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目次

  1. 財務戦略がなぜ必要なのか
  2. 価値評価基準としてのキャッシュフロー
  3. 財務戦略の構成要素
  4. わが国企業の財務戦略の状況
  5. その他関連事項
  6. 結論
  7. 情報ソース

 

1.財務戦略がなぜ必要なのか

ガバナンスの項で見たとおり、営利企業の究極目的は株主価値増大であり、その他の目的は全てこれに従属します。(何度でも繰り返しますが、社会のルールに従い品格のある行動をとることは「目的」以前の基本前提です)。

株主から委託された資金は、借入で調達された資金と併せて事業に投下され、そこから生み出される利潤が、株主価値の増殖部分ということになります。この一連の資金の流れを司るのが財務機能です。

財務機能は次の2つの部分から構成されます。

組織が事業遂行の上で必要な資金を調達すること
調達された資金が利益を生む投資に投下されること

適切に財務機能が運営されないと、必要な資金がショートして破綻したり、投資利益が金利と逆ざやになりどんどん持ち出しがかさむといった株主価値の破壊につながります。

このような事態を回避すること、更にはより積極的に調達・運用の吟味を通じて株主価値を最大化/最適化することが財務戦略の使命です。

したがって財務戦略はガバナンスプロセスを支える重要な支柱ということができます。

 

2.価値評価基準としてのキャッシュフロー

財務戦略においてはキャッシュフローが意思決定のための価値評価基準として重要です。そもそも企業価値は将来のキャッシュフローによって決定されるもので、事業に投下された総資本の理論的市場価値です。この企業価値から負債を差し引いたものが株主価値です。したがってキャッシュフローは企業経営がフォーカスすべき株主価値に直接リンクする価値評価指標です。

時間要素の考慮

現在の1万円と2年後の1万円とでどちらを選ぶか、と聞かれれば大抵の人は現在の1万円を選びます。現在の1万円はもし5%で運用したなら2年後には1万1千円になるからです。

このような時間要素を考慮しながら、どのプロジェクトに資金を投入するかを検討し、それによって現時点で株主価値を創出することが財務の主要機能といえます。

そして異なるキャッシュフローを生み出す複数プロジェクトを評価し、選択するための手法が割引現在価値法です。

不確実性についてはこれを調整し、リスク調整後割引率を使います。

 

キャッシュフロー見通しの作成

企業の行動計画の候補に上がっている各プロジェクトのいずれを選択すべきか判断するために、それぞれのキャッシュフロー見通しが作成されます。

キャッシュフローはアウトフローとインフローから成る
アウトフローは設備投資や運転資本投資等
インフローはEBITDA(税金・金利・減価償却前利益)マイナス税金で算定される
キャッシュフロー見通しの精度は予算意思決定の有効性を大きく左右する
設備更新→設備拡張→新製品投資→新事業投資、の順で見通しは難しくなる
見通し誤りがあることを予め織り込んだ上で、大きな失敗をしないようにすることが重要問題
成果に付随する事象を合理的に予測すること(競合の算入等)
プロジェクト予測内部で辻褄があっていること
誤った手法の適用を避ける
感応度分析は有用な手法
プロジェクト全体の収益性に各要因がどの程度の影響を与えうるか
重要な影響を与える要因に対してどのような統制手法を講じるか
予測に有用な情報をいかに整備するか
プロジェクトの初期評価はキャッシュフローに基づく
しかし非常にしばしばその後のプロジェクト評価は伝統的会計に従う
このため、当初見通しがどの程度誤っていたか、その原因はどこにあったか、どのように改善すればよいか、といった情報が整備されていない

 

3.財務戦略の構成要素

財務戦略の構成要素をここでは次の4項目に分けて見ていきます。

資金投下のガイドライン
運用マネジメント
調達マネジメント
IR

資金投下のガイドライン

株主価値最大化のために厳格な投資ガイドラインは不可欠です。

これは簡単に言えば、株主価値を破壊せずに増大させていくため、投資プロジェクトの利益率は、資本コスト(株主資本コストと借入コストの加重平均)を上回らなければならないということです。

