*提出文書とは少し形式を変えてあります。出典は後述
  (印刷の場合90%くらいの縮小でないと、A4に入らないと思います)


経口避妊薬(以下ピルと称す)の安全性および有効性についての中央薬事審議会の「中間とりまとめ」における文献評価と、そこで触れられていない問題点、あるいは検討していただきたい別の文献

1.腫瘍に関する事項

1) 乳癌のリスクー比較的若年での乳癌発症は服用開始年齢の若さと関連があるという報告が数多くあります。年齢別のリスクを評価することは重要と考えます。もしピルが認可されれば、若い女性の服用が予想されることから、特に若年女性でのリスク評価は重要と考えます。

出典 「中間とりまとめ」での文献評価 「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(1)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相対リスク
現服用者
   1.24 
服用中止後1‐4年 1.16
     同   5‐9年    1.07
     同 10年以降  1.01

 

 

 

 

 

 

 

 

20歳未満の服用開始では、リスクがもっと高くなる。
@服用開始年齢が20歳未満の場合       
 現服用者         1.59         
  
 服用中止後1‐4年     1.49                      

     同    5‐9年    1.07                      
   
 同    10‐14年    1.13               
    同  15年以降      1.14                   
                                                       
A30歳前に乳ガンと診断されたもの                                
 20歳未満で服用開始し中止後1‐4年 1.95

B30‐34歳で乳ガンと診断されたもの
 20歳未満で服用開始、中止後1‐4年 1.54

C人種別リスク  アジア人
服用中止後1‐4年      1.35

同    5‐9年      1.19
同    10年以上     1.02

Dその他、
   未経産婦で現使用者のリスク  1.30

    第一子出産前ピル服用開始の現使用者  1.33

(2)

 

 

閉経期前の乳癌患者の診断平均年齢
@非服用者                 46.3歳
   服用者20歳前にピル服用開始     36.5歳

     20―24歳で開始                    41.5歳
   25歳以上で開始                      45.9歳
 ピル服用患者では非服用患者と比べて、腫瘍が大きく、腋窩への転移の頻度が高く、エストロゲンとプロゲストゲンのレセプター濃度が低く、生存率が低い。
(3) 36歳前に乳癌と診断された女性のうち、4年以上のピルの使用、とりわけ部分的に20歳前に服用の場合、4年未満の使用者に比べて2倍のリスクがある。
低用量ピル使用者の方が、より高用量のピル使用者より乳癌のリスクが高かった。
(4) 25−34歳の女性では、少なくとも1年以上のピル使用者は非使用者と比べて乳癌発生の相対リスクは1.7であった。
(5)

 

 

 

@30‐34歳で乳癌と診断された服用者(ever user)の非服用者(never user)に対する相対リスク
     服用者     3.33
A出産歴1回の女性で現服用者の服用期間別によるリスク
      (服用期間別でない場合ever userの相対リスクは5.88)
   2‐3年服用     5.67
   4‐5年服用     7.06
B35歳未満で乳癌と診断された女性の5年間の生存率
   非服用者     100%
   服用者(ever user)   37.3%
(6)


36歳前に乳癌と診断された女性たちの非服用者に対する相対リスク
                服用者中      経産婦中のピル開始時期          未経産婦
服用月数  服用者全体  経産婦  未経産婦  第一子満期産以前  第一子満期産以降 
1‐48    0.95     0.94   0.94     1.02          1.23       0.98
49‐96   1.43     1.42   1.35     1.51          1.40      1.37
97+    1.74     1.57   2.26     1.44          1.97      2.30


2) 子宮頚癌の発症リスクも、服用開始年齢が若く服用期間が長いほどリスクが高いという報告があります。また、参考として発症はヒトパピローマウィルスがもっとも強い因子であると述べられていますが、ピル使用とヒトパピローマウィルス感染との関連について考察した論文も出されています。

出典 「中間とりまとめ」での文献評価 「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(7)

 

非服用者と服用者との比較
  オッズ比    2.1

 

1970年代初期から1980年代半ばまでの間にアメリカでは子宮頚部の腺癌は35歳未満の女性の間で2倍以上の発生率となった。一方扁平上皮腺癌は同時期に減少した。
 最高リスクとなったのはピル服用12年以上のものでみられた(オッズ比 4.4)が、服用1-6ヶ月でもオッズ比は2・9であった。
(8)

 

 

 

非服用者と服用者との比較
  相対リスク  1.5

 

 

服用期間と服用開始年齢による相対リスク
                   服用期間(月)
服用開始年齢    12ヶ月未満    13‐60ヶ月   60ヶ月以上
 20歳未満           2.8         1.9        6・2
 20-24           0.8         1.8        2.6
 25-29           1.3         1.6        0.8
 30-34           1.3         0.9         1.3
 35歳以上         1.9          1.9          2.0
(9)

