不当判決に抗議する弁護団声明 98-07-31
弁護団声明
 麻布米軍ヘリ基地住民訴訟7・31判決について

                            1998・7・31 麻布米軍ヘリ基地住民訴訟弁護団

1.本日1時15分、東京地方裁判所民事第2部(富越和厚裁判長)において、「麻布米軍ヘリ基地住民訴訟」の判決がありました。この訴訟は、1996年9月6日、東京都知事青島幸男を被告として提訴されたものですが、結論から言うと、判決は「一部却下、一部棄却」という不当なものでした。

2.「麻布米軍ヘリ基地」(正式名称「赤坂プレスセンター」、通称「ハーディ・バラックス」)は、23区内唯一の米軍基地として、港区六本木のど真ん中に、現在も君臨しています。基地に隣接する東大の研究所労紐を中心に、30年以上に亘って基地撤去運動が続けてられてきましたが、1993年3月、今度は、米軍による青山公園一部「不法占拠問題」という新たな問題が発生し、今回の住民訴訟にまで発展したのです。
 ことの起こりは、基地を通過するかたちで環状3号線トンネル工事の計画がもちあがったことに始まります。工事期間中、基地の一部がトンネル工事で使用不可能となるため、基地の一部を移転する必要が生じました。そこで、米軍と東京都防衛施設局、東京都の三者は、東京都の管理下にある青山公園の一部を「仮設ヘリ基地」とする「三者協定」を締結しました。この「三者協定」によれば、仮設部分は工事終了後、原状回復(すなわち、公園への復旧)することとされていました。1996年3月、トンネル工事は完了しました。しかし、「三者協定」に反し、米軍は仮設基地部分を東京都に返還しないばかりか、「(基地が拡張されて)騒音が減って住民にとっても良いだろう」などと言って、まったく返還しようとしません。
  このような米軍の姿勢に都も及び腰で、東京都知事が先頭に立ち、米軍に協定を守らせ、公園の一部を返還せよと訴えることはしませんでした。おりしも当時、同じ基地問題で沖縄の太田知事が政府、アメリカ相手に強い姿勢で望んでいたことから、同じ地方自治体の首長として、なぜこんなに弱腰なのかという批判が相次ぎました。
  そこで、本訴訟の原告となる都民18名は、東京都知事を相手方として、「きちんとアメリカ軍に青山公園を返還するよう要求しないのは違法だ」、「損害賠償請求をしないことは違法だ」という趣旨で、1996年6月、住民監査請求を提起し、これが却下されたことから、同年9月6日、本訴訟を提起したのです。

3.裁判において被告は、一貫して「東京都には米軍や防衛施設局に土地を返せという権限ばない」と主張し、「三者協定」を提出することさえ拒みました。ところが、裁判外において都は、「返還してくれるよう、防衛施設局を通じて米軍に打診している」、「思いは皆さん(原告ら)と同じだ」と言い続けています。
  裁判途中でやっと「三者協定」が提出されましたが、そこには、道路工事完了後、原状回復するとの記載が明確に存在しました(判決文末尾添付「三者協定」11項及ぴ14項)。やはり、トンネル工事終了後、米軍並びに防衛施設局は、東京都に対し、青山公園の一部を返還しなければならないことは「自明の理」なのです。

4.さて、本判決の内容ですが、判断は原告の2つの請求に対してそれぞれなされています。

@まず、「被告が米国及ぴ国に対して本件土地の返還請求措置をとらないことが財産管理を怠る事実に該当して違法か否か」という点については、「そもそも原告らの主張する内容の返還請求権は、地方自治法237条1項にいう『財産』にはあたらない。したがって、主張の当否を判断するまでもない」という形式的な理由で「却下」としました。

A次に、「被告が米国及び国に対して本件土地の返還債務の不履行に墓づく損害賠償請求を行使しないことが違法か否か」という点については、損害賠償請求をする前提として、そもそも都が米国及ぴ国に対して本件土地を返還請求権をもつか否かについて判断し、「東京防衛施設局長が都に対してどのような権限に基づいて」との理由で「棄却」しました。

5.判決は結局、「三者協定」文書の内容について実質的に踏み込むことなく、単純な権限論だけで結論を下されました。しかし、私たちの求めていたものは、「三者協定」に基づく返還請求権の有無であり、それは、判決文の末尾にも添付されている「三者協定」の内容に踏み込まずして、きちんとした判断は不可能のはずです。

 原告・弁護団は、本判決の不当性をここで明確に批判するとともに、本協定を締結した都知事の責任、そして何より約束を守らない米軍とそれに追随する日本政府の責任を問い続け、青山公園不法占拠部分のみならず基地全体が返還される日まで闘う決意であることを、ここに宣言します。