低用量経口避妊薬(ピル)の審議継続を求める要望書(6)
中央薬事審議会は6月の常任部会においてピルの医師向けならびに服用者向け添付文書の内容を審議するとうかがっております。しかしまだ承認の可否も出ていない段階で添付文書の文言を審議すること自体、納得のゆくものではありません。
本年4月14日、ピルの審議に関して厚生省のご説明を受けましたが、医薬安全局審査管理課赤川調整官は、ピル服用に伴うさまざまな危険性について、それらをどう添付文書に反映させるかという問題であると言われました。しかし充分な審議も尽くされないまま認可され、添付文書に危険性さえ記載すればあとは医師ならびに服用者の責任であるというのでは、国民の健康を守るために医薬品の安全性を審査すべきはずの厚生省ならびに中央薬事審議会の責任回避としか言えません。日本国内での中高用量ピル服用歴者の副作用データについても、実際には使用を黙認しておきながら低用量ピルの審議にあたってデータの収集や検討もされていないことは怠慢のそしりを免れません。
私たちは以下概略を示しましたように、国内のデータを含めた新しい文献を本日提出いたします。その中には更年期の女性に使用されるホルモン補充療法(HRT)についてのものも含まれていますが、HRTはエストロゲンとプロゲストーゲンの合剤であり性ステロイドの女性への使用という点でピルと同様です。そこで現れている健康への影響はピル服用者にも敷衍して検討していただきたいと思います。そして、今回ならびに1月末に提出しました医学文献についてどのような検討がなされたのか、その検討結果を「中間とりまとめ」のような形で公表していただきたく要望いたします。
また、海外でのピルの副作用と思われる死亡例や重症に至った例の報道コピーも添付します。
別紙の“ピルの安全性を「内分泌攪乱化学物質」の視点でさらに検討し、審議継続を求めるアピール”にもありますように、健康な女性の服用を対象とした製剤であるからこそ、中央薬事審議会が6月の常任部会で結論を急がれるのでなく、審議を継続してさらに安全性の面での検討を加えられることを私たち、ならびにアピールの賛同者・賛同団体は強く要望いたします。
1999年5月25日
厚 生 大 臣 宮 下 創 平 殿
中央薬事審議会会長 内 山 充 殿
「エコロジーと女性」ネットワーク
(以下論文概略)
T.ピルと乳癌のリスク
1.若年でのピル服用開始と乳癌の発生リスクの増大についての最新の論文(1)によれば、今後10年でそのリスクは3倍になる可能性があると報告されている。
本年4月、衛生熱帯医学ロンドン校の癌・公衆衛生部門のKlim
McPherson教授はこれまでのピルと乳癌発生の統計データで見落とされていた点を指摘している(Journal
of Epidemiology and Communication Health)。かつてのピル服用者はすでに出産経験があり、以降の子どもの数や間隔の調整のためにピルを服用する例が多かった。現在は10代半ばから服用を開始する例が増えている。そもそも初潮から最初の出産までの期間が長くなることは乳癌発生のリスク要因のひとつであり、その時期に外因性の女性ホルモンを加えることは一層リスクを高めることになる。50歳未満の女性ではこれまで乳癌発生のリスクは50人に1人であったが、最初の妊娠以前4年間のピル服用と15年の潜伏期を基礎にすると、今後18人に1人というリスクにまで増大する可能性は排除できない、と結論づけている。
U.次世代への影響について
1.日本国内での妊娠前の中高用量ピル服用歴で口蓋裂・唇裂発生は7.5倍に(2)
日赤の東京都内先天異常モニタリング研究班の調査(1976〜1985)では、妊娠自覚直前までのピル服用歴保持者と出生児の口蓋裂・唇裂発生のオッズ比は7.5である(2)。また直接ピルではないものの、エストロゲン・プロゲステロン製剤を妊娠判定剤として使用した例で仮性半陰陽児の増加、ならびに四肢異常などの骨格系異常の増加がみられたことが同じく日赤の調査で報告されている(3)。