 

 

ピルの服用と子宮頚管上皮内新生腫瘍(CIN)
  非服用者に対する現在の服用者の相対リスク    1.5
              過去の服用者の相対リスク   1.4
  服用者中の服用開始時期による相対リスク
              20歳未満              1.3
              20 - 24歳                                       1.5
                                      24歳以上                1.1
(10)

 

 

 

 

 

ピルの服用と子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)内のヒトパピローマウィルス(HPV)感染
 CINの有無に関わらず、尖形コンジローマ(良性の小乳頭状疣腫)のある142人の患者の研究:
   ピル服用者と非服用者の子宮頚部病変におけるHPV感染率(オッズ比)
                 服用者          非服用者
   CIN (進行度別)      2.88       0.52

 HPVの感染率自体はピル服用者・非服用者で有意差はないにも関わらず、服用者では高度のCINになるほどHPV感染率が高いという傾向にあり、非服用者ではCINがないか軽度であるコンジローマでHPV感染率が高い。
 非服用者ではHPV陽性であっても腫瘍の状態は安定しているか、自然に退化すると考えられる。服用者ではHPV感染により腫瘍の状態が軽度から高度へと進行し、その結果CINが高度になるほどHPV陽性が増えていると考えられる。この仮説は服用者と非服用者での“ハイリスク”のHPVタイプ31/33および16/18の出現率はほとんど等しいということによって支持される。
 この研究結果は、ピルはHPV感染に起因する癌化の可能性を高めることを提示している。

(11)
ヒトパピローマウィルス(HPV)の発癌遺伝子発現誘発に対する一連のプロゲスチンとエストロゲンの効果が調査され、D(-)ノルゲストレルとエチステロンを除くすべての19-ノルテストステロン由来のプロゲスチンはHPV16発癌遺伝子の発現を刺激することが示された。


2.心血管系に関する事項

1) 静脈血栓症(12)では論文中の1つの表(never-userに対する相対リスク)の結果のみ記載されていますが、同じ表中でさえその他の重要な情報が含まれているのになぜそれには触れられないのでしょうか。また、申請中のピルには第三世代のものが一種類含まれているため、プロゲストゲンの世代別によるリスクの違いは重要な情報と考えます。また、日本で行われた臨床試験では血液凝固系の検査率は1周期で解析対象者の3割弱から4割、6周期では1割強から3割強といった状況で、非常に少なく、問題であると考えます

出 典 「中間とりまとめ」での文献評価 「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(12)

 

 

 

 

 

 

 

非服用者と現服用者の比較
          オッズ比
欧州         3.53
発展途上国    3.25

 

 

 

 

 

 

@現非服用者(ノンユーザー、過去の服用者も含む) と現服用者(ユーザー)の比較:ノンユーザーを1.00とする
          オッズ比
  欧州                3.95  (他のリスクファクターでの調整後は4.05)
  発展途上国 アジア地域     7.30    (アフリカ 2.14、 ラテンアメリカ 3.37) 
A現服用者(ユーザー)の服用期間の違いによる現非服用者(ノンユーザー)との比較
  月数      欧州     発展途上国        
   <4      4.39       4.77
   4-12     5.63       3.75
   13-24    4.20       2.23
   25-48    3.51       3.31
   49-72    3.88       2.31
   73-96    3.56       1.61
   >96     4.04       6.23
Bプロゲストゲンの違いによる現非服用者と現服用者の比較(オッズ比)
                             欧州              発展途上国
プロゲストゲン    エストロゲン<50μg    50μg≦    <50μg    50μg≦
 第一世代          3.37           4.05       0.00       3.62
 第二世代          3.61           3.83       2.79       3.79
 第三世代          7.36           ・・        12.23       ・・
(13)

 

 

 

  エストロゲン低用量でプロゲストゲンの違いによる静脈血栓症に対する影響: 現非服用者(non-user) との比較: 第三世代プロゲストゲン使用のピル服用者は、第二世代プロゲストゲン使用のピル服用者よりリスクが高くなる
  プロゲストゲン           オッズ比(未調整) (肥満度とその他のリスクファクター調整後)
デソゲストレル(第三世代)          9.1              8.3
ゲストデン(第三世代)            9.1             10.5
レボノルゲストレル(第二世代)       3.5              3.4
その他                     4.0              3.8
ピル服用者全体               4.1              4.1
(14)

 

 

 

 

