松浦静山『甲子夜話』巻之十八より

八歳の女子 卵を産む

 平戸の海岸にある宝亀村の墓地で、八歳の女の子が遊んでいると、何ものかが来てこれと交接した。女の子は妊娠して、やがて卵を産んだ。
 村人はみな、狐と交わったのだと噂したが、話を聞いた私は、
「狐ではない。河童の仕業である」
と断定した。
 河童と交接した婦女が子を産んだ例は、領内の小値加(おじか)にもある。筑前、日向、豊後など他国でもそういうことがあったと聞く。産んだのはみな卵である。

 河童は亀の仲間で、背と腹に甲羅がある。
 かねてより亀は卵生と聞いていたが、隣宅の池のはたで卵を見つけた者の言によれば、卵の中は亀の形をなして、甲羅はつぼんで巻煎餅のようだったという。これは人の胎児が子宮内で丸くなっているのと同じであり、亀属のものは卵生だということの証拠である。
 もし獣類の狐と交わったのであれば、卵を産むことはありえない。
 また、領内で河童を見た者によれば、体格は小児ほどで、立って歩くことができるそうだ。八歳の女の子と交接したとしても不思議ではない。
 『易経』に「女子は七歳にして腎気盛んに歯更る云々」の文がある。ということは、八歳でも性交すれば子を生ずるということか。

 女の子は、卵を産んでまもなく死んだという。
 河童の子を孕んだ者はすべて、最初はなはだしく発熱し、三四か月を経て、たくさんの泡のようなものを出産する。これがすなわち卵で、その後、当人は廃人と化すとのことだ。
あやしい古典文学 No.347