内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)とは
●「生体の恒常性、生殖、発生あるいは行動に関する種々の生体内ホルモンの合成、貯蔵、分泌、体内輸送、受容体結合、ホルモン作用、あるいはホルモンの排泄などの諸過程を阻害する外因性の物質」(1997年、ホワイトハウス主催の会議での定義)
つまり、ある物質が生物の体内に入ったとき、その物質があたかもホルモンのようにはたらき、その生物、あるいはその子孫のホルモン作用を阻害して、生殖系、免疫系、神経系などに障害を引き起こすような化学物質のことを、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)と呼んでいます。現在までに日本の環境庁は約70種類の化学物質を環境ホルモンとしてリストにあげています。その多くは女性ホルモンに似たはたらきをすることが知られています。
これらの化学物質は非常に微量で作用することが特徴であり、さらに、胎児の時にそうした化学物質に暴露すると、取り返しのつかないような(不可逆的)障害をその子どもに引き起こすことがあります。
環境ホルモンとしての医薬品
私たちは、内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)を考えるとき、非常に重要な物質として医薬品を考えています。医薬品の中でも婦人科領域で使用されているものには非常に多くのホルモン剤があり、それらは強力なホルモン作用を持っているからです。
現在、「環境ホルモン」としての危険性を調査すべきだとして、問題提起されている医薬品をあげます。DESを除けば、他の医薬品は、まだはっきりと「環境ホルモン」的な作用があると確認されているわけではありませんが、そうした問題提起が臨床の場からも生じていることは非常に重要な問題だと考えます。
●ピルー経口避妊薬(厚生省への要望書や、『ピルの危険な話』をぜひご一読ください。)
<ピルによる発生異常が疑われている事例のみ抜粋・要約>
●DES(ジエチルスチルベストロール…流産防止剤としてアメリカを中心に1940年代〜70年代に使用された)
●プラステロン硫酸ナトリウム(商品名“マイリス”…日本でだけ使用されている子宮頚管熟化剤)
NEW 副作用について厚生省は「安全性情報」を出して注意喚起。「薬害オンブズパースン会議」はこのマイリスについて「有効性に合理的根拠はなく、安全性にも疑問がある」として販売の一時中止を要望。
●ノノキシノール(避妊用の殺精子剤に使用されている成分)
●副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用剤(アトピー性皮膚炎などの治療薬として使用されている)
その他、黄体ホルモン(プロゲステロン。合成のものはプロゲストーゲンと呼ばれ、ピルにも含まれている)を切迫流産の防止などで妊娠中に使用することの、胎児への影響も私たちは危惧しています。日本では現在も妊娠中の使用は規制されていません。
1.(LI.ガードナー、1970年)…遺伝子的男児で女性形:ピルの坑アンドロゲン効果か?
母親が妊娠に気づいてすぐピル(メストラノール100μg、ノルエチンドロン=ノルエチステロン2mg)を6錠服用。満期産。子宮、卵管、卵巣の存在。組織検査では膣、子宮の存在が認められ、卵巣と見える生殖腺は、胎児性の原始精巣索のある睾丸パターンを示す。下顎発育不全、口蓋裂、脊柱彎曲、下肢彎曲、心臓は右側に押しやられていた。生後11週半で死亡。
ガードナー博士は、この事例を説明するものとして、@“自然に起こる”生殖腺形成不全が、薬の何らかの作用で起こったのか、あるいはA妊娠初期にピルに含まれるプロゲストゲンの坑アンドロゲン作用のためにミュラー管由来の器官(卵管、子宮、膣)が存在し、ウォルフ管由来の器官(精巣上体、精管、精嚢)の発達を抑制したのではないか、という2つの仮説をたてている。
2.(MR.キム、1995年)…女性生殖器をもって生まれた屈肢症候群男児について:妊娠中に経口避妊薬を服用していたこととの関連
