低用量ピルの医師向け情報提供資料より(抜粋)
ピルの添付文書の改訂について(2002年8月)
ピル服用が禁忌となる場合
ピル服用に慎重な判断を要する場合
妊婦・授乳婦の場合
併用薬のある場合の注意
併用薬のある場合の対処法NEW
服用希望者への問診チェックシート例
ピルの添付文書の改訂について
2002年8月より、低用量ピル(全種類)の添付文書に次のような改訂(追加)が指示されています。
禁忌(処方してはいけない・飲んではいけない人) (追記)
・前兆(閃輝暗転、星型閃光等)を伴う偏頭痛の患者 [前兆を伴う偏頭痛の患者は前兆を伴わない患者に比べ脳血管障害(脳卒中等)が発生しやすくなるとの報告がある]
・肺高血圧症又は心房細動を合併する心臓弁膜症の患者、亜急性細菌性新内膜炎の既往歴のある心臓弁膜症の患者 [血栓症等心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある]
・血管病変を伴う糖尿病患者 [血栓症等心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある]
慎重投与 (追記)
・前兆を伴わない偏頭痛の患者 [脳血管障害(脳卒中等)が発生しやすくなるとの報告がある]
・心臓弁膜症の患者 [「禁忌」の項参照]
妊婦、授乳婦への投与 (追記)
・[母乳中への移行、児において黄疸、乳房腫大が報告されている]
その他の注意 (下線部追記)
・外国の疫学調査の結果、静脈血栓症のリスクは、経口避妊薬を服用している女性は服用していない女性に対し、3.25〜4.0倍高くなるとの報告がある。静脈血栓症のリスクは経口避妊薬服用開始の最初の1年間において最も高くなるとの報告がある。
・外国で経口避妊薬の服用により全身性エリテマトーデス(SLE)の悪化、アナフィラキシー様症状、溶血性尿毒症候群(HUS)があらわれたとの報告がある。
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ピル服用の禁忌・慎重投与の例
以下は、低用量ピルが承認されたときに医師向け情報提供資料の一部として厚生省から出されたものです。資料は、日本産科婦人科学会、日本母性保護産婦人科医会、日本不妊学会、日本性感染症学会、日本家族計画協会、日本エイズ学会の協力を得て作成されたとされています。なお、文中のOCは経口避妊薬(Oral Contraceptive)の英語の頭文字で、低用量ピルのことです。
ただし、私たちは禁忌(服用すべきでない場合)などの症状がなければ大丈夫と考えているわけではありません。
(1)服用が禁忌となる場合
1)本剤の成分に対し過敏性素因のある女性
2)エストロゲン依存性腫瘍(例えば乳癌、子宮体癌、子宮筋腫)、子宮頚癌およびその疑いのある患者
[腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すことがある]
3)診断の確定していない異常性器出血のある患者
[性器癌の疑いがある。出血が性器癌による場合は、癌の悪化あるいは顕性化を促すことがある]
4)血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患またはその既往歴のある患者
[血液凝固能が亢進し、これらの症状が増悪することがある]
5)35歳以上で1日15本以上の喫煙者
[心筋梗塞等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある]
6)血栓性素因のある女性
[血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある]
7)抗リン脂質抗体症候群の患者
[血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある]
8)大手術の術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内及び長期間安静状態の患者
[血液凝固能が亢進し、心血管系の副作用の危険性が高くなることがある]
9)重篤な肝障害のある患者
[代謝能が低下しており肝臓への負担が増加するため、症状が増悪することがある]
10)肝腫瘍のある患者
[症状が増悪することがある]
11)脂質代謝異常のある患者
[血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。また、脂質代謝に影響を及ぼす可能性があるため、症状が増悪することがある]
12)高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)
[血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。また、症状が増悪することがある]
13)耳硬化症の患者
[症状が増悪することがある]
14)妊娠中に黄疸、持続性そう痒症又は妊娠ヘルペスの既往歴のある女性
[症状が再発するおそれがある]
15)妊娠または妊娠している可能性のある女性
「妊娠中の服用に関する安全性は確立されていない]
16)授乳婦
[母乳の量的、質的低下がおこることがある。また、母乳中に移行することが報告されている]
17)思春期前の女性
