ピルについて

●ピルのはたらき
●ピルの種類(世代別)
●承認された低用量ピル
●これまで転用されてきた中用量ピル
●高用量、中用量、低用量のちがい
●第3世代ピル「マーベロン」について

 

ピルのはたらき

女性の排卵・月経をコントロールしているのは脳の視床下部です

  1. 視床下部からの指令(卵胞刺激ホルモン放出ホルモン:FSH-RH)が出されます。
  2. この指令を受けて脳下垂体から卵胞刺激ホルモンが分泌されます。
  3. その刺激を受けて卵巣から卵胞ホルモンが分泌されます。
  4. この卵胞ホルモンの量が最大に達したという指令が視床下部に戻されます。
  5. 今度は脳下垂体へ次の指令(黄体形成ホルモン放出ホルモン:LH-RH)が出されます。
  6. この指令を受けて脳下垂体からは黄体形成ホルモンが分泌され、排卵を促します。
  7. 排卵すると今度は黄体ホルモンが分泌され、受精した卵が着床しやすいように子宮内膜の状態を変えます。
  8. 受精が起こらなければ、排卵後約2週間で卵胞ホルモンも黄体ホルモンも急激に減少して、子宮内膜がはがれて月経が起こります。このホルモンの減少を視床下部がキャッチして、また@からのサイクルが始まります。

 ピルを服用すると合成卵胞ホルモン(エストロゲン)と合成黄体ホルモン(プロゲストーゲン)の血中レベルが上がります。脳がこれを妊娠(天然ホルモンのレベル上昇)と錯覚し、排卵を促すホルモンを出さなくなるというように、ピルは脳にはたらきかける薬です。

ピルの避妊作用としては、

  1. 排卵を抑制する。
  2. 子宮頚管粘液の分泌量や性質を変え、精子を通過させにくくする。
  3. 子宮内膜に作用して受精卵が着床しにくい環境をつくる。

などが言われています。

 

ピルの種類(世代別)

 今回認可されたピルは成分別に言うと6種類ですが、品目としては16あります。同じ成分でもブランド名が異なっていたり、21日型と28日型(後述)があるためです。これらに使用されているエストロゲンはすべてエチニル・エストラジオールですが、プロゲストーゲンの種類によって次のような区別もなされます。くわしくは表を参照してください。

    第一世代ピル:1960年代に開発された「ノルエチステロン」と呼ばれるプロゲストーゲンを使用しているピル。

    第二世代ピル:1960年代後半に、プロゲストーゲンの用量を下げる(低用量化)ために黄体ホルモン作用が強い「レボノルゲストレル」を開発。これを使用しているピル。

第三世代ピル:さらに強力な黄体ホルモン作用をもつ「デソゲストレル」を使用しているピル。血栓症のリスクが第一、第二世代より高いというイギリス医薬品安全性委員会やWHOの報告があり、ドイツ、イギリス、ノルウェーなどで処方制限がつけられました(1995年)。
 ドイツは裁判の結果製薬会社が勝訴して制限がとりはわらわれましたが、政府が控訴して上級審での裁判が続いています。
 イギリスは、第三世代の方がリスクが高いことは「調査のかたよりだけでは説明できない」と認めつつも、「10万人あたり10人とわずかな増加である」として、1999年4月、処方制限をとりはらいました(ピルを飲まない人のリスクは10万人当り5人、第一・第二世代ピル10万人当り15人、第三世代ピルは10万人当り25人としています)。
 ノルウェーでは現在も「他のピルが適当でないと考えられる場合に投与を考慮する」という処方制限が続いています。
 (このほかに世界ではゲストーデン、ノルゲスチメートという第三世代プロゲストーゲンを使ったピルもあり、ゲストーデンを使用しているピルは同じく血栓症のリスクが増すと言われています。)
 日本で承認された第3世代ピルは「マーベロン」だけです。「マーベロン」についてをごらんください。

 

承認された低用量ピル
(21日目まで飲んで7日服用を休むものと、処方(成分)は同じで22日目から28日目まではプラセボ(偽薬)を飲むものもあります)

商品名

製薬会社名

エストロゲン
(マイクログラム)

プロゲストーゲン
(マイクログラム)

一相性

オーソM
   (21日型)

ヤンセン協和/
     持田製薬

1日〜21日

EE         35

NET         1000
(第一世代)

マーベロン(未販売)( 21日と28日型)