  ピルと静脈血栓症:第二世代と第三世代ピル服用の女性における活性タンパクCに対する異なる感受性
 先天性血栓性素因として知られる血液凝固系第X因子Leiden突然変異を持つ女性がピルを服用すると相乗的に血栓症発症のリスクが高まることが明らかにされている。しかし血液凝固系の因子に突然変異のない女性でもピル(とりわけ第三世代ピル)を服用することにより、突然変異をもつ人と同じように活性化プロテインC抵抗性を獲得してしまい、凝固の抑制が阻害される。
 ピル服用開始後の活性化プロテインC(APC)に対する感受性の変化: 8年間以上ピルを休薬していた健康な2人の女性(26歳と34歳)が4ヶ月間第三世代単相ピル(デソゲストレル150μg/エチニルエストラジオール30μg)を服用。
 ピル服用開始前は正常域にあったAPCへの感受性は開始3日目に有意に上昇し、7日間の休薬中には有意に減少し、服用開始するとまた上昇した。3周期目には感受性率の値は≧3となった(Leiden特別変異を持つ女性の値に近づいた)。


3.次世代への影響

 現在、内分泌攪乱化学物質の次世代への影響を考えるうえで、その論議は生殖系だけでなく免疫系や脳神経系にも及んでいます。世界でも、一部の医学者・研究者の憂慮を除きそのような視点でピルが論議されてきたことはこれまでほとんどなかったと思われます。そのため該当する報告がないとしても、そのことが「影響がない」という意味にはなりません。そうした視点まで含めて安全性を考えることが今まさに問われているのであり、内分泌攪乱化学物質の研究の進展を待つことが重要と考えます。私たちは臨床試験中の妊娠例はもとより、試験(服用)終了または中止後の妊娠例についての追跡調査を要望していますが、上記の視点に立って調査されることをあらためて強く要望します。
 また、臨界期に薬品に使用されている性ステロイドに被曝すると、形態形成遺伝子の発現を抑制し子宮などの形成不全を起こさせるという研究も最近発表されており、ピルの分子レベルにおける影響を考える必要があります。

出典 「中間とりまとめ」での文献評価 「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(15) 遺伝子的男児で女性器をもった例
正常な女性器、卵母細胞のない卵巣、染色体は男性、上肢、下肢及び頚骨の彎曲、足の異常,
ピルとの関連性は不明

(症例報告)
受胎18ヶ月前から妊娠中6ヶ月までピル服用(低用量)

膣と子宮頚部は正常。卵巣は肉眼で見て位置と大きさは正常。顕微鏡検査では卵母細胞のない未成熟の性索。男性を示す性腺のセルトリ細胞とライディヒ細胞は存在しなかった。
ピルの成分:35μgのエチニルエストラジオール、ノルエチンドロン 500μg、1000μg (ニ相性)

本症例は性転換を示す屈指症候群の患者の母親が妊娠初期に経口避妊薬を服用していた2番目の例である(1番目は下記)。これが偶発性か、性転換と経口避妊薬との間に因果関係があるかどうか今後明らかにされるべきである。
 * (18)参照のこと 

(16)

 

 

 

 

 

遺伝子的男児で女性形:ピルの坑アンドロゲン効果か?
 母親が妊娠に気づいてすぐピル(メストラノール0.1mg/ノルエチンドロン2mg)を6錠服用。満期産。
 子宮、卵管、卵巣の存在。組織検査では膣、子宮の組織が認められ、卵巣と見える生殖腺は、胎児性の、原始精巣索のある睾丸パターンを示す。下顎発育不全、口蓋裂、脊柱彎曲、下肢彎曲、心臓は右側に押しやられていた。

 Gardnerらは、Aarskogが尿道下裂をもつ男児80例のうち5例では母親が妊娠初期に合成プロゲストゲンを投与されていたという発見を引用し、本例においても妊娠初期にピルに含まれるプロゲストゲンの坑アンドロゲン作用のためにミュラー管由来の器官(卵管、子宮、膣上部)が存続し、ウォルフ管由来の器官(精巣上体、精管、精嚢)の発達を抑制したのではないかという仮説をたてている。もうひとつの仮説としては“自然に起こる”生殖腺形成不全が、薬の何らかの作用で起こったものと考えられる、と述べている。 *(17)参照

(17)

 

  先天性四肢形成不全とピル
 妊娠中のピルへの暴露と生まれた児の四肢形成不全のリスク(155の生産例)
妊娠初期にピルを服用した場合の相対リスク  23.9
喫煙のファクターで調整後の相対リスク      23.1
(18)

 