資金コストの見積り

ガイドライン設定のために最初に考えなければならないのが、運用面すなわち全ての投資プロジェクトの評価基準である資本コストをどうやって算定すればよいか、ということです。

資金調達は株主資本と第三者からの借入である他人資本との2種類から構成されますので、資本コストも株主資本コストと借入コストの加重平均として算定されます。

借入コストは借入金利だから簡単かつ客観的に特定できます。
しかし株主資本コストは投資家の期待要素が入り込んでくるため、ちょっと複雑になります。

CAPM(Capital Asset Pricing Model)は株主資本コストを算定するための代表的モデルです。このモデルによれば株主資本コストは次のように表されます。

   R+β×(R−R)=株式コスト

β(ベータ)は株式市場全体の変動と特定の株式の変動との相関度合いを示す係数
Rはリスクフリーレート
Rは株式市場レート

株価変動と株式市場全体の変動との相関度合いを示すβは、その株式のリスクの度合いを示すものでもある。リスクの大きい(βの大きい)株式の株主資本コストは相対的に高くなります。

CAPMモデルは次の3層構造で株主資本コストが算定される、ということもできます。

リスクフリーレート
株式市場全体のレートがリスクフリーレートを上回る部分
特定企業の株式のβに基づく株式市場レートの調整部分

市場の効率性

CAPMモデルは市場の効率性を前提としていますが、実際には市場の効率性には限界があります。

わが国は、金融ビッグバンの推進等、効率的な市場へ近づきつつあるところですから、今後このモデルの適合性はますます高まってくるでしょう。

株主の視点

経営者はしばしば株主の視点を中心に置かない企業運営をします。これを回避するために、経営者の報酬体系に成果報酬的な要素を大幅に織り込むのが近年の米国でのトレンドです。

 

運用マネジメント

運用マネジメントは、計画、導入、監視とフィードバックの3段階より構成されます。

計画

計画段階で勘案すべき要因は次の通り。

企業目的との整合性を図る
短期的な資金繰りが合うようにする
製品ライフサイクル(新製品がどのタイミングで必要か)

ここで重要な政策変数は次の5つです。

コアビジネスの識別
将来ビジョンとPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)に基づき「本業」を識別する
どんな事業に従事するかによってリスクは異なり、したがってβが異なってくる
複数のコアビジネスを持つときは、それぞれにβを算定する
相関度の低い事業への多角化により事業ポートフォリオを広げるとき、リスクが下がり企業全体のβは低下する
ただしリスク分散だけが目的なら、企業が新事業に手を出すよりもむしろ投資家がやった方がうまくいく場合が多い(慣れない事業に手を出すリスクvs株の入れ替え)
したがって多角化は例えばシナジーの有無や事業ライフサイクルといった事業推進上の必要性に根拠付けられるべきである
流動性
流動性が高ければ、それだけリスクは低くなります。
レバレッジの度合い
レバレッジは負債と資本の比率のことです
レバレッジが高いと事業全体ではちょっとした収益のぶれが株主資本に大きな影響を与える結果となります(したがってリスクが高まります)
ROE=ROA+[ROA-i(1-T)]*(D/E)
ROE: 資本利益率
ROA: 資産利益率
i: 利子率
T: 税率
D: 負債
E: 資本 
内部成長か外部成長か
企業目的を実現するために必要な成長の源泉は、自らの利益の蓄積と、他企業のM&Aとの2通りがあります
外部成長は、時間を節約し、新事業をゼロから立ち上げるのに比較するとはるかに堅実であるが、なお不確定要素=リスクは高くなります
配当方針
内部的な利益蓄積による成長は、ROEが限界となり、配当方針によってこれが更に引き下げられます

