197回「広島ラフカディオ・ハーンの会」ニュース  (201717発行)

 

明けましておめでとうございます。昨年は松江での小泉八雲記念館新装オープンなど、祝賀すべきこともありましたが、熊本の大地震(旧居の損壊)のような天災に見舞われた地域もあり心を痛めました。今年がハーン研究にとっても佳い年となることを祈ります。

広島ハーンの皆様方には、今年もお元気でハーンから学ぶ姿勢を貫いて欲しいと存じます。事務局もそろそろエネルギーが枯渇、タンク(脳細胞)の中の燃料も残り少なくなっております。宜しくご教導ください。

さて、昨年末の例会では、広島県を代表する詩人井野口慧子さんをお迎えし、「極私的小泉八雲」と題して講演をして頂きました。“つながり”を主テーマに90分間熱のこもったお話をして頂きました。井野口さんが著書『ウジェーヌ・カリエールへの旅』(メディクス)で“詩を作る時に大切にしているもの―人間と宇宙、自然との一体化、精神、霊魂のつながり、生と死の往来というテーマ”と書かれていることが直に伝わってくる内容でした。大変勉強になりました。

また、ノルドグレン(ピアノ:館野泉)「小泉八雲の怪談によるバラード」をBGMにハーン「おしどり」を取り上げ、その読み聞かせの妙味を披露して下さり感動しました。心底よりお礼申し上げますと共に、井野口さんの今後益々の御活躍を祈ります。

 

2016年のノーベル文学賞がシンガー・ソングライターのボブ・ディラン(75)に決まり、その授賞理由が「米国音楽の偉大な伝統の中に新たな詩的表現を創造した」というものであることは既に御承知の通りである。事務局は受賞発表以来一日も欠かさず、ディランのCDを勉強部屋(と言っても物置に近い)のおんぼろプレヤーで朝に夕なに聞きまくっているが、詩的素養に欠く身の悲しさ、どうも“新たな詩的表現を創造”というところがいまいち掴めない。

 そうした中、深夜放送であるが、1211日(日)の映画「ボブ・ディラン、ノー・ディレクション・ホーム(後)」(NHK BS 0.001.30)、11日「BOB DYLAN ディランは変る! ▽音楽と詩の世界を紹介」(NHK BSプレミアム323.501.35)という2つの番組を何度も目薬を差しながら見た。かかる老骨には死界を彷徨うにも似た超過酷な体験(修業?)によって、少しずつではあるが、ボブ・ディランの詩の独自性、影響力の大きさに目覚めつつある。

東京の友人から、池田雅之先生古稀記念として出版された滝澤雅彦・柑本英雄【編】『祈りと再生のコスモロジー―比較基層文化論序説―』(成文堂、2016)のコピーを頂いた。今年最初の勉強として、小泉凡氏「再生する文学―文化資源としてのラフカディオ・ハーン―」を一緒に読んでみましょう。

 

 

1】《最近の情報から》: 過去のものを含む

・昨年井野口慧子さんから「詩が生まれる場所」を初め数々の資料を頂いたが、123日、次の著書などご寄贈下さったので、披露します。

●『浄らかな朝』(みもざ書房、2001

●『魂の気配を描く画家ウジェーヌ・カリエールへの旅』(メディックス、2007

●『火の文字』(コールサック社、2013

●「Grande ひろしま」2016冬号(Vol.15)井口さんの「絵本をめぐる愛の物語」(第15回)『エマおばあちゃん』(徳間書店)が載っている。

・アニメ映画「この世界の片隅に」に関連して、ヒロシマ・フィールドワーク実行委員会(中川幹朗)から『証言 江波に生きる 大岡貴美江さんの語る 暮らし・戦争・原爆』(2016、一部800円)を送って頂いた。なお、“江波で暮らした半生の証言を収めた冊子を手にする大岡さん”の写真と記事が「江波暮らし記憶鮮やか」と題して、1020日の中国新聞に載っている。《前回のニュースとダブル箇所あり》

・日本英学史学会中国・四国支部ニューズレターNo.871123日)巻頭エッセイは馬本勉先生の「道後の漱石に出会う」

 

2《読みたい本》:根岸磐井『復刻版:出雲に於ける小泉八雲』(今井印刷、平成28

  本書は元々小泉八雲25回忌を記念して上梓されたものである。幾多の増刷・再版を重ねてきたが、今回の復刻版は根岸道子さんによって修正、新たにふりがなや詳しい注釈が付された。周知のように、旧居・記念館が今もあるのは磐井の努力と熱意の賜物である。多くのエピソードを満載する本書によって、故人の思いを今一度確認し直してみては如何であろうか。

 

3《次回の予定》: 218日(土) 

 

4《事務局の本棚に加わった本》:

・十川信介『夏目漱石』(岩波新書、2016

・横山俊之、熊代正英『岡山の夏目金之助(漱石)』(岡山文庫、2012

Penguin Active Reading (Level 3) Japanese Ghost Stories by Lafcadio Hearn (Retold by Jane Rollason), Andy Hopkins and Jocelyn Pottter, 2008

Nellie Bly, Around the World in Seventy-Two Days and Other Writings, Penguin Classics, New York, 2014

Elizabeth Bisland, In Seven Stages: A Flying Trip Around the World, Dodo Press, UK, 1891

 