妊娠前18ヵ月ならびに妊娠6ヶ月までピルを服用(エチニルエストラジオール35μg、ノルエチステロン0.5〜1mgの二相性低用量ピル:同様の成分のものが日本でも認可されています)。母親には麻薬使用、感染、放射線被曝歴はなく、子どもの父親との血縁関係はない。
染色体は男性。膣と子宮頚部は正常。卵巣は肉眼でみて位置と大きさは正常。卵母細胞のない未成熟な性索。男性を示す性腺のセルトリ細胞とライディヒ細胞は存在しなかった。上肢・下肢および頚骨の彎曲、足の異常。生後3ヵ月半で死亡。
キム博士らは、この症例が上記1の例に次ぐ、性転換を示す屈肢症候群の患者の母親が妊娠初期に経口避妊薬を服用していた2番目の事例であり、これが偶発性か、性転換と経口避妊薬との間に因果関係があるかどうか、今後明らかにされるべきである、としている。
●DES(ジエチルスチルベストロール)
環境ホルモンの中でも、すでにヒトへの影響が明らかになっているもののひとつに流産防止剤としてアメリカを中心として世界で広く使用されたジエチルスチルベストロール(DES)があります。これは1938年にイギリスのドッズ博士によって合成され、1940年代から70年代までの約30年間、世界中で数百万人の妊婦に投与されたと言われています。これは「薬害」でもあります。
しかしDESを投与された母親から生まれた子ども達の中に、十数年たって若い女性には非常にめずらしい膣ガンが発見されました。男性にも生殖器の異常などが発見されました。こうしたことは、その子ども達が思春期に達したときにはじめて、ガンや機能的異常などとして明らかになったのです。
DESについては、『ピルの危険な話』(武田玲子、吉田由布子 著、東京書籍刊)の中の「終わらない薬害DES」にくわしく載っていますが、以下に、少しDESの歴史をまとめてあります。
DESの60年T.世界の状況
(かっこ内の数字は末尾の参考文献の番号。特に記載のないものは、(1)の『ピルの危険な話』に掲載されています)1938 ドッズ、合成エストロゲンであるDES(ジエチルスチルベストロール)の抽出に成功
1941 アメリカFDA(食品医薬品局)で認可。
1949 スミスらは妊産婦へのDES投与の評価を発表。
DESを投与すると、投与しなかった場合と比べて
「早期新生児死亡は少なく、妊娠中毒症も胎児死亡もより少なかった」と報告。
これ以降DESに対する熱狂が増大。
製薬会社は「妊娠したら丈夫で大きい子を産むためにすべての妊婦にDESを。
・・胃やその他の副作用はなし」といった広告を行なう。200近いブランドが出回る。
1950代初 FDAはDESの使用範囲を広げ、家畜の成長促進のための飼料添加を認可。
1953 ディークマンは、「DESを投与した方が早産は増加。児の体重が増えることはない。
未熟児がより多くなる。過熟児の予防はしない。DESが胎児の予後をよくすることはない」と報告。
1964 高杉、バーンの論文発表。「出生直後のマウスにDESを投与すると加齢と共に生殖系の異常やガン化
を引き起こす」「出生直後のマウスはヒトの妊娠3〜4ヵ月の胎児に相当するため、出生前後の
エストロゲン処理は将来、生殖器官系に重大な異常を引き起こす危険がある」と警告。
しかし医学界からも製薬業界からも何の反応もなかった。(2)
1970 ハーブスト、「妊娠中にDESを投与された母親から生まれた娘に早期の膣腺ガンが発生する」
ことを報告。以降こうした報告が相次ぐ。
1971 FDAはDESの副作用情報を出し、妊娠中の使用を禁止。
ヨーロッパでは各国により違いがあり、最終的に1978年に中止。
1978 ブラックビルらはディークマン報告を統計的に再検討。DESは流産や新生児死亡の危険、
また2500グラム以下の低体重児を有意に増加させる。したがって、
「妊娠中のDES投与は“役に立たない”だけでなく“危険なのである”」と結論。
1979 FDA、DESの飼料への使用禁止。
1986 カナダFDA、DESを骨粗しょう症の治療薬として認可(流産防止剤としては71年に使用禁止)。
※DESは60年代に「性交後ピル」としても使用され、70年代に段階的に廃止されたが現在も一部の発展
途上国では使用されているという(3)。
1995 ギウスティらは、DESの長期にわたる健康影響を100以上の文献から再考して以下のようにまとめた:
1.DESの影響が確立されているもの(Well
