173回「広島ラフカディオ・ハーンの会」ニュース  (2015110発行)

 

 明けましておめでとうございます。平成27年“未年”が始まりました。世界では地球温暖化が着々と進行しているそうですが、わが日本では昨年の暮れから、異常気象とも言える大寒波が次々と来襲し、日本列島は寒さに震えあがっております。

 さて、昨年は8月に広島市の安佐南区などで起こった土砂災害を初めとして日本各地でも天変地異による災害の多い年でした。ご承知のように、毎年末には世相を表す言葉として清水寺の森清範貫主による「今年の漢字」揮毫(1995年に開始)がある。2014年の漢字は“災”か“震”であろうと予想していましたが、“税”(一昨年は“輪”)ということでビックリしました。しかし先の衆議院選挙の争点が消費税であったことを思えば、当然かも知れません。

 兎も角、羊は優しい動物であるとの通念があります。今年が天災などの自然災害が少ない年となってくれるように祈ります。

 

1987年に設立して以来28年間毎月、科学、技術、学問芸術、道徳、宗教、政治、衣食住など文化の多岐に亘り、講演会・勉強会を継続してきた「広島文芸懇話会」(稲田公子代表)が昨年12月に250回をもって幕を閉じた。そして、去る1219日(金)には、今までの講師を中心とした謝恩会が開催された。事務局は2度も講師として呼んで頂き、「小泉八雲を読む愉しみ―『青柳の話』をもとに―」(200310)および「『稲むらの火』が語るもの」(20119)と題して語ったことを懐かしく思い出す。

 広島の文化度を高めるに大きな柱の一つであった、こうした地道なグループの活動が姿を消すことは如何にも悲しい。稲田公子代表の年齢・体調という事情があり、止むを得ず幕を閉じられたのだとは思うが、今まで稲田代表を支えて来られた方々の中からでも、懇話会を引き継いで下さる方はないものかしらと、我儘な期待を捨てきれない。なお、広島文芸懇話会実行委員会が編集した『広島文芸懇話会の歩み―250回記念誌―』(非売品)が出ている。

 

 さて、本年2015年は、松江の「第一次八雲会」が始まってから丁度100周年の記念すべき年に当たる。現在の「第二次八雲会」、その活動は目覚ましいが、それまでの50年間、小泉八雲記念館建設、八雲旧居保存(並びに、史蹟に指定)を大きな柱に、講演会の開催、レフカダ、ニューオーリンズとの交流、そして、生誕百年祭の挙行など、今日の“ハーン現象”の礎を確立した功績は甚だ大きい。こうした栄えある歴史を築き上げた先人を顕彰し、その偉業に心から感謝の誠を捧げるチャンスは2015年を措いて他にないのではなかろうか。

 

 

1】《最近の情報から》: 過去のものなど、重複あり

・「広島文芸懇話会」(稲田公子代表)が昨年12月に250回をもって幕を閉じた。

広島文芸懇話会実行委員会編集の『広島文芸懇話会の歩み―250回記念誌―』(非売品)。

・第56回平成26年度熊本県芸術文化祭参加事業・ラフカディオ・ハーン没後110年、丸山学生誕110年、木下順二生誕100年「ハーン・丸山学・木下順二を結ぶもの」1122日、熊本学園大学(高橋守雄記念ホール)予稿集

・芦屋市在住の藤田昭彦氏(元毎日新聞記者)が、筆名浅見渓なるペンネームで『マルセル嬢誘拐』(新幹社、2014)を出版された。196812月京都の美術館から忽然と姿を消したフランスの画家ロートレックの名画「マルセル」を巡るドキュメンタリー・フィクションである。

・香川大学の竹中龍範教授が「日本の古本屋第111回五反田遊古会」の古書販売目録(112829)の一部を送って下さった。由縁堂書店が販売するものの中に、71点ものハーン関係の古書があった。

 

2《読みたい本》:中野孝次『良寛に会う旅』(春秋社、1997

 昨年来、広島ハーンの会ではハーンの名品「草雲雀」に次いで、「阿弥陀寺の比丘尼」を読んでいる。孰れもハーンの所謂“小さきもの”への愛着を知る上で不可欠の読み物であるが、「阿弥陀寺の比丘尼」では、寺の境内で子供たちと無邪気に遊ぶ“おとよ”の姿が良寛と二重写しになる。良寛は“働きもしないで子どもと遊んでばかりいる糞坊主”と悪評を浴びたこともあるが、実像はさにあらず、“個にして孤なる人”であり続けた傑物であり、「草の庵に足さしのべて小山田の 山田のかはず聞くがたのしさ」という無垢な心境に充実した生涯を送った禅僧であった。上記の書からは、冬の越後路に良寛遺跡を訪ねた著者自身の思い入れが切々と伝わってくる。美しい季節のカラー写真満載の素敵な読み物である。

 

3《次回の予定》: 214日(土)

 

4《事務局の本棚に加わった本》:

・奈良橋陽子『ハリウッドと日本をつなぐ』(文藝春秋、2014

・エリセーエフ『赤露の人質日記』(中公文庫、昭和51

・高倉健『あなたに褒められたくて』(集英社文庫、1993

Japanese Folklore NHK出版、2014NHK CD BOOK の一冊

・新井紀子『ロボットは東大に入れるか』(イースト・プレス、2014

・柳田聖山『沙門良寛』(人文書院、1989

 

