人事戦略−将来組織イメージ

 

上へ
人事戦略−将来組織イメージ
人事戦略−要点
人事戦略−問題点

3.将来の組織と個人のイメージ

ここでは将来あるべき組織と個人のイメージはどんなものかについてハーバード大学のジョンPコッター教授のLeading Change をベースにして考えてみます。

20世紀型組織と21世紀型組織
21世紀型組織における個人のあり方

 

(1)20世紀型組織と21世紀型組織

これからの企業にとって環境への適応能力が重要であることについて異論はそうないでしょう。それでは環境適応能力とは具体的にどのような能力でしょうか。

計画策定、予算編成、組織機構作り、人員張りつけといった管理型ではなく、将来像を示したうえで権限委譲し従業員一人一人の自発性を引き出すリーダーシップ型経営スタイル
→上級経営者のリーダーシップ、権限委譲、非官僚的組織
従業員がどんどん新しいことに挑戦し、うまくいきそうな種子を見つけ出す
→上級経営者のリーダーシップ、リスクの寛容
従業員一人一人が危機意識を持ち、自発的に触角を社外/社内に張り巡らし、組織に影響を与えうる潜在的要因を見つけ次第敏速に組織行動を調整する
→上級経営者のリーダーシップ、外向きの意識、権限委譲、迅速な意思決定、情報共有、非官僚的組織・少ないルール
組織内の監視システムを通じて異常事項が即座に摘出される
→精緻な実績情報システム
ルール/手続と投入による統制からビジョン共有と成果による統制に移行し、ゴールへ焦点を当てた経営を実現しかつ組織階層(つまりはコスト)を削減する
→上級経営者のリーダーシップ、精緻な実績情報システム、外向きの関心、フラット組織
従業員が付加価値を生み出さない社内政治を気にせずに顧客向きの仕事に集中できる体制作り
→上級経営者のリーダーシップ、精緻な実績情報システム、オープンで率直

コッター教授はこのような分析を進め、将来あるべき組織の要件は、20世紀型から21世紀型へ次のように大きく変化すると指摘します。

 

20世紀型組織

21世紀型組織

構造

官僚的

非官僚的でより少ないルールと人員

階層の深化

より少ない階層(フラット組織)

上級経営者の管理が期待される

管理は下級経営者に委譲し、上級経営者はリーダーシップ発揮に専心する

社内の各部分の相互依存を複雑化させるような多数の方針と手続

顧客サービスに焦点を当てて相互依存は最低限ですますような方針と手続

システム

業績情報システムをあまり重視しない

多くの実績情報システムを活用し、特に顧客情報を注視する

業績データは執行役員のみに配布

実績データを広く配布する

経営者訓練や経営支援システムは上級経営者のみを対象とする

経営者訓練や経営支援システムは従業員の多くを対象とする

文化

従業員の関心は組織の内向き

従業員の関心は組織の外向き

中央集権的

権限委譲的

意思決定が遅い

迅速な意思決定

社内の力関係に注意を払い政治的な動きが重要な意味を持つ

オープンで率直

リスクは極力避ける

リスクに対してより寛容

要するに大勢の自律的経営者(リーダー)のコラボレーションによって形成されている組織というのが21世紀型組織のイメージです。

21世紀型組織は20世紀型組織よりもはるかに充実した職場でもあります。そこには何の意味があるかわからない仕事を指示されるままにやりつづけるような者は一人もいません。社員の一人一人は自発的に顧客のことを考え、より良いサービスをより低コストで作り上げることに日夜打ち込む。それが市場で評価され組織内でも評価される。価値あることを実現し「魂の喜び」に浸りながら、更に挑戦する意欲を掻き立てられる。挑戦と成功体験を通じて従業員の継続的成長が促進される。

これが社員の側からみた21世紀型組織のイメージです。

環境変化のスピードは加速の一途をたどっています。21世紀型組織体制が変化に対する適応力に優れるとしたなら、そのような変革を成し遂げた組織はそうでない組織に対して優位に立つことになります。