established)
膣の明細胞腺ガン(DES娘)/膣上皮の変化(DES娘)/生殖器の奇形(DES娘)/
早産(DES娘)/乳ガン(DES母)
2.たぶんDESの影響と考えられるもの(Probable)
子宮外妊娠(DES娘)/不妊(DES娘)/生殖器の奇形(DES息子)
3.DESの影響の可能性のあるもの(Possible)
頚部過形成、上皮内ガン(DES娘)/自己免疫疾患−甲状腺機能異常含む(DES娘)/
不妊(DES息子)/精巣ガン(DES息子)
4.理論的にDESの影響と考え得るもの(動物実験を基礎に)(Speculative)
乳ガン(DES)/心理的な性の異常(DES娘、DES息子)/前立腺肥大(DES息子)/
前立腺ガン(DES息子)/第三世代への影響(DES孫)
★第三世代(DES孫)への影響
1)子宮内でDESに暴露した人々の子どもは現在10代半ばから20代に達している。現在ヒトにおいて世代を越えた影響の直接的に明らかな証拠は出ていないが、DES胎内被曝した男性(DES息子)の13歳の娘が明細胞膣ガンで死亡した例(1991年?)があり、父親は「娘の膣ガンは自分が母親の胎内でDESに被曝したことが原因である」として製薬会社の責任を求め提訴している。
2)1998年の動物実験。アメリカ国立環境健康科学研究所の研究
@胎児の器官形成期、A出生前日、B出生直後から5日目までという3グループでDESを投与した母親(妊娠)マウスの娘のそのまた娘マウスを調査(DESを投与されたマウスの孫娘。この場合父親はDESに被曝していない)。
孫娘マウスは、どのグループもコントロール群に比べて子宮腺ガンを含む生殖器の悪性腫瘍の発生率が高かった。@グループで祖母が5μg/kgの投与を受けたものでは、もっともガンの発生率が高く(16%)究めて稀にしかない膣ガンもみられた。妊孕性の低下は第3世代には伝わっていないようにみえた。(4)
3)1999年7月、アメリカで「DESの長期的影響に関する国際会議」開催
上記と同じチームでの孫(息子)マウスに関する実験。3グループの分け方(@AB)も上記と同じ。孫息子マウスはDESに被曝していない雌との交尾では、コントロール群と比べて生殖能力の差はなかったが、精巣の網状組織の腫瘍を含む生殖器の腫瘍の発生率増加が見られた。3グループともに腫瘍がみられたため、(祖母のDES被曝が)どの時期であってもDESによって乱されやすいと考えられた。(5)
U.日本の状況
DESは日本では武田薬品から「オイベスチン」の名で1948〜71年、田辺製薬は「エスチモン」の名で41〜71年、小林製薬工業は「エスロン」の名で54〜73年の間、それぞれ販売されていた。
どんな目的どの程度製造していたかについてはどの企業も「記録が残っておらずわからない」などとあいまい。当時の「最近の新薬」(薬事日報社1955年)や「最新・薬学大辞典」(誠文堂新光社1968年)によると、DESは、更年期症、老人性膣炎、前立腺ガン、ほ乳時の乳汁うっ積による胸部の痛み防止、不妊症、流産・早産後の子宮回復などに使用されていた。
米国で71年に使用中止が決まったことを受けて厚生省は同年12月、薬務局長名で、「DESまたはその誘導体を含む製剤(外用剤除く)は、胎児に作用し、出生女児が思春期前後に膣ガンが発生するとの報告がある。使用中の安全性を確保するため、妊娠中は使用しないこと。また、効能の事項に『流産、習慣性流産』など妊娠に使用されるおそれのある表示があれば削除するように」という通知を出した。
結局、大量に使用されることはなかっただろうが、少ないながら使用されていただろうと考えられる。
(毎日新聞の記事(6)(1997.12.29)を参考)
厚生省は「化学物質のクライシスマネジメントに関する研究班」報告書中の今後の研究課題の「関連課題」として、“我が国における人の健康影響に関する疫学的調査”の項目として「DESに暴露された幼児の生殖関連疾患(停留睾丸、膣がん等)と環境エストロゲン様物質の暴露との関係の評価」をあげている。(7)
なお現在日本では、リン酸ジエチルスチルベストロール(商品名:ホスフェストロール)が前立腺ガンの治療薬として認められている。(8)
(以下の文献を参考にして作成:吉田由布子)