2.ピルの服用により体内のミネラルバランスが崩れ、銅の増加、亜鉛の減少がみられる。亜鉛は生殖系や胎児の脳の発達にも影響を与えており、次世代への影響も危惧される。(4) (5) (6)
@論文(4)によれば、外因性ホルモンを摂取している女性の血清中および汗中では銅の増加と亜鉛の減少が見られ、銅/亜鉛の比率が高くなっている。過去の服用であっても亜鉛の減少は回復しておらず、それらが次世代へ影響することが危惧される。脳の発達への影響が懸念されている例として、イギリスでは失読症の子ども達の汗中の亜鉛減少が観察されている。(なおこの論文はミネラルアンバランスについてのみならず、ピルおよびHRT(ホルモン補充療法)と脈管系、過剰な気分変動など全般的な影響についても述べており、充分な検討をお願いしたい)。
A論文(5)の「微量元素と妊孕能」では亜鉛の減少が女性の妊孕能に与える影響として卵巣発達異常、月経サイクルの異常、妊娠してからは流産の多発、胎児の発育不全、在胎期間の延長、催奇形などがあげられている。男性においては精巣重量の低下や精細管の萎縮、精子の鞭毛や先体の形成不全、精子寿命の短縮、精巣分化に必須のミュラー管抑制因子の活性阻害などがあげられている。これらは現在内分泌攪乱化学物質が次世代に与える影響として論議されている精子減少などと関連する問題である。
B論文(6)では小児診療の現場からの観察がなされており、著者は小児診療が胎生期からの外因性内分泌攪乱化学物質の暴露の有無を聴取、検討、治療する時代が到来したと述べている。その中で、性ステロイドが脳の大脳皮質の非対称性に関わっていることが述べられている。ここで引用されているDiamondらは別の論文で避妊薬の性ステロイドが脳に与える影響を調べるため、ラットにピルのプロゲストーゲン剤であるノルエチノドレルを投与した実験も行っている(7)(8)。
異なる後天的環境におかれた60日齢の雌ラットにノルエチノドレルを投与した実験では、豊かな環境におかれたラットの体性感覚皮質の1領野と後頭皮質の1領野は有意に薄くなり、15領野すべてにおいてこの傾向が見られた。皮質の変化のほかに、皮質内のナトリウムが有意に少なくなり、塩素が少なく同時にカリウムが多くなるという傾向を示した。
後述する論文の中にも、ピルの服用が体内のミネラルバランスに与える影響が健康への有害な作用となって現れているとするものがある。ピル服用によって体内のミネラルバランスが崩れたときに本人ならびに次世代へ与える影響について真剣に検討すべきである。
3.極低濃度で影響が見られるという内分泌攪乱化学物質の「逆U字型反応」の視点で動物実験や臨床データを再検討すべきである
(9) (10)。日本でのピル申請にかかわる動物実験は非常にずさんである(11)(12)。V.ピルやHRTでの性ステロイド使用と免疫系への影響(血栓、ぜんそくなど)
1.若年での血栓症の原因は通常とは異なる場合がある。その促進要因はピルと喫煙である(13)。
若年でピルを服用するとリン脂質結合蛋白に対する抗体を生じ、Hughes症候群(脳血管、心血管をはじめとして体内いたるところでの血栓の出現、習慣性流産(不育症)などが発現する)の原因となる。この症候群は欧米における55歳以下の脳卒中の原因の18%になっているが、その促進要因の2つはピルと喫煙であると論文(13)で指摘されている。この血栓は反復性があり、予測ができない。
2.ホルモン補充療法(HRT)により、成人の喘息は現使用者で50%増加。10年間連続使用後は100%増加(14)。