これらの組み合わせが企業の将来見通しとリスク評価とを決定します。投資家のその企業に対する見方にももちろん影響を与え株価の重要な決定要因ともなります。

導入

行動への展開は次の3つより構成されます。

運転資本マネジメント
運転資本は流動資産から流動負債を差し引いたものです
運転資本に対する資金コストを抑制するため、流動資産及び流動負債の各項目は回転期間に十分に留意します
売掛金や棚卸資産の積み増しの意思決定については、それに対する資金コストを賄えるだけのベネフィットがあるかがポイントとなります
現預金や短期借入金の残高レベルは、事業がどの程度の流動性を必要性としているかを勘案して決定されます
資本予算
資本予算は企業の長期投資戦略実行計画です
これは次のステップから構成されます
有望プロジェクトの割り出し
各プロジェクトについてキャッシュフロー見通しを作成
プロジェクトの優先順位付け
リスク評価
脚きり基準設定
予算プロセス全体の統制
有望プロジェクトの発掘は極めて重要です。これがなければ後工程でいくら頑張ったところで財務戦略にできることには限界があります
優先順位付けには次のいくつかの手法が利用されますが、中でもIRR、NPV、PIが時間価値を考慮する点でより合理的です
回収期間法
会計利益率法(ROI)
内部利益率法(IRR)
正味現在価値法(NPV)
利益指数法(PI)
リスク評価
プロジェクトの収益性を評価する上で、キャッシュフロー見通しに対するリスク要因は十分に吟味してリスクプレミアムを上乗せします
プロジェクトが依存する要素の評価(景気動向、競合の動き、他)
法的リスクの評価
どれだけ正確にキャッシュフローを予測するかが、資本予算の、ひいては企業財務戦略の有効性を左右します
M&A
内部成長が行き詰まった時にM&Aが検討されます
一般に次の特徴をもつ会社はM&Aターゲットとして適切です
株主価値を継続的に創造していない(株式の時価と簿価との乖離が小さい)
リストラによって大きく収益性を伸ばせる
買収によって既存事業との間にシナジーを生み出す
M&A対象企業の評価は基本的にはプロジェクトベースの資本予算プロセスと多くの点で近似します
基本は対象企業のキャッシュフローを正確に見通すこと
慎重にリスク評価すること
ただし次の点はM&A特有の留意事項です
交渉を伴なうこと
同一企業の買収を巡って他社と競合することがある
ターゲットの経営者/従業員の反応
売り手側は不利益な情報(簿外負債の可能性等)の提供を極力避けるため、買い手側が利用できる情報に限りがある
M&Aプロセスは次のステップを踏みます
自社とターゲットとの適合性評価
ターゲット企業評価の最高限度額算定(限られた情報の枠内でキャッシュフロー、シナジー可能性、適切な割引率等を見積もる)
交渉し受入可能な買収価額に合意する

M&Aの状況

経済企画庁 大幅に増加しているM&A件数(2000年10月2日)
近年、M&A(合併、買収、営業譲渡、資本参加、出資拡大)件数は大幅に増加している。同じく増加傾向にあった80年代後半では日本企業による外国企業へのM&Aが大きく増加したのに対し、今回の増加局面ではリストラを背景とした日本企業同士のM&Aの大幅増に加え、これまで少なかった外国企業による日本企業へのM&Aが増加している。
会社分割制度の創設など、事業再構築を円滑に行うための法制度の整備も進められており、経営の合理化、競争力の強化を図るための手段としてM&Aを用いるケースは今後も増加していくものと考えられる。

監視とフィードバック

計画し、実行してそこで終わってしまっては、組織は貴重な学習機会を失い、変化する環境への対応に失敗します。計画したことが実際に期待通りに動いているか、そうでないとすれば一体何が原因なのか、これを究明した上で組織活動をチューンアップしていく学習プロセスが必要です。

まず適切な監視システムが必要です。

定期的に、各プロジェクト、各事業部、各チーム、各製品ごとの株主価値創造状況(キャッシュフロー他)を把握する

実績値と計画値との乖離について原因分析します。

キャッシュフロー見通しの甘さ
リスク評価の甘さ
統制手続の甘さ

その上で対応策を決定します。

株主価値を破壊しているセクションの継続的リストラ
キャッシュフロー見通し手法、リスク評価手法、統制手続の改善

 