1. 武田玲子「終わらない薬害DES」『ピルの危険な話』 東京書籍、2000年2月
2. 高杉暹「DESの恐怖は去ったのか?」化学,1998,Vol.53,July,化学同人
3. SUNDARAM,Brigid
“Tackling the aftermath faced by the daughters of DES", Nursing Times,
August 16,Vol.91,No.33,1995 (女性フリーライター、イギリス)
4. Newbold R.R. et
al., "Increased tumors but uncompromised fertility in the female descendants of
mice exposed developmentally todiethylstilbestrol.",
Carcinogenesis,1998:19:1655-1663
5. Newbold R.R. et al., "Increase tumor
prevalence in DES-lineage mice", DES Research Conference, 1999, July
19-20, Washington
6. 続「しのびよる人体汚染 9」、毎日新聞
1997年12月29日
7. 平成8年度厚生科学研究、健康地球研究計画推進研究事業「化学物質のクライシスマネジメントに関する研究」
総括研究報告書
8. (財)日本医薬情報センター編、『医療薬/日本医薬品集 1998-1999』,薬業時報社,1998年
<リンク>
DESアクションボイス(U.S.A)
DESの長期的影響に関する国際会議(1999,ワシントンD.C.)
●プラステロン硫酸ナトリウム(商品名“マイリス”−子宮頚管熟化剤)
(「新薬学研究者技術者集団」の厚生省あて要望書ならびに、つうしんVol.28,No.5(99.10.15)を参考にしました)
プラステロン硫酸ナトリウム(DHA-S、商品名“マイリス”―坐剤および注射剤)は、分娩時に頚管を軟らかくするという目的で妊娠末期に使われています。本来は「妊娠末期子宮頚管熟化不全の妊婦」への適応となっていますが、実際には正常妊婦の出産管理に日常的に使用され、日本の妊婦のうち、初産婦の1/3以上、毎年20万人あまりに使われていると推定されています。
このDHA-Sは副腎皮質ホルモンの一種ですが、 妊婦に投与されると、胎盤で変換されて、約35%が強力な女性ホルモンであるエストラジオールに変換され、エストロゲンとして胎盤から胎児へ大量に移行しています。マイリス注射剤では、妊娠末期に母体で生理的に増加しているエストラジオール濃度の約5〜6倍の増加となっています。増加したエストロゲンが妊娠末期の胎児にどのような影響を与えるかは明らかになっていませんが、妊娠末期ではエストロゲンが胎児の脳に与える可能性が危惧されます。
しかも、欧米などでは、70〜80年代に天然または合成のエストロゲンはすべて、妊娠中の時期を問わず、妊婦には禁忌となっていますが、このマイリスは日本国内で開発され、1981年以来、日本だけで販売・使用されている薬なのです。
マイリスに関しては、「新薬学研究者技術者集団」のみなさんが、早くからその危険性に警鐘を鳴らされています。くわしくは、新薬学研究者技術者集団のHPをご参照ください。
NEW(2000.3.25)
子宮頚管熟化剤服用で副作用10件、厚生省が注意喚起。(3月23日付毎日新聞)
妊娠末期に子宮口をやわらかくして出産しやすくする「子宮けい管熟化剤」のプラステロン硫酸ナトリウム製剤(成分名)の服用者に1992年11月以降、副作用と見られるショック症状や過敏反応が計10件起きていることが分かり、厚生省は22日、「安全性情報」を出して医療関係者に注意を呼びかけた。鐘紡(本社・東京都港区)など製薬会社には添付文書の「重大な副作用」に過敏反応を追加し、医師の監督下で使用するよう指示した。
市民団体「薬害オンブズパースン会議」(代表・鈴木利広弁護士)は同日、この医薬品について「有効性に合理的根拠はなく、安全性にも疑問がある」として販売の一時中止を要望した。
同剤は初産婦の3分の1にあたる年間20万〜30万人の妊婦が服用し、推定出荷額は約25億円に上る。