 

◆◆特集《ハーン顕彰の総本山「八雲会」100年の歩み》◆◆

1、「八雲会100周年記念について」:

1915年(大正4625日 第一次八雲会創立、於松江商業会議所

発起人(7名):米村信敬、桑原羊次郎、太田台之丞、根岸磐井、富田太平、野津静一郎、山本庫次郎

 ★前年(1914925)の創立発起は、太田台之丞、山本庫次郎、桑原羊次郎、落合貞三郎、大谷正信、米村信敬 の6

 

第一次八雲会1915)…記念館建設、旧居保存(cf. 芳名録)、銅像建立

 ★記念館(19341984改築、2016別棟建設)

 ★1950(昭和25)の生誕百年祭(小泉清夫妻来松)が反響を呼び、翌年の松江市「国際文化観光都市」建設法への契機となった。

 ★市河三喜(18861970)、根岸磐井(18741933

 

第二次八雲会1965)…『へるん』、スピーチ、感想文、縁りの地訪問

 ★梶谷、銭本⇒『へるん百話』(cf. 復刻)、銭本健二選集発行

 

2、広島ラフカディオ・ハーンの会での取り上げた「八雲会」関係資料:

・「八雲会の歩み」(1998A4判)→2003年までの追補を含む

・「八雲会」→『小泉八雲事典』pp. 646~8(横山純子)

・小泉凡「柳田・スコット松江訪問と第一次八雲会」→『へるん』30

・銭本健二・小泉凡『八雲の五十四年』「八雲旧居と文人墨客たち」p.210

・「八雲記念館に別棟建設・松江市16年度開館へ」→山陰中央新報(67日)

・「ハーンに関する事ども」市河三喜(大正131011、ハーン20周年講演)→高橋節雄「ヘルン先生遺愛の文机を圍りて」(松江市役所、昭和2)所収

・市河三喜『旅・人・言葉』(ダヴィッド社、昭和32cf.『手向の花束』と同じ

・根岸啓二『風土博物誌』→「わがハーン旧居」p.254

・「芳名録」…「八雲会報」45号(内田融)

・銭本健二「遊ぼう八雲の世界―心の内なる旅味わって」中国新聞1990627

・『英語青年』6810~12。市河晴子「ハーンの跡を訪ふ」(一)~(三)

 

3、市河三喜博士(18861970)の募金活動:

 小泉八雲記念館建設基金活動→6,510円。研究社印刷所から出ている『手向の花束―市河晴子・三榮追悼録』の「晴子の性格」p.191 には、「小泉八雲記念会」を起こして広く有志に呼びかけることになった経緯が載っている。この間の詳しい事情については、『英語青年』6810~12、市河晴子「ハーンの跡を訪ふ」(一)~(三)がある。

 

4NHK松江放送局『島根の暦』(昭和40):

1029日〉の欄(p.343)に「小泉八雲記念館」が載っている。以下その部分を紹介する。

「八雲記念館は、観光松江の自慢の一つである八雲旧居の西隣りに並んで建っています。小泉八雲に就いては、既に御紹介したように、明治238月に、松江中学の英語教師として松江に来、小泉節子夫人と結婚してから、この八雲記念館の隣の根岸邸に、7ヶ月ほど住んでいました。この記念館が建設されるそもそもの発端は、昭和2年、当時の松江市長高橋節雄が上京して、八雲の遺族を訪問した折、八雲が最後まで愛用した机や椅子を、松江市へ寄贈されたことです。続いて昭和49月、八雲の25回忌にあたって、松江市に「八雲会」が出来、いろいろな記念行事が計画されました。

この八雲記念館はその記念行事の一つで、たまたま英文学の市河三喜博士夫妻の提唱もあり、東京の小泉八雲記念会の尽力によって、殆んど東京を中心に募金が集まりました。そして昭和811月の今日、見事落成、翌年松江市に寄贈されたのです。この白亜の建物は、ドイツのワイマールにあるゲーテ記念館にならって設計されたともいわれます。つまり、八雲の母親がギリシャ人であったにちなんで、ギリシャ神殿を真似たゲーテ記念館を参考にしたわけです。この記念館の中には、東京西大久保の屋敷にあった、当時のままの書斎の備品が飾られ、八雲が、長男の一雄さんに、英語を教えるために使った英字新聞などが陳列されています。ここは、昭和28年から博物館法の適用を受けることになり、参観者も年々増加しています。」

(補注)『松江観光事典』(平成18)にも同様の紹介文が載っている。昭和8年(1933)に鉄筋コンクリートの建物を設計したのは山口蚊象(請負者は奥田組)である。その後老朽化の為、昭和594月に純和風様式(長屋門、塀を配し土蔵づくりをモチーフ)の記念館が新装オープンした。苦言を一つ、設計者の(やまぐちぶんぞう)を“文象”と表記し、“ぶんしょう”とフリガナを付すなど、『松江観光事典』は、まことに恥ずかしい誤りを犯している。

 

2頁《最近の情報から》に記載できなかった雑誌、小冊子を以下に追記する。

・『學鐙』冬号(Vol.111 No.4)丸善出版

・『男の隠れ家』(201412号)三榮書房

・『音遊人』(20136)特集「アイルランド愛しい音の国へ」ヤマハミュージックジャパン

・『大人のための妖怪と鬼の昔ばなし』(平成2612)三共グラフィック