日本オルガノン

1日〜21日

EE         30

DSG          150
(第三世代)


相性

エリオット
(21日型)

明治製菓

1日〜10日
11日〜21日

EE         35
           35

NET           500
           1000
(第一世代)

 

 

 

オーソ777
( 21日と28日型)

ヤンセン協和/
    持田製薬

1日〜 7日
8日〜14日
15日〜21日

EE         35
           35
           35

NET           500
             750
           1000
(第一世代)

ノリニールT

第一製薬
     科研製薬

1日〜 7日
8日〜16日17日〜21日

EE         35
           35
           35

NET               500
           1000
             500
(第一世代)

シンフェーズT
(28日型)

日本モンサント/
       ツムラ

トリキュラー

日本シェーリング

1日〜 6日
7日〜11日
12日〜21日

EE         30
           40
           30

LNG            50
              75
             125
(第二世代)

リビアン

山之内製薬

トライディオール

日本ワイス

アンジュ

帝国臓器

(すべて 21日と28日型)

エストロゲン EE:エチニルエストラジオール
プロゲストーゲン NET:ノルエチステロン(第一世代)、LNG:レボノルゲストレル(第二世代)、
                        DSG:デソゲストレル(第三世代)

 一相性というのはピルに含まれているホルモン量が21日間ずっと同じものを言います。それに対して二相性、三相性はホルモン量が2段階、3段階と変わってゆくものです。ホルモン量の変化は表のとおりです。

 

これまで日本で避妊薬として転用されてきた中用量ピル(すべて一相性)

  商品名

製薬会社名

エストロゲン(μg)

プロゲストーゲン(μg)

 エデュレン

サール、大日本

EE             50

EDA              1000

 ドオルトン
  ブラノバール

日本シェーリング
日本ワイス

EE             50

NRG               500

 ソフィアA
 ノアルテンD1
 ビホープA

帝国臓器
塩野義製薬
富士製薬

ME            50

NET              1000

 ロ・リンデオール

日本オルガノン

ME             48

LYN              1600

エストロゲン EE:エチニルエストラジオール、ME:メストラノール、
プロゲストーゲン EDA:重酢酸エチノジオール、 NRG:ノルゲストレル、NET:ノルエチステロン、
           LYN:リネストレノール

 

高用量、中用量、低用量のちがい

  ピル1錠中に含まれる合成エストロゲン(女性ホルモン)の量によって高・中・低と区別されています。高用量ピルと呼ばれているものは、1錠中のエストロゲンの量が50μgより多いもの、中用量は50μgのもの、そして低用量50μg未満のものをさしています。

 ピルのほとんどは1錠中に合成エストロゲン(女性ホルモン)剤と合成プロゲストーゲン剤(これをプロゲストーゲンと代呼びます)を組み合わせた混合剤型ピルです。

 ピルが開発されてからまもなく、服用者の間に静脈や動脈の中で血液が固まる血栓という重い副作用が報告されました。その血栓が肺にいたる血管で起こると肺塞栓症という症状になり、脳の血管で起こると脳梗塞となります。血栓が起きた場所によっては死亡してしまうこともあります。命は助かっても身体に麻痺が残ったり、それ以降血液が固まらないようにする薬(坑凝血剤)をずっと飲まなければならないということもあります。

 この血栓はピルに使われているエストロゲン剤の量と関係があるとイギリスの薬剤安全性委員会が1969年に報告しました。そのため、エストロゲンの量を50μg以下にするようにとの勧告が出されました。イギリスでの報告のあと、世界保健機関(WHO)や家族計画連盟からも同様の勧告が出され、製薬会社はエストロゲンの量を減らして、なおかつ避妊効果をもつものをつくらなくてはいけなくなりました。

 その後1974年にイギリスの王室一般医協会が、プロゲストーゲンの量が多いと高血圧や動脈硬化など循環器系の病気のリスクを高めると報告し、プロゲストーゲンの量もできるだけ減らすようにという勧告が出されました。このようにホルモン量が減らされてきて、ホルモン量の異なるピルが現れてきたので、高・中・低でその違いを表そうとしたのです。

ホルモンの総量を減らすために、合成エストロゲンと合成プロゲステロン(これをプロゲストーゲンと呼びます)は段々と強力なものに代えられてきました。

エストロゲン
 開発当初の高用量ピルに使われていたエストロゲン剤のほとんどはメストラノールというものでした。現在低用量ピルに使われているエストロゲン剤はすべてエチニルエストラジオールというものです。