詳しくは、厚生省HPから、 http://www.mhw.go.jp/
または
医薬品情報提供システム http://www.pharmasys.gr.jp/
でご覧ください。
NEW(2000.5.3)
分べん“助ける”ステロイドホルモン剤、「効果の根拠疑問。胎児に悪影響も」(4月30日付け毎日新聞)
妊婦の子宮を軟らかくする目的で現在、頻繁に使用されているホルモン剤について、医師でつくった研究団体と医薬品監視団体が「薬として有効性がないだけでなく、胎児への影響も懸念される」との調査結果をまとめ、安全性の再検討を促す要望書を厚生省と製薬会社に提出した。専門家による詳細な検討結果だけに、現場の医師に与える影響は大きく、厚生省の今後の判断も注目される。
問題となっているホルモン剤は、成分名をプラステロン硫酸ナトリウム(DHA-S)という。商品名はマイリスなどで三つの製薬会社が製造・販売している。出産のとき、子宮の入り口を軟らかくするために使用される。副じんから分泌されるステロイドホルモンの一種だ。日本では1981年から注射薬、97年には膣座薬としても認可され、年間約20万人の妊婦に使用されている。先進国では日本でしか使われていない。
妊婦が使用すると体内で女性ホルモン(17βエストラジオールとエストロン)に変わるため、これまでにも胎児が高濃度の女性ホルモンにさらされる危険性があると指摘されていた。
こうした中、主に医師たちで組織した「医薬品・治療研究会」(東京)は、認可の基になった70年代の臨床試験や動物実験データを詳細に調べ、ホルモン剤の有効性、安全性などを調べた。その検証結果を会報誌「正しい治療と薬の情報」にこのほど公表した。
同ホルモン剤の問題点として、@臨床試験の対象となった妊婦は、治療を必要としない正常な妊婦だったため、効果があったとする根拠に乏しいA有効性がないだけでなく、逆に出産が正常な出産期にあたる40週より早くなっており、胎児仮死などの周産期障害を起こす危険な徴候が見られたB胎児が大量の女性ホルモン剤にさらされると、かつて米国で生じたDES事件(DESという合成ホルモン剤を服用した妊婦から生まれた子供たちに生殖障害が発生した)と同様の危険性も考えられる−などを挙げている。
同会報誌・副編集長で医薬ビジランスセンター代表の医師、浜六郎さん(臨床薬理学)は「このホルモン剤はどう見ても不必要だ。動物実験では用量に比例して死亡率が高い。これだけ危険性を示すデータがありながら、3年前にも膣座薬が承認されたことは理解できない」と述べ、いまあるデータで安全性と有効性を再点検することが必要だと強調する。
こうした医師たちの検証結果を受け、弁護士などで組織した薬害防止団体「薬害オンブズパースン会議」(東京)は厚生省と製薬会社3社に再点検を求める要望書や質問書を提出した。
対応策について、製薬会社の日本オルガノン(大阪)は「厚生省と協議中」、富士製薬工業(東京)と科薬(東京)は「厚生省から何の通達、指示もなく問題はない」と話している。
厚生省安全対策課は「要望書の指摘が正しいかどうか検討中だ。製薬会社からの説明も受けて対応を考える」と話している。
<リンク>
新薬学研究者技術者集団
●ノノキシノール、メンフェゴール(殺精子剤の成分、商品名“マイルーラ”“FPゼリー”“ネオサンプ−ン・ループ錠”)
(合成洗剤追放全国連絡会、日本消費者連盟のニュースなどを参考にしました。)
女性の膣内に挿入する避妊用の殺精子剤として、フィルム状、ゼリー状、泡状などがありますが、それらの成分としてノノキシノール、メンフェゴールが使われています。これらは環境ホルモンとしてリストアップされているアルキルフェノールの仲間です。
工業用洗浄剤の原料として使われているアルキルフェノールは、分解してノニルフェノールが生成されます。ノニルフェノールは、プラスチックや農薬などにも添加されており、塩ビ製ラップからも溶け出して食品を汚染すると問題になっています。ノニルフェノールはすでに内分泌かく乱作用が確認されており、EU諸国では工業用洗浄剤への使用全廃をめざしています。
