浅井了意『新語園』巻之二「媚娘ノ柳蕣英ヲ殺ス」より

媚娘

 媚娘は、姓は余氏。良家の生まれで、同郷の周氏に嫁ぐも、ほどなく夫を亡くした。
 その後は寡婦として貞潔の道を守っていたが、顔かたち麗しく、才知に優れていたため、陸希声という男が恋慕し、仲人を立てて結婚を申し込んだ。
 媚娘の返事は、
「陸希声さまは、宮廷に仕えて郎中の官に任じられた立派な方。そのような方に望まれて妻となるのは、私にとってもこの上ない喜びです。しかし、今まで守ってきた貞節を破って新たな夫に添うのですから、それに値する誓いを立ててください。『私のほかに妾を置くことはしない』と約束してもらえるなら、お受けしましょう」と。
 希声はこれを肯い、媚娘を娶って妻とした。

 ところが二年後、希声は、国中に名高い柳蕣英という美女を深く寵愛して、日夜行き通うようになった。
 媚娘が『約束と違う』と怨み言を口にしたことが、かえって夫の怒りを買った。希声は蕣英を家に迎え入れて、正妻の媚娘と対等の立場に置き、いよいよ寵愛した。
 媚娘はそれを許したのか諦めたのか、もはや恨みを忘れたかのようにして、同じ家に住んでいた。
 妻の様子を見て希声は喜び、安心して他所へ出かけた。
 夫の留守中、媚娘は蕣英を奥の部屋へ呼び招き、刺し殺した。さらに手足を切断し、腹を割いて臓物をぶちまけた。その後、大きな桶にすべて押し込んで、固く封をし、『別荘宛送物』と書いて、都の牢獄へ送った。

 役人が届いた桶を開くと、ばらばらになった美女の死骸で、目も当てられないありさまであった。
 希声を召喚して糾問するに、すべて妻の媚娘の仕業にほかならなかった。
 これにより、媚娘は首を刎ねられ、希声は流罪となって、陸家は一時に滅んだ。
あやしい古典文学 No.1336