198回「広島ラフカディオ・ハーンの会」ニュース  (2017218発行)

 

11415日の銀世界にはビックリ、何でも30年ぶりの大雪だそうだが、これも地球温暖化の所為と聞く。我が家の前の道路にも約20センチ程の積雪があった。子供の頃を思い出し、久しぶりで物置にある長靴を履いて、まだ誰も踏み固めていない真っ新な雪の上を100メートル歩いてみた。実に爽快な気分で楽しかった。

 子供の頃はよく雪が降った。30センチ以上の積雪も珍しくはなかった。子供は風の子、雪の中に長靴(靴下などなく素足で履く)で飛び出すのが楽しみだった。深い雪に嵌まって長靴の縁から雪が入り込んだり、靴が抜けなくなり、力んで尻もち、片方の足のみ抜け長靴はまだ雪の中に残っている、周りで心配して見ていた者は腹を抱えて大笑い、といった様な懐かしい思い出もある。

森本哲郎著『日本人の暮らしのかたち』(PHP文庫)にも、「むかしは冬は寒いものだった。手足は凍りつくように冷たく、風のなかで遊んでいる子供たちの赤い頬っぺたには銘仙のように(すじ)が入っていた。あかぎれ(、、、、)である。しかし、いまの子供たちは、そんな言葉も知っていまい。」という文が載っている。

 ところで、“雪”と聞くと、真っ先に想い出す歌がある。戦後の復興期ラジオドラマの劇中歌として作られた名曲「雪の降る町を」(作詞:内村直也、作曲:中田喜直)である。―“雪の降る町を 雪の降る町を/想い出だけが通り過ぎてゆく/雪の降る町を/遠い国から落ちてくる/この想い出を この想い出を/いつの日かつつまん/温かき幸せのほほえみ”(一番のみ)

 この歌は、昭和28年、NHKラジオの音楽番組「ラジオ歌謡」で、シャンソン歌手・高英男が歌った。手元に東京レディース・シンガーズと高英男夫々のCDがあるが、「雪の降る町を」は何といってもフランス帰りの高英男の美しい声に優るものはない。何故だか、耳朶に残る彼の声は、ちらちらと雪の降る中、裏の小川で大根を洗っていたもんぺ姿の母や夜遅く帰宅して玄関でオーバーの雪を払う父の姿とダブってしまうのである。

 

 世の中何だか殺伐となった感のある昨今だが、雪の中を歩いていて気が付いたことがある―“雪は人を親切にする!!”人が踏み固めた雪中の細い一筋の道を歩いていると、向こうから人が来る。立ち止まり深い雪の方に寄って道を譲る。時には向こうの人が同様の善意を示して呉れる。こうした雪の中では見知らぬ同士も自然と感謝の挨拶を交わす。やはり人間の心は本来“思いやり”を大事にするように出来ているのだ。あの寒さを嫌ったハーンも恐ろしい雪女の中に、雪が内包する“優しさ”“思いやり”をしっかりと読み取っていたのだと思うと、ますます雪への思いが募る。雪よ降れ降れ、今一度!

 

 

1】《最近の情報から》: 過去のものを含む

・広島市立中央図書館(2階展示ホール)で、企画展―没後100年・生誕150年―漱石と広島、が開催された。期間は123日〜212

・上記の関連企画として、広島市映像文化ライブラリー(プログラム20171月 文学から銀幕へ)で、111日に1973年近代映画協会、ATG89分カラー35o、新藤兼人監督作品「心」(原作/夏目漱石)の上映があった。シニア鑑賞券は250円(スタンプ5個で、1回分の「無料鑑賞券」が貰える)

・「八雲会会報」第59号(2016122550回を迎えたヘルンを讃える青少年スピーチコンテストの入賞者が載る。

NHKテキスト「100de名著」1月号「中原中也詩集」(講師:太田治子)

・島根大学ラフカディオ。ハーン研究会ニューズレター第4号(全6頁、610)、第5号(全4頁、1115)、横山純子事務局長から送って頂いた。

・山根美神館(益田市飯浦町)の山根火土志館長から、山根美神館ニュースMUSE67号、68号を送ってもらった。両号に亘り平成71995)年、津和野での“講演「ふるさと」を想う”が採録されている。

・今年のセント・パトリックス・ディ・パレード熊本は318日(予定)

 

2《読みたい本》:竹倉史人『輪廻転生』(講談社現代新書、2015

 副題に「〈私〉をつなぐ生まれ変わりの物語」とある。昨年12月ニュースの【4】《事務局の本棚に加わった本》でも既に紹介したので、ご承知であろう。1月に読んだ小泉凡氏の論考「再生する文学―文化資源としてのラフカディオ・ハーン―」でも“四、地域資源としての再生譚”の中で、この本の最終章からの引用がある。さらに、小泉凡氏を初めとして、染村絢子、松村恒のご両名もハーン作品(雨森信成英訳)「勝五郎再生記」への興味・研究は並々ならぬものがある。4割以上の日本人が信じていると謂われる“輪廻転生”の内実を説得力を以って論じる本書を片手に、改めて「勝五郎再生記」を読んでみたい。

 

3《次回の予定》: 34日(土) 

 

4《事務局の本棚に加わった本》:

