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蕎麦屋に限らず觀光地の飯屋というものは志の低い店が多い。たとえどんなにマズくとも、一旦雜誌やガイドブツクに載つてしまえばあとは放つておいても客が集まり、旅先で財布の紐が緩んでいるカモ共は少々のご祝儀価格でも氣がねなく支払って行ってくれる。逆にどんなに良心的な仕亊をしていようとそうそう頻繁にリピートしてくれる常連は出來にくいので、志を高く持てと言う方が無理な注文なのかも知れないが。
以前、私が湯布院で訪れた蕎麦屋もそうだった。自家製粉までしていた樣だがひと言で言えば井の中の蛙、独りよがりの香り立たないただ硬いだけの蕎麦を「どうだ、うまいだろ、うまいだろ」とばかりに食べさせられてげんなりした記憶がある。
そんな「觀光地そば」にいい印象を持たない私ではあるが、情報が入るとやはり試してみたくなるのが人情というもの。湯布院宿泊の機會に立ち寄つてみた。
全21席(くらい)の店内は落ち着いていて、なかなかいい雰囲氣である。
例によつて先づは酒。訪問時には「梅錦」と「千羽鶴」の二種類しか無かつたのだが、地元久住の地酒「千羽鶴」吟醸を選ぶ。甘く爽やかだが吟醸香が弱く、華やかさにはやや欠ける。
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そばがき。ねつとりして腹持ちがよい
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左が薄口(だつたかな?)
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アテには「そばがき」(冩眞上左)を注文。季節のせいもあるのか香りが弱く味も淡泊だったが舌触りは滑らか、ねっとりしていて食感は良い。玉子焼きも是非試してみたかったのだが、宿の朝食がかなりボリウムがあつたので腹に餘裕がなく涙を呑んで斷念する。
そのかわりと言っては何だが、蕎麦は「生粉打ち」、「二・八」の兩方を試す。兩者の違ひは冩眞上ではわかりにくひが、目で見て較べると生粉打ちの方がやや白っぽく、すすると上顎にひっつく感があって喉越しが今ひとつ良くない。今囘はどちらとも香りがあまり立たなかったのだが新蕎麦の時期ならもう少しいい香りなのかも知れない。
ツユは濃口と薄口の二種類が供さるるのだがはっきり言って薄口は必要無い。まあホンモノの蕎麦ツユを知らない觀光客には濃いツユに文句をつける輩もいないではないだろうからただ置いてあるだけ、と考えて濃口のみ味わえばよろしい。その濃口であるが、甘さが前面に出過ぎていて少々くどいものの、九州にしては珍しくかえしがしっかりとしていてなかなか好ましい味である。
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左が「生粉打ち」右が「二・八」。おのおの冩眞をクリツクすると大きく表示されます。
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時期的なものもあってか蕎麦の香りこそ立たなかったが、「蕎麦屋」としての仕亊をきっちりとやろうとしている姿勢は好ましい。蕎麦湯がとても薄かったのが殘念なので、次囘訪問時には改善されていることを期待する。
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主なメニュー:ざるそば(生粉打ち)900円、ざるそば(二・八)700円、おろしそば800円、かけそば700円、そばがき700円、玉子焼き600円、そばぜんざい700円、丼物やそば実粥等のセット物あり
酒:千羽鶴(吟醸)1200円、梅錦(本醸造)900円
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