  DESの胎内被曝は子宮形成期におけるWnt7a遺伝子の発現を抑制する
 Wnt7a遺伝子を欠いたマウスは女性生殖器の形成不全を起こす。DESに胎内被曝させたマウスも同様の生殖器の形成不全を起こす。臨界期にDESに被曝するとWnt7a遺伝子の発現に影響を与え、生殖器の形成不全を起こさせると考えられる。性ステロイドの乳腺や子宮組織に対する分子レベルの薬理学的反応を理解することが重要である。
(19)
   妊娠中の雌マウスにエチニルエストラジオールを投与すると雄の胎仔の精細管形成、セルトリ細胞の増殖、ライディヒ細胞の分化に影響を与え、精子形成の異常を生み出す。
(20)
  また、雄胎仔の精巣が分化する前に母マウスにエチニルエストラジオールを投与すると、卵精巣をもつ(両性具有)遺伝的には雄のマウスが出現した。
(21)   妊娠中のマウスにエチニルエストラジオールを投与すると、雌胎仔の卵胞細胞の減少や、髄質に卵胞細胞が増殖する異常を引き起こす。こうした卵胞細胞の機能障害が卵細胞の減数分裂の進行を促進し卵細胞を退行変成させ、卵細胞を死に至らしめる。 


4.妊娠機能に関する事項

   ここでは国内第V相臨床試験成績が評価の対象となっている項目がありますが、そもそも成分の異なる薬剤を同列に論じること自体問題があると考えます。また、私たちは12論文を入手して検討しましたが、なぜ7論文しか検討対象に入っていないのでしょうか。

1) 性周期の回復

出 典 「中間とりまとめ」での文献評価 「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(22)
  | 
(33)
全ての製剤で90日以内に90%以上の症例で月経の再来または排卵が認められた。
月経再来率
   (ピル服用終了後)
  〜60日  73.7〜100%
  〜90日  92.4〜100%

日本での臨床試験では自然月経の再来を追跡調査できたのが解析対象例に比して少なすぎる(下表参照)。
 また90%以上が90日以内に自然月経の再来があったというが、90日もかかるということ自体、体内のホルモンバランスが相当崩されていると認識すべきではないか。また月経の再来または排卵ということは、月経があっても排卵がないという状態も招いているのではないのだろうか。

論文番号 自然月経再来の追跡調査人数と率(全解析対象者に対して) 再来まで90日以上例
                                                                                                                                         および薬剤使用例
(22)  記録なし
(23) 月経再来記録なし。130例(13.6%)で服用中止後の卵巣機能観察  
(24)   134例(34.8%)                                            1例5ヶ月後、
                                                                                                                                   1例は薬剤投与で誘発
(25)   204例(39.3%)                                         1例152日
(26)    20例(37%)                                   1例85〜112日の間、
                                                                                                                                    1例141〜150日
(27)   198例(28.9%)                                         5例113〜140日、
                                                                                                                              2例141日〜、
                                                                                                                               最遅179日
(28)   370例(45.0%)                             3例90日以上
(29)    28例(44.4%)
(30)  再来までの期間についての記載なし
(31)    314例(50.3%)                                 2例90日以上
(32)   117例(26.9%)                   1例は2ヶ月間再来なく薬剤投与で誘発
(33)   265例(42.5%)                            1例158日 (終了後IUD切替)
                                                                                                                          1例180日
 薬剤投与で月経を誘発させているものが2例あるが、これは以下の(34)の論文からも注意を要する問題と考えられる。

(34)
  卵巣刺激と顆粒膜細胞腫
 卵巣顆粒膜細胞腫のある12人の患者のうち、ピル服用後無月経になり、排卵誘発剤などのホルモン剤を投与された者が半数の6人にのぼっている。


5.その他の安全性に係る事項

2) 耐糖能の低下―日本での臨床試験の検査率はあまりにも低く、これを全体化することはできません。また実際にはその少数の被験者の中でも有意な変化や、耐糖能が正常域から境界域へと移行した例もあるのに「異常が認められない」と言いきることには問題があると考えます。

出 典 「中間とりまとめ」での文献評価  「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(22)
  |
(33)

 

 

 

 

 

 

総合評価より 

米国添付文書では耐糖能が低下するとの記載がある。
 ピルはインスリン感受性を30〜40%低下させるとの報告がある。
 また、国内の臨床試験成績で空腹時血糖、
糖負荷試験を行った成績からは糖代謝上での異常は認められない。

 

 

 

国内の臨床試験においては、耐糖能の低下に関する試験は解析対象人数の数%という非常に少数の被験者にしか実施されていない。そこで異常が認められなかったとしても、数%の結果を全体化することには問題がある。また実際には、有意な変化や耐糖能が正常域から境界域へ移行した例もあるのに、「異常が認められない」とは言いきれない。