調達マネジメント

運用マネジメントができたら、次は調達マネジメントです。

設備投資や運転資本投資に回されるキャッシュフローの各種調達手段への割当手法や、配当や自己株式消却が株主価値に影響を与えます。

第三者からの調達

信用状況にもよるが、借入には一定の条件が被せられることがあります
自己資本の最低限度額の維持
一定の財務比率の維持
設備投資支出への制限
担保提供
長期債務には様々な種類がありえます
固定金利、変動金利、ゼロ・クーポン
様々な期間
減債基金の有無
レバレッジをどうとるか
負債に関する方針
株主はいつでも手をひけるが、経営者はそういうわけにもいかないため、大抵の場合経営者は株主が望むよりも低い負債比率を選好する
資金の貸し手側は営業キャッシュフローで金利支払余力を生み出し、それができないときは資産売却によって資金捻出することを望む
企業の乗っ取り屋はターゲット企業の将来キャッシュフローに基づいて必要資金を決めジャンクボンドを含む資金調達の上で乗っ取りにかかる
これを避けるためにはターゲットの側で自らの手でリストラを進め、高株価を維持することが不可欠
財務戦略
財務部長は刻々と変化する市場の状況に対応し、財務機能を通して株主価値を向上する様々な施策を展開することができます
金利のヘッジ
社債の繰上げ償還
固定金利と変動金利のスワップ
迅速な判断と対応が極めて重要になってきています

株主からの調達

普通株式と優先株式とがあります。

優先株式は配当を優先的に受ける権利を付与された株式
普通株式は利益配当にも清算配当にも最終に残った部分についてのみ請求権を持つ

配当や自己株式消却

配当や自己株式消却は、企業の部分的清算としての性格を持ちます。いずれの手段をとるにせよ、株主価値を増大するか否かが現金支払をするかどうかの判断基準となります。

現金配当
よほど急成長していて、社外流出せずに投資に回すことで、より高い株価として株主還元できるというコンセンサスが得られる企業でない限り、通常はどこの企業でも現金配当を支払います。
金額は過去の配当実績と当期のEPSとで決定されます。
一貫した配当政策は経営者が事業環境について大きな変化はないという見解を持つことを示すシグナルです。
過去からの配当方針からの乖離は事業環境の変化を表明することであるから、市場の素早い反応が期待されます。
自己株式購入/償却
経営者が自社の株式が過小評価されていると考えるときに株主価値増加のために利用されます。
リストラ推進とレバレッジ拡大の手段としての利用されます。
現金配当よりも柔軟に利用できる手段です。

IR

IRとは企業の財務機能とコミュニケーション機能とを結合して行われる戦略的かつ全社的なマーケティング活動であり、投資家に対して企業の業績やその将来性に関する正確な姿を提供するものです。その活動は究極的に企業の資本コストを引き下げる効果をもちます。

IRは資本市場を究極のターゲットとしますが、具体的な相手方は次の人たちになります。

証券アナリスト
格付機関の審査官
機関投資家のアナリストやポートフォリオマネジャー
金融ジャーナリスト
個人投資家

働きかけるために利用するメディアは、

事業報告書、有価証券報告書
財務広告
アナリストミーティング
インフォメーションミーティング
株主総会
インターネットHP

IR活動において主要なポイントは、

企業の真の姿を資本市場に伝え資本コストを引き下げる、という目的を十分に認識する
事業戦略と整合する財務戦略を設計し、一貫性を持って投資家・アナリストに説明する
確実かつ適時なディスクロージャーを実施するとともに、その背景や影響・関連等も含めて分かり易く解説する
投資家の情報ニーズを的確に把握しこれに応えることを通じて効果的なコミュニケーションを展開する
資本市場に対するマーケティングである以上、ターゲットとなる投資家を絞ることが時として戦略上の有効性を高める

IR関連ニュース

「インターネットIRサイトの優秀企業43社」の発表について(大和インベスター・リレーションズ 2001.3.19)

 

4.わが国企業の財務戦略の状況

現在わが国ではガバナンスに対する意識の高まりに合わせ、株主価値にフォーカスした財務戦略も現在多くの企業で問題が認識され、あるいは対応が進行中の課題です。

問題となる点は次の通り。

適切な財務指標の欠落
ROEの低さ
株価に対する意識の低さ
IRの軽視

適切な財務指標の欠落

株主価値を組織全体に浸透させる上で不可欠なキャッシュフロー等の財務指標が運用・調達の意思決定やその監視のために活用されておらず、結果として財務戦略に十分な有効性を発揮できていません。

