲を押さえてあってどれもしっかりした良い出來である。筆頭は白味噌ベースの燒みそだろうか、少々甘さが強いのだが焦がし具合が絶妙、香ばしくて美味い。
次に淡い味付けのだし卷きはふわりと柔らかく上品に燒き上げられており、辛味大根が添えられる。混雜時には食べることは出來ないのが殘念な逸品だ。
そして舌の上でとろりと溶けるそばがきは香り高く、もっちり感が少な目で独特の食感でこれまた美味い。アテとしてはこの三品で十分だろうが更に板わさが用意され(未食)、鴨拔きも頼める(後述)。

酒も進んだところで蕎麦に移ろう。「かね井」を語る上で外せないこと、それはツユの出來の良さである。和三盆を奢ったというかえしがとてもいい出來で、関西人向けに塩辛さこそ控え目にしてはあるがコクがあり、しっかりと蕎麦を支えている。私が関西圈で出逢った中では最高レヴエルのツユだ。
極細のざるそばは喉越し良く香り立ち、文句の付けどころがない。そして荒挽きそばの方は半透明で美しく、同じ京都の「なかじん」程ではないが香りも鮮烈、その分少々ブツ切れ氣味で喉越しは望むべくもないが、野趣あふれる中にも繊細な味わいを殘した逸品だ。蕎麦湯もとろり、たゆたゆしていて絶品。しかしただひとつ殘念なのは、これだけいいツユを持ちながら、荒挽きそばに塩が添えられることだ。ここの塩は少々いがらっぽさが殘り、塩単体としてもまあまあ程度の出來でしかないので蕎麦の良さに集中出來ない。そんな姑息な手段を使わずとも、蕎麦自体の味を樂しみたければツユにも塩にもつけず、そのままの蕎麦を食せばよい。「かね井」の蕎麦は何もつけずとも十二分に味を堪能させられるだけの力を持っている。

種物ではやはり鴨なんばであろう。ダシは京都風か、甘くてやや薄いのだが、たった一つだけ入っている鴨つくねがこれまた美味い!!葱の燒き方も丁度良く、細部まで手拔きが無いのが買える。ただし蕎麦が極細なのでのびやすく、種物としては少々不出來であるかも知れない。餘談ではあるが酒の肴に「鴨拔き」を頼んでみたら、注文を取りに來た若い女の子に「拔き」の意味を聞き返されることなくすんなりと通ったのには感動した。東京では別に何でもないことかも知れないが、関西圈で「鴨拔き」を頼んで説明無しに濟んだのは実はここが初めてなのだ。

さあ、ここまで食べたら普通の方なら結構お腹一杯になっている筈。しかし!!この「かね井」では絶對外してはならないメニユーがあるのだ!!・・・それはそばぜんざいである。お腹一杯で今更甘いものなんか入らないよ、と言われる方もあるかも知れないが、一度お試しあれ。先程蕎麦ツユには和三盆を使用していると書いたが、当然の樣にこのそばぜんざいにもふんだんに使われており、その爲ぜんぜんくどくなく、さらりとした清涼感のある甘さがとても心地良いのだ。餅のかわりに入っているそばがきも、単品のとき以上にとろとろになってぜんざいと一体化して美味いし、上にかけられている煎った蕎麦の実の香ばしさとのハーモニーときたら!!!!!それだけでも何ら文句無いのにその上、桜茶までついてくるのだから感涙モノ。これ以上何を望んだらいいのだろうか?!

ただし、一点御注意頂きたい。これだけの店、休日の昼は異樣な混雜を見せており30分以上の待ちなどはざらである。店主の兼井俊生氏ひとりでほぼ全てをまかなっているのだから仕方のないことだが、だし卷きやそばぜんざいは休日には作れないし、特に限定とは記されていないが荒挽きそばなどはすぐに売切れてしまう。
そのあたりを十分ご承知の上で平日か、或いは休日でも時間に餘裕を持って訪れて頂くかすれば素晴らしい蕎麦の世界を堪能出來ることであろう。(2003.07)

追記
「かね井」のすぐ東に、京わらびもちの超有名店「茶洛(さらく)」がある。とんねるずの「食わず嫌い…」でお土産No.1にも輝いた実績を持つ此のお店のわらびもち、早いときは13〜14時頃には売り切れてしまうので、「かね井」に並んでいる間に買いにゆくがよかろう。(2003.09.21)
その後も何度かT.V.放映された影響で、昼前に売切れることもある樣だ。(2003.12.05)

追記2
夏場に食した冷やしぜんざいがくどいザラメ調の甘さだったので、冷たいのに合わせて甘さを強くしているのかな、と思っていたのだが今囘久々に食した温かい方のそばぜんざいも、以前と比較してかなりくどい甘さになってしまっていた。甘いもん屋の味ならそれでもよかろうが、蕎麦の最後を締めるものとしてはいささか下品さが過ぎる。グラニユー糖の甘さだそうだがさらりとした上品な甘さが素晴らしかっただけに、残念至極である。(2003.12.05)


主なメニュー:ざるそば750円、荒挽きそば900円、おろしそば900円、鴨ざるそば1400円、そばがき700円、そばぜんざい800円、だし卷き600円、燒みそ400円他
酒:美田(山廃純米)700円、琵琶乃長寿(純吟・生)900円、笑(えみ・純米中口)700円、独楽蔵(燗純米)800円、蕎麦焼酎蕎麦湯割り700円他 限定酒あり

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