『喪志編』より

ラシマ

 落斯馬(ラシマ)という魚は、体長十数メートルで、短い足がある。ふだんは海底にいるが、まれに海上に現れる。
 その皮鱗は非常に堅く、刀剣で刺し通すことができない。額に鉤型の二本の角があり、磯に登って眠るときには、岩に角を引っ掛けて、終日目覚めることがない。

 落斯馬は魚類ではなく、海中の獣だともいわれる。大海には、この類の獣がはなはだ多いという。
 たとえば、二足二手の海獣がいる。たまたま出遭った船に取りつき、むやみに揺り動かして転覆させる。これにより、多くの乗組員が溺死する。海獣の中で最も多力で猛悪なものであって、船乗りたちはこれを「海魔」と呼ぶ。
 四角形で翼のある海獣もいる。大きな鳥のように翼をはばたかせて大風を起こし、船を覆す。これまた船乗りたちの恐れるものだ。
あやしい古典文学 No.1459