ROEやキャッシュフロー等が今後重視すべき指標として多くの企業で認識されてきています。

第14回企業白書 “個”の競争力向上による日本企業の再生 (1999年2月18日発表)第3章 経営者の評価と報酬 2.経営者こそ成果主義を

低ROE

株主資本利益率(ROE)は、株主資本がいくらの利益を生み出しているかを示すもので、株主価値増大を近似する指標です。企業に選択された投資プロジェクト全体が結果としてどれだけの利益率を上げたかがこの指標に集約されます。この指標が資本コストを下回るようだと、仮に利益を出していたとしても株主価値を破壊してしまった、ということになります。

デュポン公式はROEの構成要素を次の3つに分解します。

売上利益率
総資産回転率
財務レバレッジ

これらが相互作用しながらROEを決定し、さらには株価を決定するということです。

わが国では、ガバナンスの弱さと含み資産依存の経営が、経営全体の甘さにつながり、世界的に見て低いROE、つまりは株主価値の軽視という結果となっていると指摘されます。

これを改善するためには財務戦略の全体的な再点検が必要ですが、特に投資ガイドラインと運用マネジメントの見直しがキーになるでしょう。

第14回企業白書 “個”の競争力向上による日本企業の再生 (1999年2月18日発表)第2章 競争力を高めるための2つの経営改革 1.資本効率を重視した戦略的経営への転換

株価に対する意識

わが国においては一般に経営者の株価に対する意識が低い原因としては次の点が指摘されます。

株主から経営者の経営手腕があまり問われない状況
持合い株式によりサイレント株主で多数を固める
株式持合いでM&Aの脅威もあまり大きくない
経済成長の継続により結果としてそれなりの成果を生み出せた
生保等の機関投資家がサイレント株主でありつづけた
ストックオプションに制度的障害がありあまり活用されなかった
経営者の関心を高株価に惹きつける手段を欠いていた

この状況は近年になって大きく変ってきています。

株式持合い解消
低成長・マイナス成長
外国人投資家の参加
国内機関投資家の発言増加
ストックオプション関連の制度整備

したがって経営者の意識が今後ドラスティックに変化してくることが期待されます。

 

IR軽視

わが国では長らく間接金融中心でメインバンクとの情報共有で資金需要を賄える状況が続いてきました。1980年代以降の直接金融急拡大により、当然IRの重要性は飛躍的に高まってきています。

IR活動も今後大いに活発化してくると予想されています。

 

5.その他関連事項

各種財務指標の利点と欠点

 

利点

欠点

経常利益率/

(伝統的損益計算)

伝統的な財務データであるため入手が容易

会計上の利益をベースとする上、時間価値を考慮しない為、株主価値との相関が低い

したがって意思決定をミスリードしうる(「資産は良いもの」という先入観が意思決定を曇らせる/意思決定に関連しない夾雑物が損益計算に入り込む)

株主資本利益率(ROE)

伝統的な財務データであるため入手が容易

分子は会計上の利益で減価償却等の夾雑物が混入し分母の株式簿価は株式時価と大きく乖離する為、株価との相関は低い(60%)

一年間の利益が問題となるため重要な投資決定の後にはROEが下がってしまう

潜在的なリスクを考慮に入れない

資本コストが考慮されない

負債比率の増減によりROEが大きく変化してしまう

フリーキャッシュフロー(FCF)

株主価値の指標として適している

資本コストを考慮に入れる

会計基準の違いを捨象した比較が可能

計算が面倒(長期にわたるFCFの予測、資本コストの算定と割引計算)

金額表示であり、投下資本の効率を示さない

投下資本キャッシュフロー率(CFROI)

株主価値の指標として適している

株価との連動性が高い(90%)

資本コストを考慮に入れる

会計基準の違いを捨象した比較が可能

投下資本の運用効率を示す

計算が面倒(長期にわたるFCFの予測、資本コストの算定と割引計算)

平均的な経営者が理解するには難しすぎる

経済的付加価値(EVA)