[骨端の早期閉鎖をきたすおそれがある]
(2)服用にあたり、慎重な判断を要する場合
1)40歳以上の女性
[一般に、心筋梗塞等の心血管障害が発生しやすくなる年代であるため、これを助長するおそれがある]
2)乳癌の家族歴または乳房に結節を有する女性
[エストロゲン投与と乳癌発生との因果関係についてその関連性を示唆する報告もあるので、定期的に乳房検査を行うなど、慎重に投与する]
3)喫煙者
[心筋梗塞等の心血管障害が発生しやすくなるとの報告がある]
4)肥満の女性
[血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある]
5)血栓症の家族歴を持つ女性
[血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある]
6)軽度の高血圧(妊娠中の高血圧の既往も含む)の患者
[血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある]
7)耐糖能の低下している女性(糖尿病患者及び耐糖能異常の女性)
[耐糖能が低下することがあるので、十分コントロールを行ないながら投与すること]
8)ポルフィリン症の患者
[症状が増悪することがある]
9)肝障害のある患者
[耐糖能が低下しており肝臓への負担が増加するため、症状が増悪することがある]
10)心疾患、腎疾患又はその既往歴のある患者
[ナトリウム又は体液の貯留により症状が増悪することがある]
11)てんかん患者
[症状が増悪することがある]
12)テタニーのある患者
[症状が増悪することがある]
上記リスク因子は、単独とは限らず、複数のリスク因子を併せ持つことも少なくない。このような場合には、OC投与の可否について慎重に検討すべきである。
注)デュビン・ジョンソン症候群、ローター症候群は、禁忌の「重篤な肝障害のある患者」、「妊娠中に黄疸歴のある患者」及び慎重投与の「ポルフィリン症の患者」、「肝障害のある患者」にあたり、注意が必要である。
・耳硬化症とは、耳の中の骨のひとつ(アブミ骨)の周辺に骨の異常な増殖が起こり、難聴となる病気。白色人種や女性に多く、遺伝することもあり、同一家系に多発することもある。
・テタニーとは、主に手足の筋肉が部分的に強いけいれんを起こし、ひじやひざが曲がったまま動かなくなる状態をいう。(いずれも服用者向け情報提供資料の説明から抜粋)
(3)妊婦・授乳婦への投与
(1)妊娠が確認された場合には投与を中止すること。なお、2周期連続して消退出血が発来しなかった場合、妊娠している可能性があるため、妊娠の有無について確認すること。[妊娠中の服用に関する安全性は確立されていない]
(2)授乳中の婦人には他の避妊法をすすめるなど適切な指導をすること。[母乳の量的質的低下が起こることがある。また母乳中へ移行することが報告されている。]
(4)服用希望者の使用する併用薬と対処法
@薬剤
ア.OC(ピル)により作用が増強される薬剤
副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン等)、三環系抗うつ剤(イミプラミン等)、塩酸セレギニン、シクロスポリンなどの薬剤[OCによりその作用が増強することがある。]
イ.OC(ピル)により作用が減弱される薬剤
硫酸グアネチジン、インスリン製剤、スルフォニル尿素系製剤、スルフォンアミド系製剤、ビクアナイド系製剤等、Gn-RH誘導体(酢酸プセリン等)
[OCにより、硫酸グアネチジンの降圧作用が減弱すること、耐等能、インスリン分泌が影響され血糖降下剤の作用を減弱すること、Gn-RH誘導体の治療効果を減弱することがある。]
ウ.OC(ピル)の作用を減弱する薬剤
リファンピシン、バルビツール酸系製剤(フェノバルビタール等)、ヒダントイン系製剤(フェニトインナトリウム等)、カルバマゼピン、グリセオフルビン、テトラサイクリン系抗生物質(テトラサイクリン等)、ペニシリン系抗生物質(アンピシリン等)、HIV感染症治療薬(リトナビル、メシル酸サキナビル、ネビラビン)、トログリタゾン
エ.副作用が増強するおそれがある薬剤
塩酸テルビナフィン(月経異常をおこすおそれがある)
A対処法(NEW 2002.11.18)
ア.短期間使用薬剤: 抗生剤であるリファンシピンや抗真菌剤のグリセオフルビンを服用中又は服用中止後7日間以内では、他の避妊法を併用する必要がある。OCと他の薬剤との相互作用は個人差が大きいことも念頭におく必要がある。
イ.長期間使用薬剤: この種の薬剤では抗てんかん剤、抗結核剤及び抗HIV剤が問題となる。これらの薬剤を使用しているものに対して、OCを処方する場合には十分注意しなければならない。[服用を止めた後も、これらの薬剤が完全に体外に排泄されるまでにはしばらく時間がかかるので、とくに長期にわたって使用した場合は、OC処方は4週間ぐらい延期した方がよい。]
ウ.広域スペクトルムの抗生剤: (注:幅広く効く抗生物質の場合です)
a. 広域スペクトルム抗生剤の服用中及び服用後7日間は他の避妊法を併用する必要がある。[広域スペクトルム抗生剤の使用では腸内細菌叢が変化し、性ステロイドの腸肝循環は抑制され、OCの血中濃度は低下することが報告されている。]