・染村絢子『ラフカディオ・ハーンと六人の日本人』(能登印刷出版部、2017

・原田ハマ『リーチ先生』(集英社、2016

・会田弘継『追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫、2016

・梅原猛『心の危機を救え』(光文社文庫、1998

・常光徹『学校の怪談2』(講談社、1991

・谷川健一『魔の系譜』(講談社学術文庫、1984

 

 

5】会員からの発表・報告など(前回):

新年初の例会ゆえ出席者全員から今年の抱負を語ってもらった。煩雑なので詳細は省略するが、その中で、三島氏から中国新聞記事(20161230)「被爆者にオバマ氏礼状」関連の紹介があったことのみ記す。

 

★前回読んだ“Levitation”(飛行)に関して、A Lafcadio Hearn Companion by Robert L. Gale に次の解説があった。それを紹介する。(p.204

 

“Levitation”: While leaning out an upper-story window one sunless, gray day Hearn’s persona falls, feels sick, then wonders, feels joy, floats, touches the pavement with one foot. Up he goes again, feeling superhuman, divine. People stare at him, silently, as he flies through the streets. He concludes that this is a dream but that discovering “this power” is revelatory. He has learned to fly. The next morning, after momentarily thinking of flying again, he realizes that he has discovered nothing. He often dreams of flying. He is convinced he has “a new faculty,” which he forgets upon awakening. Gravity is then too real. His dream flights are always at low altitude, with the real world pulling at him. With one exception, other dream flyers he has queried say they also fly low. Why for eons has “humanity…thus been flying by night”? In dreams, we feel imponderable, levitated, floating, disembodied, gliding by mere willpower. Do we have an “organic memory of conditions of life more ancient than man”? Or perhaps a normally dormant, “all-permeating Over-Soul …wakens within the brain at rare moments of our sleep-life”?

 

★焼津小泉八雲顕彰会からの「お知らせ」:

1、平成292017)年は、ハーンが焼津に来て120年になる。ハーンが初めて焼津に来たのは、明治30年。

2、顕彰会は昭和41913日に再発足し、51年。

3、八雲記念館は平成19年にオープンし、10年目を迎える。

以上により、今年は節目の年となり、記念行事が予定されている。因みに、108日(日)には講演会。8~9日は紺野美沙子さんの朗読会(?)。

Cf. 北山宏明著『小泉八雲と焼津』(小泉八雲顕彰会、昭和43

 

★金沢の染村絢子氏が長年に亘るハーン研究と驚くべき資料収集に基づく労作『ラフカディオ・ハーンと六人の日本人』(能登印刷出版部、2017)を出版された。まさにハーン研究における一大金字塔、類書の到底及ばぬ密度の濃い内容を持つ大冊である。“六人の日本人”とは、茨木清次郎、角田柳作、田部隆次、甲斐美和、雨森信成、長谷川武次郎を指す。夫々の人物について新しい知見を含むことは無論だが、何と云っても圧巻は、茨木清次郎に関する調査・研究である。全体のほぼ半分近くの頁が茨木清次郎に割かれている。金沢に住む染村氏以外では、今後もこれだけの研究調査は絶対に不可能であろう。資料の整理と調査に約10年かけた上に、20056月から1ヶ月かけて単身でイギリス、スコットランド、アイルランドへ茨木の留学中の足跡を調査に出掛けるなど、常人の域を超えている。

 染村氏の超人的な活動については既に御存じでもあろうが、氏が発表された論考の幾つかを以下に紹介する。今後とも氏から学ぶ教材としたい。

 

@「ヘルンゆかりの地を訪ねて」(『ヘルンを訪ねる』、昭和42

A「Kwaidanの製作過程の一考察」(『英語教育』、19645

B『小泉八雲草稿・未刊行書簡拾遺集』(雄松堂出版、1990)第1巻草稿

C「小泉八雲と周囲の人々」(『金沢大学資料館紀要』第2号、20013

D“「ヘルン文庫」の探求”(『講演記録集』、平成10

E「小泉八雲展」神奈川近代文学館(出品者・協力者として)

F八雲会機関誌『へるん』に載る数多の論考(第26号「東大講義」など)

■上記@“卒論旅行のおもいで”を今回の添付資料に載せる。

 

★前回の添付資料、小泉凡「再生する文学―文化資源としてのラフカディオ・ハーン―」に参考文献として、『ほどくぼ小僧 勝五郎生まれ変わり物語 調査報告書』(日野市郷土資料館、20159)が載っていた。

 日野市郷土資料館に照会し、勝五郎生誕二百年記念の上記調査報告書ブックレットを送って頂いた。小冊子ならぬ約150ページの大冊である。同時に日野市郷土資料館ブックレットI『ほどくぼ小僧 勝五郎生まれ変わり物語』(勝五郎生まれ変わり物語探求調査団編、平成28)と資料館関係のリーフレット数点が同封されていた。

■「ほどくぼ小僧生まれ変わりの勝五郎」(子ども版)を添付資料に加える。

 

6】本日の添付資料:(数字はページ番号)

BC「ヘルンゆかりの地を訪ねて」(『ヘルンを訪ねる』所収、昭和42

D中国新聞(111日)「漱石と広島」展に寄せて

E横山純子「夢」(『小泉八雲事典』)

F〜I「ほどくぼ小僧生まれ変わりの勝五郎」(日野市郷土資料館、平成28