株主価値増加分を示し、理解が容易

資本コストを考慮に入れる

会計基準の違いを捨象した比較が可能

計算が面倒(長期にわたるFCFの予測、資本コストの算定と割引計算)

金額表示であり、投下資本の効率を示さない

 

 

6.結論

大抵の意思決定は不確実性の条件下でなされ、しかも多くの意思決定は数年間に渡るキャッシュフローに関連します。

不確実性はポートフォリオによって回避できるものも一部ありますが、完全に消滅させることはできず、これがリスクプレミアムとして資本コストに組み込まれます。

キャッシュフローのタイミングは意思決定プロセスにとって重大事です。割引プロセスを十分に理解することが財務戦略の全貌を理解するのに不可欠です。

 

7.情報ソース

財務の考え方

経済同友会 第13回企業白書(提言部) 資本効率重視経営−日本企業再活性化のための提案−(1998年4月21日)
山形浩生 血も涙もない損得勘定だけの冷血ファイナンス屋養成講座
財務入門。品は下がるが解り易い。
野村證券 証券用語解説集
World Lecture Hall - Finance
ファイナンス関係のコースマテリアル
 

財務関連論文集

Ohio State's Virtual Finance Library
数々の受賞に輝く財務関連情報ライブラリー
Australian Journal of Management (AJM)
オーストラリアの経営関係の論文集
Financial Economics Network (FEN)
Social Science Research Network (SSRN),の一部門
FINWeb
経済、財務関係トピックのインターネットリソース
Journal of Finance
財務関係論文集

財務指標その他

三井生命 基調講演: 若杉敬明教授 『アメリカ企業とEVA経営』
Stern Stewart & Co.
元祖EVA

運用アドバイス

FP総研
FP総研は、生活者が、自らの判断で、望むライフスタイルを実現し、家族を守るために不可欠なグローバルな視点でのマネープランづくりとその運用が出来るように、公立中正な立場で、教育・啓蒙・アドバイスを行います。

各種財務関連団体

International Swaps and Derivatives Association (ISDA)
金融エンジニアリング・グループ
American Risk and Insurance Association (ARIA)
日本能率協会コンサルティング−売上・シェアだけを追う営業部隊はもういらない−設備・資材・部品企業のための キャッシュフロー直結型営業改革セミナー
株式・投資リンク

IR

日本インベスター・リレーションズ協議会
National Investor Relations Institute
1969年創立の全米IR協会
Investor Relations Society
英国のIR協会
International Investor Relations Federation (IIRF)
国際IR連盟
Canadian Investor Relations Institute
カナダIR協会
Institute of Investment Management
投資アナリストとファンドマネジャーの組織
National Association of Investors Corporation
米国の投資家団体
Securities Industry Association
米国証券業協会

実態調査

生命保険協会 株式価値向上に向けた取り組み状況等について(平成12年12月15日)
1.ROE の向上と公表:経営目標としてROE を重視する企業は多い(68.1%)ものの、ROE の目標値を設定・公表し ている企業は39.2%に留まっている。一方、投資家側では84.4%がROE を投資指標とし て重視しており、71.3%がROE の目標値の公表を望んでいる。 
2.コーポレートガバナンスの充実:企業のコーポレートガバナンスを充実させる方策として、「社外取締役の導入」を企業の 42.2%、投資家の83.6%が挙げている。その導入により期待される効果としては、企業は 「取締役会の議論活性化」、投資家は「監督機能の強化」を最上位に挙げている。
3.IR 活動に対する満足度:IR の専門部署もなく担当者もいない企業は一昨年度調査の19.2%から今年度 では4.8%まで減少し、IR 活動の体制整備は進んできている。しかしながら、投資家の97.5% は、企業のIR 活動の意識は高まっているが、十分な状況とは言えないと評価している。
RNS Survey Results - November 1999
英国では決算短信公表のためのメディアとして90%の企業がインターネットを選好する
株式会社 野村総合研究所「企業の経営課題に関するアンケート調査」
重要と思われる経営指標として、「売上」(41.5%)、「経常利益」(38.3%)よりも「キャッシュフロー」(50.2%)や「株主資本利益率(ROE)」(48.3%)が上位にあげられている

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最終更新日 : 2007/02/02