論文(14)はホルモン補充療法使用者の10年間の研究について述べてある。これまで成人の喘息の発症原因はよくわかっていなかったが、この研究の中で、現使用者でのぜんそく発生リスクは50%増加し、10年間連続使用した女性たちの間では100%のリスク増加という結果が出された。
W.ピルと血栓症
1.ピルの服用で脳静脈洞血栓のリスク増加。18歳―54歳での服用者と比服用者のオッズ比は13であった。遺伝的に血液凝固の素因のある女性でピルを服用した場合のオッズ比は34であった(15)。
論文
2.外因性のプロゲストーゲンとエストロゲン(ピルやHRT)による血栓症のリスクは過少評価されてきた(16)。
論文(16)は、これまでの疫学的研究は健康なユーザーを選択し疾病のある女性を排除することによって実際のリスクを過少評価し、さらに年配の女性ではHRTが心臓発作を防ぐとまで主張を拡大してきたと批判している。しかし最近のデータによれば、早期の静脈および動脈血栓と心臓発作のリスクは4倍、より新しいプロゲストーゲンとより低用量のエストロゲンの組み合わせでは10倍にも及び、血液凝固第X因子のLeiden変異をもつ女性ではそのリスクは最高50倍にまで増加することを示している。服用者中35歳以上の女性では、心臓発作のリスクは非喫煙者で31倍、喫煙者では最高400倍にも達している。これらの結果は明らかに個々の女性にとって実際の生涯上のリスクを過少評価するものである。
W.ピル、HRTの研究における精神疾患と自殺のリスク増加
1.HRTの疫学的研究では自殺および自殺と疑われるものの相対リスクは2.4と報告されている。ピルの研究では、現在と過去のユーザーで自殺の試みの相対リスクはそれぞれ1.42と2.12である。気分と行動の変化がホルモン服用の副作用のひとつと考えられる。また、ホルモン服用は精神疾患と関連のあるミネラルとビタミンの変化を生じうる(17)。
論文(17)は、1つのHRT、3つのピルの研究からホルモンを服用している女性と自殺の試み、ならびに精神疾患のリスクの増加を報告している。多くの研究がエストロゲンとプロゲストゲンの派生物の脳に対する薬理学的効果とそれに続く気分と感情に対する影響を示してきている。両方の合剤は脳の皮質内で代謝され神経伝達物質への特定の作用を含む中枢神経の活動に影響を与える。攻撃、短気、抑うつ、疲労感を含む気分の攪乱はピル使用の研究から示されている。それらはおそらくアミンの経路の変化、ミネラルとビタミンのアンバランスと脈管系の反応の増大からきている。栄養学的変化それ自身が精神疾患と関連しているのでホルモンがミネラルとビタミンの両方を変化させるという事実は重要である。銅の増加と亜鉛の減少は精神疾患と関連しており、ホルモンはその状態を生じさせる。
X.ホルモンと癌
1.ピルの服用で絨毛性腫瘍が増加する(18)。
妊娠前のピルの服用経験があると、絨毛性腫瘍の相対リスクは1.9で、服用期間が長くなるほどリスクは高くなる。もっともリスクが高いのは妊娠した周期中にピルを服用していた場合で、相対リスクは4.0である。絨毛癌と存続絨毛腫とを別々の分析も同様の結果になりそれぞれ2.2と1.8の相対リスクとなった。
2.ピル、HRTと乳癌/卵巣癌これまでの乳癌の研究はリスクが過少評価されている。ピルで卵巣癌が減少するという主張は生物学的に言って信じがたい。ピル使用率が高く、卵巣癌が減少していない国もある。HRTでは増加している
(19)。3.HRTと喫煙の相乗作用による肺癌の増加が疑われている
(20)。Y.ピルと子宮内膜症
1.ピル服用中止後2〜4年では子宮内膜症発症のリスクが1.8倍(21)
ピルは子宮内膜症の症状軽減の目的で投与されることがある。しかし治療薬としてではなく、発症していない女性が避妊薬として服用した場合、服用中の発症リスクは0.4と低いものの、ピル服用をやめて2〜4年の女性では逆に発症リスクは1.8となっている(21)。
