colum 強運の人
強運の人と言われる人々がいる。 やることなすこと全てが、良い方向へ 良い方向へと転がって行く。 たとえ一見「これはまずいんじゃないか」 と思われるような行動を取っても、結局は良い結果を生んでしまうという、 まことにうらやましい人々である。
実業界でもスポーツ選手でも、「成功した人」「グレート」と言われるよ うな人は、大なり小なりこの強運の持ち主のように思える。 優れた才能 を持っていても、十分な努力をしていても、この強運を保たない人はまず 大成は難しい。

例えば前園真聖というサッカー選手がいる。 現在は韓国のKリーグでプレイ しているが、彼はアトランタオリンピックの世代では最大のスター選手だっ た。 中田以上のである。 当時の代表チームでほとんどのプレースキック を蹴り、正確なキックと鋭い瞬間的突破力で高い評価を得ていた。 当時は まず間違いなく世界的な大選手になるだろうと、大きな期待を寄せられてい たのだ。

しかし、その後の活躍はぱっとしたものではなかった。 いつだったかは 失念したが、大きな怪我をしたことが最大の原因ではなかったかと思う。 結局、昨年あたりから韓国へ渡り、安養LG、仁川 と所属を変えたが、大 成功とは言い難い成績だったようだ。 本来なら中田や俊輔同様、ヨーロッ パの一流チームの主軸として、活躍すべき才能の持ち主だったのだが・・ ・

又、随分前になるが、日本でアンダー16(17?)の国際大会が開催され たことがあった。 Jリーグ発足と前後する頃ではなかったかと思う。(恐ら くは92年 このあたり記憶がかなり曖昧) 当時の日本のユース選手の技術 的レベルはかなり低いもので、イタリアとかアフリカの選手とかには子供扱い されていた。 要するに、まるで歯が立たないという状態だったのだ。 その 中で只ひとり、財前という、外国勢に全く見劣りしない技術の持ち主がいた。

彼のボールキープ力には目を見張るものがあった。 大柄でフィジカルの 強く、技術もある外国選手に囲まれても、ドリフトで巧みにボールをキー プし続けるという、素晴らしいテクニックの持ち主だった。 TVを見な がら、私は「この選手は近い将来、間違いなく代表チームの軸になる」と 強いインパクトを受けたものだった。 ちなみに、当時のアンダー17のチー ムには中田もいたそうだが、私は全く気がつかなかった。(笑)

しかし残念ながら、この財前も大成はしなかった。 その後ベルディのユー スに入り、イタリアリーグのラツィオ、更にはクロアチアやスぺインでも プレイし、現在はベガルタ仙台に所属している。 しかしやはり怪我の影響 か、代表チームの主軸となるまでには至らなかった。

前園にせよ財前にせよ、当時は中田や中村より遙かに注目度、期待度は高 かった。 なのに何故現在のような差がついたのか? これは決して彼らの 才能が低かったわけでもないし、彼らの努力が足りなかったということでも ない。 これが強運の持ち主とそうでないものとの差なのである。

さて・・・ ここまでが前振りで、この後が本題である。 本題より前振り の方が長いという、らちもないこのコラム。


サッカー界で最高最大の強運の持ち主といえば、まずなんといってもジーコ SANではないだろうか。 その証拠はいくらでも挙げられるが、なんと いっても今回のアジアカップがその最たるもの。 しかしこのジーコ監督、 サッカー評論家諸氏には至って評判が悪い。 曰く「無為自然の人」、又 曰く「戦術に一貫性がない」、反対に「戦術を固定しすぎて流動性がない」、 更には「逆算の発想が乏しい」、も一つおまけに「ジーコはやる気がない」 などなどなど、ここまで言われりゃ、後ないのは「死んでしまえ」という一 言だけ。

「ジーコジャパンがアジアカップを制覇したら、靴を食って見せる」と 言った人は・・・ 流石にいなかったが、「ジーコ信者になります」と 言った評論家は確かに存在する。
普通ここまでけなされる代表監督は、大敗完敗の連続の筈。 なのに ジーコはとにかく決勝まで進出してしまった。 グループリーグ初戦 のオマーン戦はいつ逆転されてもおかしくない内容だったが、結局 は勝ってしまい、第三戦のイラン戦も押され気味ながらなんとか引き分 けに持ち込んだ。
準々決勝はPK戦で最初の二人が外すという絶対絶命のピンチから、つい に奇跡の逆転勝利。 準決勝も早い時間帯で退場者を出しながら、逆転又 逆転の末、辛くも勝利。 これが強運の持ち主でないというのなら、運な どというものは存在しないだろう。

しかし、これは本当に強運というものなのだろうか。 運とかついていた とかいうことは、一度なら充分あり得る。 しかし二度連続となるとこ れは奇跡に近く、三回続けば最早奇跡そのものだ。 まして四回となると、 これはもう奇跡とさえ言えない。 麻雀で四回連続大三元で上がったらど うだろうか。 まずインチキを疑われて袋だたきになる可能性大である。

勿論アジアカップでインチキということはあり得ない。 となるとこれは 「必然」ということになる。 正直な所、私自身もジーコ監督の采配には 多大の疑問を持っていた。 疲労困憊している選手を何故変えない?  後の試合のことも考えれば、オリンピック予選で山本監督がやったように、 ローテーションを組んで選手を入替え、疲労を最小限に抑えるなどすべき と思った。 その他いわゆるオートマチズムの徹底、フォーメーションの 問題、追加FWを採用しない選手構成の問題など、ジーコ監督への疑問は 数々あった。

しかし結果から見れば、「勝っている間はスタイルを変えない」という ジーコ采配は正しかったように見える。 論理的には、どう見ても評論家 諸氏や私自身の考え方の方が正しい、と思えるのにである。 となると この「必然」がやはり「強運」というものなのだろうか。 なんとも不思 議なことではある。



BACK