論文番号    耐糖能・糖負荷試験実施人数と実施率(全解析対象者に対して)

  1.      記録なし
  2.      7例(0.7%)    
  3.      グラフのみ記載、人数不明  
  4.       15例(2.9%)
  5.      2例(3.7%)
  6.      36例(5.3%) *57例に検査実施と記載されているが、36例以外のデータ不明
  7.      20例(2.4%)−6周期、5例(0.6%)−24周期
  8.      記録なし
  9.      記録なし
  10.        17例(2.7%)−6周期、6例(0.96%)−24周期 
                                *61例に実施と記載、その他のデータ不明
  11.       42例(9.6%)
  12.       9例(1.4%)    *22例に実施と記載、その他のデータ不明 
(35)

 

 

 

 

 

  炭水化物代謝における低用量ピル(エチニルエストラジオール30μg/レボノルゲストレル150μg)服用の影響

 210人を3、15、24、36ヶ月後にそれぞれ検査。中止者率は非常に高く、36ヶ月後には17人(8%)しか残っていなかった。医師の勧めによって服用を中止した13人は重要なグループとなっている。4人は服用開始して1年後に血圧が上がって下がらなくなり(服用中止後回復)、うち1人は心電図に異常が発見。服用2年を過ぎた2人に深部血栓症、1人に表在性血栓症。糖負荷試験で異常が検出された6人のうち、服用開始前に正常域にあった4人の女性も糖尿病の域に達していた。こうした異常は一見問題のないような他の被験者にも現れており、服用が長くなるほど耐糖能の異常を示す人の割合が増加していた。
 Wynn は、レボノルゲストレル150μgという用量はエストロゲンとの合剤で長期服用するためのプロゲストゲンとしては強力過ぎると結論づけている。またピルの重要な副作用の一つとして心血管系の疾病があげられるが、糖尿病はそのリスクファクターでもあるため、すべての代謝に対するピルの影響を研究することが重要であると述べている。

10)相互作用―大量(1000mg)のビタミンC製剤と一緒に服用すると低用量ピルの代謝系への影響は高用量ピル同様になるという報告もあります。

出 典 「中間とりまとめ」での文献評価  「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(36)

 

 

 

  大量のビタミンC製剤(1000mg)と一緒に服用すると低用量ピルは高用量ピル同様になる

 低用量ピル(トリキラー、トリファジル、ノルデット)服用者12人が50mgまたは1000mgのビタミンC補給剤をピルと一緒に服用。HDLコレステロール、フィブリノーゲン、ファクターZ・[、性ホルモン結合グロブリン、セルロプラスミンを検査。
 ピルユーザーが大量のビタミンCを摂取すると、重要な血漿タンパクに対するピルのステロイドの効果を高め、心血管系疾病のリスクを高める可能性がある。大量のビタミンC補給剤は、低エストロゲンピルを高エストロゲンピルに変えてしまうとBriggsは述べている。

 

6.その他、ピルの免疫作用に及ぼす影響

ピルの免疫機能に与える影響は重要と考えます。ピルと性感染症やエイズとの関係は、単に性道徳の乱れを招く恐れがあると言う意味ではなく、ピルが免疫能を低下させるために感染の拡大を招く可能性があるという視点から検討されるべきです。

出 典 「中間とりまとめ」での文献評価  「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(37)

 

 

 

 

 

  HIV感染細胞を子宮頚部と膣から剥げ落ちさせるリスクファクターとしてのピルその他の研究

  HIV-1血漿ポジティブの318人の女性。
              オッズ比
高用量ピル*使用者   12.3 *(エチニルエストラジオール50μg/レボノルゲストレル250μg
                                         またはノルゲストレル500μg)
低用量ピル**使用者   3.8 **(エチニルエストラジオール30μg/レボノルゲストレル150μg)

 ピルに含まれる人工のエストロゲンとプロゲストゲンが潜在的に免疫作用に影響を与え、それによる内因性ホルモンの抑制を通して、もしくは免疫細胞中のエストロゲンまたはプロゲストゲンレセプターへの直接作用を通して、ウィルス複製のコントロールに影響する可能性がある。さらにこの全身的作用に加えピルの使用が、厚い細胞の子宮頚部粘膜を含む局部的な生殖器の変化と結びついてHIV感染細胞が剥げ落ちることを増加させている可能性があると考察。

 

有効性について

避妊効果に関する事項
   アメリカで発売されている低用量ピルの最新の説明書(98年夏以降)には、一般的な使用での失敗率(妊娠率)は5%の記載に変わっています。「中間とりまとめ」で引用されている文献は1988年のもので10年も前のものです。