逆に、「20世紀型にとどまっていたのでは、いかなる大企業と言えどもかつて栄えた恐竜と同じ運命が待ち受けていることを覚悟しなければならない」(コッター教授)ということにもなります。

会議体の活性化を契機とした参画型経営体質の構築(NRI Research News 2001.11)
経済企画庁 政策効果分析レポート4 「IT 化が生産性に与える効果について」 −日本版ニューエコノミーの可能性を探る− (平成12 年10 月)
◆IT化を通じて組織面では本社のスリム化と組織の分権化、フラット化が進む
◆個人についてはまずコンピュータ操作の熟練が必須となる:その上で重要性が増す自律性とチームワークへの対応能力が問われるようになる
経済同友会 第14回企業白書 “個”の競争力向上による日本企業の再生 (1999年2月18日発表)第4章 個人の能力・活力を引き出し、企業競争力を高めるための新しい人事制度 1.競争力向上のための「企業と個人の新たな関係」
も大体同趣旨のことを言っています。
組織IQによるスピード経営の実現 NRI Research NEWS(Vol.68 November 1999)
シリコンバレーの企業であっても、 業績の良い企業と悪い企業とが存在する。スタンフォ ード大学のメンデルソン教授を中心とするグループ2は、 欧米ならびにアジア(日本を含む)の企業に対して調 査研究を行い、各社の組織のあり方次第で、業績に大 きな違いが出ることを明らかにした。そして、この組織 活性度を目に見える形にしたのが「組織IQ」という経営 指標である。
組織IQは5つの要素から 構成されている。すなわち(1)情報意識、(2)意思決定 構造、(3)内部知識発信、(4)組織フォーカス、(5)情報時代の事業ネットワーク、である。 
特集1 超高速企業へ 実践ネットワーク組織(日経情報ストラテジー 1999年2月)
情報ネットワークを駆使した「ネットワーク組織」に変身することによりスピード経営を実現する。その変身のためには、顧客起点の発想、実務チームへのエンパワメントを基本前提とした上で、経営ビジョンの明確化、事業ドメインの設定、情報システムの徹底活用、個人の尊重、の4点がキーになる。

(2)21世紀型組織における個人のあり方

それでは21世紀型組織において求められる個人はどのような要件を備えるものでしょうか。一言で言うと「リーダーシップを持った個人」です。組織の経営者から現場第一線に至るまでの各自がそれぞれにリーダーシップを発揮し、ここにコラボレーションと活力が生み出されます。

リーダーシップの本質

リーダーシップは自らの描くビジョンによって周囲の人間にも大きな影響を与え協力を引き出す力であり、その本質は明確な目的意識と使命感です。

目的意識
高いスタンダード、志
ビジョンを持つこと
使命感
あることを成し遂げたいというやむにやまれぬ衝動、ど根性
ビジョンに対するコミットメント

変化する環境の中で明確な目的意識を保持するには生涯学習が不可欠です。

リーダーシップと抵抗勢力。

fastcompany.com
日産リバイバルプラン
プラン内容、進捗報告、プランレビュー
さくら総研 組織を率いる人材の条件(2000年8月)
ワークス研究所 『Works臨時増刊 「次世代リーダー」はどこにいる?』 発掘・育成・選抜の組織メカニズムを探る(2000年4月)

生涯学習

リーダーシップ発揮のための最も重要な要件は、生涯学習を通じた不断の人間的成長です。

「変化の時代」にはかつて学んだことはどんどん陳腐化していきます。知識ストックの更新、改良、拡張のための投資(努力)が個人の生産性を伸ばしていく上でも不可欠です。これは何も特別なことを必要とするものではなく、日常のちょっとしたことの積み重ねが結果として大きな意味を持ってくるものです。