5】会員からの発表・報告など(前回):

12月の例会は井野口慧子さん講演のため、上記に相当する発表・報告などはなかったが、資料として2名の方より下記のものを頂戴した。

@三島さん:山陰中央新報の記事3つ…「へるん百話を読む」「アイルランド八雲の庭園“人気”」「八雲の英国籍離脱当局は認めず」(資料I参照)

A横山さん:「この人に聞く第95回、中川武氏」「ひろしまたてものがたり」

 なお、八雲会から新しいクリアファイル2点が発売された。

 

 

 

★松江市の中村元記念館の来館者数が昨年1111日に4万人を超えた。開館から41ヶ月での達成。なんと三島俊弘さん(69)が丁度4万人目となられ誠に御目出度いことであった。谷口博則副理事長から記念品に、生涯を纏めた「中村元物語」などを受け取られたと言う(1112日付「中国新聞」)。のちに事務局は三島氏から、『東洋思想の輝く星 中村元物語』、『東洋思想の巨星 中村元物語』(いずれも中村元記念館発行)2冊の恵贈に与かった。

 

★スウェーデン・アカデミーは先月、ボブ・ディラン氏(75)が来春記念講演を行う可能性があると発表していた。しかし1210日に行われる文学賞授賞式(ディランは式を欠席)でスピーチは代読されると5日に発表があった。授賞式では米国のシンガー・ソングライターで詩人のパティ・スミスさんが緊張しながらディランの名曲「はげしい雨が降る」を歌った。

 

Bislandの読み は“ビランド”、or“ビランド”?

 昨年11月にNHK歴史秘話ヒストリアで、19世紀末二人の米国女性記者がジュール・ベルヌの小説『80日間世界一周』に挑んで、世界一周最速の大レースを繰り広げた模様を放映した。種本は勿論、マシュー・グッドマン/金原瑞人・井上里訳『ヴェルヌの八十日間世界一周に挑む』(柏書房)である。この本は、Bisland を“ビランド”と訳している。その所為であろう、NHKも彼女の名を“ビランド”と、清音でなく濁音で表記していた。

 1125日の京都桝井先生からのメールに拠ると、l, m, n などは可成りエネルギーのいる半母音的な音なので、前の子音は吸収されて濁音になる。biscuit とは違う。アメリカのノース・ダコタの州都Bismarckはビズマークと濁る、とある。そういえば、毛織物のモスリン(muslin)は[mʌzlin] と発音する。普段常識と思っていることで案外見落としていることがよくあるものだ。

 

★明治30年生れの稲垣巌(18971937)は40歳で没した。19歳で中学卒業(3月)。一高の受験に失敗したため、翌年の大正6年旧制六高(岡山)に入学、96月に卒業した。

1125日の稲垣明男様からのメールに拠ると、父巌の手元に英文日記が残されていた。1917104付、先生(名前不詳)宛てに岡山六高の寮から発信した手紙の下書きである。9月に一年生で入校最初の先生宛てである。また巖が六高時代のノートにウェットモア夫人に宛てた手紙の草稿もある。ウェットモア夫人は日本に再来し、セツ夫人と逢ったことを報ずる東京朝日の記事(1911)がある。今年48日に来広される折、英文日記やその他八雲の書き損じメモなども持参するとのお約束を頂いた。楽しみだ。

 

★広島県廿日市市吉和の「ウッドワン美術館」の「日本絵画―秘められた想い―展」【会期:平成281110日〜1225日】に日本を代表する名画75点が展示されていた。会場入口から順番に横山大観、富岡鉄斎、川端龍子、棟方志功、片岡球子、前田青邨、鏑木清方など大物がずらりと並ぶが、その名前を列挙しただけでも、その壮観さは容易に想像できよう。横山大観は「秋野」と「神国光曙」の2点が、さらに高橋由一の作品「官軍が火を人吉に放つ図」(明治10)までもが展示されていた。これら巨匠に混じって、照沼彌彦氏(照沼好文先生のご長男、修道中学一年生の時に事務局がクラス担任)の作品2点「天降言(あもりごと)」(平成3)、「的言(てきげん)」(平成6)が展示されていたのにはビックリ。勿論想像以上の出来映えの作品である。ウッドワン美術館は早くから照沼彌彦の才能に注目して、彼の作品は優先的に購入していると聞く。郷土の画家としてこれからもその活躍に期待したいものだ。

 

★『へるん』No.532016)の「へるん雑話」(p. 43)に、海外の英語学習教材としてハーンの『怪談』その他を書き直した(retold)下記のテキスト(全15篇)が松村恒氏により紹介されている。

Lafcadio Hearn, Japanese Ghost Stories, retold by Jane Rollason (=Penguin Active Reading, Level 3), Harlow, Essex: Pearson Education Limited, 2008

先の《事務局の本棚に加わった本》でも紹介しているが、前回井野口慧子さんが朗読下さった「おしどり」(現代的な英語でThe Hungry Hunterと改題)も所収されている。来月はそれを一緒に読んでみたい。ご期待あれ。

 

6】本日の添付資料:(数字はページ番号)

B〜G小泉凡「再生する文学―文化資源としてのラフカディオ・ハーン―」

H小泉凡さん「オープン・マインド実践」(中国新聞、126

I「八雲の英国籍離脱当局は認めず」(中央新報、1125