出典 「中間とりまとめ」での文献評価 「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(38)

 

 

 

 

避妊法使用開始1年間の失敗率(%)
 方法 
 理想的使用 一般的使用
経口避妊薬        3
 配合剤    0.1       
プロゲストゲン  0.5
  単味剤

  :
   (以下略)

 

(38)の原論文には下記のとおり配合剤、プロゲストゲン単味剤とも一般的使用の項は「N/A(データが入手できない)」となっている。30年以上も使用されているといいながら、こうした基本的データが入手できないというのはどういうことなのであろうか。非常に疑問である。

                                   理想的使用    一般的使用
経口避妊薬                         3
 配合剤             0.1          N/A
 プロゲストゲン単味剤    0.5          N/A
    (以下略

(39)
  (39)のもっとも新しい説明書によれば、一般的使用ではピルの失敗率(妊娠率)は5%となっている。これはFDAの指示によるものと考えられるため、35の医師用添付文書ガイダンスの内容も変更されている可能性が高いのではないか。早急に新しいものを取り寄せて検討すべきと考える。
(40)

 

 

 

 

 

 

  この論文は「中間とりまとめ」参考資料2.副効用のうち「卵巣貯留嚢胞の減少」を示す論文として引用されているが、この中でピルの処方と妊娠率とが調査されている。これによると、「ピルを処方されていない場合の妊娠率を1.00とすると多相性、低用量一相性、高用量一相性ピルを処方されている女性では妊娠率が65%減った」としている。この35%という非常に大きな妊娠率(=失敗率)となったことについて、Lanesらは「比較的多くの妊娠は服用指示が遵守されていないこと(コンプライアンスの欠如)を示唆しており、事実上ピルの効果を過少評価させた」とコメントしており、実際にはこうした例が「一般的使用」のひとつの現実ではないだろうか。

 各ピルの分類とピルの処方のない場合の妊娠率(失敗率)の比較
                         相対リスク
(ピルの)非 処 方                1.00 
最近の処方(現在の処方後30日間)            0.65
処方中(全体)                  0.35
  プロゲスチン単体                0.44
  多相性                     0.32
  一相 ≦35μgエストロゲン          0.36
      >35μgエストロゲン          0.34

 

参考資料2.副効用

   「予防」効果というのは非常にあいまいであり、被験者、あるいはコントロールの選び方に問題があります。死亡者や重病の女性をはじめとして拒否者や調査できなかった例が3つの論文では24.5%から50.9%にのぼっており、これらの参加状況如何で結果が変わる可能性もあります。特に、39で述べられているように、ピルの服用が卵巣癌でのより高い死亡率と関連がある場合には「予防効果」を過大視することになる恐れがあります。そのような「限界」が述べられているにもかかわらず、ただ「予防効果がある」としか記さないのでは、この「中間とりまとめ」を読んだだけの者をミスリードすることになりかねないと考えます。

1. 卵巣癌

出 典 「中間とりまとめ」での文献評価 「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(41)

 

 

 

 

 

ピル服用累積期間と卵巣癌発症の相対リスク
 ピル服用期間  相対リスク
  3〜6ヶ月      0.6
  7〜11ヶ月     0.7
  1〜2年       0.7
  3〜4年       0.6
  5〜9年       0.4
  10年以上      0.2

結論:ピル服用により卵巣癌発症のリスクは0.6で、その効果は3‐6ヶ月の服用でみられ、服用中止後15年継続する。

@816人の卵巣癌の患者が症例として選ばれたが、そのうち579例が調査対象となった。237例(29%)は次の理由でインタビューを受けず、調査されていない:死亡(3.1%)、病気(5.1%)、患者自身の拒否(5.2%)、医師による拒否(2.9%)、診断から6ヶ月以内にインタビューできなかった(12.7%)。 237例という数は非常に大きいため、これが含まれるか否かでは結果がかわる可能性もある。

A左の表からは、服用期間のはっきりしない8症例と88対照、3ヶ月以上の連続服用のなかった44症例と253対照、出産数不明の1症例と20対照は除かれている。

Bまた左記の表は卵巣上皮内癌についてのみであるが、非上皮内卵巣癌の54症例についての調査では、胚細胞(germ cell)タイプの卵巣癌については、服用者の非服用者に対する相対リスクは1.6で、5年以上の服用者では1.0としている。また性索間質性腫瘍(sex cord-stromal)タイプの卵巣癌はピル服用と年齢との間で統計的に有意な相関があり、45歳未満の服用者の非服用者に対するオッズ比は1.4としている。

(42)

 

 

 

 

 

 

 