Z.ピル服用経験者の死亡率。やめて10年以内では非服用者と比べて子宮頚癌、循環器系疾病、脳血管系疾病、暴力や事故での死亡の相対リスクが有意に高い。肺癌、肝臓癌、自殺といった原因での死亡も高くなっている
(22−25)。[.プロゲスト−ゲンと血栓症ならびに骨粗しょう症。HRTと骨粗しょう症。
1.HRTは骨そしょう症、血栓、心臓発作、老化を防ぐより、むしろそれらを起こす可能性がある(26)。
骨粗しょう症の主要な原因となる要素としてストレスがあることが観察されてきている。これはウサギを用いた動物実験で確認されている。正常な健康のためにはホルモンの同化/異化率は同化側になくてはならない。ストレスや感情的なものがこのバランスを異化側にすることがある。黄体ホルモン化合物の存在下(ピルやホルモン補充療法での)では、ストレスはより低いレベルにある必要がある。骨粗しょう症の主なタイプは廃用性、ステロイド由来および血栓由来である。ホルモンの同化/異化の比率が異化側にあると、細胞膜は硬くなる。骨形成前駆細胞は癒合して破骨細胞を形成する。異化レベルが増加すると異常な巨核球の産生も導く。これらが、ただちに癒合して血栓を形成する粘性のある血小板を産生する。多くが骨細胞を殺して皮相骨内の血管を塞ぐ。後に死んだ骨は食細胞によって除去される。他の血栓は、冠状動脈を含む体内のいたるところに沈積する。これらの方法でホルモン補充療法は骨粗しょう症、血栓、心臓発作および老化を防ぐというより、むしろそれらを引き起こすことがある
(26)。2.一般的に信じられていることと異なり、骨粗しょう症は主にカルシウムまたはエストロゲンいずれかの不足が原因ではなく、鍵となる栄養素の不足に関連している。外因性の性ステロイドホルモンの摂取は必要不可欠な骨の栄養素の不足と骨形成の減少に関連していることを示唆している(27)。
骨性アルカリフォスファターゼ(ALP)は骨形成の程度を示す作用で、酒石酸抵抗性フォスファターゼ(TRAP)は骨吸収の程度を示す作用である。血清中のALP低下は亜鉛、マグネシウム、マンガンの濃度低下と関連している。骨粗しょう症と確認もしくは疑われていてHRTを行っている女性の間では血清中の銅のレベルが異常に高い。ホルモン服用者は他の骨粗しょう症の女性に比べて、白血球の亜鉛が低く、赤血球のマグネシウムが低く、血清中の骨ALPの濃度が低く、血清中の平均的なリンのレベルが有意に高い。ホルモン服用者は血清中のマンガン、TRAPおよびビタミンCレベルが低く、亜鉛とヒドロキシプロリンの尿中排泄は高いが統計的に有意には達していない。これらの結果は外因性のホルモン摂取が骨に必須の栄養素の減少と骨形成の減少に関連していることを示唆している(27)
\.エストロゲンとプロゲステロンに対する中毒の危険性
1.脳の機能、アミンの代謝と栄養状態は外因性ホルモンへの暴露によって変わることがある。感覚と意識に変化を生じさせる直接的・間接的メカニズムが依存性を引き起こす(28)。
ある種の天然に生じるステロイドホルモンは外から投与されると中毒になることがあるということが最近10年ぐらいで示されてきている。性ホルモンは感覚と意識に影響を与える。エストロゲンはモノアミン酸化酵素のの活性を低下させる。アミンレベルが幸福感あるいは陶酔感をも誘発する。過度の高レベルもしくは過剰応答は短気、不安といった感覚や不眠を生じさせ得る。プロゲステロンは逆の効果を有している。この論文(28)は、著者自身の抱合性エストロゲン(プレマリン625μg/日―ホルモン補充療法で使用されているもの)の経口暴露後の深刻な“閉経タイプ”の禁断症状を報告したものである。
参考文献
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その他:ピルの副作用と疑われる死亡や重症例の新聞・雑誌報道コピー