colum やはり谷間か?


日本のオリンピック男子サッカーチームは、まことに残念ながら 予選敗退となった。 予想の通りとはいえ、無念の一言に尽きる。

他のアジアのチームが、イラク2勝無敗、韓国1勝1分 と良い成績 だけに、余計に日本の惨敗ぶりが目立つのである。 特にイラクは 戦乱の最中、用具も設備も不十分な環境にもかかわらず、無敗で早 くもトーナメント進出を決めた。 祖国の逆境に民族の魂が燃えたの だろうか。 見事としかいいようがない。 彼らには最大級の賛辞が 与えられてしかるべきだろう。

それに比べて日本チームの精神的ひ弱さは、口惜しい限りである。 潤沢な予算と優れた周辺環境、周到な準備と、イラクに比べて遙かに 戦うための状況は整っていた。 なのにこの有様・・・

立ち上がりでのイージーミスと不用意な失点で、前半で決定的な点差 にされてしまうという、まずい内容の戦いが2戦目でも修正できず、 同じような負け方をしてしまった。 それも那須など、普段は堅実な 守備をする選手が信じられないような凡ミスを繰り返すという、通常 では考えられないようなお粗末な内容だった。

オリンピック開始前には、代表チームのディフェンス面は、それほど悪 くはないと考えていた。 最大でも失点は2点以内に抑えてくれるだろ うと見ていたのだ。

が、始まってみると、2戦で7失点という 大量失点だ。 逆に点が取れないだろうと思っていたオフェンス面では、 2戦で5得点も取ってしまった。 もっともその内2点はPK、1点は FKで、流れの中での得点は2点しかないので、決定力不足はやはり感 じられた。 ともあれ、最初の予想の「得点はあまり取れないが失点も 少ないだろう」という私の予想は、完全に外れてしまった。

この敗戦は、失点のしかたなど試合の内容を考えると、やはり精神的弱さ が最大の原因だろう。 勿論、イタリア戦など個人の能力の違いによる 実力差も大きかった。 しかし、大きなミスさえなければ、パラグアイ戦 は最悪でも引分けには持ち込めたろうし、勝つこともできたかも知れない。

この「最初の試合の冒頭」という、これからの戦いの為に最も重要なシーン で、それまで大きなミスなどしたことのない選手が、信じられないような ミスを繰り返したというのが、今回のチームの精神的弱さの象徴ではないか と思う。


今回のオリンピック代表チームは、全体に小粒で特に抜きんでた選手が いない、というのが共通の認識だった。 一つ前の世代には、中田中村 小野稲本ら、日本サッカーでも最大級のスターが目白押しで、まことに 華やかであった。

その陰に隠れた格好のこのチームは、結成当時は「谷間の世代」などとい う芳しくない呼び名を頂戴し、事実当初はJリーグの二軍にも大敗する という有様だった。 しかも負け犬根性というか、「どうせ俺達ゃ・・ ・」という諦めの意識が、選手達を支配していたようだ。  偉大な兄を持った弟の鬱屈というところだろうか。 本人は 決して不出来 というわけではなく、むしろ相当に優秀な方なのだが、兄があまりにも出 来すぎていたため、何かと比較されてわりをくうという、不運な存在である。

結成当初のトレーニングメニューでも、山本監督は「普通のJリーグの選 手が簡単に出来ることが、なんでこいつらには出来ないんだ」と呆れてい たそうだ。 ところが名伯楽山本監督は、このチームを変えた。 特に 精神面の強化に力を注いだそうだ。 「やればできる、お前達にもでき る」という山本監督のスピリットは、確実に彼らにも芽生えた・・・ か に見えた。

その後オリンピック最終予選で我々が見たように、このチームは大きな 成長を遂げた。 逆境でもひるむことなく、最後まで諦めることなく、 最初は無理だと思われていた、予選突破という大きな成果を上げた。

そのスピリットが最後の大舞台で完全に崩壊した。 やはり「オリンピッ ク本大会出場」という大きな目標を達成したことで、そこで燃え尽きてし まったということなのだろうか。 それとも「もっと上を」という意識が 強すぎたため、堅くなったということなのだろうか。 いずれにせよ、精神 的弱さ(というよりもろさ)というものは、試合の内容から強く感じられた。

「やはり谷間の世代だよね」という世評を跳ね返すためにも、最後の ガーナ戦は最良の試合をし、そして勝って欲しいものだ。


最後に・・・ 

現在最も気がかりなことは、2006年のドイツワールドカッ プ以降のこと である。 2006年には中田や中村中沢ら、現在の代表チームの主力 が揃って30歳近くとなる。 ドイツ大会は現在のメンバーでしのげる としても、その後のアジアカップや.2010年のワールドカップに は、彼らは30歳を越えて引退しているか、そうでなくとも 絶頂期はとうに過ぎている、ということになる。

その頃に主力となっているのは、現在のオリンピックチームのメンバー とU20のメンバーだろう。 しかし、彼らは中田世代を乗り越えて 進化しているだろうか? U20もどちらかと言えばおとなしい印象 が強いし、これまでの国際試合での成績もあまり芳しいものではない。

それを思うと、今から数年後の日本サッカーの状況は、現在と比べて かなり低いレベルとなっているのではないか。 そんな不安を強く覚 える。 

中田たちが引退若しくは衰えた後を支える選手は、存在しているのだ ろうか。 この問いに対しては、現在のU23やU20のメンバー を見る限りでは、かなり否定的な答えしか出てこない。

今回のオリンピック代表チーム(U23)には、過去の中田中村前園など に匹敵するような強力な司令塔は存在しない。 松井という選手はいるが、 中田や中村と比べるとタイプも違うし、能力的にも今ひとつである。  ところがFWには平山や森本(今回の代表には入っていないが)という 強力な新星が出現している。 

この数年間、日本代表のプレイスタイルは、弱体なFWを優秀なMF、 特に司令塔がコントロールし、DFは組織的に守るというスタイルだっ た。 これは中田や中村などの優秀な司令塔が存在したからこそ出来る スタイルだった。 しかし彼らに替わる強力な司令塔の候補は、現在は 存在しない。 となると、数年後の代表チームのプレイスタイルは、現在 のものとは大分異なったものになっているかも知れない。

つまり、日本のサッカーは現在が頂点であり、今後次第に低下の一途を 辿るのではないか。 そういった危惧の念を強く覚えるのである。



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