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「ろあん松田」(ろあんまつだ)
周囲にはなにもない。夲当になにもない。
評価 ★★★★★
住所 兵庫県篠山市丸山154
Tel

0795-52-7755

最寄り駅

JR福知山線篠山口駅より車で20分

アクセス 舞鶴自動車道丹南篠山口から車で20分
営業時間

12時〜14時、17時〜18時(各L.O.)
月、火曜休

席数

4室(和室3+洋室1、店内禁煙)

駐車場 數台分
最終訪問

2003.09.14(初囘訪問1997年冬

ろあん松田は辺鄙な場所にある。言い方は惡いがそれ以外の表現が見つからない。初めてこの篠山の店を訪れたとき、カーナビに住所を入力して行ったのだが篠山市街を遠く離れ、だんだん民家が疎らになって來て、そしてそれすらも途切れてしまった時は本当に道を間違えたかと思ったものだ。こんな場所に店を構えるとはやっぱり水の爲ですかと訊いてみると水はまた別のもっと遠い所で汲んでくるという。「土地が安かったからです」と店主の松田文武さんは謙遜するが、他に何も雜音の入らないこの環境はやはりここまで来ないと手に入らなかったのではなかろうか。

私が此処に行くとまず注文するのが「からすみ」だ。私は蕎麦の前にナマグサ物を食べるのをよしとしないのだがこれは別格。卵黄で和えられたそれは、舌触りのザラつきも少なく酒が進む。酒というとこれまた王禄、磯自慢、松の司等、好きな人間にはこたえられないものが用意されている。そしてこれまた同時に注文する、定番通りしゃもじに塗られた「燒きみそ」もこれまた酒が進んで困る。

蕎麦の注文は個別にしても良いのだが、初めての方には「蕎麦ひとそろえ」をお薦めする。「ひとそろえ」といっても單に品書きの蕎麦が全種類出てくるのではない。ある日のラインアップでは「そばがき」「盛り」「荒挽き」に続き「蕎麦の実入りそばがきの揚げ物」、梅の香りが爽やかな「湯そば」という品書きには無い二品が出て来た。そして締めは山かけ蕎麦かおろし蕎麦が選べる。最初に出てくる「野菜炊き合わせ」と最後の「甘味」は蕎麦のみでも出てくるが、わざわざここまで出向いて來たのならば、挽き方の違う蕎麦を次々と味わうことの出来るこれを逃すテはない。
で、肝心の味の方であるがまずは「そばがき」。以前、ここでは阿佐ヶ谷は「慈久庵」風のさらりとした麻布の樣な舌触りのものを供していたのだが最近、ふうわりと軽い食感のものにかわった。理由を訊ねると「こちらの方がうちのイメージかな、と思って」とのこと。確かにこのゆったりとした空間でくつろぐ際にはこちらの方が合っているかも知れない。ここまで完成されていて、その上成長し続けている亊は賞賛に値する。私はこれもあてにして酒を飮むので、いつもひとそろえの最初に作って頂くのだが、実際はまた別の順番で供されるのだろう。
そして「盛り」「荒挽き」と続く。生粉打ちなので喉越しはそれなりだがやはり香りは立っていて、「盛り」は滑らかな舌触りを、見た目にもざらりとした「荒挽き」は鮮烈さをそれぞれ楽しめる。しかし、何と言っても特筆すべきはそのツユである。関西圈の店は蕎麦は良くともおしなべてツユが弱いのだがここのは唯一ダシ、辛さ、甘さともに私を満足させる出来映えである。それでいて辛いツユには弱い関西人にも食べられる範囲におさめているのが素晴らしい。
ただ一つだけ言わせて貰うと個人的には「荒挽き」に添えられる塩には疑問が残る。最近、荒挽き蕎麦に塩を添えて出す店が多いのだがこれはいかがなものか。あくまで「お好みで」と供されるので一口分は試してみるがやはり何もつけない方が美味い。口が寂しければ合間にツユを少し飮むがよかろう。塩を用いるならもう少し角の取れたものが合うのではないだろうか。
そして梅味の湯に入った「湯そば」、これは蕎麦二枚で気が張っていたのを落ち着かせてくれる。時期によっては「山の北斜面で採れた粒の小さい蕎麦」を使った弾力性のある齒ごたえを楽しめる蕎麦も出てきた亊がある。
最後は山かけ蕎麦か「おろし蕎麦」が選べる。また、おろしは辛味大根と暮坪カブのどちらかを選ぶ。私は最近巷に出回っている辛味大根ではなく、どことなく田舎臭い、それでいてしっかりと薬味としての能力を祕めた暮坪カブを食すことを定番としている。

店主は以前、氷上郡氷上町で古い茅葺きの農家を借りて、そこで営業していた。契約が切れてそこを出た後、暫くはワンボックスカーに蕎麦打ち道具一式を積んで呼ばれた先で蕎麦を打つ、という出張蕎麦打ちをしていたという。その後、仮店舗の三宮のマンションを経て現在の所に落ち着いた。私がこの店に初めて行ったのは三宮のマンションの時、感動して何回か通ったものだ。

神戸市内からも1時間以上かかるこのロケーションはネックなのだがそれでもその気になればいつでもレヴェルの高いこの蕎麦を味わえることに感謝しなければいけないのかも知れない。いつでも、とは言っても4部屋しかない店で客が一人でも相席無し、昼2回転夜1回転のこの店では予約は必須、なのだけど。しかしそのお陰でまるまる2時間、ゆっくり酒と蕎麦を味わいくつろぐことが出來るのだから電話一夲の手間を惜しむことはない。

主なメニュー:盛り1400円、荒挽き1400円、おろし蕎麦1500円、山かけ蕎麦1600円、そばがき800円、蕎麦ひとそろえ4000円、からすみ1000円、板わさ900円、とろろ芋500円、焼きみそ400円、焼のり300円
酒:王禄(島根)、磯自慢(靜岡)、松の司(滋賀)他

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