海外情報2
(訳・文責は「エコロジーと女性」ネットワーク)The Mail on Sunday,1998年2月15日付
被害者と家族らが危険なピルを告発へ
アリソン・ゴードン(社会問題編集員)
死亡と重症にいたったのは経口避妊薬が関係しているとして製薬会社を訴えている被害者170人にたいして法律の援助が差しのべられることになった。
ピル服用後、30人の女性が死亡し140人が血栓症を起こしたといわれている。
発病後、訴訟を起こした女性たちに犠牲者の家族も加わろうとしており、製薬会社は避妊ピルの開発、マーケティング、供給の段階で怠慢であったとして補償をもとめている。
副作用
訴えの相手はフェモデンを製造したシェリングヘルスケア社、ミヌレットを製造したワイス社、メルチロンとマーヴェロンを製造したオルガノンラボラトリー社の3社である。しかし3社ともに自社のピルは危険ではないといっている。
これにたいして被害者の女性たちの弁護士らはロンドン高等裁判所の法廷で企業にたいして健康への危険をふくめて企業の所有する調査研究データすべてを開示するよう求める予定である。
政府の未発表の数字によれば過去4年間に経口避妊薬およびホルモン埋め込み避妊薬の使用後50例の死亡が医師によって報告されており、ピルとの関連が疑われている。
このうち、3人に1人がピル服用後3ヶ月以内に死亡している。
保健省の医薬品管理部は医師のデータを集計して、経口避妊薬と死亡数[( )内]をつぎのように発表した。ミクロジノン(11)、フェモデン(10)、マーヴェロン(8)、シレスト(6)、ミヌレット(4)、ノリデイと埋め込みホルモン(4)、ロジノン(3)、ローエステリン(2)、メルチロン(2)、ビノヴアム(1)、ミクロノル(1)である。
死亡者のうち6人は20歳以下の健康な若い女性であった。また、そのうちの幾人かはピルを使いはじめてすぐにピルに関係していそうな初期症状を医師に訴えていた
かかりつけの開業医にピルを服用中であることを告げ、他社の製品に変えてほしいと申し出た女性もいた。また喫煙者と極端な肥満女性も含まれていた。死亡の1ヶ月まえに足の痛みを訴えていた22歳の女性の場合はこの症状が致命的な血栓症の最初の警告であったかもしれないのに見逃されてしまっていた。この問題でキャンペーンをしている元開業医のジョン・ガリー博士は「国民はこのような情報を知る権利がある。ピルによって死亡することがある、しかもあっという間に死にいたる可能性があることを多くの人に知らせる必要がある」と昨夜語った。経口避妊薬ピルは著しい健康障害を起こす可能性があることを外箱に明示するべきであり、箱の中の添付文書に書いただけでは不十分であると多くの医師は述べている。
また、ピルを服用した場合に健康に問題を起こしそうな女性を特定するためにもっと多くの研究調査が必要であるとする医薬品管理局の見解に多くの専門家が賛成している。
ワイス社は高等裁判所で精力的に抗弁に努めると昨夜約束した。
シェリング社の代表も、会社を弁護し、ピルはイギリスだけでなく世界中で何百万人もの女性に使われていて安全であると主張するつもりだと述べた。
安全性
「医薬品を利用する患者の安全性が最重要事項である」と言う政府の主任医務官、ジェレミー・メッターズ博士は「ピルを適切に用いれば健康な女性にとっては危険ではないという豊富な証拠があり、調査研究を続行中である」と明言した。
「何百万人もの女性がピルを使ってきたのだからピル服用中の女性に死者がでたと報告されても驚くにはあたらない。それに、これらの報告はピルと死亡との間の因果関係を明らかにしているわけではない。ピルを服用していて気にかかる女性は医師に相談するべきである」とも言っている。
15歳の若さで死亡した健康な女性の悲劇
フェモデンにたいする恐怖――かつては市販されているピルのなかでもっとも安全であるといわれていたフェモデンは1988年に出現し、1年後には認可された。
コンピューター・オペレーターのドーン・ワトソン(19歳、ウエストミドランド、ワルサル出身)は自分の車のタイヤに倒れ込み死亡した。ピルを服用しはじめて4ヶ月目だった。検死の結果、右足の血栓が心臓に達していた。母親のキャスリーンはピルの外箱にはっきりとわかる警告を示すべきであるという運動をはじめたがだれも聴こうとはしないといっている。
レイチェル・アッシュブルック(22歳)は若々しく、体調もよく、健康で飲酒も喫煙もしなかった。しかし、1991年の休日にコーンウオールで転倒し、6週間後に重症の静脈血栓症で死亡した。チェスターに住む兄のウエインは専門家に「これは百万人に一人の割合でしか起こらない事例だが私たちが住んでいる地域の半径6キロメートル以内に合計すると3人も現れたことになる」といわれた。彼女の主治医は「医師たちがいまだにフェモデンの旗振りをしているなんて信じられない。若い女性や少女までがフェモデンで死んでいっているというのに」と語った。
デニス・ホッセル(25歳)は健康で婚約中であった。フェモデンを服用しており、足に炎症を起こしていると診断されて別のピルに変えたが遅すぎた。肺塞栓症を起こし、1995年のクリスマスに死亡した。