 合成エストロゲンのメストラノールは、体内ではこのままエストロゲンとしての力を発揮できず、代謝作用によってエチニルエストラジオールに転換してはじめてエストロゲンとして作用します。そのためエチニルエストラジオールと同じ効果を得るためには量的に多くのメストラノールを使わなければなりません。

 ですからメストラノールを使用していた高用量ピルの時代に「エストロゲンを減らせ!」と言われて、エチニルエストラジオールに変えればエストロゲンの量は少なくて済んだのです。エストロゲンの強さがどのくらい違うかというと、個人の代謝能力の違いによっても変わりますが、一般的にはエチニルエストラジオールの方がメストラノールより1.7倍から2倍強いと言われています。ですからメストラノール使用の中用量ピルとエチニルエストラジオール使用の低用量ピルのエストロゲンの量だけを単純に比べることはできないのです。

プロゲストーゲン
 中用量ピルで見ると、たとえばEDA(重酢酸エチノジオール)は、やはり体内で代謝されてNET(ノルエチステロン)に変化して活性を示します。NRG(ノルゲストレル)はNETの数倍の黄体ホルモン活性をもつと言われています。さらに低用量ピルのプロゲストーゲンとして新たに認可されたLNG(レボノルゲストレル)は中用量ピルに使われているNRGの倍の活性をもつと言われていますし、同じくDSG(デソゲストレル)はNETの10倍近い活性をもつと言われています。

 エストロゲンのときと同じように「プロゲストーゲンの量を減らせ!」と言われて、より強力なものを開発してそれに代えてきただけということが言えます。

 日本で使用されてきた中用量ピルと今度承認された低用量ピルを比べると、エストロゲンやプロゲストーゲンの成分が同じで、それぞれの量が減らされたというようなピルはありません。どれも組み合わせが変わっていたりすることに注意しましょう。

第3世代ピル「マーベロン」について

 1999年6月に承認されたピルのうち、マーベロン(日本オルガノン社)というピルは、第3世代ピルと呼ばれます。これは、プロゲストーゲン(合成黄体ホルモン)に「デソゲストレル」という成分を使っています。

 このデソゲストレルを使っているピルは、ほかのピルよりも血栓症にかかるリスクが高いという疫学調査の報告があるため、承認の際に「他のピルが適当でないと考えられる場合に投与を考慮する」という処方制限がつきました。ノルウェーでも同様の処方制限がついています。販売元である日本オルガノン社は制限撤廃に向けて厚生省と交渉中と言われ、まだマーベロンの販売を開始していません。(2000年4月現在)

 マーベロンは、「男性ホルモン活性がほかのピルよりも低いので、にきびや多毛、体重増加を気にする人にはよい」という意見もあるようですが、アメリカのFDA(食品医薬品局ー日本の厚生省のようなところ)は、「それは間違っている」といっています。

 FDAは、マーベロンのと同じ成分の「デソゲン」(アメリカでの商品名)について、メーカーが“男性ホルモン活性が低いので他のピルよりすぐれている”とか、“多毛や体重増加の副作用はより少ない”といった宣伝をしていたことに対して、「これらの主張は虚偽、誤解を招くもの、あるいは連邦食品医薬品化粧品法に違反している」として、こうした内容の資料や販売活動をただちにやめるように、オルガノン社に厳しい通達を出しています(1998年7月)。

 また、スウェーデンでは「マーベロン」や同じ成分でエストロゲンの量が少ない「マーシロン」を飲んでいて血栓症になったとして97人の女性たちがオルガノン社に対して訴訟を起こしています。(海外4をごらんください)

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にきびの治療用に婦人科でピルを勧められたという話を聞きました。
  ピルでの治療はお勧めできません。

 1997年、イギリスで17歳の少女が、にきびの治療(顔、腕、背中に中程度のにきび)でピルを服用し、1周期目(21日間)を終え、休薬期間の後、2周期目に入って3日目に呼吸困難で倒れ、死亡しています。死因は血栓症(肺塞栓と思われる)です。  ピルの成分や血栓になりやすい危険因子がほかにあったかどうかは不明ですが、このような実例もありますので、くれぐれもご注意ください。
 *この件の記事を入手して訳しました。海外9をご覧下さい。成分も判明しました。