遺伝子変異を保有する女性の卵巣癌発症のオッズ比

      全対照  遺伝子変異の対照
ピル服用歴
     なし   1.0          1.0
  あり   0.5          0.4
服用期間
   <3年     0.8       0.4
 3‐6年     0.4        0.4
  ≧6年     0.4       0.3
遺伝子変異
   BRCA1(50人)        0.5
 BRCA2(3人)         0.4

結論:ピル服用により卵巣癌の遺伝子変異を有する女性に対しても予防効果を示した。

@ この論文においては遺伝子変異をもつ卵巣癌患者の姉妹が対照群に選ばれている。144人の患者に合計328人の姉妹がいたがこれらのうち167人は以下の理由で調査に参加しなかった:死亡、卵巣癌に罹病、1925年以前もしくは1960年以降の誕生、重病、本人の拒否。これらの内訳は記されていない。したがって調査に参加した姉妹は161人で、半数以下となっている。上記論文と同様に、参加しなかった167人如何で結果は変わる可能性がある。

A 対照群161人のうち突然変異のデータを得られたのは95人で、53人がキャリア、42人はキャリアではなかった。理想的な対照群の女性は、遺伝子の突然変異をもち、姉妹が卵巣癌と診断された時点で卵巣癌には罹病しておらず両側の卵巣とも摘出手術をうけていない女性であるが、これは非現実的で、遺伝子ポジティブで姉妹が卵巣癌と診断されたときに両方の卵巣をもっていたのは42人しかいなかったため全員(53人)に広げた。

B 2人の患者は癌の診断前に片側の卵巣摘出(良性)を受けていた。72人の対照群の女性が卵巣摘出(片側5人、 両側67人)を受けていた。両側卵巣摘出の平均年齢は45歳。 対照群でこれほど多くが卵巣摘出を受けていれば、当然結果には大きな影響を与えると考えられる。Narodらは「閉経前に卵巣摘出が実施されていた場合には、これらの女性のピル服用は予想されるよりも少なくなっていたかもしれない」と述べている。またこの調査の限界は「生存している卵巣癌の患者だけを調査対象にしたこと」で、「もしピルの使用が卵巣癌でのより高い死亡率と関連しているならば、この選択はピルの予防効果を過大視することになる」と述べている。

(43) 服用期間    症例  対照   相対リスク
非服用者     86   683  1.0
服用者        90     921     0.6
3‐11月       16   106    1.0
1-2年         13  133    0.7
3‐4年         32  213    0.8
≧5年         12  137    0.5
10年以上     17  332    0.4

中止後の期間
               症例 対照 相対リスク
非服用者  86    683     1.0
服用者    74      815     0.6
<1年    15       54     1.0
1‐4年     15       129      0.6
5‐9年     18       221     0.5
≧10年    26      411    0.5

結論:ピル服用により卵巣癌発症の相対リスクは0.6で、服用期間に応じその減少効果は増大し、服用中止後も継続した。

@ この論文でも237人の患者のうち調査対象となったのは179人(75.5%)で、58人は次の理由で対象となっていない:死亡(3.8%)、病気の悪化(5.5%)、患者の拒否(5.9%)、医師の拒否(2.1%)、6ヶ月以内にその女性を捜し出せなかったかインタビューができなかった(7.2%)。 上記ふたつの論文同様、調査されなかった24.5%の患者如何では結果が変わる可能性もある。

A 著者らは、「もしピル使用が病気の進行に関係している、すなわち非参加者、特に死亡者や重病者に高いピル使用率があれば選択のバイアスがはたらくが、我々はこの影響の証拠をもっていないし、文献でもそうした影響を示唆してはいない」と述べている。しかしこれら3つの論文ともすべて死亡者や重病者は除外してあり、その事実は無視できない。

 

 

 

 

 

 

3.月経に関連した副効用
   「中間とりまとめ」では副効用として月経異常や月経困難症の減少があげられています。しかし第一にピルの服用とそれに続く休薬期間で生じる出血は消退出血であって、そもそも正規の月経ではなく人工的に起こしている出血です。したがって「月経不順の人でも正常周期となる」という表現は誤解を招くものです。

4.排卵抑制に関する副効用

  1. 卵巣貯留嚢胞―引用されている論文の一つは非常に問題点の多い論文です。
出典 「中間とりまとめ」での文献評価 「中間とりまとめ」で触れられていない問題点、または別の文献で検討していただきたい点
(40)

 

 

 

 

 

 

      相対リスク   頻度
                                     (1万人当り)
非服用者   1.0     4.4
服用者
エストロゲン
 
35μg以下  0.52        2.2
 
35μg<   0.24     1.2

結論:低用量ピルの卵巣貯留嚢胞の減少作用は、高用量ピルに比し弱いようである。

 