発作
キャロライン・ベーコンは14歳のときからボーイフレンドがいて、家族計画クリニックでピルを処方してもらっていた。15歳になったとき発作を起こし、11ヶ月後に死亡した。両親は彼女がピルを服用していることを知らなかったのでピルが危険であると警告することができなかった。母親のジェニーによれば、キャロラインはそのクリニックに行って頭痛がするといったが、そこでは彼女の主治医に連絡をしてくれなかった。頭痛はピルの副作用として起こっていた可能性があるのに無視されてしまった。子どもへの経口避妊薬投与に反対する親の会を結成したベーコン夫人は11500人の署名を添えて政府に嘆願書を提出し、保健省のテッサ・ジョウエル大臣から同情による発言の機会を与えられた。彼女の弁護士は補償を受ける権利があるかどうかを調べるために専門家による事例検討会を行うことをもとめている。
ベヴァリー・マーシュは21歳の誕生日の前夜に死亡した。ピルの服用をはじめて2ヶ月目であった。彼女は踊り子であり、乗馬もしていたが愛煙家で肥満という二つの危険因子をもっていた。1994年12月に胸の痛みで倒れ、心臓発作で死亡した。ピルが関係しているかもしれないと聴いた検死官のモンテーギュ・レヴァイン卿はシェリング社と政府の医薬品安全性委員会に対して「警告をよりはっきりさせるように」という文書を送った。ベヴァリーの母親であるパトリシア(ウイルトシャーのウオーミンスターに在住)は「政府がもっと強い警告を発するかピルを禁止してくれていたら」といっている。
リサ・スミスは肺栓塞症で死亡したときには16歳だった。ミヌレットを服用しはじめて4ヶ月後だった。彼女は背が高くほっそりしていて、喫煙はしていなかったし、母親のヘレンが見ても健康上の問題があるようには思えなかった。「医者がこのような事実を知りながら私たちに警告しないと信じることができなかった。人々はピルが殺人をする可能性があることを知っているべきである」とヘレンは語った。
(デイリー・メイル,1999.4.21)
ひとりの女性として、私はピルが今世紀最大の災厄のひとつであると信じる
ー社会的、道徳的、そして医学的に
個人的見解 Jeanette Kupfermann(ジャネット・クーフェルマン)
再び、ピルが見出しを飾っている。著名な癌統計学者は10年以内に乳癌の率は3倍になりうると警告して、その安全性について新しい恐れを引き起こした。
衛生・熱帯医学ロンドン校の癌および公衆衛生部のクリム・マクファーソン(Klim McPherson)教授は、10代半ばの早い時期にピルを飲み始めた女性たちに対する潜在的に有害な結果は、長期の安全性をみる膨大な研究の中で見落とされてきた、と述べている。
これはもっともな論点と思われる。ピルの安全性をみる初期の研究のほとんどは、結婚しており子どもをもっている、より年配の女性に対して行われた。彼らは子どもを産む間隔をあけるためにそれを使用した。こんにち、女性たちはより早くセックスを行うようになり、子どもをもつのはずっと遅くなっている。彼らは自分たちの母親、あるいは祖母の世代よりもずっと長い間ピルを服用していくだろう。
これは私がピルを20世紀最大の災厄のひとつであると確信するにあたってのまだもうひとつの疑問符でしかないー医学的見地からだけではなく、社会的、あるいは道徳的見地からもまたそうなのだ。
未来の世代はピルを、繊細にバランスのとれた女性のホルモンシステムと妊孕性に対するダメージのみならず、等しく繊細にバランスのとれたセックスと家族間の関係に対するダメージの原因としても追想することだろう。
ファンタジー(幻想)
彼らはピルを社会の中の毒薬として見るだろう。私は何かの宗教的信念からではなく、証拠に重きをおき、常識を用いてこの結論に達している。
私たちはピルを、女性たちを“自由にする”もの−女性を望まない妊娠から解放し、母親たちが決してなし得なかったやり方で自分のセクシュアリティを発揮する機会を与えてくれたもの−として語っている。
私たちはピルを、それがあたかも純潔と貞節という圧制的な“時代遅れの”観念を追い払い、自分たちによりよい生活を魔法のように作り出したかのごとく語っている。稀にしか認められないものは、純潔と貞節(これらはピルとともに窓から出ていった)が固執されていた間−少なくともひとつの理想として−女性たちは守られていたということである。
結婚という枠内でのみ行われるセックスという観念をピルが解決するやいなや、女性たちは性的にアクティブであり、複数のパートナーと体験し、イニシアティブをとることに備えなければならないと感じ始めた。
これは性的な可能性というエキサイティングな新しい世界を開いてきたかもしれないが、また、以前には決してなかった搾取に女性たちを向かわせた。
彼女らのセクシュアリティは、男性のファンタジーにもとづいて商品やポルノグラフィとなり、何が男性から期待されているかの一般的傾向を設定した。女性たちは男性の期待に添うように振舞うことを期待された。