殺精子剤に使われているノノキシノールはノニルフェノールに化学構造が非常に似ており、したがって、ノノキシノールも体内(膣内)で分解してノニルフェノールに変化している可能性が疑われています。メンフェゴール(「ネオサンプ―ン・ループ錠」に使用)もアルキルフェノールの仲間であるため、同様の作用が疑われています。
「避妊フィルム“マイルーラ”の毒性を考える会」「合成洗剤追放全国連絡会」や日本消費者連盟などは、厚生省に対して「マイルーラ」の環境ホルモンとしての影響調査を求め、交渉を続けています。また、「マイルーラ」製造元である大鵬薬品の労働組合は、以前から「マイルーラ」の危険性(膣への刺激、炎症性、使用後の体内への吸収と残留、肝臓への影響、発ガン性、胎児への影響など)を内部告発しています。
●副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用剤(アトピー性皮膚炎などの治療薬)
(日本アレルギー学会報告要旨(99.5月)、環境ホルモン国際シンポジウム(99.12月、神戸)での報告要旨を参考にしています。調査人数は99年12月発表のものです)
アトピー性皮膚炎患者の治療剤として副腎皮質ホルモン(注:以下ステロイドとします)外用剤は一般的にひろく使用されており、妊娠前・妊娠中の時期も問わず使用されています。このステロイド外用剤の妊娠前・妊娠中の継続使用が経皮的に母体に取り込まれ、胎児に環境ホルモン的影響を及ぼしていないか、特に胎児の性比についての調査報告がなされています。(報告されたのは、京都市内の島津医院の島津恒敏医師です。)
1994年4月から1999年9月の間に同院で外来受診した成人女性のアトピー性皮膚炎患者42名について、妊娠前妊娠中のステロイド外用剤の持続的使用の有無と出生した児の性比について調査されています。
妊娠前からステロイド剤を使用していた女性31名の分娩回数は44回。新生児数は45名。うち42名は女児、3名は男児であった。男児のうち1名は女児との双生児で死産であった。妊娠6ヶ月以上前から妊娠中もまったくステロイド剤を使用しなかった患者18名の分娩回数は21回で、新生児22名中女児11名、男児11名であった。うち、女児2名は一卵性双生児であった。
(中略) @自然流産での胎仔の性比は1.3:1.0と男が多いとする報告などに鑑みると、機序は明らかではないが、外用されたステロイド剤が雄性の胎児に早期に致死的効果をもたらし、出生する男児を減らしている可能性や、A経皮的にとりこまれた合成副腎皮質ホルモンの、ヒトのcortisol(注:副腎皮質ホルモンのひとつ)と比べ、はるかに強力なステロイドレセプターとの結合力により、妊娠初期にアンドロゲンレセプターの発現が抑制され、アンドロゲン(テストステロン)による精巣決定因子の発現や内外生殖期の雄性化がおこらず、遺伝子的にはXYで男性だが、生殖器は女性である子どもが生まれている可能性も考えられる。DESの不幸な歴史を繰り返さないためにも、性比のみならず、種々のバロメーターを用いたステロイド剤の及ぼす影響についての大規模な疫学調査や動物モデルでの検討が望まれる。
*性比の異常に関しては、76年にイタリアのセベソで起きた農薬工場の爆発により周辺がダイオキシンで汚染された事故で、事故後10ヵ月目(77年4月)から84年12月までの間に、汚染がもっともひどく強制避難措置がとられたゾーンにいた人たちの間で出生した子どもの性比について調べられています。それによると74人が誕生し、男女比は26対48(男対女)で女児の方が多くなっていました。通常の男女比は106対100で男児の方が多くなっています。ダイオキシンの血中濃度の非常に高い父母から生まれた児はすべて女児であったというイタリアのパウロ・モカレリ博士の調査結果が発表されています。(Lancet,1996,384(9024):409)
また、デボラ・リー・デイビス博士は、西欧の先進工業国(デンマーク、オランダ、カナダ、アメリカ)で1950年(一部70年)から1994年(一部90年)までの男女の性比(平均的には106:100)を調べた結果、各年でのバラツキはありますが、傾向として男子の出生比が低下してきていることを報告しています。またこうした傾向はスウェーデン、ドイツ、ノルウェー、フィンランドでも見うけられるとしています。(JAMA,1998,279(13):1018-1023)