岡村良通『寓意草』下巻より

湿る石

 尾張の漁師が上総の海岸に行って、大きい貝のような石を一つ拾った。
 美しい石だからと、床の間に据えておいたら、まわりがじっとり湿ってしまった。
 石を拭って、今度は棚の上に置いたが、また湿った。
 よく見ると、針の先で突いたほどの穴から、湿りが出ていた。
 どうも怪しいので、石を釜に入れて煮てみたら、その後は湿らなくなった。
「ということは、中に虫などいたのではないか」
 打ち割ってみると、はたして、一寸ばかりの蛇のような虫が、煮殺されていた。

 こういうものも、竜なのではなかろうか。
あやしい古典文学 No.1501