b.OCを飲んでいる婦人にテトラサイクリンがはじめて処方される場合は、1ヶ月間は、妊娠する可能性があるので中いそ促す必要がある。[テトラサイクリンなどの長期使用では、耐性菌が腸内細菌叢として腸肝循環に関与するようになることが知られている。]
(*必ずしもこれと同じ問診をしなければならないとされているわけではありませんが、このチェックシートの利用が勧められています。)
| 質問項目 | はい | いいえ | 医師のチェック事項内容 | ||
| 1 | 年齢を記入してください。 | 満 歳 | → | 40歳以上は慎重投与。また、思春期以前に該当する場合は禁忌。 | |
| 2 | 喫煙をされる方は1日の本数を記載して下さい。 | 1日 本 | → | 35歳以上でかつ、1日15本以上は禁忌。 | |
| 3 | 以前に、他の経口避妊薬又はホルモン剤を服用したときに過敏症を経験したことがありますか。 | → | 禁忌への該当性の確認 | ||
| 4 | ご家族で乳癌と診断されたことのある方はいますか。 | → | 慎重投与(乳癌)への該当性の確認 | ||
| 5 | 乳房にしこりのようなものがありますか。 | → | 禁忌(乳癌)への該当性確認 | ||
| 6 | 性器出血がありますか。 | → | 禁忌(エストロゲン依存性腫瘍・性器癌)への該当性の確認 | ||
| 7 | ふくらはぎのいたみ・むくみ、突然の息切れ、胸の痛み、激しい頭痛、めまい、失神、視力障害(目のかすみ)、舌のもつれなどがありますか。 | → | 禁忌への該当性の確認 | ||
| 8 | 以前に、血栓性静脈炎、肺血栓症、脳血管障害、冠動脈疾患にかかったことがありますか。 | → | 禁忌への該当性の確認 | ||
| 9 | 先天性血栓性素因があると言われたことがありますか。 | → | 禁忌への該当性の確認 | ||
| 10 | ご家族で血栓症にかかったことのある方はいますか。 | → | 慎重投与への該当性の確認 | ||
| 11 | 次に該当するものがあると言われたことはありますか。 抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫性疾患、悪性腫瘍、溶血性貧血(鎌状赤血球症、サラセミアなど)、濃縮凝固性剤輸注、静脈瘤、高血圧症、糖尿病、高脂血症(脂質代謝異常)、脱水症、重症感染症 |
→ | 禁忌または慎重投与(後天性血栓性素因)の該当性の確認 | ||
| 12 | 流死産を繰り返したことがありますか。 また、血小板減少症といわれたことはありますか。 |
→ | 禁忌(抗リン脂質抗体症候群)への該当性の確認 | ||
| 13 | 血圧が高いと言われたことがありますか。 | → | 禁忌(中等度以上)、慎重投与(軽度)への該当性の確認 | ||
| 14 | 妊娠をされたことがある方は、妊娠中に血圧が高いと言われたことがありますか。 | → | 禁忌(中等度以上)、慎重投与(軽度)への該当性の確認 | ||
| 15 | 妊娠をされたことがある方は、黄疸、持続的なかゆみ、妊娠ヘルペスがありましたか。 | → | 禁忌への該当性の確認 | ||
| 16 | 大手術をされる予定があるか、最近、されましたか | → | 術前4週間、術後2週間は禁忌 | ||
| 17 | 現在、妊娠中ですか、又は妊娠している可能性はありますか。 | → | 禁忌への該当性の確認 | ||
| 18 | 最近、お産をされましたか。 | → | 分娩、妊娠中期流・早産後4週間は禁忌 | ||
| 19 | 現在、授乳をしていますか。 | → | 禁忌、慎重投与への該当性の確認 | ||
| 20 | 心臓病や腎臓に障害があると言われたことがありますか。 | → | 慎重投与への該当性の確認 | ||
| 21 | 脂質代謝異常(高脂血症等)があると言われたことがありますか。 | → | 禁忌への該当性の確認 | ||
| 22 | 糖尿病又は耐糖能異常があると言われたことがありますか。 | → | 慎重投与への該当性の確認 | ||
| 23 | 肝臓に障害があると言われたことがありますか。 | → | 禁忌(重篤)、慎重投与(軽度)への該当性の確認 | ||
| 24 | てんかんと言われたことがありますか。また、手足のけいれんなどの筋痙縮経験されたことがありますか。 | → | 慎重投与への該当性の確認 | ||
| 25 | ポルフィリン症と言われたことがありますか。 | → | 慎重投与への該当性の確認 | ||
| 26 | 耳硬化症と言われたことがありますか。 | → | 禁忌への該当性の確認 | ||
| 27 | 現在、医師の治療を受けていますか。 | → | 慎重投与への該当性の確認 | ||
| 28 | 現在、お薬を服用していますか。 | → | 併用薬等の確認 | ||
| 29 | コンタクトレンズを使用していますか。 | → | 装着不具合に対する対応 | ||
| (その他) 肥満している場合は、慎重投与 *肥満[body mass index(体重kg)/身長の2乗(m)が30以上] |
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なお、服用前の検査、服用中の検査等については、「服用前の検査」のページをご覧ください。