女性たちは、かつては決してなかったような方法で男性が“手に入れられるもの”となってきて、素早い“性交”−20世紀後半の特徴−がピルとともに生まれた。
結果は、あるライターが呼んだように“女性たちのゲイシャ化−男性を楽しませるための女性”といったものだった。純潔という観念を追い払い、増大する男女の無差別な関係が男/女の関係に影響を与えただけでなく、それは家族の変化のパターンにもはね返った。
性的な魅力は周知のとおり短命のものであり、ピルとともにお互いの関係を保っていくのは難しくなってきた。離婚と家族の崩壊が増加した。
かつては母/子の関係が女性の人生の中でもっとも重要なことであったが、重点はシフトしてきた。しばしば子どもたちや増えた家族を犠牲にして性の果実を見つけるよう女性たちに圧力がかかった。
もしもピルが誰かに恩恵を与えたとすれば、それは結局のところ男性に対してであった。しかしそこでもピルは両性間の真の親密さを創り出すよりはむしろ壊しているという逆説的な効果をもっていたのである。
男性は、かつては女性にタックルする前に要求された真の親密さというもっとも重要な問題を話し合う必要性を避けて、避妊におけるどんな責任からも逃れることができた。
社会的・道徳的懸念のほかに、ピルの健康へのリスクについての懸念は決してなくなっていない。それはピルが60年代後半の女性たちの人生に“革命を起こし”て以降のいくつかの恐慌の問題である。
少なくとも4つの大きな研究がピルを乳癌と関係付けている。1995年には主要なアメリカの研究がピルを子宮頚癌と関係付けた。
ピルが有害であるというどの主張に対しても、ピルは女性たちをこの癌やあの癌から守っており、腺維腫からにきびの治療に至るまでの利点をもっているという反論があるように、何がそれほど混乱しているのだろう。
真 実
真実を捉えるのは難しい−そしてその真実にはまだたくさんの不確実さが残っているのである。
最新の“恐慌”で、マクファーソン教授は私がピルの安全性について真の心配ごとと考えているものを引き出している。彼は、乳癌に対する女性のリスクはその女性の初潮と最初の妊娠までの期間中の体内のホルモンレベルに関係していることを指摘している。
ピルの中の合成ホルモンに暴露することもまたファクターのひとつであると想定することは無理からぬことである。
予想されたように、その驚異の薬に何の批判も許さない、騒々しい“ピル賛成派”の一隊は怒りの反応を示した。彼らは“ピル服用の利点はリスクよりずっと勝っている”という自分たちのマントラ(呪文)をひけらかしてマクファーソン教授に攻撃をかけた。
少なくともマクファーソンの懸念を認める代わりに、彼の批判者たちは、望まない妊娠と中絶を生じさせるパニックをつくりだすものだと彼を非難している。これはこの点で女性たちを悩ませる“無用のもの”だと彼らは述べている。
しかしこの年の初めにピルに“太鼓判を押して”女性たちに与えたことは、どのように役立った−そして正直であった−というのだろうか。これは70年代にピルを飲み始めた女性たち−こんにちのユーザーを代表するには難しいグループ−の25年間の研究の公表資料を追跡したものである。
感 染
ピルをやめて10年後、彼女たちの心臓病と癌による死亡はピル非使用者と比べてもそのリスクは大きくないことがわかった。ただの10年である! ピルが太鼓判を押されるのに、本当に充分な長さだったろうか?
Journal of Epidemiology and Communication Health誌に発表されたマクファーソン教授の発見は人を驚かせる見解である。もしも彼の恐れが正しいならば、乳癌になる女性たちの比率は50人に1人から18人に1人と上昇することになる。常識は、今日のピルユーザーは彼女たちの母親達とは違った点で充分に影響を受けていると書かせる。このことについて本当のことを言うのが誰にとっても何故そんなに難しいのだろうか?
さらに癌はピルに関連する唯一の健康上の心配事ではない。より多くのパートナーとの防御なしのセックスに伴う性感染症がある。
幅広く利用できる性教育がありHIVについての恐怖があるにもかかわらず、私たちはピルを飲んでいる多くの女性たちがリスクを冒して防御なしのセックスを行っているのを知っている。彼女たちは不妊のひとつの原因として知られているクラミジアや、子宮頚癌に関連するヒトパピローマウィルスのような感染(源)に暴露している。
このように、ピルは長期および短期の女性の健康と妊孕力をあやうくすることができるのである。しかし“汝、妊娠するなかれ”という唯一の絶対的モラルをもっているらしい家族計画に携わる者や医師たちによって、女性たちはまさにまじないをかけられているのである。
私は信じているのだが、ピルの悪夢の遺産は病気、女性たちの搾取、そして家族の減少に比べると、解放にはあまり関係がない。
ピルはまた、正直さと事実をふまえた討論にあまり時間を割かない性教育者や家族計画者たちにパワーとコントロールの集中を授けてもきた。女性たちは壁に書き記された文字(差し迫った災難のきざし:訳者注)を見るときに来ているのではないのだろうか?