次の精神的習慣は生涯学習を大いにサポートします。

リスクへの挑戦: 快適さの境界線を踏み越えて自己の限界を不断に拡張していこうとする強い意思
謙虚な反省: 成功と失敗(特に後者)の正直な評価
広く意見を求める: 他人から貪欲に情報やアイデアを収集していく
注意深く聴く: 他人の言うことをよく聴く性向
新しいアイデアへのオープンさ: 慣れ親しんだ物事に対してまったく違った視点で見てみることに躊躇しない

この精神的習慣は、起業家精神と暴走を抑制する監視機能をセットにしたものだともいるでしょう。

このような生涯学習が、複雑で変転する組織環境において状況を的確に把握し、確固たる信念の下に自分自身をそして組織全体をゴールに向けて誘導していく基盤となります。

「IT革命」が我が国の労働に与える影響についての調査研究報告書(厚生労働省 平成13年4月26日)
○ 求められる人材
・ ITリテラシーは雇用の最低条件であり、正社員の職業能力としての「強み」にはならない。
・ ホワイトカラー正社員にとって「強み」となる能力は、創造性や企画力、変化への柔軟性及び対人能力といった、人間にしかできないアナログな能力である。
○ 就業者の自己啓発に対する支援
・ すべての労働者についてITリテラシーの習得機会を確保していく際に、今後は失業者や未就業者のみならず、就業者についても、個人の自己啓発による職業能力開発を支援していく必要性が高まる。
・ また、その際、労働時間の短縮を図り、労働者の余暇時間を増やすこと、休職して専門的な教育訓練を受けることについて、企業の理解・協力を求めることも重要である。
産業能率大学 インターネット時代の生涯学習に関する意識調査(2000年9月)
「生涯学習」という言葉がどのようなイメージで捉えられているのかという質問に対して、最も多かった答えは「社会人としての教養の向上」で36.0%、「ビジネスパースンの能力開発」という答えは9.9%に止まっていることから、仕事に直結したものは、生涯学習のイメージにはあまり合わないようです。
就職した後も勉強が必要だと思うかという質問には、77.6%が「なにごとにも勉強は必要」と回答。
仕事を持ちながら勉強する際の最大のネックとしては、「忙しくて時間がとれない」が48.9%。
総理府 内閣総理大臣官房広報室 生涯学習に関する世論調査(平成11年12月調査)
生涯学習をしてみたいと考えている人は64・0%で、国民の三人に二人近くに上るが、前回調査(九二年二月)と比べ、1・9ポイント減少した。最近一年間に実際に生涯学習に取り組んだ人は44・8%と半数に満たず、前回より2・8ポイント下げた。取り組んでいない人の割合は54・7%(前回51・8%)と増加傾向を示し、生涯学習に意欲や関心を持ちながら、実際にはできないでいる人が少なくない様子も浮き彫りとなった。その理由(複数回答)では、「仕事や家事が忙しくて時間がない」が最も多く58・6%。次いで、「きっかけがつかめない」16・5%、「めんどうだ」10・2%など。「子どもや親などの世話をしてくれる人がいない」と答えた人も7・6%いた。
生涯学習をしてみたいとした人に、してみたい活動の内容を尋ねた設問(複数回答)では、音楽や美術などの趣味(56・7%)と健康・スポーツ(53・5%)が圧倒的に多かった。また、料理など家庭生活に役立つ技能(24・7%)やボランティア(21・4%)、職業上必要な知識・技能(21・1%)なども目立ち、多様化傾向を示している。
野口悠紀雄Online 2000 --> 「超」をめぐる考察 -->ビジネスマンのための 戦略的「超」勉強法
大体同趣旨のことをハウツーまで含めて説明しています。

実際のところ、この辺のことが全然できていない会社/個人がまだまだ多いんじゃないでしょうか。

 

 

 

この Web サイトに関するご質問やご感想などについては、sanada@zac.att.ne.jp まで電子メールでお送りください。
Copyright (C) 1999, 2000, 2001, 2002, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009 弦巻ナレッジネットワーク
最終更新日 : 2007/02/02