 

 

@左記の表では服用者の内訳として用量別の一相性のピルについてのみ記してあるが、原論文では多相性ピルについても記載されている。日本で申請中のピルには多相性タイプの方が多いにもかかわらずなぜ「中間とりまとめ」では記載されないのか不思議である。
 ピルの種類        相対リスク     頻度(/1万人当り)
 非処方            1.0                4.4
 処方中
  多相性          0.95(0.30‐2.31)      3.8
  一相35μg以下      0.52(0.17‐1.33)     2.2
        35μg<       0.24(0.01‐1.34)     1.2

ALanesらはさまざまな点でこの調査における誤分類の可能性や限界を述べている。使用ピルの誤分類の可能性、服用指示が守られなかったのではないかという可能性、ピルが卵巣貯留嚢胞の治療のために使用された可能性からくる誤分類、卵巣貯留嚢胞の診断の困難性からくる病気の状態の誤分類の可能性、喫煙のデータの欠如でリスク調整ができなかったこと、等々。これほどいくつもの問題点を持っているにもかかわらずこの論文が「ピルの服用が卵巣貯留嚢胞を減少させる」といった根拠として提示されるのは非常に問題ではないだろうか。仮にその根拠として使用されるに足るものであるのなら、避妊効果に関する事項で既に述べたように、この論文で調査されているピル服用中の妊娠率の高さも参考にされてしかるべきと考える。

 

 なお私たちは今回触れていない項目につきましても追って意見を述べる予定です。中央薬事審議会が「中間」のまとめに引き続き、慎重に審議を続けてくださることを最後に重ねて要望いたします。

                          「エコロジーと女性」ネットワーク

出典:
(1) Collaborative Groupon Hormonal Factors in Breast Cancer, Lancet, 347:1713−1727, 1996
(2) Olsson H ら、 Cancer, 67:1285- 1290, 1991
(3) Rookus.A ら, Netherlands Oral Contraceptives and Breast Cancer Study Group, Lancet, 344:844 - 851,1994
(4) Rosenburg Lら Am J Epidemiol 143:25-37, 1996
(5) Kay CR ら Brit J Cancer, 58: 675 - 680, 1988
(6) UK National Case-Control Study Group, Lancet, 1: 973-982, 1989
(7) Ursin G ら, Lancet, 344:1390-1394, 1994
(8) Thomas DBら, Am J Epidemiol, 144:281-289, 1996
(9) Gram IT ら, Am J Obstet Gynecol,167:40-44, 1992
(10) Gitsch G ら, Arch Gynecol Obstet, 252:25-30,1992
(11) Chen YHら, Biochemical and Biophysical Research Communications, 224:651-659,1996
(12)
WHO: Lancet, 346:1575-1582,1995
(13)  WHO
Lancet, 346: 1582-1588,1995
(14) Rosing J ら,Brit J Haematology, 97: 233-238,1997
(15) Kim MRら、 Am J Obstet Gynecol, 172:1042-1043,1995
(16)  Gardner LIら, Lancet, 2:667-668, 1970
(17) McCredie J ら,Lancet, 2:623,1983
(18) Miller Cら, Nature Genetics,20:228−230,1998
(19) Yasuda Y ら, Am J Obstet Gynecol,159:1246-1250,1988 
(20) Yasuda Y ら, Teratology,32:219−227,1985
(21) Yasuda Y ら,Am J Obstet Gynecol,127:832-836,1977
(22)-(33) 各社の国内第V相臨床試験論文 (出典は要望書2の参考文献@−Kに同じ)
   なお、「中間とりまとめ」では上記12論文のうち7論文のみ(23,25,27,28,31,32,33)採用されている
(34) Willemsen W らLancet,341:986-988,1993
(35) Wynn V、 Am J Obstet Gynecol 142:739-746,1982
(36) Briggs MH,Brit Medical J, 283:1547,1981
(37) Mostad SB ら, Lancet,350:922-927,1997
(38) Corfman PA ら, Contraception, 37:433-435,1988
(39)
  ピルの新しい説明書,(ORTHO TRI-CYCLEN,ORTHO CYCLEN)
(40) Lanes SF ら, Am J Obstet Gynecol, 166:956-961,1992
(41) The Cancer and Steroid Hormone Study of the Centers for Disease Control and the National Institute of Child Health and Human Development:  N Engl J Med, 316:650-655,1987
(42) Narod SA ら, N Eng J Med, 339:424-428, 1998
(43) The Centers for Disease Control Cancer and Steroid Hormone Study:JAMA,249:1596-1599,1983