要 望 書(1)
経口避妊薬・ピルの認可に関して、内分泌撹乱物質の観点からの慎重な審議を要望します。
女性の避妊の選択肢を広げるということから日本でもピルの解禁を求める運動が続けられてきたことは事実ですが、その過程では化学物質あるいは合成ホルモンが内分泌撹乱化学物質として生態系に悪影響を及ぼす可能性があるということは広く知られてはいませんでした。
しかし現在、ダイオキシン、PCB、DDTなどの化学物質が女性ホルモンのような働きをしてホルモンバランスを狂わせ免疫系や神経系を撹乱させ、あるいは生殖異常を引き起こしていることが国内外の研究によって次々と明らかになってきています。野性生物ではすでに雄の雌化をはじめとしたさまざまな生殖異常が世界各国で報告されています。また人間においても精子の減少と内分泌撹乱化学物質との関係が危惧されています。米国で1940年代から70年にかけて流産予防薬として使用された合成女性ホルモンのDESが、その後10数年〜20年を経て、服用した母親から生まれた次の世代に数多くの膣ガンや生殖器の異常などを引き起こしたことは痛ましい事実です。
望まない妊娠とそれによって起こり得る事態を避けるための安全な手立てを確保することは女性たちにとって非常に大切な問題です。しかしピルを使用した場合、合成女性ホルモンを長期間にわたって摂り込むことが予想されます。それが内分泌撹乱化学物質として服用する女性自身にどのような影響を与えるのか、妊娠した場合の次世代への影響は、さらには排泄によりこの合成女性ホルモンが環境中に排出され環境にさらなる負荷を与えるのではないかといったことを私たちは危惧しております。体内で、あるいは環境中における他のホルモン様化学物質との相互・相乗作用も非常に大きな問題であると考えます。
内分泌撹乱化学物質とその影響について日本でも厚生省や環境庁、通産省において研究が開始されておりますが、DESのように負の影響が10数年〜20年という長い期間を経て次世代に現われる場合もあります。因果関係や目に見える影響が出てくるのを待っていては手遅れにならないとも限りません。環境保全、生態系保護、そして将来世代を含む私たちのリプロダクティブ・ヘルス/ライツのためには、予防的原則に立って考えていくべきであると思います。
このような現状をふまえ、ピルに関していま一度内分泌撹乱化学物質という側面から厳しく再検討され、承認を急がれることのないよう強く要望いたします。
「エコロジーと女性」ネットワーク
1997年12月24日
厚 生 大 臣 小泉純一郎殿
中央薬事審議会会長 南原 利夫 殿
中央薬事審議会常任部会長 内山 充 殿