大田南畝『半日閑話』巻十「屋根に溺死人落つ」より

屋根に落としもの

 浅草堀田原の堀筑後守の屋敷で、怪事件があった。

 四月七日の白昼、屋根の上に大きな物を投げつける音がした。調べてみると、溺死してかなり日を経た屍体で、ひどい悪臭がする。
 そのままにもしておけず、取り片づけて寺に葬ったが、この顛末は屋敷内でも秘密にされた。

 葬送される死者をさらっていく妖怪、火車というものの仕業でもあろうか。屍体は糜爛がはなはだしく、四肢を分別しがたいほどであったという。
 屍体が落ちたのは、奥方の居間の屋根だったとも伝えられる。
あやしい古典文学 No.112